2020/06/24

術後1年以内の死亡率に影響するのは

Association of Functional, Cognitive, and Psychological Measures With 1-Year Mortality in Patients Undergoing Major Surgery

JAMA Surg. 2020;155(5):412-418.


<背景>
多くの高齢者は術後死亡率のリスクが高いにも関わらず、大手術を行う。身体機能、認知機能、心理状態を評価し、高齢者の健康に関して重要な要素が知られているにも関わらず、術後アウトカムの悪化リスクの評価として使用されていない。

<目的>
身体機能、認知機能、心理機能を評価し、大手術を行った高齢者の1年間の死亡率との関係を調査すること。

<方法>
66歳以上の高齢者が対象。大手術は、腹部大動脈瘤、冠動脈バイパス術、大腸切除術を含む。

<主なアウトカム>
術後1年間の死亡率。
ADL、手段的ADL、歩行できないこと、認知機能、抑うつの既往をから関連する要素を評価。

<結果>
1341人の患者が対象
平均年齢76歳、55%は女性。
患者の内訳は、
腹部大動脈瘤 7%
冠動脈バイパス術 42%
大腸切除術 42%

17%の患者が1年以内に死亡。

年齢、併存症、術式、性別、人種、収入、教育を補正し、1年以内の死亡率と関連していたのは、
1つ以上のADL介助(adjusted hazard ratio [aHR], 2.76; P = .001)
1つ以上の手段的ADL介助(aHR, 1.32; P = .05)
歩行困難(aHR, 1.64; P = .01),
認知症(aHR, 1.91; P = .03)
抑うつ(aHR, 1.72; P = .01)

リスク因子が増えると、1年以内の死亡率が増加した。(0 factors: 10.0%; 1 factor: 16.2%; 2 factors: 27.8%)

<考察>
高齢者のコホートにおいて、223人(17%)が大手術後1年以内に死亡しており、身体機能、認知機能、心理機能が死亡率と関連していた。
身体機能、認知機能、心理機能を術前に評価することが手術の意思決定や患者への説明に組み込まれる必要がある。

2020/06/20

すい臓がん、非小細胞肺がん患者への早期介入

Feasibility of Early Multimodal Interventions for Elderly Patients With Advanced Pancreatic and Non-Small-Cell Lung Cancer

J Cachexia Sarcopenia Muscle . 2019 Feb;10(1):73-83.


<背景>
運動と栄養を組み合わせた介入は、カヘキシアのあるがん患者の機能的予後を改善させるかもしれない。しかし、高い消耗と介入に対するコンプライアンスの低さのためにこれらの効果は限定的である。
目的は、高齢がん患者に対する新たな多様な介入方法を早期に行うことの可能性を検討した。

<方法>
多施設前向き研究。70歳以上の新たに診断され、最初の化学療法を行う患者をリクルート。
身体活動量は加速度計を使用。
3つの運動と3つの栄養(計6セッション)に関する8週間の教育介入を実施。
運動介入は、在宅での低強度レジスタンストレーニングと身体活動を高めるためのカウンセリング。
栄養介入は、標準的な栄養カウンセリング、食欲と経口摂取に関する症状をどのように管理するかについて。
BCAAの豊富なサプリメント(Inner Power®)を提供。

プライマリーエンドポイントは、患者が6セッション中4つ以上に参加してる患者の割合
セカンダリーエンドポイントは、コンプライアンスと安全性

<結果>
年齢75歳(70-84歳)
12人の患者(40%)がベースラインでカヘキシアがあった。
29人が計画された6つのうち4つ以上のセッションに参加。
1人の患者は健康状態の悪化のためドロップアウト。
サプリメントと運動を実施できた割合は、それぞれ99%と91%
これらの介入プログラムに関連した新たなイベントは、5人の患者で報告された(筋肉痛、関節痛、労作時息切れ、足底腱膜炎)

