2019/12/29

SPPBと死亡率の関係-meta analysis-10点以下は死亡率上昇

Short Physical Performance Battery and all-cause mortality: systematic review and meta-analysis.

BMC Med (IF: 8.285) 2016 Dec 22;14(1):215.


<背景>
SPPBは、下肢のパフォーマンス状態を評価するためによく使用されツールである。
死亡率を予測するという報告が散見されるが、患者の状態が異なるため、結果が混在している。
この研究の目的は、SPPBスコアと死亡率についての関係をメタ解析で検討すること。

<方法>
対象文献は、MEDLINE, the Cochrane Library, Google Scholar, and BioMed Centralで2015年9月から2016年1月まで収集。
採用基準は、対象者が50人以上で、SPPBスコアで患者を層別化している、死亡率に関するデータが示されている、英語であること。
24文献がエビデンスとなり得る対象に選ばれた。
対象データを文献から抽出。年齢、性別、BMIを補正し、オッズ比や危険率でSPPBカテゴリーによる死亡率を算出。

<結果>
標準化されたデータは、17文献(n = 16,534, mean age 76 ± 3 years)。
SPPBスコア10-12点と比較して、0-3点(OR 3.25)、4-6点(OR 2.14)、7-9点 (OR 1.50)は、それぞれ死亡率の上昇と関係していた。
SPPBスコアが低いことは、フォロー期間、対象者、地域、年齢と独立して、全原因の死亡率と強く関係していた。
ランダム効果モデルのメタ回帰では、若年で、糖尿病の男性では、SPPB7-9点が最も死亡率が高かった。

<考察>
SPPBスコアが10点以下では、全原因の死亡率が上昇する。臨床でのSPPBの実施は、死亡率を予測するための有効なツールであるかもしれない。
さらに、SPPBは、研究において、死亡率のエンドポイントの代わりとしてなり得るかもしれず、特異的な治療やリハビリプログラムの効果や改善の度合いについて検討する必要がある。


2019/12/23

COPD身体活動レベルと予後 ERJ2014

Changes in physical activity and all-cause mortality in COPD.

Eur Respir J (IF: 11.807) 2014 Nov;44(5):1199-209.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25063247

<背景>
COPD患者の身体活動量の変化が死亡率に影響するかはあまり知られていない。
したがって、目的は、COPDの有無で身体活動量の変化を検討し、死亡リスクに対する身体活動の影響を検討すること。

<方法>
Copenhagen City Heart Studyに参加しており、2回評価を行えた患者を対象。
それぞれの評価は、質問表と臨床検査。
1270人のCOPD患者(%FEV1:67%)と8734人の非COPD患者(%FEV1:91%)が対象。

<結果>
ベースラインの身体活動が中等度もしくは高強度のCOPD患者で、フォローアップにて低身体活動になっていた患者は、死亡の危険率が最も高かった。(1.73 and 2.35)
ベースラインで低い身体活動であったCOPD患者は、フォローアップにて身体活動が変わらないもしくは増加しても生存率とは関係なかった。
加えて、低身体活動の非COPD患者は最も高い死亡の危険率であり、ベースラインの身体活動は関係なかった。
フォローアップ時に、低身体活動も行えていないと、COPDでも非COPDでも死亡リスクの増加と関係していた。

<考察>
今回のデータは、COPDの早期から身体活動を評価し、励行することの重要性を示唆した。
これは、できる限り身体活動レベルを高く保つことで、より良い予後と関連しているためである。


Copenhagen City Heart Study (CCHS)
20歳以上の対象者を無作為に対象として抽出
1976年から1978年にCCHSの最初の評価を実施
再評価を1981-1983年、3回目を1991-1994年、4回目を2001-2003年に評価。
新たな20-49歳の対象者を加えて評価。

・身体活動は質問表で評価
・身体活動レベルは低度、中等度、高度に分けて判定


a)-c)COPD患者
d-f)非COPD患者
a)ベースラインで低強度の身体活動
b)e)ベースラインで中道度の身体活動
c)f)ベースラインで高強度の身体活動

肺がん術後の理学療法は入院中の身体活動を向上させる。

In-hospital physiotherapy improves physical activity level after lung cancer surgery: a randomized controlled trial.

