2026/11/03

動作時のみ低酸素のある間質性肺疾患における酸素療法の効果

 Objective Effects and Patient Preferences for Ambulatory Oxygen in Fibrotic Interstitial Lung Disease With Isolated Exertional Hypoxaemia: A Placebo-Controlled 6-Minute Walk Test Study

Respirology. 2025 Jul;30(7):644-651.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40069946/



【Abstract】
線維性肺繊維疾患(F-ILD)における歩行時の酸素供給による運動能力改善の効果に関するエビデンスは限定的である
対象は、F-ILD患者32例。室内気での6MWTでSpO2<88%。
低酸素予防のために必要な酸素量の評価を行い、ダブルブライドにて6MWTを2回(室内気と酸素使用)行った。
評価項目は、酸素飽和度、脈拍、歩行距離。患者報告アウトカムとして、VAS(息切れ、疲労感)。
結果、歩行時の酸素使用は低酸素を防ぎ、頻脈を減少させ、自覚症状の増強なく歩行距離を37m増加させた。(95% CI: 10-74, p = 0.008)
今回のデータでは、歩行時の酸素使用は、プラセボよりも有効であった。
この結果は、歩行時の酸素使用はプラセボよりも有効であることを示した。しかし、何人かの患者は、ネガティブな反応を示し、治療の受容を妨げているかもしれない。
これらは、現在の推奨されているエビデンスを支持する結果であり、歩行時の6MWTの記録は、歩行時に酸素を使用するかどうかについての共同意思決定に関するディスカッションを補助するために有益かもしれない。

【intro】
線維性間質性肺疾患(F-ILD)は、原因、臨床所見、経過など様々な状態である一連の症候群であるが、病理生理学的には同様の変化を呈し、最終的には呼吸不全に至る。
疾患の進行を遅らせる薬剤はあるが、呼吸リハビリ以外に運動制限に対してアプローチする治療手段はない。
臨床的に、歩行時に酸素を使用することは、6MWTにおける運動耐久性を向上させ、健康関連QOLを改善させる。しかし、在宅酸素を行う適切な患者に関するエビデンスは低い。

【Method】
・適格基準:臨床的に安定したF-ILD患者、85歳未満、安静時低酸素なし(92%以上)、ベースラインでの6MWTにてSpO2<88%となった患者
・除外基準:最近急性疾患に罹患していた、呼吸器以外の歩行制限因子がある、同様の研究に参加したことがある
・評価:安静時血液ガス、肺機能、胸部レントゲン、30日以内の胸部CT画像、6ヶ月以内に肺動脈収縮期圧を推定した心臓エコー
・6MWTは、病院の廊下にて標準化されている方法で実施したが、条件に合わせてコースは20mに短縮した。
・酸素流量の決定方法:ベースラインの6MWTと同日に、6MWTが90%を下回らないように酸素量を設定。一般的に使用されている液体酸素とストローラー(酸素カート)を使用。

・6MWT中、SpO2が70%となったら中断
・試験後、VASにて息切れ、下肢疲労感、室内気と比べての歩行した感覚を聴取

【Results】
・1年間で32人が適格基準を満たした。
・疾患内訳は、IPF21例、NSIP4例、膠原病関連4例、線維性サルコイドーシス2例、アスベスト1例
・プラセボの6MWTでは最低SpO2 81%程度まで低下し、最低値は、酸素グループと比べて8%の差があり、統計的な有意差を示した
・距離は、酸素使用にて平均37m増加したが、年齢や性別などで調整した歩行距離は、酸素使用での有効性は統計的に有意差は認めなかった
・息切れや下肢疲労感は、プラセボの方が有意に高かった

【Discussion】
・酸素使用にて6MWTでは、MCID以上の歩行距離延長が得られ、息切れや疲労感、頻脈の減少が得られた
・歩行時に酸素を使用する方が症状のスコアは良好であり、患者は、医療用空気よりも室内機を好んだ
→これは、息切れはガスの組成ではなく流量の影響を受けるという仮説は、動作時低酸素を伴うF-ILD患者には当てはまらない可能性を示唆した
・歩行時の酸素使用は、歩行時の呼吸努力を軽減し、健康関連QOLにもポジティブな影響を及ぼすことを示す
・歩行距離の延長に関しては、MCID以上の改善が得られたが、歩行距離や終了後の息切れに関しては、個別差が見られた
・患者によって、ガス交換の変化に対する反応が異なり、息切れや疲労感を感じたら歩行を制限する患者や、反対により努力しようとする患者もいる。それにもかかわらず、酸素療法をおこなった患者の91%は、プラセボよりも息切れと歩行距離の修正比が改善していた。
・酸素使用の方が良好な結果であるにもかかわらず、患者は個人のネガティブな先入観があることを示唆し、これが在宅酸素療法の受け入れ度合いに影響を及ぼしている。
・本研究で用いた酸素機器は、極めて軽量であるにもかかわらず、受け入れが得られないのは、心理的な影響が大きいと考えられ、重量などは無関係であると考えられる

2026/10/22

身体活動の自己管理プログラムは、運動耐容能を維持し費用対効果に優れている。

Clinical and cost-effectiveness of SPACE for COPD delivered as a pulmonary rehabilitation maintenance programme: a randomised controlled trial

Thorax 2026;0:1–8. 


https://thorax.bmj.com/content/early/2026/04/10/thorax-2025-223734


【abstact】

呼吸リハの効果は、6−12ヶ月で減少する。これまでの維持プログラムは、労働を要するものであり2次医療機関の利用についてのみ述べられていた。

身体活動の自己管理プログラム(SPACE)の介入効果を検証した。

COPD患者を1:1の割合でSPACEグループと通常ケアグループに分けた。

自宅での運動と4回のグループセッションを12ヶ月以上行った。

プライマリーアウトカム:12ヶ月後のISWT

セカンダリーアウトカム:最大運動耐容能、感情、患者の主体性、身体活動、医療コスト、HRQOL

116人の患者をリクルート。平均年齢71.8歳

SPACE完了率は83%

12ヶ月後のアウトカム(プライマリー、セカンダリー)に両グループ間に差はなかった。

経済評価では、12ヶ月後のHRQOLは良好であり、QALYのグループ差は0.0871であり、国民健康サービス(NHS)のコストは患者一人当たり139ユーロ(約2万5千円程)減少した。