<考察>
新たにすい臓がん、非小細胞肺がんと診断された高齢患者に対して、早期の多様な介入は、良好なコンプライアンスと安全性が示された。
これらの介入が機能的予後に影響するかについて現在検証中である。

2020/06/19

重症患者にベッドサイクリングをした効果

Effect of in-bed cycling on sarcopenia in critically ill adults: A randomised clinical trial


<目的>
重症患者にベッドサイドでのサイクリング運動が急性筋委縮の減少や機能改善、QOL向上に影響するかを検討すること。

<方法>
単施設でのRCT。
プライマリーアウトカムは三次ICUで評価。
重症患者は48時間人工呼吸管理になっている患者をランダムに、30分の日中サイクリング+通常理学療法(n=37)と通常理学療法(n=37)に分けた。
プライマリーアウトカムは大腿直筋の横断面積(RFCSA)。
研究開始から10日目に超音波で評価。
セカンダリーアウトカムは、入院後6ヵ月の徒手筋力、握力、ICU mobility score 、6MWD、健康関連QOL

<結果>
72人の患者が解析対象(平均年齢56歳、男性68%)
10日目の大腿直筋横断面積に有意差なし
セカンダリーアウトカムも有意差なし

<考察>
ベッド上サイクリングは重症患者の筋委縮を減少させなかった
しかし、大規模な研究で効果が提供されると思われる

2020/06/18

肺がん術前の短期間高強度運動療法の効果

Short-Term Preoperative High-Intensity Interval Training in Patients Awaiting Lung Cancer Surgery: A Randomized Controlled Trial

J Thorac Oncol . 2017 Feb;12(2):323-333.


<背景>
有酸素運動における制限は、術後合併症のリスク因子である可能性がある。
このRCTでは、高強度インターバルトレーニング(HIIT)プログラムが、肺がん術前の心肺機能を向上させるか、術後合併症を減少させるかについて検討した。

<方法>
周術期の肺がん患者を無作為に通常ケア(n=77)とHITTを術前に行った群(n=74)に分けた。
最大運動負荷試験と6MWTと術前に2回測定。
プライマリーアウトカムは、死亡と入院中の術後合併症

<結果>
術前待期期間:中央値25日
最大酸素摂取量と6MWTはリハ群で増加。
通常群では最大酸素摂取量が減少。
プライマリーアウトカムは、2群間で有意差なし:少なくとも1つの合併症のあったのはリハ群で74人中27人(35.5%)、通常ケア群で77人中39人(50.6%)(p=0.08)

特に、呼吸器合併症はリハ群で有意に低かった(23%vs44%、p=0.018))
無気肺が著明に減少していた(12.2% vs 36.4%, p < 0.001)
麻酔後ケアユニット(回復室?)の入室日数がより短かった(中央値7時間減)

<考察>
このRCTで、術前HIITは、有酸素機能を著明に高めたが、肺切除術後の早期合併症の予防は出来なかった。


・術前HIITの内容
週2-3回、PTの監視下(合計7-13セッション)
最大負荷の50%で5分のウォームアップ
最大負荷の80-100%で15秒のスプリントエルゴ+15秒のインターバルを合計10分2セット
セット間に4分の休憩
その後、クールダウンを最大負荷の30%で5分実施。

負荷は、PTが目標最大心拍数に近いところで調整。

さらに、レッグプレスや膝伸展などの筋力トレーニングも個別に実施。

・教育、指導
術前により活動的になるようアドバイスやリスク管理の情報(栄養、禁煙、禁酒)を提供


Large image of Figure 2.

2020/06/16

加齢による筋機能減少を予防する運動の効果

Role of Exercise Therapy in Prevention of Decline in Aging Muscle Function: Glucocorticoid Myopathy and Unloading

J Aging Res . 2012;2012:172492. 