Physiotherapy (IF: 2.534) 2019 Dec;105(4):434-441.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30871894

<目的>
肺がんの手術を行った患者は、理学療法がルーチンに処方される。ルーチンに使用されているにも関わらず、術後の身体的な回復の効果に関して示されていない。
目的は、術後の理学療法が、病院での身体活動レベルと運動耐容能を改善させるかを検討すること。

<方法>
単盲検無作為化比較試験
大学病院胸部外科にて、肺がん選択的胸部手術を行った患者94名において、在院日数を評価
介入は、日常的な理学療法の実施。モビライゼーション、歩行、肩の運動、呼吸練習。
対称グループは、理学療法を行わない。
アウトカムは、病院での身体活動を加速度計(Actigraph GT3X+)を用いて測定、6MWT、肺機能、息切れスコア

<結果>
介入群の方が、術後最初の3日間において、より活動的で、1時間あたりの歩数が多かった。
6MWTと肺機能(FEV1.0)は著明な違いは無かった。

<考察>
病院で理学療法を行った患者は、術後初日の身体活動レベルが高かった。しかし、6MWTや肺機能の値では違いが無かった。
術後早期の身体活動レベルの向上が臨床的に重要であり、さらなる検討が求められる。


2019/12/21

最重症COPDの運動療法の効果 -A Systematic Review and Meta-Analysis-

Aerobic Exercise Training in Very Severe Chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Systematic Review and Meta-Analysis.

Am J Phys Med Rehabil. 2017 Aug;96(8):541-548.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28099192

<目的>
最重症COPD患者に対する運動療法の効果を検証すること。

<方法>
データベース(MEDLINE, EMBASE, Cochrane Central Register of Controlled Trials, and Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature databases)で検索
検索ワードは、COPD, Chronic Obstructive Pulmonary Disease, Exercise, and Pulmonary Rehabilitation.
採用基準は、対象患者の%FEV1.0が35%未満。
入院、外来、自宅、地域でのトレーニングプログラムを最低4週間実施したRCT(通常ケアとの比較)。
アウトカムは6MWT、健康関連QOL(SGRQ)

<結果>
580件の論文のうち、10本が対象となった。
プログラム期間は4週から52週
週1-5回のセッション、1回15-40分。
介入グループは、6MWTで改善していた。標準化平均差(standardized mean difference)は、3.86(95% CI, 2.04-5.67)、SGRQは-1.23 (95% CI, -2.14 to -0.31)。

<考察>
運動療法は、最重症COPD患者の運動耐容能と健康関連QOLを向上させる。
しかし、いくつかの研究で、重症の影響があった患者が含まれており、トレーニングプログラムのばらつきが多くあった。より大きなRCTが必要である。

・運動内容
少なくとも1種類の上肢or下肢の持久力トレーニングを行っていること。
期間は最低4週間

通常ケアの内容は、運動療法や身体活動への追加介入(教育など)を行わず、通常の薬剤治療のみを行っていると定義。
一般的なの身体活動を行うことは通常ケアと考える。

・運動の種類を比較した研究や、陽圧療法との併用などを行っている論文は対象外

【結果】
・対象患者:外来や自宅での介入が4件ずつ、外来と自宅の両方で行ったのが2件

・頻度:週1-2回

・運動内容:サイクリング、トレッドミル、フリー歩行。1件だけ上肢持久力トレを実施
8件で、上肢もしくは下肢の筋トレを実施。7件で呼吸練習(口すぼめ呼吸etc)、1件でリラクセーション、ストレッチを実施。
7件で教育セッションがあり、1件で吸気筋トレも実施。

・運動強度:漸増負荷試験での最大負荷の70-90%の高負荷で行ったのが3件。2分ごとのインターバルトレーニング(最大負荷の42%と85%を交互に)が1件、低強度(サイクリングで最大30W)1件、中等度負荷(50W)から開始し症状に応じて上げていくものが1件、強度を設定しないのが2件、その他2件は強度に関して記載無し。


2019/12/19

術前ピークフローが肺葉切除術後の肺合併症(PPCs)を予測

Can Preoperative Peak Expiratory Flow Predict Postoperative Pulmonary Complications in Lung Cancer Patients Undergoing Lobectomy?

