2018/01/20

COPD増悪中と退院後の呼吸筋力

Respiratory Muscle Strength During and After Hospitalization for COPD Exacerbation

Respir Care 2013;58(12):2142–2149

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23716708

<背景>
COPD増悪期間中の呼吸筋力については、より深い考察が必要である。COPD増悪入院中とその後の呼吸筋力との関連を調べた。

<方法>
19人の増悪入院中のCOPD患者(12名男性、平均67歳、%FEV1.0 26%)に、肺機能、呼吸筋力、大腿四頭筋力を入院時(day1)、退院時、退院1カ月後に評価。

<結果>
入院時、対象患者の68%が呼吸筋力機能障害を起こしていた(予測最大吸気圧<70%)。吸気筋力は、入院時(56 cmH2O)と退院1カ月後(65 cmH2O)の間で向上していた。
呼気筋力は、入院時(99cmH2O)と退院時(109cmH2O)、入院時と1カ月後(114cmH2O)の間で有意に向上していた。
吸気予備量(IC)は、退院時(1.59L)と1カ月後(1.99L)の間で向上していた。
その他の肺機能、大腿四頭筋力は変わりなかった。
入院時の吸気筋機能障害と吸気予備量は直線的に相関していた(r=0.62, P=.03)。
一方、呼気筋力は、FEV1.0(r=-0.61, P=.005)と吸気予備量(r=0.54, P=.02)と逆相関していた。

<結論>
吸気筋機能障害は、COPD増悪で入院した患者の多くに見られた。吸気筋力と呼気筋力は、入院時と退院後に向上していた。気流閉塞と動的肺過膨張の減少が、吸気筋力と呼気筋力に関係していた。

・ブラジルでのスタディ
・対象は、過去6か月間運動療法を行っていない、最近増悪入院が無い
・入院後24時間以内に肺機能、筋力、を評価し、退院時と退院1カ月後に再度評価
・呼吸筋力は、PImax、PEmaxで評価

・入院中にコルチコステロイドの治療を行ったのは、16人(84%)
・理学療法は、柔軟体操、呼吸練習もしくは呼吸衛生法(排痰?)を主に行い、持久力運動や筋力運動、呼吸筋力トレーニングは行っていない。
・入院期間の中央値は4日

・呼吸筋力は、入院時よりも、退院時や退院1カ月後に有意に増加

・入院時は吸気筋力が低下していたのは、増悪中に吸気筋力が低下するこれまでの報告と同様の結果
⇒増悪により、末梢気道が閉塞、吸気予備量が減少し、肺過膨張が起こっていることが原因と考えられる。
・肺過膨張により、呼気筋力の活動が増大する。これにより、呼気筋力疲労が生じ、PEmaxと吸気予備量に負の相関がみられたと考えられる。

COPD患者の疲労感の影響

Determinants and impact of fatigue in patients with chronic obstructive pulmonary disease

Respiratory Medicine (2009) 103, 216e223

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19027278

<背景>
COPDの疲労感は、健康状態の悪化と関係している。また、増悪は活動量や健康状態の悪化と関係している。しかし、疲労感と増悪の関係については明らかになっていない。

<方法>
疲労感は、COPDと年齢をマッチさせた対照群で評価。疲労感と安定期COPD患者の特性、疲労感の増悪への影響を評価。

<評価>
107人のCOPD患者、平均年齢69歳、FEV1.0 53%、30人の対照群。
慢性疾患の疲労感の評価スケール(Functional Assessment of Chronic Illness
Therapy-Fatigue Scale:FACIT-Fatigue scale)と抑うつスケール(CES-D)を評価。

<結果>
COPD患者で、疲労感は対照群よりも強かった(p=0.001)。COPDで疲労感が強いと、屋外での活動時間が減少し、抑うつ傾向の増大、増悪頻度の増加と関係していた。
増悪時に疲労感が増加した患者は、32人中31人。全体的に、疲労感は8.3点増加していた。疲労は、6週間のフォローで回復した。