骨格筋の量や質の変化は、加齢によって生じる。加齢による骨格筋の身体的な変化は、筋量、筋力の減少、不活動と関連しており、バランスを保てていない。

ステロイドは様々な臨床シーンにて広く用いられているが、筋原線維(ミオフィブリラ)の減少や細胞外基質の変化、筋力低下、モーター活動の低下などが生じる。

運動療法は、ステロイドミオパチーや高齢で筋負荷の無い患者など、様々な疾患の予防として有効なツールである。

目的は、ステロイドミオパチーや加齢により筋負荷の無い高齢者患者の筋力低下を予防する効果が運動療法にあるかを検討することと、高齢患者の様々な筋のタイプの筋の収縮機構と細胞外基質の関係について検討すること。


【筋力低下における運動療法の予防的役割】
ステロイドミオパチーの症例では、筋力と持久力トレーニングを組み合わせることで、より筋力低下を予防できる。特に、これらを異なる強度、頻度、期間をおこなうことでより大きな効果がある。

約40年以上前に、ステロイド投与中の筋力低下に対しての、運動療法の予防的役割について報告されている。
(A. L. Goldberg and H. M. Goodman, “Relationship between cortisone and muscle work in determining muscle size,”Journal of Physiology, vol. 200, no. 3, pp. 667–675, 1969.)

歴史的に、持久力運動が、ステロイド関連の骨格筋低下の抑制に効果的であると示している。
その後、集中的な短期間トレーニングが、骨格筋の抗加齢作用があることを示した。
(E.-M. Riso, A. M. Ahtikoski, M. Umnova et al., “Partial prevention of muscle atrophy in excessive level of glucocorticoids by exercise: effect on contractile proteins and extracellular matrix,” Baltic Journal of Laboratory Animal Science, vol. 13, no. 1, pp. 5–12, 2003.)

ステロイドは速筋線維の萎縮が増え、筋原線維とネットワーク形成コラーゲンの特異的なmRNAレベル(..??)が、速筋と遅筋で同様に低下する。

筋原線維装置とECMは、グルココルチコイド投与時と筋負荷後の筋力変化に重要な役割を果たしている。

172492.fig.002
筋トレと持久トレーニングによる筋線維への効果、影響

ステロイドミオパチーは必ず生じるわけではない?

Acute Steroid Myopathy: A Highly Overlooked Entity

QJM . 2018 May 1;111(5):307-311.


<背景>
慢性治療や重症患者、人工呼吸を行っている患者はステロイドを投与されており、ステロイド治療を行った患者がミオパチーになるのは知られている。

<目的>
早期ステロイド治療に関連したミオパチーの存在と特性を調査すること

<方法>
最初のステロイド治療を行ってから14日以内でミオパチーと報告された4例を対象。

<結果>
急性ステロイドミオパチー(ASM)の存在は、稀に生じていた。
単剤使用後1-3日以内に進行するなど、高容量でないかもしれず、様々なルートがあり、不均一かつ予測不能な特性があった。
近位筋の萎縮は共通していたが、遠位筋や延髄(bulbar)、呼吸筋も含まれるかもしれない。
ステロイドを止めることが改善に導くが、非可逆的かもしれない。

<考察>
急性ステロイドミオパチーの可能性を強く疑う指数は、薬の中止と回復が必要。
これは、全患者に推奨されるわけではなく、症状は、患者の基礎疾患によってしばしば誤って解釈されている。

2020/06/14

ステロイドミオパチーの運動強度

Strenuous Exercise-Induced Alterations of Muscle Fiber Cross-Sectional Area and Fiber-Type Distribution in Steroid Myopathy Rats

Am J Phys Med Rehabil. 2008 Feb;87(2):126-33.