Zhongguo Fei Ai Za Zhi. 2017 Sep 20;20(9):603-609.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28935013

<背景>
術後肺合併症(PPCs)、特に術後肺炎(postoperative pneumonia (POP))は、肺がん術後患者の早期回復に直接影響する。最大呼気流速(Peak expiratory flow (PEF))は、気道開通性や効果的な咳嗽に影響する。さらに、咳嗽の機能障害は、気道分泌物の蓄積を導くかもしれず、PPCsのリスクを増大させる可能性がある。
この研究の目的は、術前PEFがPPCsに影響するかを検討した。

<方法>
後方視研究。2014年から2015年に西中国の四川省大学病院で肺葉切除術を行った433人の肺がん患者が対象。
術前PEFとPPCsの関係を患者背景と臨床データを基に分析。

<結果>
術前PEF値は、PPCsのあったグループで著明に低下していた280.93±88.99 L/min vs 358.38±93.69 L/min
ロジスティック回帰モデルにおいて、PEFと手術時間が、PPCsの独立した予測因子であった。
ROC曲線で、PPCsを予測するカットオフ値は320L/min (AUC=0.706, 95%CI: 0.661-0.749)であった。
PEF<320L/minのグループでは、PEF>320L/minよりもPPCSの発生割合が多かった(26.6%vs9.4%)。

<考察>
術前PEFとPPCsは相関しており、PEFはPPCsの予測として有用かもしれない。

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2019/12/17

術前の高強度インターバル運動はアウトカムに影響しない?

Short-term preoperative exercise therapy does not improve long-term outcome after lung cancer surgery: a randomized controlled study

Eur J Cardiothorac Surg. 2017 Jul 1;52(1):47-54.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28419206

<目的>
有酸素運動能力の低下は、肺がん患者における長期間生存率やQOLに影響するリスク因子である。
この無作為化試験は、肺がん手術前にリハビリを高強度インターバル(HIIT)で行い、心肺機能や長期間術後アウトカムへの影響を検討すること。

<方法>
周術期肺がん患者を無作為に通常ケア(n=77)とHITTを行う介入群(n=74)に分け術前のみ実施。
心肺運動負荷試験(CPET)と肺機能検査(FVC、FEV1、DLCO)を術前と1年後に実施。

<結果>
術前待期期間(中央値25日)中に、リハを行った患者は、中央値8回のHITTを実施。
1年後、通常ケアの91%、リハ群の93%が生存。
肺機能は、両グループで著明な違いなし。
術前CPETの結果と比較すると、両グループで似たような最大酸素摂取量の低下を示した。

<考察>
HITTを含めた術前短期間リハビリは、肺切除術後1年後の運動耐容能や肺機能を改善させなかった。

・介入内容
週3回エルゴメーターを用いたHITTを実施。
最大負荷の50%で5分ウォーミングアップした後、10分のセッションを2回。
最大運動負荷で15秒スプリントと15秒インターバルを実施。
2回のセッション間には4分間休憩。
終了後、クールダウンを最大負荷の30%で5分。
運動負荷は、それぞれのセッションにおいて最大心拍数に近づくように調整。
全患者に活動的な活動とリスク因子の管理についてアドバイス。

