2017/09/29

運動後の脈拍の回復時間が運動療法で短縮した

Cardiopulmonary Rehabilitation Enhances Heart Rate Recovery in Patients With COPD

2012 Dec;57(12):2095-103

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22710548

<背景>
自律神経の機能障害は、COPDの進行を早め、アウトカムの悪化と関連している。心拍数の回復は、簡単で妥当な自律神経の指標である。COPD患者の自律神経の機能障害の回復に運動療法は効果的であるかを検討した。

<方法>
45人の安定期COPD患者を対象に、36回の運動療法を中心としたリハビリテーションを実施。最大運動負荷試験をベースラインとリハプログラム終了後に実施。安静時、運動中、運動後の心拍数を記録。心拍数の回復は、最大運動時の心拍数と終了後1分の心拍数で計算。

<結果>
39人がプログラムを完了。心拍数の回復は16.2 ±8.0beats/minから18.4 ±8.4 beats/minへ改善(p=.01)。
安静時心拍数は、88.0 ±10.7 beats/minから83.3± 10.5 beats/minへ減少(p=.04)。
有酸素運動時の最大心拍数は109.0 ±12.5 beats/minから105.5 ±11.7 beats/minへ減少(p=.04)。
酸素摂取量は、9.7±2.4 mL/kg/minから10.4 2.6 mL/kg/minへ改善。VO2/tスロープは、–0.32 ±0.16 mL/kg/min2 から –0.38± 0.19 mL/kg/min2へ上昇。
換気の指標も同様に改善していた。

<結論>
運動療法は、心拍数の回復を改善し、控えめながら、自律神経系の機能障害は改善した。運動耐容能とVO2/tスロープで示した筋肉の酸化能も改善した。

・ジゴキシン、βブロッカー、カルシウム拮抗薬などを投薬されている患者は除外
・運動能力は、自転車エルゴで症候限界運動負荷試験を実施
・50回転を30秒維持できた負荷を最大負荷として採用

・筋の酸素化能は、回復時間の最初の1分で酸素摂取量(VO2)が減少したところを指標とした(VO2/t-slope)
・脈拍数は、最後の10秒間の平均を最大心拍数として採用。
・心拍数の回復は、最大脈拍と運動終了後1分の脈拍の差を用いた。安静時からATまでの心拍の変化は、AT時の心拍数-安静時心拍数で算出。

・運動の内容は、週3回を12週間(36セッション)実施。負荷は、最大負荷の60%で時間は30分。負荷量は徐々に増大。最後の4週は最大負荷の80%。

・平均年齢66.3歳、BMI27.1、%FEV1.0 45.7%、%FVC 78.3%
リハ前後での心拍数の回復
リハ後の方が、回復幅が大きい

運動介入をすると、安静時の脈拍や無酸素性閾値の脈拍が有意に減少。
VO2/t スロープは、リハ後の方が大きい。
つまり、運動後1分間の、最大酸素摂取量は増大している。
・VO2/tスロープは、酸素負債を意味しており、筋機能が改善したことによって改善した。筋機能の改善は、自律神経にも影響している。
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運動によって、自律神経系の調整がとれることで心拍数も低くなった。
ということは、1回拍出量が増えたのかな?

運動療法により、酸素摂取量が増大しており、筋の酸素消費量が抑えられていたとすれば、酸素負債は、筋の酸素消費量が影響しているということ?

2017/09/25

IPF急性増悪の予測因子:冠動脈疾患、GAP stage、好酸球

Risk factors for an acute exacerbation of idiopathic pulmonary fibrosis

Respiratory Research (2016) 17:79

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4940941/

<背景>
特発性肺線維症(IPF)の急性増悪は、罹患率や死亡率に最も影響する原因である。しかし、急性増悪は、いまだに予測できない。この研究の目的は、IPFの急性増悪のリスクファクターを検討すること。

