2019/12/11

高齢者のサルコペニアと肺炎の関係 review

Association between sarcopenia and pneumonia in older people.

Geriatr Gerontol Int (IF: 2.118) 2019 Dec 6.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31808265


肺炎は高齢者の主な死亡原因であり、増加している。
肺炎管理の現在のガイドラインは、病理な抗菌薬の治療戦略が中心である。高齢者肺炎の入院患者は、誤嚥性肺炎の罹患率が高い。
誤嚥性肺炎の主な原因は、嚥下と咳反射の障害である。
これらの要因は、現在の管理戦略では限界があり、新たな戦略が必要である。
サルコペニアは、筋力と筋肉量の減少と加齢による身体機能の低下である。
最近、嚥下筋の力と量の減少が、嚥下機能低下と関連していることが示唆されている。
全身性サルコペニアによる嚥下障害と嚥下関連筋の低下は、嚥下性サルコペニアと呼ばれる。
現在、いくつかの研究で誤嚥性肺炎と嚥下性サルコペニアの関連が報告されている。
咳嗽反射として、咳の強さが誤嚥性肺炎を予防し、呼吸筋力によって規定される。
いくつかの研究で筋力と肺炎の関係について報告され、筋肉量が低いと死亡率が高かった。
呼吸筋力、嚥下筋、骨格筋低下による誤嚥性肺炎は動物モデルと人間にて引き起こされる。
呼吸筋力と肺炎の関係は、現在検討されている。
サルコペニアの管理と評価は、高齢者肺炎の予防と治療の新たな戦略となる可能性がある

【サルコペニアの診断】
2019年のEWGSOP2で診断ステップを示した。
1.質問表:SARC-Fでスクリーニング。筋力、歩行補助、椅子起立、階段、転倒の5項目の制限について質問
2.筋力測定:握力もしくは椅子起立(5回起立)。
3.筋量測定:BIA、DEXA、MRI、CT。このうち、BIAが簡便で機器の持ち運び可能であることから推奨される。これらの機器が使用できないときは、下腿周径が高齢者の筋肉量測定として許容できるかもしれない。
4.パフォーマンス評価:TUG、SPPB

【誤嚥性肺炎のリスクファクターと予防】
誤嚥性肺炎の最も重要なリスクファクターは、下気道への口咽頭バクテリアの誤嚥。
高齢者では、これら病原体の不顕性誤嚥がその他の病原体よりも多い。
口腔内環境の悪化によって、口咽頭の誤嚥が肺炎を発症させる。
誤嚥しても、咳で吐き出すことができれば、肺炎に発展することは稀である。
この咳嗽反射が誤嚥性肺炎患者では低下している。
サブスタンスPは、嚥下や咳嗽反射に影響する神経伝達物質である。
ACEは、サブスタンスPを減少させる。2001年にYamadaらは、抗菌薬は肺炎を予防できず、病原体の誤嚥量の減少が必要であると述べている。
高齢者の口腔環境の悪化が誤嚥性肺炎を引き起こすことが複数報告されている。

【サルコペニアと呼吸筋】
いくつかの報告で、サルコペニアでは呼吸筋力が低下すると報告されている。
呼吸筋力は、咳嗽に影響する。
加齢によって横隔膜筋力が低下することが示唆されている。
1つの研究で、呼気ピークフローが呼吸筋力を示唆すると報告されている。(r²=0.22、P<0.001)
他の研究で、呼吸筋力とピークフローを含めた呼吸機能と相関を示した(r=0.50、P<0.001)

【誤嚥性肺炎の悪循環】
誤嚥性肺炎発症→炎症→筋力弱化、低栄養→サルコペニアの進行→誤嚥性肺炎発症(再発)