運動耐容能は両グループとも維持されていた。

介入グループは12ヶ月後のHRQOLが改善しており、費用対効果に優れていた。


【intro】

・COPDにおける呼吸リハ(PR)は身体的、精神的に高い効果を示すことが明らかとなっている

・しかし、重要な効果は、患者がライフスタイルを変容しなければ維持することはできない

・維持プログラムとは、"PRプログラムよりも低い頻度で行う監視下の運動"と定義され、その効果は、ATSやBTSからも情報提供がなされている。

・ATSから出された2つのsystematic reviewにおいて、多くの維持プログラムは労働的な介入であった(頻繁な対面訪問や電話など)。通常ケアよりもこれらの方法は優れているとされているが、期間や方法の統一がなされていなかった(heterogeneous)

・今後の維持プログラムは、行動変容テクニックに基づいて行われるべきであると述べられている

・SPACE for COPD(Self-management Programme of Activity, Coping and Education)は、モチベーションを高めるようなインタビュー手法を用いて患者の行動変容をサポートする

・先行研究において、この手法は人員的、コスト的にも"軽い"介入である

・この研究の目的は、通常ケアと比較して、SPACE for COPDがISWTを主なアウトカムとした際に効果はあるのか、費用対効果はどうかについて検証することである。


【Methods】

・前向き、2施設、検者盲検試験。維持プログラムvs通常ケア

・期間は、COVID-19パンデミックの時期に行われた。

・適格基準:BTSで標準化された呼吸リハを過去4週間以内に完了している(セッションの75%に参加)、COPDの臨床的に診断されている、18歳以上

・除外基準:日常生活活動に支障をきたす疾患がある、英語がネイティブでない。

・通常ケアの内容:運動の継続に関して書面でアドバイスを行い、希望に応じて地域活動への参加を紹介。

・維持プログラム:通常ケアに加えて実施された。目標設定シートと、12ヶ月のうち、等間隔で実施される4回のグループプログラムに参加。

グループは5−10人で構成し、2人の専門家がファシリテートする。

グループセッションは1回2時間。COVID-19パンデミックであり、電話やビデオ通話を用いて行った。

4セッションの内容は、モチベーションを高めるインタビュー、共感、自己肯定感の支持と抵抗感の役割について

・費用対効果分析

健康サービスソースの使用、個別の支出、社会的コストを患者の自己申告と病院の記録で収集。維持プログラムのコストを推定した。

健康リソースの利用はEQ-5D−5Lの違いを比較し、QALYを用いて費用対効果分析を実施

・統計

一般線形回帰モデルを使用しESWTとセカンダリーアウトカムを推定。


【Results】

・呼吸リハを行って退院した677人のうち、116人をランダム化。

・ESWTとISWTはどちらのグループも12ヶ月間維持できていた(Tab.2)。

・EQ-5D-5Lは、ベースラインと6ヶ月後の変化は2グループに差はなかった。介入群の方は、12ヶ月後の結果が良好であった。12ヶ月後のQALYsの平均変化は、−0.0871。

・費用対効果

医療機関の使用は、介入群の方が、12ヶ月間有意に少なかった。処方コストもSPACEグループの方がわずかに低かった。

全体の医療コストは、介入グループの方が通常ケアよりも139ユーロ低かった。

SPACE for COPDを受けたグループの方が、医療コストが低く、健康アウトカムが良好であった。


【Discussion】

・自己管理や増悪の症状に気づくことができ、4回のセッションをかかりつけ医の受診と置き換えて考えていた可能性がある。その結果、費用を抑えられたのではないか。

・運動療法を行っていないにも関わらず、運動耐容能は維持できていた。参加者は、PRを完了しており、運動と活動の必要性について理解できていたのではないか。通常ケアグループも研究期間中に活動を行っていたため、ESWTの結果に差が出なかったかもしれない。


ーーーーーー

維持プログラムによって、入院頻度が抑制され、医療費削減に寄与したとのこと。

運動耐容能は、4週間のリハビリ介入によってある程度は維持できることも示されており、ポジティブな結果かと。

行動変容につながるかどうかが難しい。

2026/10/21

長期酸素療法(24時間vs15時間)で入院や予後に差はあるか?

Long-Term Oxygen Therapy for 24 or 15 Hours per Day in Severe Hypoxemia.
 N Engl J Med. 2024 Sep 19;391(11):977-988.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39254466/

【背景】
重度の低酸素血症の患者に対して1日15時間以上の長期酸素療法は生存率を延長させる。これはランダム化されていない比較試験を基に、1日24時間の長期酸素使用は推奨されているが、負担の多い治療である。
【方法】
この検証の仮説は、24時間の酸素使用は、15時間と比べて入院や1年以内の死亡リスクの軽減とは関連しないことである。
患者は、無作為に1日24時間 or 15時間の酸素療法に割り振られた。
プライマリーアウトカムは 、 time-to-event analysisで、1年以内の入院や死亡。セカンダリーアウトカムは、3ヶ月と12ヶ月時点のプライマリーアウトカムの状態。


【結果】
241人の患者を無作為に振り分けた。1年後の死亡率は、24時間と15時間で差はなかった。
入院や死亡、有害事象に関しても両グループに差はなかった。

【考察】
重度の低酸素血症のある患者において、24時間の長期酸素療法の使用は、1年以内の入院や死亡リスクを軽減しなかった。

2026/10/08

動作時低酸素のある間質性肺疾患(ILD)に対する酸素療法の効果 ー酸素供給は必要か?ー

Ambulatory oxygen for treatment of exertional hypoxaemia in pulmonary fibrosis (PFOX): a multicentre, randomised, sham-controlled trial

The Lancet Respiratory Medicine, 2026; 14, 317-326


【intro】
・線維性間質性肺疾患(ILD)は、動作時の息切れ、身体機能やHRQOLの低下を特徴とする疾患である
・動作時低酸素血症は、ILD患者の50%以上に生じている
・動作時低酸素は、日常生活における息切れの増強と身体活動の低下と関連している
・動作時低酸素は、肺機能と独立して、死亡リスクを4倍にし、肺高血圧の予測因子でもあり、それ自身が強い死亡の予測因子となる
・ATSの在宅酸素ガイドラインにおいて、在宅酸素療法は、低酸素血症のあるILDや肺高血圧症の患者に推奨しているが、この推奨事項の研究では、無作為化されていなかった
・目的は、肺線維症動作時酸素トライアル(PFOX)で評価した動作時酸素療法と空気の使用の効果を6ヶ月間比較すること。