肺切除は、開胸もしくはVATSにて実施され、抗菌薬、排痰、硬膜外麻酔など標準的な周術期介入を実施。

ルーチン理学療法として、インセンティブスパイロを使用した深呼吸練習、咳嗽運動、活動介助を実施。

・術前のHITTを含む運動プログラムは、術前の運動パラメーターを改善させ、通常ケアと比べて術後肺合併症を45%減少させた。
・術後肺機能は、切除後最初の2週間はFVCとFEV1は直線的に減少し、その後3-6ヶ月かけて回復していくことは知られている。
術後酸素摂取量は肺機能の損失よりも大きい。
Preoperative and 1-year postoperative measurements of FVC (A), FEV1 (B) and KCO (C) in the UC () and the Rehab group (). No difference between the 2 groups, bars indicate standard deviation.
青:通常ケア
赤:介入群

Preoperative and 1-year postoperative measurements of VO2peak (A) and WRpeak (B) in the UC () and the Rehab group (). P-values for intra-group comparison, preoperative baseline versus 1-year post-resection are shown on top, bars indicate standard deviation.
青:通常ケア
赤:介入群

・術後の運動や毎日身体活動を行うようにといった患者教育を行っていなかったことが、通常ケアとリハ群で酸素摂取量が低下した要因かもしれない。

2019/12/13

肺がん患者への運動テストの実用性

The Utility of Exercise Testing in Patients with Lung Cancer

J Thorac Oncol (IF: 12.46) 2016 Sep;11(9):1397-410.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27156441


術前病態や死亡率と種々の臓器への治療侵襲は、肺がん治療と関連している。
治療選択肢として、ベネフィットと損害の重みを評価することが必要である。

運動テストは、患者の身体機能や運動耐容能を評価するために行われる。
肺がんにおいて、肺がん切除のリスク層別化評価するためによく用いられる。
近年、手術を行わない患者やがんサバイバーを含めて、運動評価方法について議論されている。

このレビューでは、肺がんと運動評価の生理学について述べる。


肺がん患者を対象にした運動評価を4つの場面(肺切除術術前、切除術後、予後、トレーニング効果の評価)に分けて調査した。

運動テストの種類は、心肺運動負荷試験、6分間歩行試験、シャトルウォーキングテスト、階段昇降試験。

最後に、治療を行ううえで、考慮すべきリスク評価の枠組みの概念について述べる。

【肺がんと運動テストの生理学】
肺がん患者において、運動制限は、がんや併存症、医療の影響をうける。がん関連の貧血や筋委縮、筋機能障害が酸素含量や使用を制限している可能性がある。
換気とガス交換の制限は、主に肺疾患に併存しており、変時不全(chronotropic incompetence;心拍予備能の低下)や循環障害は、心疾患合併による虚血やリモデリングによって拍出量が制限される。
肺がん治療は呼吸器や循環器の障害を引き起こす。
がんに付随する不活動は、併存症であり、筋力やコンディショニングの減少に影響し、さらなる運動耐容能低下を引き起こす。

【6MWT】
6MWDは呼吸不全と関連しており、6MWD>300mは術後90日の生存率を予測した。これらの報告から、ERS/ESTS(欧州呼吸器学会/欧州呼吸外科学会)では、術前評価に6MWTを推奨した。
6MWTが肺がん切除前において重要な役割をもつ。
6MWTが300-500m以上は、周術期合併症のリスクが低い。

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ppo:predicted postoperative

IPF患者の歩行速度と予後:0.8m/s未満は予後不良

Gait speed and prognosis in patients with  idiopathic pulmonary fibrosis: a prospective  cohort study

Eur Respir J (IF: 11.807) 2019 Feb 7;53(2).

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30487200

4m歩行速度は簡単に身体パフォーマンスを評価でき、フレイルの指標でもあり、高齢者における予後予測でもある。
4m歩行速度がIPF患者において全原因の死亡率や予定外入院を予測するのではないかと仮説した。

4m歩行速度と肺機能をベースラインに評価。
対象130人の新規にIPFと診断された外来患者。
生存率と予定外入院は、1年間調査。4m歩行速度の予測値を交絡因子となり得る項目を調整したCox回帰分析で危険率を計算した。
多変量回帰モデルと予測因子の間でROC曲線で評価した。