<方法>
後方視的にIPF患者を収集。急性増悪の診断は、ATS/ERS/JRS/ALATによるの2011年のステートメントを基に行った。

<結果>
65人が対象。フォロー期間は中央値2-6年。フォロー中、24人(36.9%)が急性増悪を経験。カプラン-マイヤー曲線で、急性増悪の罹患率を調べると、1年後9.6%、2年後19.2%、3年後31.0%であった。急性増悪は、生存率にも影響していた。log-rankテスト
では、ベースラインで冠動脈疾患、GAP index≧3、血清乳酸脱水素酵素≧180U/ml、血清サーファクタントプロテインD≧194.7ng/ml、気管支肺胞洗浄のサンプルで好中球≧1.77%、好酸球≧3.21%、免疫抑制剤の使用は、増悪と関連していた。Cox解析で、免疫抑制剤の治療の有無で補正すると、ベースラインの冠動脈疾患、GAP stage≧2、好酸球≧3.21%、が、IPFの急性増悪を予測した。

<結論>
ベースラインの冠動脈疾患、高いGATstage、高い好酸球の割合は、IPFの急性増悪の発生と関連していた。


・長崎大学と産業医科大学で行われたスタディ
・急性増悪の定義は、1)IPFと診断されている、2)30日以内で呼吸困難の悪化、3)HRCTで新たなすりガラス影の出現、4)感染、肺塞栓、気胸、心不全が否定される。

・年齢は、中央値69歳。13人は非喫煙者、42人は元喫煙者、10人は現喫煙者。生存年数は、最初に診察してから中央値で4.5年。
・ベースラインの%VCは増悪群で69.2%、非増悪群で81.0%(有意差なし)。%TLCは増悪群66.1%、非増悪群75.9%(有意差あり)

増悪を起こすまでの年数。5年以内に約半数が増悪している。


急性増悪をおこせば、生存率は極端に下がる。



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感染予防策を徹底することくらいしか対策は無いかも。
これだけだと、リハでできることが全然ないことになる。
これに身体機能を加えるとどんな結果になるだろうか。

2017/09/22

フレイルは90日以内の再入院を予測する

Frailty is a predictive factor of readmission within 90 days of hospitalization for acute exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease: a longitudinal study

2017 Oct;11(10):383-392.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28849736


<背景>
再入院は、COPD急性増悪後の患者に多く見られる。フレイルはCOPD患者の再入院の予測因子であるが、多面的にフレイルを評価してCOPD患者のリスクを階層的に検証したものはない。

<目的>
入院後90日以内の新たな増悪による入院患者のリスクファクターとして多面的にフレイルを検証することと、フレイルが再入院リスクの高い患者を同定できるかを検証すること。
中等症から重症のフレイル患者は、再入院リスクが高いと予想。
第二の目的は、フレイルが、再入院リスクが高い患者を正確に見つけるかを検討すること。

<方法>
フレイル、患者背景、疾患関連因子は、急性増悪で入院中のCOPD患者102人が対象。ベースラインのデータは、これまでの研究と同様の結果であった。再入院データは、電カルから収集。フレイルと再入院の関係は、二変量解析と多重ロジスティック回帰モデルで検討。再入院リスクが高い患者でフレイルかどうかは、ROC曲線のAUCで評価。


<結果>
重症のフレイル患者は、フレイルの無い患者よりも再入院が多かった(45% vs 18%。年齢、疾患関連因子を補正した多変量モデルの最終レベルでは、重症フレイルは独立した90日以内の再入院リスクであった。年齢と過去1年間の増悪入院の回数、入院日数はも同様に関連していた。加えて、フレイルはAUCが増大し再入院の予測がされた。

<結論>
多面的なフレイルは、急性増悪で入院しているCOPD患者の早期再入院を予測した。フレイルは、再入院リスクが高い患者を正確に予測する。フレイルの患者に対して集中的に介入することが、再入院率を減少させるかもしれない。

・スペインの病院で1年間調査。
・認知機能低下(MMSE<20)、ターミナル期。
・すべての患者は、傾向ステロイドを最低7日間投与され、ネブライザーで気管支拡張薬を吸入している。抗生剤は、増悪と判断されたときに投与。

・フレイルの測定は、入院後48-96時間以内にthe Reported Edmonton Frail Scale(REFS)で測定。http://www.albertahealthservices.ca/assets/about/scn/ahs-scn-bjh-hf-frail-scale.pdf
・REFSは0-18点で点数をつけ、高得点ほど重症のフレイルと判断。
0-7点:フレイル無し、8-9点:軽症、10-11点:中等症、12-18点重症