【methods】
・オーストラリアとスウェーデンの病院で行ったランダム化比較試験
・適格基準は、18歳以上の線維性ILDと診断された患者で、高解像度CTにて10%以上の線維性変化を認めた患者
・臨床的に安定(3ヶ月間薬剤の変更がない)している
・低酸素血症の定義:室内気で行なった6MWTにて10秒以上SpO2≦88%
・除外基準:すでに長期酸素療法を使用している、(安静時PaO2≦55mmHgもしくは右心不全があり56−59mmHg)、現喫煙者、妊娠、過去30日以内の急性期病院入院歴、期間内に死亡もしくは移植が見込まれる、歩行不可

○randomisation and masking
・適格基準に該当した参加者を1:1の割合で、酸素供給使用(intervention)と空気使用(sham)に分けられた。
・デバイスは、携帯型濃縮機(Inogen One G3HF)を使用。shamグループには、ガス供給以外の外観や操作などが全て同じものを提供。
・参加者、研究者はどちらのグループなのかはマスクして実施

○procedures
・携帯型濃縮機を追跡期間の6ヶ月の身体活動(歩行、地域活動、運動など)において使用してもらう、flowは5で統一
・座っているときや就寝時は使用しない
・評価のタイミングは、ベースライン、3ヶ月、6ヶ月
・評価項目は、室内気での6WMT、HRQOL(SGRQ、King's Brief Interstitial Lung Disease Questionnaire)、息切れの評価としてDyspnea-12。疲労感はFatigue Severity Scale、不安抑うつはHADs。身体活動は、Step WatchとGENEActivを使用。
・携帯型濃縮機の利用状況を記録

○アウトカム
・プライマリーアウトカムは、3ヶ月後に歩数で計測した身体活動のベースラインからの変化量
・装着8時間未満もしくは200歩以下は解析から除外
・足首に装着し7日間連続で測定。平均歩数を使用
・セカンダリーアウトカムは、HRQOL、疲労感、息切れ、不安抑うつ、中高強度の身体活動、座位時間のベースラインからの変化

○統計解析
・ITT(Intention -to -treat)にて解析
・線形混合モデルで持続エンドポイントを解析
・両グループでベースラインからの身体活動の変化を比較
・調整変数にベースラインの6MWT時の最低SpO2(80%未満か、80%以上か)をモデルに投入

【Results】
・3ヶ月後、6ヶ月後のベースラインからの歩数の変化量は、酸素と空気グループに統計的な差は認めなかった(fig2)
・息切れ症状も統計的な差はなく、空気グループの方がむしろ良好な結果
・FVCの低下は、酸素グループの方が低下が大きい傾向だったが統計的な差は無かった
・IPFとIPF以外のILDで解析しても同様の傾向であった

・ポータブルデバイスを中断した理由:患者からの申し出、メリットが感じられない、長期酸素療法開始、体調がすぐれない、旅行、火への安全性、重たい

【Discussion】
・線維性ILD患者に対して、携帯型濃縮機を使用した結果、空気グループと比較して身体活動の有意な改善は認めなかった。息切れや疲労感、HRQOL、不安・抑うつに対しても酸素の優位性は認めなかった。
・ILDにおける歩数のMCID(プラス570歩)は、3ヶ月と6ヶ月の群間差の95%CIの上限を超えている→酸素投与による身体活動向上への臨床的な効果は乏しいと考えられる
・日常生活におけるSpO2<88%の時間は、酸素使用によって変化はなかった。最大流量にしていたが、対象者には不足していた可能性が考えられる。
・低酸素血症のあるILDに対して、酸素使用は推奨されているが、日常生活での効果についてのエビデンスは乏しい
・酸素使用により2週間程度の短期間での運動耐容能向上は報告されているが、長期間の使用の効果についての報告はない。これはCOPDでも同様の報告がある。
・これらの報告を総括すると、酸素使用は、効果が不確実であり、患者への負担も考えられるため、患者と医療者が共同して意思決定をしていく必要がある。
・酸素供給方法と酸素濃度について:運動時の呼吸数(30回)を想定した肺モデルにおいて、5L/minを使用した際、連続流量の方がFiO2が高い(0.3 vs 0.24)。それにもかかわらず、肺胞酸素量は同様であった。これは解剖学的死腔における酸素滞留が影響していると考えられる。
このメカニズムが、供給されるFiO2がより高いにもかかわらず、運動中のSpO 2低下に対して同様の影響をもたらす一因となっていると考えられる。

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息切れ症状の改善効果は限定的。活動量は増えない。酸素流量が十分でなかったから?5Lでも足りなくて、重たいし活動量減るし。。良いことなさそうにも思える。
酸素療法を提供する意義を再考する時期なのかもしれない。

2026/10/03

COPDに対する呼吸リハの効果と費用対効果のreview

 Review of the Evidence for Pulmonary Rehabilitation in COPD: Clinical Benefits and Cost-Effectiveness


Respir Care. 2024;69(6):686-696. Published 2024 May 28. doi:10.4187/respcare.11541



【Abstract】
COPDは、よく見られる致命的な慢性疾患であり、世界中の主な死亡原因の一つであると認識されている。特に高齢者においては、高い罹患率と活動制限と関連している。
この疾患の経過は、安定期と増悪期があり、呼吸状態の悪化が医療機関の利用や死亡リスクの上昇と高い関連を示している。
治療は、薬物療法が主体であるが、完璧な効果ではない。呼吸リハビリテーション(PR)は、慢性呼吸器疾患における重要な医療介入である。
PRは、個別的であり、漸進的な運動療法、教育、自己管理教育など、包括的で多面的なプログラムである。
PRの効果は、運動耐容能、健康関連QOL、息切れの改善である。
さらに、PRは再入院や1年後の生存率の改善にも影響するとされる。
このような臨床的な効果に加えて、PRは費用対効果に優れた介入であると推定される。
これらの効果があるにも関わらず、PRの参加率は未だ低い。
このレビューでは、安定期COPDと増悪後の回復期COPDにおいて、これらのドメインにPRがどのような効果があるのかを検証した。