<結論>
COPD患者は、同年代の対照群よりも疲労感を強く感じていた。そして、患者が安定しているときと増悪しているときの状態と関係していた。

・FACIT-Fatigue scale:13項目の質問に0-4点で回答、最大52点。点数が高いほど、疲労を感じていないと判定。
・CES-D:20項目の質問。最大60点、16点以上は、臨床的に抑うつ症状があると判定。

軽症COPDの息切れのメカニズム

Mechanisms of Dyspnea during Cycle Exercise in
Symptomatic Patients with GOLD Stage I Chronic Obstructive Pulmonary Disease

Am J Respir Crit Care Med Vol 177. pp 622–629, 2008

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18006885

<背景>
1秒量が低下している喫煙者は息切れと活動制限を経験しているかもしれないが、メカニズムについてはあまり知られていない。

<目的>
運動中に症状のあるGOLDステージ1のCOPD患者を対象に、息切れと運動制限のメカニズムを調べること。

<方法>
安静時肺機能と換気応答(呼吸パターン、肺容量、ガス交換能)を漸増自転車運動を行って、自覚症状の強さをCOPD患者21人と対照群21名で比較。

<結果>
COPD患者は、最大酸素摂取量と最大負荷が対照群と比べて20%以上減少しており、息切れの自覚症状が強かった。
対照群と比べて、COPD患者では、運動中の換気需要が増加すると細気管支の気流制限があり、大きな換気や循環が必要になる。COPD患者の運動中の呼気終末肺容量の変化は、健常者と比べて大きく、呼吸パターンは短く早くなっていた。
グループ全体を通して、息切れの強度は、換気需要の割合として上昇しており、吸気用量が減少していた。

<結論>
運動時の息切れの症状のある軽症COPD患者は、より大きな換気需要と動的換気メカニズムの両方が、関連しており、治療の対象となりえるものであった。

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軽症でも動的肺過膨張は起こっている。

COPD増悪入院中の早期リハ

Early Rehabilitation Exercise Program for Inpatients During an Acute Exacerbation of Chronic Obstructive Pulmonary Disease

Journal of Cardiopulmonary Rehabilitation and Prevention 2012;32:163-169

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22561417

<目的>
COPD増悪入院中の患者に対して、早期リハが安全で有効であるかを検討すること

<方法>
第1相無作為化試験。COPD増悪で入院中の患者を無作為に低強度運動、中等度から高強度運動、コントロールグループに分けた。
加えて、ルーチンの理学療法を行い、運動グループの患者は、1日2回、有酸素運動と筋トレを実施。
プライマリーアウトカムは新たなイベントの発生数と分類と、プログラムのアドヒアランス。

<結果>
174の運動セッションのうち、1件だけ重篤な不整脈イベントが低強度運動グループで発生したが、1時間以内に解決した。
12のその他のマイナーなイベントが5人の患者で生じたが、グループ間での違いは無かった。
患者は、平均80%のプログラムを完了し、グループ間での違いは無かった。運動グループにおいて、特に歩行距離が改善していたが、グループ間での違いは無かった。

<結論>
COPD増悪中の運動プログラムが、安全で実行可能であるという予備的なエビデンスが示された。さらに対象を増やしての検討を行い、プログラムの効果を検討していく必要がある。

・コントロールグループ(n=11):1日1回の理学療法、排痰、活動評価、
・低強度運動グループ(n=11):通常の理学療法に加えて、1日2回、15分の運動セッション。最大40%負荷まで。
・中等度から高強度運動グループ(n=10):1日2回の運動セッション。最大70%負荷まで。
運動内容はtable1

・プライマリーアウトカム:イベントの発生
・セカンダリーアウトカム:運動耐容能(3分間歩行テスト)、筋力(チェストプレスと膝伸展)、肺機能、Bathel index、入院期間。

在宅でNPPVをしている患者の運動耐容能

Comparison of exercise capacity in COPD and other etiologies of chronic respiratory failure requiring non-invasive mechanical ventilation at home: retrospective analysis of 1-year follow-up

