Int J Inflam . 2020 Apr 28;2020:6492720.
<背景>
急性増悪は、COPD患者の予後を悪化させる重要な要因である。これは、炎症過程の増悪とQOL悪化、肺機能低下、筋力低下を引き起こす。
増悪期間中に運動をすることは、炎症過程を増悪させず、全身の連鎖を是正することができると考える。
<方法>
入院中の短期間有酸素運動が炎症マーカーを改善させるか調査した。
26人の患者が対象。
入院から24時間以後に、喫煙歴、Carlson index、QOL、全身炎症マーカー、体組成を評価。
入院から48時間以後に、全患者に6MWT、肺機能検査、BODE indexを実施。
入院から72時間以後に、介入グループは、1日2回のトレッドミル運動を15分実施。運動前後に、炎症マーカー評価として採血を実施。
最後に、退院1カ月後に、全身炎症マーカー、QOL、体組成、肺機能、6MWT、BODE indexを評価。
<結果>
両グループ間に重症度や特性の差は無かった。
介入グループでは、有酸素運動後に炎症マーカーの増悪は無かった。
TNF-α:1.19→1.21(p=0.58)
IL-6:2.41→2.66(p=0.21)
CRP:3.88→4.07(p=0.56)
IL-6と6MWTに負の相関があった。これは、炎症レベルが低下すると、退院1カ月後の運動耐容能が改善していることを示した。
<考察>
COPD増悪で入院中に有酸素運動を行うことは、炎症を悪化させないことを示した。
・COPD増悪で入院した患者のうち26人を無作為に介入と対照群に分けた
・評価項目
入院24時間後
患者背景(年齢、性別、職業、教育年数、月収)
喫煙歴(pack-year)
Charlson index、QOL、全身炎症マーカー、体組成
入院48時間後
6MWT
肺機能検査
BODE index
入院72時間後
介入群は15分のトレッドミル運動を開始。
退院1カ月後
全患者に再評価
QOL、全身炎症マーカー、体組成、肺機能、6MWT、BODE index
・運動内容
トレッドミル歩行速度は、6MWTの結果から、秒速(m/s)の速度を算出し、時速(km/h)へ変換
運動中、5分ごとにBorg scaleを聴取し、3以下であれば、1ポイントずつ傾斜をつける。
運動中、SpO2<85%となった場合、酸素吸入を実施
N = 13 | Start of the test | End of the test | p value |
---|---|---|---|
TNF-α (mg/dl) | 1.19 (0.99–1.71) | 1.21 (0.77–1.53) | 0.58 |
IL-6 (mg/dl) | 2.41 (2.02–0.58) | 2.66 (1.69–0.48) | 0.21 |
CRP (mg/dl) | 3.88 (2.26–8.04) | 4.07 (2.65–13.3) | 0.56 |
↑運動前後の炎症マーカー
・介入群で退院1カ月後のBDI息切れスコアが有意に改善
・mMRCは両群とも改善
・入院期間は、5.0日vs7.0日(p=0.28)。有意差は無いが、介入群の方が平均2日短い。
・再入院率は、30.7%vs61.5%で対照群の方が多い(有意差なし)。
考察
・炎症マーカーの減少すると退院後の運動耐容能が改善していた。
・これまで、有酸素運動と炎症マーカーの比較をした研究はすくない
・先行研究にて、増悪時COPD患者において、高強度運動で炎症レベルを増加させなかったとしていた。Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2007; 2(4):575-83.
・いくつかの研究において、運動期間と強度が炎症の変化に重要な要因であると示唆している。
・レジスタンス運動を行った後に退院した患者で、炎症マーカーが著明に改善していた。
・有酸素運動は、患者同意も得やすく退院後も継続しやすいため、退院後のQOL改善や息切れ改善することで活動的になると考えられる。