【intro】
・COPDはアメリカで2400万人が罹患しており、全世界の40歳以上の10%が罹患しているとされている(GOLD2021)
・薬物療法は、吸入や抗炎症作用のある吸入などが症状改善をもたらすが、完璧ではない
・呼吸リハは、COPDにおいて最も有効な治療の一つである
・呼吸リハは、個別的な運動療法、長期的な行動変容を目標にした身体活動向上自己管理教育など多面的な介入である
・リハの効果は、運動耐容能向上、息切れ、QOLの改善である
・COPD入院後にリハに参加することは、再入院減少や1年以内の生存率向上に寄与する可能性がある
・アメリカでメディケア受給者(65歳以上、特定疾患患者など)のうち、リハを行っているのはわずか3%であり、世界的にも参加率は低い。

【運動耐容能の効果】
・COPD患者の運動制限の要因は、骨格筋機能異常、動的肺過膨張、呼吸負荷増大、ガス交換異常、加齢による機能低下、ディコンディショニング、併存疾患の状態とされる。
・運動療法は、骨格筋の酸化能や換気応答の改善をもたらす
・評価は、6MWTやISWTで行われる
・6MWTのMCIDは30mとされる(ERS and ATS)
・ISWTのMCIDは35m、運動負荷試験では4Wとされる

【QOLと息切れ】
・QOL向上は呼吸リハの目標の一つであり、症状の軽減や参加の向上が寄与する
・SGRQが疾患特異的な評価としてよく用いられ、MCIDは4ポイントとされる
・4週間の呼吸リハは、SGRQを6ポイント改善させた
・増悪後3週間以内に呼吸リハを開始することでもQOLの改善が得られた

【COPD関連入院の呼吸リハの効果】
・疾患の経過において多くの患者が増悪を経験し、年間150万件の救急受診、70万件の入院が生じている
・入院患者のうち、1/5は30日以内の再入院を経験し、65歳以上のうち64%は退院1年以内の再入院を経験していた
・COPD増悪による経済負担は、全米におけるCOPDの年間直接費用500億ドルのうち、132億ドルを占めている。
・呼吸リハは再入院のリスク因子に対する重要な介入である(身体不活動の改善、薬剤の適正使用、服薬アドヒアランス、行動変容支援など)
・増悪後3週間以内に呼吸リハを開始すると、再入院オッズが56%低かった(OR0.44,95%CI 0.21-0.91)

【死亡率への呼吸リハの効果】
・増悪入院は、死亡リスクを上昇させ、退院1年以内の死亡率は26%であった
・増悪後3週間以内に呼吸リハを開始すると、死亡リスクは32%減少したが、統計的な有意差は認めなかった(2016 Cochrane)
・入院48時間以内の早期介入の効果を検証した研究(Greening et al. )では、6週間毎日行った。その結果、1年後の死亡率は、早期介入の方が74%高かった。介入から5ヶ月以上経過した結果であり、リハと死亡率の因果関係は不明としている。また、この研究において、入院期間が中央値5日であり、入院中の介入は、呼吸リハと整合していなかった。
・ERS/ATSは、呼吸リハを退院後3週間以内に開始することを推奨し、入院中は推奨しないことを示した。(おそらく、高強度などの運動や負荷を厳密に設定した運動という意味かと。)
・2016年のcochraneでは、呼吸リハを行うことが死亡率改善に有効である統計結果を示した(OR0.50、95%CI 0.26-0.99)
・最近のRCTでは、COPD増悪入院の期間中もしくは4週間以内にリハを開始すると死亡リスク減少を示している(相対リスク0.58 95%CI 0.35-0.98)
・死亡率に関する結果は、異質性があり、バイアスリスクが認められ、中等度のエビデンスとした。
・退院後、いつ呼吸リハを開始するのが良いか?退院後30日以内(HR0.43)、31−60日(HR0.43)、61−90日(HR0.40)で比較
 →PRを行わなかった、もしくは90日以降に開始した場合と比べて、上記いずれの期間に開始しても死亡率減少効果は得られた。

【呼吸リハの費用対効果】
・費用対効果についての効果は十分にわかっていない
・アメリカのヘルスケアシステムにおける呼吸リハの費用対効果分析では、費用対効果の効果は単純ではないが、コスト削減は認める結果だった
・COPD増悪入院後に呼吸リハを開始すると、5721ドルのコスト削減が得られ、QALYsは0.53得られた
・このコスト削減は、入院日数の減少と介護施設の在所日数が関連していた
・この効果は、呼吸リハ後1年後に最大化していた(8226ドル)
・呼吸リハが36セッションと仮定すると、1セッションのコストが171ドルであれば費用削減効果が得られた。この結果では、1セッション111.32ドルで計算している。
・171ドルを超える金額では、費用削減効果は得られない。
・!QALYsが50000ドルであれば、1セッション884ドル、1QALYsが100000ドルであれば1597ドルまで費用対効果が得られる計算(fig1)
 →質調整生存年にいくらかけられるかによって、1セッションあたりの値段が変わる。
 健康のために多くの投資ができる人にとっては、金額が高くなってもその金額に見合ったメリットを得られやすいということか。
・呼吸リハの費用対効果は、外来、在宅、遠隔でも有効であることが示されている(Liu et al)
・これらの費用削減できた金額を、呼吸リハに参加するための交通費や自己負担金額の補助に活用できるのではないか
・呼吸リハの提供者は、呼吸リハにアクセスできるような経済的に持続可能な戦略を考慮すべきではないか。

2026/08/28

人工呼吸患者に対するベッド上サイクリング+通常理学療法の費用対効果

Cost-Effectiveness of In-Bed Cycling and Routine Physiotherapy for Patients Receiving Mechanical Ventilation


JAMA Netw Open. 2025 Sep 2;8(9):e2529399. PMID: 40920382



【背景】
ICUの死亡率は減少しているが、多くの生存者は、身体的な機能障害を抱えて退院している。
ICUにて人工呼吸を行っている患者は、筋力低下(特に下肢)を生じ、1日あたり2%の筋肉量が低下する。
これらの問題に対して、リハビリテーションとしてベッド上でのサイクリングが行われることがある。
33件のRCTを対象にしたmeta-analysisでは、サイクリングは身体機能の改善や入院日数、ICU滞在日数の減少に有効かもしれないと報告されている。
ICUでのリハビリが臨床的に有効であるデータはあるが、経済的な評価についての報告は見当たらない。
目的は、サイクリングと通常の理学療法 vs 通常の理学療法のみの費用対効果を比較すること。

