2019/08/29

予後予測としてのSPPB

Prognostic Significance of the Short Physical Performance Battery in Older Patients Discharged from Acute Care Hospitals

Rejuvenation Res. 2012 Feb;15(1):41-8.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22004280

<背景>
急性期病院から退院した高齢患者のにおいて、SPPBの予後としての役割について調査した。
70歳以上の高齢者506人を多施設共同でリクルート。
フォロー期間中の、退院1年後の生存率、機能低下、入院を主なアウトカムとした。

アウトカムの独立した予測因子や相関について、Cox回帰もしくはロジスティック回帰分析を用いた。
SPPBの予測正確性として、ROC曲線を使用。

SPPBスコアは、死亡率の低下と関連していた。
機能的状態を補正し、SPPBスコア8点以上のみが、死亡率と相関していた。

SPPB5点未満は、フォロー期間中の死亡を推測した(感度66%、特異度62%、AUC0.66)

SPPBはまた、機能低下と独立して相関していたが、再入院や死亡は相関していなかった。

SPPB5点未満は、フォロー期間中の機能低下を予測するが、弱い感度(60%)、高い特異度(69%)とAUC(0.69)であった。

<考察>
SPPBは、退院した患者の機能低下と死亡のリスクと関連していた。
しかし、死亡リスクの予測よりも、機能低下のリスクをターゲットにしたほうが、より効果的である。

・患者は、入院中に専門家指導にてトレーニングを実施
・フォロー期間は退院後3か月毎に1年間、電話でコンタクトをとった
・SPPBの歩行速度は6m歩行速度を使用

退院時SPPBスコアと生存率
4点以下は、1年後に生存率約80%
・退院時SPPB4点以下は、1年後に機能低下のしている患者が多かった(55.3% vs. 31.6%, p<0.001)
・機能低下した患者は、退院時ADL動作のうち70.2%で介助が必要。

2019/08/28

COPD急性増悪の呼吸リハ

Pulmonary rehabilitation in patients with an acute exacerbation of chronic obstructive pulmonary disease.

J Thorac Dis 2018 May;10(Suppl 12)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29928521

COPD急性増悪は、緊急入院やヘルスケアシステム上の大きな負担である。さらに、急性増悪は、患者の重要なライフイベントであり、身体活動量、骨格筋機能、運動耐容能、健康関連QOLの低下と関連している。
監視下の運動や教育からなる呼吸リハビリテーションは、これらのネガティブな結果を緩和させ、再入院のリスクを軽減させることを目的とする。
最新のCochrane reviewによると、20のRCTで急性増悪後の呼吸リハと慣習的ケアの比較試験が行われていた。

結果は、健康関連QOLと運動耐容能の改善において中程度から大きなエビデンスを示した。
しかし、異なる状態のスタディであり、より最近の報告では、入院時にリハを開始しても、再入院も含め、より曖昧な結果であった。

今回のナラティブレビューでは、急性増悪で呼吸リハを行った患者の骨格筋機能、に焦点を置いて、現在の急性増悪時の呼吸リハのエビデンスについてレビューし、急性増悪患者のリハ戦略の理解とアドヒアランスが向上するだろう。


急性増悪による悪循環
”骨格筋機能”の影響がかなり大きい・・


2019/08/27

急性期の運動介入で改善しない患者は予後不良

Inter-individual variability in response to exercise intervention or usual care in hospitalized older adults

J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2019 Aug 13.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31407876

<背景>
入院中の運動プロトコルは高齢入院患者の身体機能や認知機能低下を予防するために実用的である。
本研究の目的は、急性入院患者に対する通常ケアと運動介入が運動耐容能、筋力、認知機能に個別にどのような反応を示すかを調査すること。

<方法>
単盲検無作為化試験。スペインの急性期ケアユニットに入院した75歳以上、370人の入院患者。
運動介入グループ(intervention group;IG)、コントロールグループ(control group;CG)に無作為化。
通常ケアグループは、慣習的なケアを行い、必要に応じてリハビリ介入を実施
院内にて複数の運動プログラムからなる介入を5−7日続けて実施(1日2回介入)。
運動耐容能はSPPBと歩行速度で評価。握力と認知機能は入院時と退院時に評価。
両グループの患者は入院中の治療効果によって好反応(Responder)、非反応(NonResponder)、悪影響(Adverse responder)に分けた。

<結果>
介入グループにおいて、SPPB、筋力、認知機能は、好反応グループの割合が多かった。
介入グループのうち、SPPBと歩行速度が悪影響であった患者は、1年後の死亡率が高かった。