・新たな増悪での30-90日以内の再入院した患者を選択(0-29日までは増悪から完全に回復していないとして除外)。
ベースライン特性。
中等度から重度のフレイル患者は、過去1年の入院回数が多く、併存症が多く、mMRCが高い。

再入院の有無で比較。
・102人中32人が90日以内に再入院した。再入院した患者は、高齢、非喫煙者、昨年の入院回数が多い、NPPVが必要、併存症が多い、mMRCが高い、ADL介助。


再入院したグループのフレイル重症度。重症が圧倒的に多い。


多重ロジスティック分析。再入院を予測する因子。
・重症のフレイルがあると再入院が7.2倍(フレイルのみで解析)
・その他の要因を含めて解析すると(Final model)、重症のフレイルは5.19倍、昨年の入院回数は4.44倍。
⇒フレイルは再入院を予測する独立した要因である。


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フレイル状態だと身体活動量も低そう。身体活動量も含めると、フレイルとどちらの方が関連が強いのか気になる。
喫煙者の方が再入院が少なかったという結果は意外。

2017/09/18

誤嚥性肺炎患者と市中肺炎患者の特性の違い

Comparison of clinical characteristics and outcomes between aspiration pneumonia and community-acquired pneumonia in patients with chronic obstructive pulmonary disease

BMC Pulmonary Medicine (2015) 15:69

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26152178

<背景>
COPD患者は、年齢や多数の併存症などによって、嚥下障害がよくあり、誤嚥性肺炎につながる。COPD患者は、市中肺炎のリスクも高い。目的は、日本の入院患者データベースを用いて、COPD患者において誤嚥性肺炎と市中肺炎の臨床的特性の違いを比較することと、入院中の死亡に影響する要因を見つけること。

<方法>
2010年から2013年の間に日本の1165の病院に誤嚥性肺炎もしくは市中肺炎で入院した40歳以上のCOPD患者を後方視的に収集した。多重ロジスティック回帰分析で全ての原因の死亡に影響する因子を検討した。

<結果>
87330人が対象。誤嚥性肺炎患者は、市中肺炎患者よりも高齢、男性、全身状態不良、重症の肺炎であった。誤嚥性肺炎で病院で死亡した患者は22.7%、市中肺炎は12.2%
患者背景を補正して、誤嚥性肺炎患者は、市中肺炎患者よりも死亡率が高かった(補正オッズ比1.19)。
サブグループ解析にて、死亡リスクの高さと関連していたのは、男性、低体重、呼吸困難感、身体不活動、肺炎の重症度、いくつかの併存症。
更に、市中肺炎患者では、高齢、意識レベルの低下が高い死亡率と関連。一方の誤嚥性肺炎では関係していなかった。

<結論>
誤嚥性肺炎と市中肺炎では臨床的特性が異なっていた。誤嚥性肺炎患者は市中肺炎患者よりも死亡率が高かった。


・評価項目
息切れ:Hugh-Jones、意識レベル:JCS、ADL:Bathel index、肺炎の重症度:A-DROPスコア
・A-DROPスコア:日本呼吸器学会が作成した肺炎重症度スコアリングシステム。軽症0、中等症1-2、重症3、最重症4-5
詳細はhttp://asunorinsho.aichi-hkn.jp/wp-content/uploads/2015/08/2007_1901_061.pdf
・臨床的アウトカム:全死亡原因による死亡率、ICU在室日数、人工呼吸管理の必要、人工呼吸管理日数、人工呼吸管理を行った患者の死亡率

・誤嚥性肺炎のBMIは18.5。息切れが強い、意識レベル低下、Bathel indexが低いのも特徴。
・誤嚥性肺炎は、ICU在室日数、人工呼吸管理日数のいずれも長い。人工呼吸管理をして死亡した患者は、誤嚥性肺炎の51.8%。市中肺炎は41.4%)

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誤嚥性肺炎は高齢になってくるほど、回復が難しいし、ICUに在室している間や治療中に、経口摂取が難しい状態だったとすれば、なお難しくなる。
日ごろからの健康管理で予防していくことが求められる。

低体重は重症の肺炎や長期予後不良と関連していることが既に報告されている。COPDでは誤嚥性肺炎が短期予後の不良と独立して関連していることが言われている。(考察より)