【方法】
サイクリングと通常の理学療法の効果を比較したCritical Care Cycling to Improve Lower Extremity Strength (CYCLE)のデータを使用

介入: サイクリング+通常理学療法は、人工呼吸器を初めて4日以内にサイクリングを開始。
サイクリングは、通常の理学療法に加えて30分実施。頻度は、平日全てで実施(週5日)。
サイクリングは、患者が2日連続でのその場での足踏み、ICU退室、在室日数28日のいずれかが達成するまで実施。

通常理学療法: 個別に実施。ROMや筋力維持、離床、歩行、排痰介助などを患者の状態に応じて実施。

費用の計算:2024年のカナダドル(CAドル)で計算(Ⅰカナダドル=0.73USドル)
介入の実施コストを見積もるため、試験データを用いて、各サイクリングセッションまたは通常の理学療法セッションの提供に関与した理学療法士の数を特定するとともに、各患者におけるサイクリング、理学療法セッション、およびベッド上での自転車設置・撤去時間(該当する場合)の合計所要時間を算出した。

人件費:カナダ オンタリオ州のPTの平均時給を1日の介入時間と掛け合わせて算出(時給57.03C Aドル、福利厚生費30%含む。=41.63USドル =1ドル150円とすると6244円)

入院費用:ICU入室日数と在院日数を基に算出。
日々の患者のコストは、カナダ オンタリオ州ハミルトンの3つ病院での63名の研究を基に1日あたりの原価コストを使用(ICU=3426CAドル、一般病棟=1120カナダドル)
この原価コストには医師の人件費が含まれていないため、追加して計算した。

退院後のデータ:医療機関の利用の有無、退院90日以内の生存率、生活環境について聴取

医療経済的評価:quality-adjusted life-years (QALYs)を使用
EQ-5DはICU退室時、退院時、退院後外来にて取得。
QALYはタイムポイント(退院やフォロー時点)間の曲線下面積で算出した。


【結果】
360人が対象。
費用分析
機器の導入コスト:患者あたり136CSドル(機器は25000CAドルを5年で支払う。年36.8人の患者が使用)。
入院コスト:サイクリング+通常理学療法は66554CAドル、通常理学療法のみは61935CAドル。差額は4619CAドル。
90日のフォローコスト、合計コストも統計的な違いはなかった。

費用対効果:ブートストラップ再サンプリングの42%において、「サイクリング+通常理学療法」は「通常の理学療法単独」に支配された(費用が高く、QALYsは少なかった)。
費用対効果受容曲線(ず3)に示す通り、1QALY獲得あたり50,000カナダドルの支払い意思閾値において、「サイクリング+通常理学療法」が費用対効果的である確率(費用対効果に優れている確率)は0.19であった。

【考察】
サクリング+通常理学療法は、入院費用指標がわずかに増加していた。
2つのグループ間の90日間のコストとQALYsに明らかな違いは認めなかった。
限られた医療資源の文脈において財政配分を支える費用対効果分析の役割が高まっていることから、意思決定に役立てるために、QOLや経済に関する情報をRCT(ランダム化比較試験)と並行して収集することが重要である。集中治療領域において、同様の先行研究が1件あるが、高用量・早期の積極的離床と通常の離床ケアの間で、費用およびQALYに差がないことが示されている。

2026/05/02

喫煙と運動耐容能、身体活動、QOLの関連

Smoking status and its relationship with exercise capacity, physical activity in daily life and quality of life in physically independent, elderly individuals. 

Physiotherapy. 2015 Mar;101(1):55-61.  



<目的>

60歳以上の高齢者における喫煙歴と運動耐容能や日常生活での身体活動の関連を調べること。


<方法>
154例の高齢者を喫煙歴で4つのカテゴリーに分けた。
非喫煙者(n=57)、受動喫煙(n=30)、元喫煙者(n=45)、現喫煙者(n=22)

アウトカム:
運動耐容能=6MWD
身体活動=歩数
健康関連QOL=SF-36

<結果>
現喫煙者と元喫煙者は、非喫煙者よりも運動耐容能が低かった。
身体活動は違いはなかったが、現喫煙者において、ニコチン依存のレベルと負の相関を示した(ニコチン依存が高いと活動量が低い傾向)
SF-36の精神スコアは、受動喫煙と現喫煙者で低値を示した。

<考察>
高齢者において、現喫煙者は非喫煙者よりも運動耐容能が低かった。
身体活動はグループ間で違いはなかったが、喫煙との関連を示した。
タバコに曝露されることは、身体面と独立してSF-36の精神機能のスコアが悪いことと関連していた。


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あくまで相関、関連があったという結論であり、因果関係までは不明。
しかし、吸うひとは吸わない人(受動喫煙)にも悪影響を及ぼす可能性があることは重要な結論かと。

2026/04/17

長期酸素療法を行っている患者の座位時間と認知機能障害

Sedentary Time and Cognitive Impairment in Patients Using Long-Term Oxygen Therapy: A Cross-Sectional Study

Int J Environ Res Public Health. 2022 Feb 2;19(3):1726.


【背景】
身体不活動は慢性呼吸器疾患において死亡の予測因子である。
認知機能障害も呼吸器疾患患者によく見られる。
目的:長期酸素療法を行っている患者における座位時間と認知機能障害の関係を調査すること

【方法】
対象:長期酸素療法を行っている慢性呼吸器疾患患者96例
平均年齢77.3歳
身体活動量:IPAQで評価した座位時間
認知機能評価:MoCA
息切れ:mMRC

【結果】
座位時間の中央値は600分
MoCAの中央値は24ポイント
67例(70%)が軽度認知機能障害を有していた
多変量回帰分析にて、座位時間が息切れ、認知機能障害と独立して関連していた。

座位時間と認知機能障害、息切れに関連があるかも・・?

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limitationにも書いてあるが、因果関係を示すものではないが、何かしら関連はありそうな要素だなと。

2026/04/12

IPFにおける身体活動性の低下と肺生理学的な変化の関連

Physical activity decline is disproportionate to decline in pulmonary physiology in IPF. 

Respirology. 2021 Dec;26(12):1152-1159. 