<考察>
高齢入院患者において、運動介入によって、運動耐容能、筋力、認知機能、で良好な結果を示す割合が多かった。
入院中の運動介入、もしくは通常ケアを実施しても、運動耐容能が改善しないことは、退院1年後の死亡率と関係していた。

・介入内容
1日2回(午前、午後)、1回20分、週末を含む5-7日続けて実施。
運動内容は、Vivifrailの転倒予防の運動プログラムを使用
午前は、監視下での運動。レジスタンス(1RMの30-60%)、バランス(タンデム歩行やバランスマットなど)、歩行練習。

午後は、非監視下での運動。0.5-1.0kgの軽い錘で上下肢運動、病棟内歩行

・治療反応性の判定は、MCIDを超えたかどうかで判断
SPPB:1点
握力:1kg
歩行速度:0.1m/s
MMSE:3点

・平均年齢87歳、平均Bathel Index83-84点、SPPB4.7点
疾患割合は、心血管疾患が35%で最も多く、次いで感染、呼吸器、消化器、神経、その他


・1年後の死亡率
SPPBが低下した⇒62.5%(有意差あり)

2019/08/19

栄養障害のあるCOPD増悪患者に神経筋電気刺激を加えた。

Improvement in Quadriceps Strength and Dyspnea in Daily Tasks After 1 Month of Electrical Stimulation in Severely Deconditioned and Malnourished COPD

CHEST 2006; 129:1540 –1548

<背景>
COPD患者の体重減少は息切れの増強、下肢筋力の低下、病状の悪化と関係している。従来のリハビリ戦略は運動耐容能による制限に限定していた。
今回、急性増悪後のCOPD患者で重度のデコンディショニングをきたしている患者に通常のリハプログラムに加えて電気刺激が有効であるかどうかについて検討した。

<方法>
無作為化比較対象試験。対象は、17人の重症COPDで低BMI(平均18,0)の患者。(気切患者2名あり)
無作為に通常のリハビリか通常のリハビリに加えて電気刺激を行うかに分けられた。期間は4週間。
評価は、リハ前後に実施。項目は大腿四頭筋力、総筋肉量、運動耐容能、健康関連QOL。

<結果>
電気刺激を加えると、通常リハの約2倍、筋力がアップした。
日常生活での息切れも改善。
また、電気刺激を加えると歩行距離(有意差なし)、BMIも増加。
電気刺激を行なった群において、最大筋力の変化と筋肉量の変化に強い関係を認めた。(r  0.94; p  0.03)

<考察>
重度のデコンディショニングをきたしたCOPD患者において、通常リハに電気刺激を加えると、大腿四頭筋力の改善、ADL動作での息切れが大きく改善した。
これらの患者に対して、電気刺激は通常の呼吸リハに補完される有効な手段であることが示された。

・対象
軽負荷の運動ができない、BMI<22、筋力低下(予測最大筋力の50%未満)、急性増悪にてICU滞在もしくは入院している、急性呼吸不全がない、呼吸リハセンターに1ヶ月入院


・通常リハの内容
臥位での四肢自動運動を週4日
可能であれば、ゆっくりとしたトレッドミル歩行5ー10分、2.5キロの重りで上肢挙上運動。
週1回の教育セッションにも参加

・電気刺激
週4回、30分以上大腿四頭筋を刺激
ウォームアップ5Hz5分、25分間35Hzと5hzを交互に実施。
患者が耐えられる範囲で強度をセットし、1日5mAずつ増加した。

・電気刺激を行なったグループで、筋肉量の増加はBMI3%増加と関連していた。
→筋肉量が増えれば体重も増える?

2019/08/18

COPD増悪入院中のリハ介入

Efficiency and Safety of Pulmonary Rehabilitation in Acute Exacerbation of Chronic Obstructive Pulmonary Disease

 2015 Mar 18;21:806-12.

<背景>
呼吸リハは、COPD患者の息切れ、運動耐容能、健康関連QOLを改善させるが、中国で用いられるのは稀である。
COPD増悪後の呼吸リハの効果や安全性について検討した。


<方法>
COPD増悪で入院した患者を無作為に呼吸リハ群と通常ケア群に分けた。
呼吸リハは入院2日目から退院まで実施。
評価項目は、6MWT、CAT、CRQ−SAS、ADL-Dスコア。開始時と退院時に評価。
息切れのBorgScaleは全体を通して聴取。