<対象>
ステロイドミオパチーのラットで、筋肉の病理組織学的において、運動強度の影響を検証

<方法>
8週間のオスのラット40匹を4グループに分けた
コントロールグループn=4
ステロイドのみn=12
中等度運動+ステロイドn=12
高強度運動+ステロイドn=12

5週間トリアムシノロン注入後5週に、ヒラメ筋(SOL)と長趾伸筋(EDL)を採取し、アデノシントリホスファターゼ(ATPase)を染色。
筋線維組織と筋線維タイプを解析

<結果>
高強度運動グループにおいて、SOLのタイプⅠ線維とEDLのタイプⅡb線維が著明に委縮。
SOLの線維分布において、コントロールグループと比較して、ステロイドのみと高強度運動群でタイプⅠ線維が減少。一方、中等度運動vsステロイドのみグループで著明に増加。
EDL群において、タイプⅠ線維は中等度運動と高強度運動で著明に増加
一方、タイプⅡb線維はステロイドのみと比較して、中等度運動は著明に減少。

<考察>
ステロイドミオパチーのラットにおいて、高強度運動は筋委縮の様な変化の要因であった。
SOLの筋線維タイプの変化は、中等度運動において、タイプⅡ線維からタイプⅠ線維へ変化していた。
強度のある運動は、しかしながら、タイプⅠからタイプⅡ線維への変性をきたしていた。
EDLは、中等度運動と比較して、高強度運動を行っても筋線維の変性は無かった。

COPD増悪患者の非薬物治療の効果 systematic review

Nonpharmacologic Therapies in Patients With Exacerbation of Chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Systematic Review With Meta-Analysis

Mayo Clin Proc (IF: 7.091). 2020 Jun;95(6):1169-1183. 


<目的>
COPD増悪で入院した患者の非薬物治療の効果と有害事象について検討すること。

<方法>
Embase, MEDLINE, Cochrane databases, Scopus, and clinicaltrials.govのデータベースでCOPD増悪患者への非薬物治療の効果を検討したRCTを検索。

<結果>
30件のRCT、2643人の患者が対象
6MWTの改善は、
レジスタンストレーニング(WMD, 74.42; 95% CI, 46.85 to 101.99)
呼吸リハ (WMD, 20.02; 95% CI, 12.06 to 28.67)
全身振動運動(WMD, 89.42; 95% CI, 45.18 to 133.66)
経皮的神経刺激(WMD, 64.54; 95% CI, 53.76 to 75.32)
と関連していた。

QOLの改善は、
レジスタンストレーニング(WMD, 18.7; 95% CI, 5.06 to 32.34)
呼吸法とROM訓練の併用 (WMD, 14.89; 95% CI, 5.30 to 24.50)
全身振動運動 (WMD, -12.02; 95% CI, -21.41 to -2.63)
筋肉内ビタミンD(WMD, -4.67; 95% CI, -6.00 to -3.35)
と関連していた。

酸素量は、SpO2 88-92%を目標に調整することが、高流量酸素量と比較して死亡率が減少していた。
全てのエビデンスレベルは低かった。

※加重平均の差:weighted mean difference(WMD)


<考察>
COPD増悪で入院した患者において、運動介入と呼吸リハプログラムは機能低下を改善するかもしれない。
酸素量は、SpO2 88-92%を目標に調整すべき。

2020/06/12

ILD患者における4m歩行速度の妥当性、信頼性

The validity and reliability of four-meter gait speed test for stable interstitial lung disease patients: the prospective study

J Thorac Dis (IF: 2.027). 2020 Apr;12(4):1296-1304.