International Journal of COPD 2015:10 2559–2569

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26648713

<目的>
目的は、慢性呼吸不全で自宅でのNIVを行っている患者の運動耐容能(6MWD)の1年間の推移を、異なる疾患で比較すること。

<方法>
後方視コホート研究。1年間自宅でのNIVを実施できた患者を比較。疾患は、COPD、肥満過換気症候群(OHS)、脊椎後弯症(KS)、急性間質性肺炎(DPLD)。
血ガス、肺機能、6MWDを12か月後に測定。加えて、患者背景、併存症、身体組成も収集。
6MWDの比較にANOVAと多変量解析を実施。

<結果>
105人の患者、平均年齢61歳。(COPD37人、OHS34人、KS20人、DPLD14人)
グループ間で、ABG、肺機能はベースラインと変化量に差はなかった。
単変量ANOVAと多変量解析で、OHSは、ベースラインの6MWDは特に短く、1年後の変化が最も低かった。
KSグループは、ベースラインの値が最もよく、自宅でのNIVの改善が最も大きかった。

<結論>
6MWD測定は、自宅でNIVを行っている慢性呼吸不全患者の運動耐容能の長期間の改善を明らかにした。

・肺実質に病変があるのは、COPDとDPLDだけ。1年の追跡結果としては、重要なデータだが、疾患別に分けてみたい。

COPDの進行と身体活動性

Disease Progression and Changes in Physical Activity in Patients with
Chronic Obstructive Pulmonary Disease

Am J Respir Crit Care Med. 2015 Aug 1;192(3):295-306

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26020495

<背景>
COPD患者の身体活動性の役割についてはあまり知られていない。

<目的>
COPD重症度ごとの身体活動性の変化についてその他の疾患要素との関連を評価し、疾患の進行と身体不活動の関係について縦断的に調べること。

<方法>
前向きコホート研究。身体活動量、気流閉塞、健康状態、運動耐容能、除脂肪量、全身炎症を3年間、137人の患者と26人の慢性気管支炎の患者で評価

<結果>
疾患重症度と独立して、歩数、消費カロリー、身体活動レベルは、年間393.76Kcal減少。身体活動レベルの減少は、FEV1.0の減少とSGRQ合計点数の増加と関連していた。6MWD、除脂肪量、炎症マーカーは身体活動レベルとは関係なかった。
FEV1.0と独立して、身体活動性は、6MWDと除脂肪量の減少と関連していた。

<結論>
全体を通して、身体活動性は、COPDの全ステージにおいて減少していた。そして、肺機能と健康状態の悪化と平行していた。
身体不活動は、運動耐容能の低下と筋力低下と関連していた。

2018/01/12

呼吸リハ(心理サポートと教育)に家族も一緒に参加してもらった場合の効果

Family-Based Psychosocial Support and Education as Part of Pulmonary Rehabilitation in COPD. A Randomized Controlled Trial

CHEST 2015; 147 ( 3 ): 662 - 672

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25340477

<背景>
患者のリハプランの1部に家族を含めることは、COPD管理を促進するかもしれない。この研究の主な目的は、家族ベースの呼吸リハプログラムを患者と家族のコーピング戦略として行うことを検討すること。
※コーピング:問題に対してうまく対処する、切り抜ける


<方法>
2人1組(患者と家族)で無作為に、家族ベースと従来の呼吸リハを実施。どちらのグループの患者も、週3回の運動療法と週1回の心理社会的サポート、教育セッションを12週間受けた。
家族には、心理社会サポートと教育のセッションを患者と一緒に受講した。
従来のリハを行うグループは、家族は参加しなかった。家族の疾患に対するコーピングと心理社会的な調整は両グループとも実施。
患者の運動耐容能、機能的バランス、筋力、健康関連QOLを測定。
全ての評価は、プログラムの前後で実施した。

<結果>
42人の家族が参加(患者の%FEV1.0 70.4%)。家族も参加したグループでは、家族のコーピングが従来のリハと比べて著明に改善。家族も参加したグループは、性的な関係、心理的ストレスが著明に改善。
両グループの患者の、運動耐容能、バランス、膝伸展筋力、健康関連QOLは著明に改善。