<結果>
101人の患者が対象となり、94人が全てを実施した。(呼吸リハ66人、通常ケア28人)
呼吸リハ群で、6MWD、安静時SpO2、運動時Borgは著明に改善。
加えて、呼吸リハグループは、CRQスコア、CATスコアが著明に改善。
ADLーD、BODE indexも改善を認めた。
運動中の有害イベントは報告されなかった。

<考察>
COPD急性増悪での早期からの呼吸リハは、安全で実現可能であることが示された。


・呼吸リハは運動、リラクセーション、呼吸練習、教育を実施。
・運動内容
息切れBorg3−5を目標に行う。
1日2回、1回30分
ストレッチ、持久力、筋トレ
持久力は、6MWTの60%負荷のトレッドミルを実施。5ー10分で徐々に最大負荷まで上昇し、20分連続で実施。
上肢持久力トレーニングは軽い重りを使って肩の屈曲、外転を2分間実施。
筋トレは自重トレーニングで、10回1セットを3セット実施。
・SpO2>85%を維持できるように、適宜酸素吸入を実施
・呼吸練習は、呼吸コントロール、口すぼめ呼吸、ADL動作でのペーシングを実施
・教育セッションは、理学療法士が、運動の重要性、エネルギー効率の良い生活動作、自己管理について情報提供。

2019/08/15

補助化学療法中の運動介入の効果

Effect of Low-Intensity Physical Activity and Moderate- to High-Intensity Physical Exercise During Adjuvant Chemotherapy on Physical Fitness, Fatigue, and Chemotherapy Completion Rates: Results of the PACES;Randomized Clinical Trial

<目的>
乳がんで補助化学療法を行なっている患者に対して、低強度の自宅での身体活動プログラムと監視下での中等度から強度のレジスタンスと有酸素運動の組み合わせが、通常ケアと比較して、身体機能、疲労の軽減、QOLの向上、化学療法完遂率に有効であるかを検討した

<方法>
補助化学療法を行なう予定の患者を無作為に、低強度(Onco-move)、中等度から高強度(on track)、通常ケア(UC)に分けた。
評価は開始時と化学療法終了時、6ヶ月後に実施。

<結果>
Onco-moveとon trackは通常ケアと比較して、心肺機能の低下が少なく、より良い身体機能であり、吐き気や嘔吐、疼痛が少なかった。
on trackは、筋力と身体的疲労感で良い結果であった。
6ヶ月後、3グループともベースラインの状態にほぼ戻っていた。
on trackの何人かは、化学療法の調整が必要であった。
介入した両グループはコントロール群よりもより早く元の状態に戻っていた

<結論>
中等度から高強度のレジスタンスと有酸素運動の組み合わせは、補助化学療法を行なっている乳がん患者に有効である。
高強度の運動ができない、または行いたくない患者には、低強度の運動でも同等の効果が得られる。

COPDにおいける運動療法で動脈硬化が改善

Pulmonary rehabilitation, physical activity and aortic stiffness in COPD

Respir Res. 2019 Jul 24;20(1):166.

https://respiratory-research.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12931-019-1135-6

<背景>
COPD患者は、心血管リスクが高く、心血管疾患はCOPD患者の主な死因である。今回の研究では、呼吸リハ中に心血管リスク(動脈硬化で評価)が変化するかを示し、効果があった患者となかった患者をサブグループにて評価した。

<対象>
6週間のリハビリ期間で、身体活動や運動耐容能によって動脈硬化の程度が変化したかどうかを評価した。
リハビリ中に動脈硬化が減少したか否かのCOPD患者の特性を検討した。

<方法>
92人のCOPD患者がリハ開始。54人はリハビリを完遂し、そのうち29人は6週間後に再評価を行った。
動脈硬化=動脈パルスウェーブ
運動耐容能=ISWT
身体活動量=1日の歩数
でそれぞれ評価。

<結果>
平均すると、呼吸リハによって動脈硬化は改善しなかった。
56%の患者は動脈硬化が減少していた。
リハ中の動脈硬化の変化は、身体活動量、運動耐容能の改善と関連していたが、多変量解析にて身体活動が最も影響していた。
改善した患者の92%は、主に6週間後のメンテナンスに参加していた。

<考察>
COPD患者で動脈硬化を評価することは、呼吸リハを行う患者のサブグループとしての可能性があり、身体活動量の向上と関連していた。

・リハ内容は、1セッション2時間以上、週2回を6週間実施
・内容は英国胸部学会(BTS)のガイドラインに基づく
・PTによって上下肢のレジスタンストレーニング(フリーウェイト、セラバンド)、有酸素運動(トレッドミル、エルゴ、歩行)を1時間
・運動強度:患者個々の能力に応じて調整
・PTは最低10分はmBorg3-4程度の運動を行うように促した
・後の1時間は他職種による教育セッション

