2020/06/08

COPD患者にステロイド服用させると筋力は低下するか

Acute effect of oral steroids on muscle function in chronic obstructive pulmonary disease

Eur Respir J (IF: 11.807). 2004 Jul;24(1):137-42. 


<背景>
これまでのデータで、ステロイドがCOPD患者の筋力低下の重要な原因であるという仮説を支持する報告は少ない。

<方法>
呼吸筋力と大腿四頭筋機能について、随意収縮と磁気神経刺激(magnetic nerve stimulation)を使用して、漸増エルゴメーター中の代謝パラメーターとして測定。
25人の安定期COPD患者。%FEV1.0 37.6%。
プレドニゾロン30mg、開始前と2週間後に服用。
大腿四頭筋力は、15人の対照群患者でも測定。

<結果>
2人の患者が、BTSの定めるステロイド反応と判定された。
両群とも経鼻横隔膜圧や両側性前頭磁気中隔神経刺激によって測定された横隔膜痙攣圧に有意差はなかった。(呼吸筋力に変わりなし)
大腿四頭筋収縮?力(Quadriceps twitch force)も、ステロイド群と対照群で有意差なし。
運動中の代謝パラメーターや最大換気、アイソタイム(isotime)も違いが無かった。

<考察>
安定期COPD患者で、1日30mgのステロイドを2週間服用することは、骨格筋障害や運動中の代謝パラメーターを著しく変化させる原因ではなかった。


・25人のCOPD患者
・ステロイド反応性の定義:1秒量200ml増加かつ15%増加
・評価:非侵襲的呼吸筋力テストと等尺性大腿四頭筋力
・開始時と10-17日後に2回評価

大腿四頭筋(痙攣)力:TwQu
●:ステロイド服用18人
○:対照群15人

・考察より
健常者と比べると、ステロイド服用群は、徐脂肪体重やBMIが低かったが、有意差は無かった
 →将来、COPD患者は大腿四頭筋力が低下すると思われるが、短期間のステロイド治療が将来の筋力低下の原因となるわけではないと示唆。

・大腿四頭筋力の低下が無かったことは驚きであった。大腿四頭筋痙攣力の測定方法に問題があった可能性。

・ステロイド治療は、筋力よりも筋持久力が低下する可能性がある。しかし、ステロイドミオパチーはタイプⅡ線維が主に影響を受けることが知られている。
今回、筋持久力や血清乳酸値は測定していない。しかし、最大酸素摂取量や最大CO2排出量は有意差無かった。

・今回の結果が急性増悪時のステロイド使用で直接関与するかは不明である。高容量のステロイドを使用すると筋力低下が生じることは明らかになっている。