<結論>
この研究は、家族も参加した呼吸リハブログラムは、家族機能のコーピングと心理社会的な面を改善させる。


・運動療法の内容:週3回、1セッション最低60分、同じPTが対応する。
・心理サポートと教育:COPDのリハビリテーション、COPDと生活している家族の必要、その他慢性疾患と生活する家族の介入について、COPDのレビューを参考に構成。
・教育は、COPDに関する情報提供、家族の疾患管理の向上、アドヒアランスの向上を目的に行った。
・毎週のセッションでは、他職種(PT、老年学者、心理学者、看護師、専門医)が参加。

1週目:COPDに関する情報、家族生活への影響
2週目:呼吸器症状の管理
3週目:家族の存在
4週目:薬物療法と酸素療法
5週目:ストレスと不安の管理
6週目:身体活動
7週目:栄養と睡眠
8週目:感情コントロール、社会資源
9週目;転倒予防、感情のコミュニケーション
10週目:アクションプラン
11週目:問題解決のテクニック、予測できないことと将来起こること
12週目:まとめ?


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患者だけでなく、家族の自己効力感も考慮するアプローチ方法もありだなと。

2018/01/10

IPF患者の肺高血圧症の状態

Pulmonary hypertension in idiopathic pulmonary fibrosis with mild-to-moderate restriction.

Eur Respir J. 2015 Nov;46(5):1370-7.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26250495

<背景>
特発性肺線維症(IPF)の肺高血圧(PH)の進行についてはあまり知られていない。

<対象>
488人の肺容量が軽度から中等度制限されているIPF患者。ベースラインで右心カテーテルを行い、117人(24%)が48週後に再度血行動態を評価した。

<結果>
対象者を4つに分類した。a)WHOの基準でPHグループ3(肺疾患に関連したPH、n=68)、b)WHOグループ2(左心不全に伴うPH、n=25)、c)PHは無いが、肺動脈楔入圧が上昇しているn=21)、d)肺高血圧が無く、肺動脈楔入圧も上昇していない、n=374)
グループ3のPHは、拡散能、6MWD、酸素飽和度がPH無しと比べて低下かった。12カ月後の肺動脈楔入圧は、アンブリセンタン(商品名;ヴォリブリス)とプラセボを比較して、差が無かった。

<結論>
WHOグループ3のPHと関連したIPF患者は、PHの無い患者と比べて、ガス交換能、運動耐容能が低下していた。加えて、対象者の9%の患者は、左心機能不全があった。肺高血圧は、大規模コホートにおいて1年以上残存している。




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この状態でいかにQOLを保てるか。

2018/01/06

重症COPDへのモルヒネ投与の効果

Effect of morphine on breathlessness and exercise endurance in advanced COPD: a randomised crossover trial

European Respiratory Journal 2017 50: 1701235

http://erj.ersjournals.com/content/50/4/1701235?ctkey=shareline#abstract-2


<目的>
進行したCOPD患者に対して、モルヒネが呼吸困難感と運動耐久性に影響するかを検討すること。

<方法>
20人の進行したCOPD患者を対象としたRCTでのスタディ。経口モルヒネvsプラセボでの即時効果と、心肺運動負荷試験で持続負荷をかけたときの反応を比較。

<結果>
モルヒネは、呼吸困難感をBorgで1.2減少させ、運動持続時間が2.5分延長した(ともにp<0.014)。運動中、モルヒネは換気量を1.3L/min減少させ、呼吸数2.0回/min減少させた。
モルヒネで呼吸困難Borgが1以上軽減した患者(反応群)が11人、Bog1未満の患者(非反応群)が9人いた。
ベースラインの特性で、肺機能、心肺運動能力は反応群、非反応群とも似ていた。
漸増運動負荷試験で、反応群が呼吸困難感が原因で中止した割合が高かった(82%vs33%)。

<考察>
経口モルヒネを投与すると、呼吸困難感と運動持続時間が即座に改善した。しかし、全ての患者ではなかった。
CPETで症状限界までの軌跡は、モルヒネで効果が得られる患者を特定できるかもしれない。


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ベースラインの呼吸困難感Borgがどの程度かわからないが、Borg1程度の改善しかないのか?と驚き。