・評価項目は、増悪頻度、前年の抗菌薬やステロイドの使用、CAT、MRC、HADS、動脈波加速度(aPWV)

Fig. 3
ISWTや活動量が向上すると、動脈壁の加速度は減少する(柔らかくなる)


・歩数が1000歩増えるごとにaPWVは0.2m/s減少する
運動耐容能は脈波速度の独立した変化の因子ではなかった。


2019/08/14

ハイフローを使いながらの運動では運動持続時間の向上効果なし

Nasal high flow does not improve exercise tolerance in COPD patients recovering from acute exacerbation: A randomized crossover study.

Respirology. 2019 Aug 6

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31387158

<背景>
COPD増悪でフォローされている患者において、ネーザルハイフロー(NHF)は、呼吸仕事量の軽減とガス交換を改善させるため、運動耐用能も改善するのではないかと
仮定した。

<方法>
単施設での無作為化試験。重症から最重症のCOPD患者にNHFの有無で2回の高強度最大持続運動負荷試験(constant work-rate exercise tests (CWRET))を実施。
プライマリーアウトカムは持続運動時間。
セカンダリーアウトカムは組織血液酸素飽和度(StO2)、息切れ、下肢疲労感、最大吸気圧(MIP)、経皮的二酸化炭素分圧(PtCO2)、呼吸数、心拍数、経皮的酸素飽和度(SpO2)

<結果>
19人の患者が対象。(平均FEV1.0%=28.7%)
NHFの有無で持続運動時間は変わらなかった。
StO2、PtCO2、心拍数はNHFを使った方が減少していた。
その他のアウトカムは違いはなかった。
患者の半分はデバイスが不快であると評価した。

<考察>
運動中のNHFはCOPD増悪でフォロー中の患者の持続運動時間を向上させなかった。

2019/08/06

肺高血圧患者への運動介入は安全

Exercise rehabilitation programmes for pulmonary hypertension: a systematic review of intervention components and reporting quality

BMJ Open Sport Exerc Med. 2018; 4(1): e000400.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30364456

<目的>
肺高血圧患者への運動介入の効果、内容を検討すること。

<デザイン>
Consensus on Exercise Reporting Template (CERT)の介入データを用いたシステマティックレビュー
2016年から2018年の報告をリサーチ

<結果>
運動方法はエルゴとウォーキング。3週間の入院もしくは外来、在宅で介入。頻度は少なくとも4-15回/週。
典型的な運動処方は行動変容戦略よりも満足度が高かったと述べられている。
平均CERTスコアは13.1点(最高19点)。
CERTによる標準的に推奨される運動介入の報告は十分なものはなかった。

<考察>
肺高血圧患者への運動介入は、行動変容介入やアドヒアランス介入よりも十分に注意を払うべきである。
これらのパラメーターの詳述が、肺高血圧患者の運動介入が安全で有効であるという要素である。

・CERT:運動介入の効果を評価する標準化された評価。(介入内容の妥当性などをチェックするもの?)

・心理的な介入よりも運動介入を行った方が、満足度が高かったという感じか。


リスクのところが知りたい。。

2019/08/03

COPD増悪はその後の活動量に影響しない。

No impact of exacerbation frequency and severity on the physical activity decline in COPD: a long-term observation

International Journal of COPD 2019:14 431–437

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6388775/

<背景>
COPD増悪は、身体活動性(PA)の低下と深く関係している。それによって、増悪頻度と重症度へ広く影響するかもしれない。
PAレベルの減少が、増悪前と同レベルのPAまで回復するか、もしくは活動へ負の影響を及ぼすかについて明らかになっていない。

<方法>
COPD患者コホートにおいて、日中身体活動量として、1日の歩数を1週間以上計測し評価した。
増悪頻度と重症度を記録。
単変量・多変量混合効果モデルをもしいて、1日の歩数の変化(独立変数)と増悪の関係について検討した。なお、交絡因子となりえるものを層別化して行った。

<結果>
181人のCOPD患者対象(平均年齢64歳、%FEV1.0 46%)
観察期間中(中央値2.1年)に273件の増悪があった。
増悪の頻度と重症度の両方ともが、PA低下と関連していた。
年齢、性別、疾患重症度、を調整すると、増悪がPA低下を促進するということは無かった。

<考察>
急性増悪中のPA低下は、活動行動の基本的な変化や減少を引き起こすことはなかった。