2017/09/15

脳卒中後の患者に呼吸筋トレーニングをして咳流速が速くなるか。

Does Respiratory Muscle Training Improve Cough Flow in Acute Stroke? Pilot Randomized Controlled Trial

Stroke. 2015 Feb;46(2):447-53.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25503549

<背景>
咳は誤嚥を予防する。今回、呼吸筋トレーニングが、呼吸筋力や咳の機能を向上させ、急性期脳卒中患者の肺炎を減少させることができるのではないかどうかを検討した。

<方法>
単盲検無作為化試験で実施。受傷から2週間以内の82人の脳卒中患者が対象(平均年齢64歳)。参加者は治療グループか参加者かの分類はマスクし、呼気筋トレーニング(27人)、吸気トレーニング(26人)、シャムトレーニング(25人)に分け、4週間実施。
プライマリーアウトカムは自立での最大咳流速の変化量。ITT解析でANCOVAを使用し、ベースラインの補正をした。

<結果>
平均最大吸気圧(+14 cmH2O)と呼気圧(+15 cmH2O)、最大咳流量(+74 L/min)が、ベースラインと28日後を比べて著明に改善。カプサイシンを付加した最大咳流量は、変わらなかった。呼吸筋トレーニングと対照グループで、違いは無かった。
グループ間で90日以内の肺炎の発生も違いが無かった。

<結論>
呼吸筋機能と咳流速は、急性脳卒中後に改善した。
呼吸筋トレーニングは、これらの改善には関与しなかった。


・呼吸筋トレーニングはThreshold IMT; Threshold PEPを使用し、4週間実施。10回の呼吸を5セット、間に1分間の休みをはさみながら実施。負荷量は最大吸気・呼気圧の50%。毎週呼吸筋力を測定し、負荷の設定を調整。
シャムトレーニングは、呼吸筋力の10%で実施。
・日誌に、トレーニングの記録や日々の状態などを記入し毎週トレーニング時に見せた。

・咳流速は、ニューモタコグラフ(呼吸流量計)で測定。
自発の咳流速はマスクを密着させて測定。
反射の咳は、カプサイシンを含んだ液体をネブライザーで吸入し咳を誘発。


ベースラインの咳流速(自発)は、470L/min前後。咳流速(反射)は300L/min前後。

これまでの研究結果。
PImaxは1本だけ咳流速が増加したと報告があるが、
ほとんど有意な改善が無かったという結果になっている。

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咳流速には、呼吸筋力はそれほど関連していないのかもしれない。
ベースラインで400L/min以上あるので、改善の余地が少なかった?

2017/09/14

自宅での運動にテレモニタリングを活用

Telemonitoring of home exercise cycle training in patients with COPD

International Journal of COPD 2016:11 2821–2829]

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5113934/

<背景>
通常の身体活動性は、COPD患者の死亡率の減少と関連している。座位時間を減少させる介入が、アウトカムを向上させる。主な目的は、電話を使ったモニタリング(テレモニタリング)の介入が日中運動時間に影響するかを調べること。次に、健康関連QOLや身体活動性がベースラインと比較して改善する可能性があるかを検討すること。

<方法>
前向きクロスオーバーランダム化試験。6か月実施。介入フェーズ(テレモニタリングでトレーニング)と対照フェーズ(電話無しでトレーニング)の2つに無作為に分け、最初の1カ月か最後の3か月実施。
介入フェーズにおいて、20分の自転車運動を行えていない場合、患者は週1回の電話を受ける。ベースラインとその後3か月と6か月の値を評価。健康関連QOLはCAT、身体活動性はthe Godin Leisure Time Exercise Questionnaire (GLTEQ)で評価。

<結果>
53人中44人がプログラムを完了。介入フェーズにおいて、日中運動時間は、コントロールグループよりも多かった((24.2±9.4 VS 19.6±10.3 分)。ベースライン(17.6点)と比較して、CATスコアは介入フェーズは15.3点、対照フェーズは15.7点。
The GLTEQスコアは、12.2点から、36.3点、33.7点に増加。