【背景、目的】
IPF患者の日常の身体活動性は低下している。
疾患の進行度との関連は知られていない。
目的は、
1)12ヶ月の身体活動性の変化を追跡
2)疾患重症度マーカーやQOLとの関連
3)身体活動性の予測ツールの検討

【方法】
54例のIPF患者で、身体活動評価をベースライン、6ヶ月、12ヶ月に行なった患者
活動量は、sense wear armbandを連続した7日間装着
その他の評価項目は、HADS(不安、抑うつ)、SGRQ、Leicester咳評価、FVC、DLCO、6MWD

【結果】
平均歩数:ベースラインは3887歩、12ヶ月後の歩数は3326歩(p=0.02)
活動性の低下と12ヶ月後の総エネルギー消費量は、12ヶ月後に著明に低下
12ヶ月後の歩数の減少は、肺機能の低下よりも大きい割合を示した
歩数の変化は、%FVCや6MWDと弱い-中等度の相関を示した
歩数の変化は、長期予後とは関連はなかった

【考察】
IPFにおいて、12ヶ月後の歩数の減少は著明であり、肺生理学的な現象との低下とは不釣り合いだった。
疾患の進行を評価するのには有効な指標かもしれない。


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歩数は1年間で減少傾向なのは理解できる。
肺機能の低下とはさほど強い相関がなかった。。肺活量も多少関連があるのでしょうけど、それ以外の活動習慣や身体機能の方が身体活動性には関連がありそうな気もします。
この論文からは、4000歩程度歩ければ上出来と言ったところか。

2026/04/05

6MWD中の低酸素は、予後不良

Factors Associated with Exercise-Induced Desaturation in Patients with Chronic Obstructive Pulmonary Disease.

Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2020 Oct 23;15:2643-2652. 


<背景、目的>
6MWTはCOPD患者の身体機能の評価に有用である。
近年、6MWT中の低酸素が増悪や死亡リスクを悪化させる可能性が示されている。
この研究では、運動時低酸素(exercise induced desaturation:EID)が、リスク因子となるかを検討することである。

<方法>
2013年から2017年の間にデータベース研究への参加を承認した成人COPD患者が対象
評価項目は、年齢、性別、BMI、既往歴、薬物療法、肺機能検査

<結果>
1768例のCOPDが対象
932例(52.7%)でEIDを認めた
836例(47.3%)でEIDを認めなかった

EIDを生じていたグループは、6MWDがより短かった(352m VS 426.5m)
多変量ロジスティック回帰分析の結果、高齢、女性、1秒量の低下、心房細動(Af)の存在が、6MW T中の低酸素を予測した
EIDグループは、1年間の増悪頻度が多かった(0.59回 vs 34.13%)
afのあるCOPD患者は、1年間のうちに、入院や増悪の日がより高かった。

<考察、まとめ>
本研究では、高齢、1秒量が低いこと、女性は、EIDのリスク因子でっあった。
6MWT中の低酸素血症は、1年以内の頻回なCOPD増悪と関連していた。

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低酸素の弊害として予後や増悪との関連があるのかも?
低酸素だから増悪するのか、低酸素によって低活動になりやすいために増悪するのか。。

2026/02/04

酸素療法による運動能力向上は予後と関連しない

Exercise response to oxygen supplementation is not associated with survival in hypoxemic patients with obstructive lung disease.

 Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018 May 17;13:1607-1612. 



<目的>
動作時低酸素血症のある患者において、酸素療法による運動への反応、効果を予測できるかを検証すること。

<対象>
室内気(RA)と酸素使用にて2回6MWTを行った患者
全ての患者は、RAにて低酸素血症(4%以上の低下もしくはSpO 2<88%)を認めた
酸素療法によるレスポンダーの定義:MIDである26m以上の改善があった患者

<統計解析>
student t検定:背景比較
t検定:酸素付加ありとなしで6MWTのパラメーターの比較
カプランマイヤー検定とlog-rankテスト:酸素療法の反応と生存時間の比較
Cox回帰モデル:死亡率に最も影響する変数を同定

<結果>
174例の患者が対象(男性50%)、平均年齢70歳
疾患の内訳:COPD116例、気管支拡張症44例、重症喘息13例
長期間酸素療法の内訳:長期酸素療法使用80例、動作時のみ酸素使用90例

酸素療法による6MWDの比較
酸素付加:平均6MWDは254m→283mに改善、MID達成77例
息切れmBorgscale:平均1.4ポイント改善
MID達成の予測因子:RAでの6MWDが短いこと(ロジスティック回帰分析)

生存期間
平均生存期間:66ヶ月、84例が亡くなっていた
酸素療法の反応と死亡率に有意な差は見られなかった
死亡リスクの予測因子:6MWTでの低酸素が著明、RAでの6MWDが短い、男性、低BMI、低ヘモグロビン
気流閉塞(肺機能)との関連は認めなかった。

2026/01/28

嚢胞性肺線維症における運動療法の効果 SR and MA 2022

Effectiveness of Physical Exercise Interventions on Pulmonary Function and Physical Fitness in Children and Adults with Cystic Fibrosis: A Systematic Review with Meta-Analysis

Healthcare (Basel). 2022 Nov 3;10(11):2205.

PMID: 36360546


<目的>
運動療法は、嚢胞性肺線維症cystic fibrosis (CF)の治療において、いくつかの有益な効果があり、死亡率減少と関連している。
小児もしくは成人のCF患者における運動療法の身体機能、肺機能への効果を検証すること。


<結果>
・肺機能
1秒量は変わらない。吸気圧と呼気圧(≒呼吸筋力)は改善
・運動機能
小児において最大酸素摂取量の改善はなかったが、筋力の改善を認めた。
成人において、高強度有酸素運動は、最大酸素摂取量と筋力の改善を認めた。

<考察>
小児および成人のCF患者において、運動介入は、筋力、心肺予備能、呼吸機能の改善を認めた。
しかし、肺機能の十分な改善は得られなかった。
最も有効なプログラムは、筋力もしくは心肺高強度インターバルトレーニングであるが、データ数は限定的である。

2026/01/22

酸素療法のレスポンダー

 Does correction of exercise-induced desaturation by O(2) always improve exercise tolerance in COPD? A preliminary study

Respir Med. 2008 Sep;102(9):1276-86.