<背景>
4m歩行速度は、高齢COPD患者に行う簡単な機能評価である。
しかし、間質性肺疾患患者での評価に関してのデータは少ない。
間質性肺疾患患者での4m歩行速度と6MWTの関係を評価した。

<方法>
4m歩行速度と6MWTを51人の間質性肺疾患患者で評価。
その他の評価は、QOL、mMRC、動脈血ガス、肺機能、筋力(骨格筋量)、身体活動

<結果>
35人の患者が男性。34人は特発性肺線維症(66.7%)
4m歩行速度と6MWDは著明な相関あり(r=0.57; P<0.001)
4m歩行速度と6MWDの多変量解析で、mMRCスコアが相関していた
加えて、6MWDは、年齢、%DLCOと相関していた。

<考察>
4m歩行速度は間質性肺疾患患者の機能評価の評価として簡単で、妥当性のある評価である

・神戸市立医療センターの外来を利用している、慢性線維性ILD52人が対象

・4M歩行速度(4MGS)と6MWTは同じ日に測定
・4m歩行速度は2回測定し、速い方を採用。加速ゾーンと減速ゾーンをそれぞれ1m確保。

・6MWTは1回測定。円形のコースを6分歩行。
・QOL:SGRQ、CAT
・大腿四頭筋力:膝伸展筋力(ハンドヘルドダイナモメーター)、大腿四頭筋刺激力(TwQ)
・骨格筋量:体組成計(In Body)
・身体活動量:単軸加速度計を1週間測定。歩数の平均を算出





・4m歩行速度は、地域高齢者の有用な指標として推奨されており、運動耐容能との指標となるかもしれない。

・4MGSは疾患重症度と相関していたが、年齢、肺機能、筋力、SMI(骨格筋量)と相関しなかった。これまでの報告で、4MGSと最大運動耐容能との関係は評価されていない。
この研究が、4MGS遅いことは、骨格筋量や肺機能の低下を示していないことを示唆している。

2020/06/09

成人COVID-19患者のに対するリハの役割 -イタリア・ミランでの経験-

ROLE OF REHABILITATION DEPARTMENT FOR ADULT COVID-19 PATIENTS: THE EXPERIENCE OF THE SAN RAFFAELE HOSPITAL OF MILAN 

ARCHIVES OF PHYSICAL MEDICINE AND REHABILITATION,recived 22 April 2020


【自己流で理学療法士が翻訳しているので、正確な情報は原著や公的機関等の情報を参照してください】

ABSTRACT
SARS-Cov-2の拡大に伴い、急速に救急医療は改革が必要であり、COVID-19患者のリハビリテーション管理の記述も必要であった。

COVID-19患者の症状で2つのフェーズに分けられる:1.呼吸器症状の急性期、2.動かない時間が長いことに関連した亜急性期。呼吸器症状の予防と同様に認知機能、感情機能の予防。
これらの患者に対しては、特別なリハビリケアが必要であった。

このコミュニケーションレポートは、ミラン(イタリア)の San Raffaele 病院での経験を報告し、COVID-19患者のリハビリに対する特別な臨床経過に対する体制を推奨する。

この病院では、2020年2月1日から3月2日まで、約50人のCOVID-19の症状がある患者が毎日入院。このとき、約400床の急性期ベッドが作られた(集中治療/感染症)。3月2日から4月中旬までの約30日間で、ERに毎日60人が来院したにも関わらず、異なる区域やより急性期治療が必要な患者のために作られた病棟へ送った。

この体制によって、患者は、最初はCOVID-19病棟に、その後、COVID-19リハ病棟、COVID-19後病棟へ移った。

退院後、テレメディシンを使用し、自宅での患者をフォローした。
このような臨床経過のように、献身的な他職種チーム(呼吸器科医、神経科医、循環器科医、理学療法士、神経心理学者、作業療法士、言語聴覚士、栄養士)が関与すべきである。

【first phase】
・2020年2月でこの病院に100人の患者がICUへ、300人は感染病棟へ入院。
・ファーストフェーズに、10人の医師と40人のPTが配属
・このフェーズに入院するのは平均15日
・急性COVID-19患者の約20%はリハビリへ入院する基準を満たしていた

【second phase】
・COVID-19で入院して1カ月ERに毎日60人が来ていたにも関わらず、新たな病床を作る必要があった
・COVID-19急性期、COVID-19リハビリ病棟、COVID-19後病棟