<考察>
テレモニタリングは、簡単な方法で自宅での運動を促進し、身体活動性と健康関連QOLを改善する。


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長期入院が難しくなり、病院での集中的なリハが難しくなってくると、在宅での運動を監視していくシステムが必要になる。
体操の紙や冊子を渡すだけでは患者は継続できない。監視が必要。。

2017/09/12

IPF患者において日中身体活動性は運動耐容能に影響する。

Daily physical activity affects exercise capacity in patients with idiopathic pulmonary fibrosis

J. Phys. Ther. Sci. 29: 1323–1328, 2017

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5574345/

<目的>
IPF患者の6MWD に影響する要因を、肺機能、身体活動、精神機能、息切れ、日常身体活動から検討すること。

<方法>
38人のIPF患者で検討。身体活動性は1日の歩数の平均を採用。

<結果>
平均6MWDは443.8m。平均歩数は5148.4歩。6MWDは年齢、安静時の息切れ、肺活量、拡散能大腿四頭筋力、6MWT時の息切れ、身体活動と相関。ステップワイズ重回帰分では、肺活量(β=0.382)、大腿四頭筋力(β=0.272)、身体活動性(β=0.574)が6MWDに影響する要因であった。

<結論>
IPF患者において、身体活動性は、肺活量や大腿四頭筋力よりも6MWDに大きく影響していた。日中の身体活動性を評価することは、全身的、筋力的な機能の改善に加えて、重要である。

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身体活動性が高いから運動耐容能が高い?
運動耐容能が高いから身体活動性が高い?

2017/09/11

運動療法で自律神経系の活動が改善

Aerobic exercise training improves autonomic nervous control in patients with COPD

Respiratory Medicine (2009) 103, 1503e1510

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19464865

<目的>
自律神経調整は、COPD患者に影響している。目的は、6週間の有酸素運動が、COPD患者の心拍数の自律神経調整に効果的かを検討すること。

<方法>
40人の中等症から重症のCOPD患者を、無作為にトレーニンググループ(20人)とコントロールグループ(20人)に分けた。運動療法の内容は、上下肢のストレッチ、トレッドミル歩行30分を週3回、6週間実施。身体的データは症状限界運動テストと6MWTで評価。加えて、R-R間隔を安静時と6MWT中に測定。心拍数の変動は、時間(rMSSD and SDNN index)と頻度(高周波、低周波、高周波/低周波 比)で評価。

<結果>
最大酸素摂取量はトレーニンググループでのみ著明に改善(p<0.05)。更に、トレーニンググループは、血糖値、分時拍出量、最大運動時の息切れ、交感神経作用、安静時と準最大運動時の副交感神経作用が著明に改善。6MWDの変化とrMMSD indexは高い相関関係を示した(r=0.65 and p=0.001)

<考察>
心拍数の神経支配、加えて、その他の臨床的変数は、6週間の有酸素運動で有意に変化した。運動療法後に運動パフォーマンスが向上したことは、副交感神経活動と関連していた。


心拍数の変動の測定
SDNN:通常のRR間隔の標準偏差
rMSSD:連続して隣接するRR間隔の差の2乗の平均値の平方根であり、迷走神経緊張強度の指標
高周波:副交感神経(迷走神経)の活動を反映
低周波:(血管運動性)交感神経と副交感神経の両方の活動を反映
高周波/低周波 比:交感神経と副交感神経の全体のバランスを表す。数値が高いと交感神経優位を、低い場合は副交感神経優位を示す。
(参考ページ:http://www.trytech.co.jp/checkmyheart/glossary.html

運動療法グループは、歩行距離の延長と副交感神経作用の優位が相関していた。


運動療法グループ(グレー)は、コントロールグループ(黒)と比べて、安静時も運動時も副交感神経が優位に作用していた。
・安静時と動作時の交感神経作用が減少した要因の1つに骨格筋の影響を指摘。呼吸活動が増大すると、交感神経作用が優位になるが、トレーニングによってこの作用が抑制されたのではないか。

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運動療法を行うと、運動時の心拍数の上昇が抑えられるかも。心疾患を合併している場合は、例外かもしれないけど。

2017/09/07

気管支拡張症の運動の効果

The short and long term effects of exercise training in non-cystic fibrosis bronchiectasis – a randomised controlled trial

Respir Res. 2014 Apr 15;15:44.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24731015