●summary
Reserch Question:運動誘発性の低酸素血症を補正することは、COPD患者の運動耐容能や心肺適応能力の向上に寄与するか?
運動負荷試験での連続運動時間が、酸素投与の有無で変わるかで評価


【対象、方法】
中等度から重度のCOPD患者25例
軽度の低酸素血症を呈す(安静時SpO2よりも4%以上の低下かつ漸増運動負荷試験で3分間以上SpO2<90%の時間がある)
除外:運動テストを行えない、病状不安定(過去2ヶ月以内の増悪歴)、長期酸素療法使用

・運動誘発性低酸素血症の定義
安静時よりも4%以上のSpO2低下
漸増運動試験で3分間のSpO2<90%あり

・漸増運動試験
エルゴを使用した漸増運動負荷試験
最大運動負荷(Wpeak)、最大酸素摂取量(VO2 peak)の既定、運動時の低酸素血症の探索を目的に実施

酸素療法のレスポンダーを同定する方法
・定常運動負荷試験
運動負荷試験で得られたWpeakの60%負荷で4回実施
室内気(air)と酸素投与の状況をランダムに2回ずつ実施
ペダルの回転数は50-70rpm
SpO2、息切れ、疲労感、持続時間(Tlim)を測定
実施中のSpO2が90-95%を維持できるようにFiO2を調整

・自覚症状(息切れ、下肢疲労感)の評価
VASを使用
客観的な下肢疲労感の評価のために表面筋電計で評価

・酸素療法のレスポンダーの定義
ネガティブレスポンダー(R-,酸素に反応しなかった)基準
→室内気のTlimよりも酸素投与しても10%以上Tlimが短かった(=酸素投与しても連続運動時間が変わらないor短かい)
ポジティブレスポンダー(R+,酸素に反応した)基準
→室内気のTlimよりも10%以上Tlimが長かった(=酸素投与することで連続運動時間が長くなった)

この10%という基準は、Jollyの基準( Effects of supplemental oxygen during activity in patients with advanced COPD without severe resting hypoxemia)に従って定義したとのこと

【結果】
R+は14例、R-は7例,酸素付加してもTlimが変わらなかったのが4例
R+はTlimが68%増加
R-は、低酸素血症や運動強度が同程度にもかかわらず、室内気の方がより長く運動できていた。

●酸素療法のレスポンダーの違いは?
R+の方が、呼吸数や換気量が低かった。
循環動態では、心拍数と心拍出量が少なかった。
:酸素投与により呼吸数や心拍数が少ない方が酸素療法による持続運動時間を延長が見込める?

なぜ?
→中枢神経系の受容体の影響がこの現象を説明できる。
末梢化学受容体は、酸素療法によって刺激される。この刺激は、脊髄内の呼吸中枢や循環中枢への求心性の反応を活性化させる。
この反応が症状の自覚を減少させ、換気や心臓の反応を減少させた。
→呼吸数が減少することで、動的肺過膨の減少に影響し、換気予備量を増大させることで、息切れ症状の緩和に影響したのではないか。


2025/09/14

肺切除術後の入院中の活動量

 Evaluating patients’ walking capacity during hospitalization for lung cancer resection

Interactive CardioVascular and Thoracic Surgery 25 (2017) 268–271


Patients
50人の患者(33人男性)
ポータブル加速度計を入院期間中装着
術前補助化学療法や放射線治療を行っていた患者は除外

Exposure
理学療法プロトコルに準じて介入
・術後1日目:15分のエルゴを2回/日
歩行は制限なくできる限り歩くよう指導
・加速度計は入院から退院まで装着
 毎分60歩の歩行を10分継続していたら、有酸素モードに自動で切り替わる
 →通常歩行と有酸素運動の時間、歩数を分けて換算できるよう。

評価項目は、年齢、性別、BMI、切除範囲、心肺術後合併症、術前肺機能、術後予測肺機能、DLCO、歩数、歩行距離。

Comparison
個別の術前、術後の活動量
心肺合併症の有無

Outcome
平均年齢64歳、平均BMI26.9
胸腔ドレーン抜去は、平均2日後、エピ抜去は平均3日後

・歩数
術後1日目:平均5738歩
術後4日目:平均10230歩

BMIと術前と術後の運動能力に関連は無かった。
術後合併症を生じた例(7例)では、術前、術後ともに歩行距離は短かった。


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術後1日目でエルゴ15分、5000歩の歩行ってなかなかハードな印象
60歳代の術後だとこれくらいはできるのだろうか。

2025/09/12

6MWDと5回起立、30秒起立の関連、カットオフ

 A comparative study of the five-repetition sit-to-stand test and the 30-second sit-to-stand test to assess exercise tolerance in COPD patients

Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018 Sep 10;13:2833–2839.



目的
起立テストはCOPDの運動耐容能評価で用いられるが、どの起立テストが運動耐容能の低下を予測するのか、比較したものは無い。
5回起立(5STS)、30秒起立(30STS)を比較し、どちらが6MWD低下を予測するかを検証した。

Population
 安定期COPD患者128例

Exposure
 5STSと30STSを行い、その際の息切れmBorg Scaleを質問
 その他の評価項目:肺機能、mMRC、CAT、大腿四頭筋力(QMS)

Comparison
 対照群はなし

Outcome
 6MWDやその他評価と5STS,30STSの相関
 6MWD<350mを予測する5STSと30STSのカットオフを算出


【結果】
・相関
5STSと30STS:negativeな強い相関(r=−0.783, P<0.001).
5STSと6MWD:(r=−0.508, P<0.001) 
30STSと6MWD:(r=0.528, P<0.001)

・6MWD<350mを予測するカットオフ
5STS:6.25秒(感度76.0% 特異度62.8% AUC0.731)
30STS:21.5回(感度62.0% 特異度75.0% AUC0.724)

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5STS 6.2秒って結構速いなという印象。
30秒の方が持久力反映するのかと思いきや、思ったよりも相関係数に差が無かった。

2025/06/25

転移性小細胞肺がん 運動耐容能、運動習慣の予後的意義

Prognostic significance of functional capacity and exercise behavior in patients with metastatic non-small cell lung cancer

Lung Cancer. 2012 May;76(2):248-52.