・他職種チームで介入
・それぞれの患者に応じて、特に重症、高齢、肥満、複数の併存症、内科合併症のある患者は、特に個別にリハビリ介入を実施

・COVID-19で入院した患者のリハの目的は、呼吸運動の改善、骨格筋ディコンディショニングと不活動の是正、合併症予防、認知機能や感情機能障害の改善

・入院中は、電解質バランス(高Naが多い)、心臓の負荷(ProBNP、循環、呼吸動態の超音波)を観察すべき

・慢性疾患による急性呼吸不全で入院しているような患者は、COVID-19病棟で優先的に早期呼吸リハを行うべき

【リハフェーズで行うこと】
姿勢管理:ARDSでは、1日12時間以上の腹臥位が推奨される。徐々に離床していく。
NPPVの管理:看護師や医療スタッフと共同で
他動・自動運動
呼吸モニターの観察とCOVID-19病棟の退室基準の観察

【リハ病棟への入院基準】
ぬぐい試験で陽性、FIM<100、最低4日間発熱なし、O2 4L以上なくSpO2が安定している、リハビリの継続介入が必要

【リハ病棟での介入】
デコンディショニング:持久力運動
筋力:バンドを使用したレジスタンス運動
バランス機能:静的、動的バランス運動
基本的ADL
認知機能

2020/06/08

COPD患者にステロイド服用させると筋力は低下するか

Acute effect of oral steroids on muscle function in chronic obstructive pulmonary disease

Eur Respir J (IF: 11.807). 2004 Jul;24(1):137-42. 


<背景>
これまでのデータで、ステロイドがCOPD患者の筋力低下の重要な原因であるという仮説を支持する報告は少ない。

<方法>
呼吸筋力と大腿四頭筋機能について、随意収縮と磁気神経刺激(magnetic nerve stimulation)を使用して、漸増エルゴメーター中の代謝パラメーターとして測定。
25人の安定期COPD患者。%FEV1.0 37.6%。
プレドニゾロン30mg、開始前と2週間後に服用。
大腿四頭筋力は、15人の対照群患者でも測定。

<結果>
2人の患者が、BTSの定めるステロイド反応と判定された。
両群とも経鼻横隔膜圧や両側性前頭磁気中隔神経刺激によって測定された横隔膜痙攣圧に有意差はなかった。(呼吸筋力に変わりなし)
大腿四頭筋収縮?力(Quadriceps twitch force)も、ステロイド群と対照群で有意差なし。
運動中の代謝パラメーターや最大換気、アイソタイム(isotime)も違いが無かった。

<考察>
安定期COPD患者で、1日30mgのステロイドを2週間服用することは、骨格筋障害や運動中の代謝パラメーターを著しく変化させる原因ではなかった。


・25人のCOPD患者
・ステロイド反応性の定義:1秒量200ml増加かつ15%増加
・評価:非侵襲的呼吸筋力テストと等尺性大腿四頭筋力
・開始時と10-17日後に2回評価

大腿四頭筋(痙攣)力:TwQu
●:ステロイド服用18人
○:対照群15人

・考察より
健常者と比べると、ステロイド服用群は、徐脂肪体重やBMIが低かったが、有意差は無かった
 →将来、COPD患者は大腿四頭筋力が低下すると思われるが、短期間のステロイド治療が将来の筋力低下の原因となるわけではないと示唆。

・大腿四頭筋力の低下が無かったことは驚きであった。大腿四頭筋痙攣力の測定方法に問題があった可能性。

・ステロイド治療は、筋力よりも筋持久力が低下する可能性がある。しかし、ステロイドミオパチーはタイプⅡ線維が主に影響を受けることが知られている。
今回、筋持久力や血清乳酸値は測定していない。しかし、最大酸素摂取量や最大CO2排出量は有意差無かった。

・今回の結果が急性増悪時のステロイド使用で直接関与するかは不明である。高容量のステロイドを使用すると筋力低下が生じることは明らかになっている。

2020/06/05

SPPBスコアでCOPDを層別化できない。

Phenotypic Characteristics of Patients With Chronic Obstructive Pulmonary Disease After Stratification for the Short Physical Performance Battery Summary Score

Arch Phys Med Rehabil . 2020 Jun 1;S0003-9993(20)30311-7.