<背景>
運動療法は、非嚢胞性肺線維症型気管支拡張症に対して推奨されているが、長期間の効果については明らかになっていない。無作為化試験を行い、運動療法の効果を明らかにし、気道クリアランス療法(ACT)と運動耐容能、HRQOL、急性増悪の発生を調査すること。

<方法>
無作為に8週間の監視下トレーニングとACTを行うグループと、コントロールグループに分かれて実施。プライマリーアウトカムは運動耐容能とHRQOL、セカンダリーアウトカムは、咳関連QOL(レスター咳質問票)、心理的症状(HADS)。ベースラインと介入期間終了後と6か月後、12か月後に実施評価を実施。

<結果>
85人の患者がリクルート。運動療法によって、シャトルウォーキング距離、6分間歩行距離が延長したが、6か月後と12か月後には維持されていなかった。運動療法は、息切れと疲労感を減少させたが、咳関連QOLには影響しなかった。運動療法は、急性増悪の頻度がコントロールグループよりも少なく、最初の増悪までの期間も長かった。

<結論>
気管支拡張症に対する運動療法は短期間で、運動耐容能を改善し、12か月のうち息切れ、疲労感、増悪にもいくらか効果があった。

・介入内容:週2回の運動を8週間。トレッドミルや平地歩行をISWTの最大速度の75%で処方。自転車エルゴを最大負荷の60%で処方。上下肢筋トレをダンベルもしくは自重を使って実施。
・運動負荷は、セッションごとに患者の症状に合わせて増加
・自宅での運動を1周目に提示し、非監視下での運動を週に3-5回行うように指導し、日誌に記録。
・排痰(ACT)はACBTを全ての患者に指導。

・コントロールグループは、ベースラインで中等度の身体活動を30分、週うちなるべく多く行うように指導。8週間のうち週2回まで電話でコンタクトをとり、一般的なアドバイスをうけることができたが、運動に関してのディスカッションは行わない。


運動耐容能評価の変化。A)ISWT、B)6MWT
介入直後は改善しているが、そのごはベースライン近くまで減少。維持は出来ていない。


健康関連QOL(CRDQ)
息切れと疲労感のみが9週間後改善。

最初の増悪までの期間(p<0.047)

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運動することで体力や息切れはもちろん、増悪にも影響する可能性が示されている。
それでも1年に1回は増悪している。
まったく増悪しないというのは難しい。

2017/09/03

COPD患者でインスリン抵抗性が高いと筋力が低下している

Insulin resistance is associated with skeletal muscle weakness in COPD

Respirology (2016) 21, 689–696

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26678022

<背景>
大腿四頭筋力低下は、すべてのCOPD患者でみられ、罹患率や死亡率と関連している。大腿四頭筋力低下は、FEV1.0の低下や気流閉塞のメカニズムと関連している。今回は、インスリン抵抗性の併存と骨格筋力の低下の関係について検討した。

<方法>
41人のCOPDで、糖尿病の併存が指摘されていない患者。大腿四頭筋力を評価。身体活動性は加速度計アームバンドを7日間装着して測定。インスリン抵抗性(HOMA2 IR)は、空腹時血糖とインスリン濃度で計算。

<結果>
平均大腿四頭筋力は 30 ± 13 kg (予測の74%)。16人(31%)は大腿四頭筋力の低下が指摘された。インスリン抵抗性と大腿四頭筋力は負の相関が認められた(r = −0.446, P = 0.002)。インスリン抵抗性は大腿四頭筋力が低下している患者で有意に増加していた。多変量解析において、インスリン抵抗性が1ユニット増加すると、筋力は5.9kg低下し、大腿四頭筋力低下となるリスクが4.2倍となった。

<結論>
インスリン抵抗性は、COPDの骨格筋力低下と関連しており、独立した交絡因子である。今後、この現象のメカニズムの解明やインスリン感受性を高める薬剤とリハビリテーションを併用したときに骨格筋力が増大するかについての検討が求められる。

インスリン抵抗性と筋力:抵抗性が高くなると筋力が低下

・平均年齢70歳、BMI24.5、現喫煙者13人(26%)、%FEV1.0 55%、
・大腿四頭筋力の低下の有無(低下している方)で比較。有意差があった項目は、現喫煙者(筋力低下が無い方が多い)、歩数(多い)、身体活動レベル(高い)、BODE index(低い)、併存症(少ない)