4m歩行速度とゆっくりとした4m歩行速度は、全死亡原因の死亡率と入院の独立した予測因子であった。
4m歩行速度もしくはゆっくりとした4m歩行速度を含めた多変量モデルは、GAP indexやComposite Physiologic Indexよりも死亡率を予測した。

IPF患者において、4m歩行速度は、全原因の死亡率や予定外入院の独立した予測因子である。

・4m歩行速度;直線4mを通常歩行速度(買い物に行く時の速さのように)で歩行
・時間は、かかとが動き出してから片足が完全に4m地点のテープを横切るまで
・2回測定値、速い方を採用
・歩行補助具や酸素ボンベは使用可能

・4m歩行速度が遅い患者(0.8m/s未満)は、亡くなるまでの時間や最初の入院までの時間が短かった。

a)全原因の生存率
b)1年以内の予定外入院(入院していない割合が縦軸)


2019/12/11

高齢者のサルコペニアと肺炎の関係 review

Association between sarcopenia and pneumonia in older people.

Geriatr Gerontol Int (IF: 2.118) 2019 Dec 6.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31808265


肺炎は高齢者の主な死亡原因であり、増加している。
肺炎管理の現在のガイドラインは、病理な抗菌薬の治療戦略が中心である。高齢者肺炎の入院患者は、誤嚥性肺炎の罹患率が高い。
誤嚥性肺炎の主な原因は、嚥下と咳反射の障害である。
これらの要因は、現在の管理戦略では限界があり、新たな戦略が必要である。
サルコペニアは、筋力と筋肉量の減少と加齢による身体機能の低下である。
最近、嚥下筋の力と量の減少が、嚥下機能低下と関連していることが示唆されている。
全身性サルコペニアによる嚥下障害と嚥下関連筋の低下は、嚥下性サルコペニアと呼ばれる。
現在、いくつかの研究で誤嚥性肺炎と嚥下性サルコペニアの関連が報告されている。
咳嗽反射として、咳の強さが誤嚥性肺炎を予防し、呼吸筋力によって規定される。
いくつかの研究で筋力と肺炎の関係について報告され、筋肉量が低いと死亡率が高かった。
呼吸筋力、嚥下筋、骨格筋低下による誤嚥性肺炎は動物モデルと人間にて引き起こされる。
呼吸筋力と肺炎の関係は、現在検討されている。
サルコペニアの管理と評価は、高齢者肺炎の予防と治療の新たな戦略となる可能性がある

【サルコペニアの診断】
2019年のEWGSOP2で診断ステップを示した。
1.質問表:SARC-Fでスクリーニング。筋力、歩行補助、椅子起立、階段、転倒の5項目の制限について質問
2.筋力測定:握力もしくは椅子起立(5回起立)。
3.筋量測定:BIA、DEXA、MRI、CT。このうち、BIAが簡便で機器の持ち運び可能であることから推奨される。これらの機器が使用できないときは、下腿周径が高齢者の筋肉量測定として許容できるかもしれない。
4.パフォーマンス評価:TUG、SPPB

【誤嚥性肺炎のリスクファクターと予防】
誤嚥性肺炎の最も重要なリスクファクターは、下気道への口咽頭バクテリアの誤嚥。
高齢者では、これら病原体の不顕性誤嚥がその他の病原体よりも多い。
口腔内環境の悪化によって、口咽頭の誤嚥が肺炎を発症させる。
誤嚥しても、咳で吐き出すことができれば、肺炎に発展することは稀である。
この咳嗽反射が誤嚥性肺炎患者では低下している。
サブスタンスPは、嚥下や咳嗽反射に影響する神経伝達物質である。
ACEは、サブスタンスPを減少させる。2001年にYamadaらは、抗菌薬は肺炎を予防できず、病原体の誤嚥量の減少が必要であると述べている。
高齢者の口腔環境の悪化が誤嚥性肺炎を引き起こすことが複数報告されている。