<目的>
SPPB合計スコアで層別化したCOPD患者の特性を評価すること。
呼吸リハ開始時のSPPBスコアの特性を評価すること。

<方法>
後方視横断研究。
呼吸リハの開始時評価を使用。
900人のCOPD患者が対象(65歳、%FEV1.0 43%)
SPPBスコアで、低パフォーマンス(LP)、中パフォーマンス(MP)、高パフォーマンス(HP)に分けた。
さらに、肺機能、動脈血ガス、体組成、運動耐容能、下肢筋力、持久力、不安、抑うつを評価。

<結果>
LP患者は、MPやHPと比べると、運動耐容能と筋機能は低く、不安と抑うつ症状は高い。
しかし、HPの25%のCOPD患者は、不安と抑うつ症状が高く、HP患者は、依然として運動耐容能の低下があった(6MWD予測距離の68%)。
さらに、多変量回帰モデルにおいて、年齢、6MWDは、SPPB合計スコアにおける分散の29%を説明する独立変数であった。


<考察>
COPDにおいて、LP患者は、身体機能、感情機能の障害があった。しかし、HP患者でも身体的、感情的な障害をもっている患者がいた。
因子としてのSPPBスコアの信頼性は低く、SPPBでCOPD患者の運動耐容能や感情の状態を測定すべきでないと思われる。

2020/06/04

高齢COVID-19患者の呼吸リハ RCT

Respiratory Rehabilitation in Elderly Patients With COVID-19: A Randomized Controlled Study

Complement Ther Clin Pract . 2020 May;39:101166.


<背景>
COVID-19患者の身体機能や呼吸機能などは、障害の程度に違いがあることが特に高齢者において、報告されている。
改善し、COVID-19患者で退院した患者は、呼吸リハ介入が予後を改善するかもしれず、最大身体機能やQOL改善などがあるかもしれないが、この介入のアウトカムを世界で研究していない。

<方法>
高齢COVID-19患者において、6週間の呼吸リハが呼吸機能、QOL、活動能力、心理機能へ影響するかを検討した
72人の患者が参加し、36人が呼吸リハを実施。残りはリハ介入はせず。
アウトカムは、肺機能、身体機能(6MWT)、QOL(SF-36)、ADL(FIM)、精神機能(SAS不安スコア、SDS抑うつスコア)

<結果>
介入群において、呼吸リハの6週後、肺機と6MWTで著明な違いを認めた。
SF-36スコアは、8つの項目で著明な違いを認めた。
SASとSDSスコアは、介入群において介入後に減少。しかし、不安のみ2群間で著明に違いがあった。

<考察>
COVID-19後の6週の呼吸リハは、肺機能、QOL、不安症状を改善させた。
しかし、抑うつ症状の改善はわずかであった。

・採用基準
        COVID-19と診断されている
        65歳以上
        その他急性疾患に罹患してから6ヶ月以上経過
        MMSE>21点
        COPDや他の呼吸器疾患が無い
        FEV>70%

・除外基準
        中等度から重度の心疾患
        重症の脳梗塞や脳出血、神経変性疾患

・リハ頻度は週2セッションを6週間
・1日1回、10分
・介入内容は、呼吸筋トレーニング(最大呼気圧の60%、10回1セットを3セット)、咳嗽練習、横隔膜トレーニング、ストレッチ、自宅での運動


介入した方が、身体機能は早く改善する

2020/06/02

COPD増悪入院中の有酸素運動後の炎症マーカー

Evaluation of Inflammatory Markers in Patients Undergoing a Short-Term Aerobic Exercise Program While Hospitalized Due to Acute Exacerbation of COPD

Int J Inflam . 2020 Apr 28;2020:6492720.