・原因としては、喫煙がインスリンの活動を抑制している。喫煙者では、筋疲労の起きやすさや筋繊維の萎縮が見られる。身体活動性の低下がインスリンの活動を抑制する危険因子である。→今回の患者では違う結果になっている。

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身体活動性の低下と糖代謝能力は確かに関係してそう。
内部障害はそれぞれの症状がオーバーラップしている気がする。全身を見れるようにならねば。

歩行とエルゴメーターでのSpO2変化の違い

Kinetics of Changes in Oxyhemoglobin Saturation During Walking and Cycling Tests in COPD

Respir Care 2014;59(3):353–362.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23942752

<背景>
6MWTとサイクリングテストのSpO2の変化のパターンや生理学についてはCOPD患者において明確にされていない。

<方法>
60人のCOPD患者を対象に調査。SpO2の変化(⊿SpO2)を2つのテストで比較。低酸素の患者と低酸素にならなかった患者を比較。

<結果>
 6MWTにおいて、SpO2低下に4パターンあった。低酸素になり再度回復する(46%)。1.2分で3%以上低下し、3.4分で最低になり、徐々に回復する。開始時と最低値の差が、開始時と終了時の差よりも大きい(p<.001)。
 低酸素があった患者は、吸気筋力が弱く、息切れが強く、6MWDが短い。回復した患者は、FEV1.0%が高く、機能的残気量が少ない(p<.05)。
 サイクリングテストのSpO2低下は3パターン。低酸素化したのは57%。SpO2が3%以上低下し最低SpO2に4,6分と6,6分と6.8分で到達。低酸素になった患者は、BMIが低い、 oxygen-cost diagram score(息切れの程度)が低い、運動後の吸気筋力が小さい、拡散能が低下、SpO2が低い、6MWT中の仕事量が少ない、最大運動能力が低い(全てp<.05)。
 両方のテストで、開始時と最低のSpO2の差は6MWTで大きかったが、開始時と終了時のSpO2の差は似ていた。両方のテストで低酸素になった患者は、oxygen-cost-diagram scoresが低く、最大運動能力が低かった。

<結論>
6MWTの開始時と最低のSpO2の差を評価することが推奨された。6MWTと自転車テストにおいて、低酸素は oxygen-costdiagram scoreで予測可能となり、6MWTよりも最大運動能力が予測できる。

・台湾病院で行われた研究
・対象者には6MWTと症候限界運動負荷試験を実施
・6MWT中はパルスオキシメーターでSpO2を記録し、2人の検査者で低下を判断(3%以上の低下をSpO2の低下と定義)
・運動負荷試験は、ランプ負荷法で1分あたり5-20wattずつ増加。

・Oxygen-Cost Diagram:長さ100mmの直線とその横に日常生活動作を記載。患者自身にチェックしてもらい、ADL動作の酸素必要量を評価しより厳密にかつ簡単に評価できるもの。評価は、ゼロからの距離を点数とする。
Oxygen-Cost Diagram
出典:
健常高齢者の呼吸困難感の評価におけるOxygen Cost Diagram の有用性に関する臨床的研究


・6MWTで低酸素なし17人、低酸素あり40人
A:6MWTのSpO2変化
B:6MWT中のSpO2低下の有無で比較。矢印は3%低下のポイントを指している。
A:6MWTで開始後3分以降にSpO2が低下した患者3人
B:開始後すぐにSpO2低下したが、徐々に回復した患者26人
C:spO2が低下し続けた患者11人


・エルゴで低酸素なし18人、低酸素あり27人
エルゴでのSpO2変化。矢印は3%低下のポイントを指す。

・両方で低酸素なし7人、両方で低酸素あり23人、どちらかでのみ低酸素あり17人
有意差があったのは、Oxygen-Cost Diagramスコア、エルゴでの最大酸素摂取量、最大1回換気量。

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歩行と自転車でSpO2の変化が異なる患者がいるという結果。運動療法の様式を選択する際に参考になるのでは。
負荷試験なら、シャトルウォーキングテストとの比較の方が良さそうだが。。
換気能力と呼吸筋力が関係しているのかも。