【サルコペニアと呼吸筋】
いくつかの報告で、サルコペニアでは呼吸筋力が低下すると報告されている。
呼吸筋力は、咳嗽に影響する。
加齢によって横隔膜筋力が低下することが示唆されている。
1つの研究で、呼気ピークフローが呼吸筋力を示唆すると報告されている。(r²=0.22、P<0.001)
他の研究で、呼吸筋力とピークフローを含めた呼吸機能と相関を示した(r=0.50、P<0.001)

【誤嚥性肺炎の悪循環】
誤嚥性肺炎発症→炎症→筋力弱化、低栄養→サルコペニアの進行→誤嚥性肺炎発症(再発)

高齢者の筋トレは低負荷で十分

Effects of resistance training with moderate vs heavy loads on muscle mass and strength in the elderly: A meta-analysis.

Scand J Med Sci Sports. 2016 Sep;26(9):995-1006.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26302881

目的は、高齢者の筋力トレーニングとして、高負荷(1RMの80%未満)と低負荷(1RMの45%未満)の効果を比較すること
トレーニング量の役割を評価するために、トレーニングプロトコルをマッチさせた。

15の研究、448人、67.8歳が対象。
より高い負荷でレジスタンストレーニングを行った方が、筋力の大きな効果を得られた。
効果量はかなり小さかった。
より高い負荷で行うと、筋肉のサイズは大きくなったが、トレーニングによる筋肥大は小さかった。

高齢者において、これまで行われていた負荷よりも低い負荷で、筋力の効果は十分かもしれない。

筋ジス患者の経口摂取率とMI-E(カフアシスト)の肺合併症への影響

Rate of oral intake and effects of mechanical insufflation-exsufflation on pulmonary complications in patients with duchenne muscular dystrophy.

J Phys Ther Sci. 2017 Mar;29(3):487-490.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28356637

<目的>
デュシェンヌ型筋ジストロフィーにおいて、咳嗽機能の低下によって、分泌物の喀出困難、窒息、
誤嚥性肺炎のリスクが高い。
この研究の目的は、徒手的な咳嗽介助と機械的咳介助(MIーE)のどちらが肺合併症を予防し、経口摂取を安全に継続でき経口摂取率が高いかを検討すること。

<方法>
人工呼吸使用の有無、徒手的咳介助もしくはMIーEの使用、経口摂取について調査。加えて、発熱頻度(37℃以上)、抗菌薬の使用についても調査。CPFにて呼吸機能を評価。

<結果>
58人の患者が対象。
45人は終日NPPVで呼吸。このうち43人は気管切開をせずに、経口摂取を継続できた。窒息や誤嚥性肺炎による気管挿管を行わずに経口摂取が継続できた。

<考察>
デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者は、徒手的咳介助やMIーEを使用することで、肺合併症を予防でき、安全に経口摂取を続けることができた。

2019/12/06

肺切除後の肺機能とシャトルウォーキングテストの回復

The Effect of Lung Resection on Pulmonary Function and Exercise Capacity in Lung Cancer Patients

Respir Care 2007;52(6):720 –726

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17521461

<目的>
肺がん患者で、肺機能と運動耐容能(シャトルウォーキングテスト)において肺切除の影響を調査すること。

<方法>
肺葉切除(73人)もしくは一側肺切除術(37人)の前、1カ月後、3か月後、6か月後に肺機能検査とシャトルウォーキングテストを実施。
全患者は標準的な後外側開胸術を実施。
88人の患者が全3回の術後評価を完了した。

<結果>
切除後6ヵ月で、葉切除術患者は術前FEV1.0の15%を喪失し、運動耐容能は16%減少。
一側肺切除患者では、FEV1.0の35%、運動耐容能の23%を喪失。

<考察>
葉切除患者において、機能回復が著明に減少しており、肺機能と運動耐容能の間に同様の低下を認めた。
一側肺切除術患者では、より大きな機能的回復の減少が見られており、肺機能と相対的な運動耐容能の減少は不均衡であった。
したがって、肺機能テストの値からは、一側肺切除患者では運動耐容能の減少を大げさに予測するかもしれない。
これは、肺切除を必要とする多くの肺がん患者で周術期合併症のリスクに対する備えに必要である。しかし、長期間の運動耐容能に関しては不明である。