<背景>
急性増悪は、COPD患者の予後を悪化させる重要な要因である。これは、炎症過程の増悪とQOL悪化、肺機能低下、筋力低下を引き起こす。
増悪期間中に運動をすることは、炎症過程を増悪させず、全身の連鎖を是正することができると考える。

<方法>
入院中の短期間有酸素運動が炎症マーカーを改善させるか調査した。
26人の患者が対象。
入院から24時間以後に、喫煙歴、Carlson index、QOL、全身炎症マーカー、体組成を評価。
入院から48時間以後に、全患者に6MWT、肺機能検査、BODE indexを実施。
入院から72時間以後に、介入グループは、1日2回のトレッドミル運動を15分実施。運動前後に、炎症マーカー評価として採血を実施。
最後に、退院1カ月後に、全身炎症マーカー、QOL、体組成、肺機能、6MWT、BODE indexを評価。

<結果>
両グループ間に重症度や特性の差は無かった。
介入グループでは、有酸素運動後に炎症マーカーの増悪は無かった。

TNF-α:1.19→1.21(p=0.58)
IL-6:2.41→2.66(p=0.21)
CRP:3.88→4.07(p=0.56)

IL-6と6MWTに負の相関があった。これは、炎症レベルが低下すると、退院1カ月後の運動耐容能が改善していることを示した。

<考察>
COPD増悪で入院中に有酸素運動を行うことは、炎症を悪化させないことを示した。



・COPD増悪で入院した患者のうち26人を無作為に介入と対照群に分けた
・評価項目
入院24時間後
        患者背景(年齢、性別、職業、教育年数、月収)
        喫煙歴(pack-year)
        Charlson index、QOL、全身炎症マーカー、体組成
入院48時間後
        6MWT
        肺機能検査 
        BODE index
入院72時間後
        介入群は15分のトレッドミル運動を開始。
退院1カ月後
        全患者に再評価
        QOL、全身炎症マーカー、体組成、肺機能、6MWT、BODE index

・運動内容
トレッドミル歩行速度は、6MWTの結果から、秒速(m/s)の速度を算出し、時速(km/h)へ変換
運動中、5分ごとにBorg scaleを聴取し、3以下であれば、1ポイントずつ傾斜をつける。
運動中、SpO2<85%となった場合、酸素吸入を実施

N = 13Start of the testEnd of the testp value
TNF-α (mg/dl)1.19 (0.99–1.71)1.21 (0.77–1.53)0.58
IL-6 (mg/dl)2.41 (2.02–0.58)2.66 (1.69–0.48)0.21
CRP (mg/dl)3.88 (2.26–8.04)4.07 (2.65–13.3)0.56
↑運動前後の炎症マーカー

・介入群で退院1カ月後のBDI息切れスコアが有意に改善
・mMRCは両群とも改善
・入院期間は、5.0日vs7.0日(p=0.28)。有意差は無いが、介入群の方が平均2日短い。
・再入院率は、30.7%vs61.5%で対照群の方が多い(有意差なし)。

考察
・炎症マーカーの減少すると退院後の運動耐容能が改善していた。
・これまで、有酸素運動と炎症マーカーの比較をした研究はすくない
・先行研究にて、増悪時COPD患者において、高強度運動で炎症レベルを増加させなかったとしていた。Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2007; 2(4):575-83.

・いくつかの研究において、運動期間と強度が炎症の変化に重要な要因であると示唆している。
・レジスタンス運動を行った後に退院した患者で、炎症マーカーが著明に改善していた。

・有酸素運動は、患者同意も得やすく退院後も継続しやすいため、退院後のQOL改善や息切れ改善することで活動的になると考えられる。