・全患者は標準的な後外側開胸術を実施。術後理学療法は、呼吸練習と早期離床をそれぞれの患者に実施。

    

    



2019/12/03

COPD増悪入院後の4m歩行速度は再入院を予測する

Gait speed and readmission following hospitalisation for acute exacerbations of COPD:a prospective study

Thorax (IF: 9.64) 2015 Dec;70(12):1131-7.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26283709

<背景>
COPD急性増悪(AECOPD)による入院は、再入院の高いリスクと関連している。しかし、退院時に再入院リスクのある患者を選別するための妥当なツールは無い。

<目的>
4m歩行速度(4MGS)が、フレイルの指標の代用となるか、COPD増悪入院した患者の将来の再入院リスクの予測ができるかについて評価すること。

<方法>
213人のAECOPDで入院した患者が対象。
4MGSは退院日に評価。
ロジスティック回帰モデルで4MGSと退院後90日の再入院の関係について検討。

<結果>
ベースライン特性:男性52%、平均年齢72歳、%FEV1.0 35%、退院時4MGS 0.61m/s
90日時点での全原因再入院率は、4MGSの4分位が下がると著明に増加していた(Q4 fastest: 11.5%; Q3: 20.4%; Q2: 30.2%; Q1slowest: 48.2%)
Q4と比べて、最も遅い4MGS(Q1)の90日の再入院のオッズ比は7.12倍、65歳以上では11.56倍。
65歳以上の再入院を予測する多変量モデルは4MGS、Charlson index、前年の入院、%FEV1.0、前年の増悪回数が含まれ、C検定で0.86。

<考察>
4MGSは身体フレイルの指標の代用となり、COPD増悪で入院した高齢者の再入院リスクを独立して予測する。

・4MGSは退院前24時間以内に実施
・通常の歩行補助具(杖や歩行器)、酸素などを使用

Figure 2
 (Q1≤0.40 m/s; Q2=0.40–0.59 m/s; Q3=0.60–0.79 m/s; Q4≥0.80 m/s). 

Figure 3
model1:年齢
model2:前年1回以上の入院
model3:4MGS
model4:4MGS+前年1回以上の入院
model5:多変量モデル(歩行速度、併存症、前年1回以上の入院、前年増悪回数、入院日数、身体活動、QOL)

ILD患者の呼吸リハの長期効果、短期効果2018

Short and long-term effects of pulmonary rehabilitation in interstitial lung diseases: a randomised controlled trial

Respiratory Research (2018) 19:182

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30236104

<背景>
間質性肺疾患(ILD)患者に長期的に呼吸リハを行い、長期間の効果を報告したものはいくつかある。
目的は、6ヶ月の呼吸リハを行なった後と、1年後の運動耐容能(6MWD)、最大運動負荷、QOL、大腿四頭筋力、身体活動量を評価すること。

<方法>
60人の患者が対象。無作為に6ヶ月の呼吸リハを行う群とコントロール群に分けられた。

<結果>
運動耐容能、QOL、大腿四頭筋力はコントロール群と比較して著明に改善。
効果は1年後も維持されていた。身体活動量は変わらなかった。

<考察>
呼吸リハは運動耐容能、健康状態、筋力を向上させる。
その効果は、1年のフォローアップでも維持されていた。身体活動量は変わらなかった。

・介入群
6ヶ月の外来呼吸リハを実施。
最初の3ヶ月は週3回、以降は週2回。計60セッション実施。
プログラムはガイドラインに沿って実施。
・プログラムは、運動療法(サイクリング、歩行、上肢、階段、骨格筋トレーニング)90分と教育、作業療法、栄養カウンセリング、心理サポートを30分。
・運動内容
サイクリングは最大負荷の60%から開始。歩行は、6WWTの最大歩行速度の75%から開始。Borg scaleをもとに、エルゴは最大負荷の85%、歩行は最大歩行速度の110%を目標に負荷を漸増。
階段は、2分間昇降
骨格筋は1RMの70%から開始。8回を3セット
PTは運動の監視と励ましを実施。
全患者が酸素吸入をしながら運動した。

ベースライン平均%FVC 約77%、平均6MWD約450m以上


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肺線維症患者の在宅リハの長期効果

Long-term evaluation of home-based pulmonary rehabilitation in patients with fibrotic idiopathic interstitial pneumonias

ERJ Open Res. 2019 Apr 8;5(2). pii: 00045-2019.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30972352

<背景>
いくつかの研究で線維性特発性肺炎患者(fibrotic
idiopathic pulmonary pneumonia:f−IIP)へのリハビリの効果について検討されている。
本研究では、在宅での呼吸リハの効果について観察研究を行なった。

<方法>
112人の患者が参加(IPF61人、非特異的間質性肺炎51人)。65人は軽傷から中等症、(%FVC≧50%、%DLCO≧30%)47人は重症(%FVC<50%、%DLCO<30%)。
2ヶ月間、週1回の訪問で再トレーニング、教育、心理サポートを実施。
患者は個別のアクションプランを隔月で12ヶ月提供された。
評価は、運動耐容能(6分間ステップテスト6MST)、感情評価(HADS)、QOL
(Visual Simplified Respiratory Questionnaire (VSRQ))を開始時(T0)、直後(T2)、6ヶ月後(T8)、12ヶ月後(T14)に実施。

<結果>
6MST、HADSの不安スコア、VSRQスコアはT0と比較してT2、T8、T 14で著明に改善。アウトカムの改善は疾患の重症度やサブタイプに影響されなかった。
介入を全て行えた患者は、ベースラインのFVCとDLCOがドロップアウトした患者よりも良好であった。

<考察>
在宅での呼吸リハは、f−IIP患者の運動耐容能、不安、QOLを長期的に改善させた。
呼吸リハは、これらの患者の治療の一部として体系的に処方されるベきである。

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長期間ステロイド使用しているILD患者の骨格筋、QOL、運動耐容能

Effect of long-term treatment with corticosteroids on skeletal muscle strength, functional exercise capacity and health status in patients with interstitial lung disease

Respirology (IF: 4.756) 2016 Aug;21(6):1088-93.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27173103

<背景>
ステロイドは間質性肺疾患(ILD)患者において時々使用されている。
慢性的なステロイド投与は骨格筋の衰弱を引き起こす。しかしながら、慢性的なステロイド使用が健常者よりも筋力低下しているILD患者にさらなる骨格筋の低下をもたらすかは知られていない。
目的は、ILD患者において慢性的なステロイド使用が骨格筋力、運動耐容能、ADL、健康状態に影響するかを検討すること。

<方法>
47人のILD患者がステロイドを処方されており、51人のMRC息切れスケールがマッチしたステロイド治療を行なっていないILD患者をリクルート。
評価は等尺性大腿四頭筋力(QF)、握力(HF)、肺機能、6MWD、ADLスコア、健康状態(SFー36)

<結果>
QFとHFはステロイド使用患者で著明に低下。
6MWD、ADL、SFー36はグループ間に有意差なし。
骨格筋力と総ステロイド投与量は逆相関していた。
多変量回帰分析において、総ステロイド投与量は独立して握力の予測因子であった。

<考察>
ILD患者において慢性的なステロイド治療は筋力低下を助長し、筋力低下は総ステロイド投与量と逆相関していた。

・前向き横断研究
・2008年から2013年に長崎大学病院でリクルート
・ステロイド治療は少なくとも1ヶ月の治療を実施
・ステロイドはプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、コルチコステロイドをガイドラインや患者の状態に沿って使用
・平均1日投与量を計算(mg/day)し、投与期間で総投与量を計算(mg/day×期間,mg)
・筋力は、基準値と比較(%QF、%HF)

・多変量解析にて、%HFの予測因子は、ステロイド総投与量


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