Population
 StageⅢB、Ⅳの再発転移(手術不能)NSCLC患者118例
 平均年齢61±10歳、BMI26 6MWD 396m

Exposure
 運動機能評価:6MWT
 運動習慣(行動):自己記入式で評価(the leisure score index (LSI) of the Godin Leisure-Time Exercise Questionnaire (GLTEQ))
(LSIとは・・ 通常の1週間での軽度、中等度、高強度の活動を質問し、それぞれの強度ごとに平均的な頻度、時間を調査する。総運動時間、各強度ごとの運動頻度を算出。単位はMETs-hour/week.)
 3METs:軽度、5METs:中等度、高強度:9METs

Comparison
 運動機能と運動習慣、生存との関係について解析
 PS2以上と未満に分けて、6MWDと運動習慣の生存予測への寄与を評価するCOXモデルを構築

Outcome
 運動機能、運動習慣、生存期間
 フォロー期間は、中央値26.6カ月。この間に77例が死亡(65%)
 6MWDを3分位すると、中央値283m(90-356.8m)、中央値416m(358.5-450m)、中央値510m(452-640m)。
 6MWDは生存の独立した予測因子であり、50m改善するごとに、死亡リスクは13%減少
 6MWD<358.5mと比較した、調整された危険率(adjusted hazard ratio)は、358.5-450mは0.61、450以上は0.48
 運動行動(身体活動)と予後に関連は示されr、9MWTs-hour/week未満は12.89カ月、9METs-hour/week以上は25.63カ月生存していた。

新規性:6MWDのよう運動機能評価が、これまでリスク因子とされていたもの(PS)よりも生存を強く予測した。

運動機能評価が、有効ないくつかの理由
・PSでは測定できない、ATP合成のためのO2輸送および心血管系と骨格筋系の統合能力を評価しており、この酸素輸送効率は、人間が健康を長く維持するために重要な要素の一つである。
・運動のエンドポイント(最大酸素摂取量や6MWD)が、心血管系など様々な臨床現場で利用されており、全死亡原因を強く予測しカットオフポイントも報告されている。
・運動能力評価は、治療介入にもなり得る

9METs-hour/weekとはどのくらい?
週合計で9METsの身体活動
・普通のウォーキング(4.0km/h 3METs 30分 週6日)
・毎日ラジオ体操(4.0METs 15分 週6日)+軽いスクワット(3.0METs 20分 週3回)

これなら習慣になればできそうな気もします。

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運動能力評価と合わせて身体活動の評価も重要である
9METs-hour/weekは、実現可能な感じもするが、6MWD380mというのは絶妙に活動能力が変わりそうなラインな印象(動けなくはないけど、ちょっと運動能力は低い方かな)。

2025/06/24

cancer surviverの身体活動レベル(IPAQ)と関連する因子

Associations among physical activity, comorbidity, functional capacity, peripheral muscle strength and depression in breast cancer survivors

Asian Pac J Cancer Prev. 2015;16(2):585-9.


目的
 乳がんサバイバーにおいて、身体活動レベルと関連する因子(併存症、運動耐容能、骨格筋力、心理状態)を調べる事。

Population 
 20-60歳、Stage1-2で化学療法を行った40人のがん患者。
 少なくとも3年前には治療が完了している。
 
Exposure 
 なし

Comparison 
 なし

Outcome
 身体活動:IPAQ
 骨格筋力:大腿四頭筋の等尺性収縮筋力
 運動耐容能:6MWT
 心理状態:HADS(不安、抑うつ)
 併存症:Charlson Comorbidity Index


結果:
 身体活動は、40%が不活動、57.5%は最小の活動、2.5%が十分活動的
 IPAQ歩行スコア大腿四頭筋力、HADS抑うつスコア、併存症スコアに相関あり
 IPAQ合計スコアと大腿四頭筋、HADS抑うつスコアに良い相関あり
 6MWTはどの項目とも関連が無かった
 回帰分析で、大腿四頭筋力と心理状態は、身体活動レベルを予測する因子であり、二つを合わせると身体活動レベルの35%を占めている。


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身体活動≠運動耐容能
筋力、抑うつ状態の方が活動量と関連が強かったと。

2025/06/20

COPD合併肺癌の術後運動療法の効果

Effect of postoperative exercise training on physical function and quality of life of lung cancer patients with chronic obstructive pulmonary disease: A randomized controlled trial

Medicine (Baltimore). 2024 Mar 8;103(10):e37285.


Population
肺癌(非小細胞肺がん)とCOPDの両方を診断されている84例。
無作為に運動グループとコントロールグループに振り分け。

Exposure
両グループとも術後1週間は標準的なリハビリを実施
 →早期離床、咳嗽、呼吸法、酸素療法、ネブライザー

その後・・
 運動グループ:24回のセッションから構成される運動プログラムに参加
 ⇒エルゴ30分、1日2回、週6日、強度は予測HR20%から始めて60-70%まで段階的に上昇。 

Comparison
 コントロールグループ:必要であれば酸素療法とネブライザーのみ。

Outocome
 ベースラインをオペ3日前、エンドポイントは運動プログラム終了の1日後に評価
 CPET、6MWT、歩数、QOL(EOR-QLQ-C30)

結果:
・CPET(-3.2 vs -1.2、p=.043)、歩行距離(-83.1 vs -48.6、p=.029)、肺機能(FVC; -577.7 vs -378.3。p=.034)、歩数(-2857 vs -1888、p=.002)は、運動グループの方がベースラインからの低下が少ない。
・QOLは有意差なし。

新規性:肺がん+COPDの術後運動療法の効果を検証したRCTであること

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COPD合併していない術後肺癌よりも、運動機能の回復に時間がかかる印象。
1日2回、週6日を24セッション=約2週間 ? 行ってもベースラインから-50mとすると、リカバリーに時間がかかるか。

COPD合併ということは、元の活動量自体も低めだと推測される。ベースの活動量が低いと運動に対する忍容性や反応性も違うのだろうか。

2025/03/24

上肢活動時の横隔膜の姿勢制御に関する働き

Postural activity of the diaphragm is reduced in humans when respiratory demand increases

Journal of Physiology (2001), 537.3, pp.999–1008



・横隔膜とその他の呼吸筋の活動は通常、四肢を動かした時の体幹の姿勢制御のように、その他の活動と同調する。
呼吸運動ニューロンによる2つのインプットの和によって統合が生じるかもしれない。
本研究では、過換気によって呼吸ドライブが増加した時、横隔膜の姿勢活動が変化するかを検討した。

・横隔膜とその他体幹筋の筋電図(ECG)を13人の健常者の筋内電極で記録した。コントロールされた状態で、死腔を増やすような呼吸活動を行い、脊柱の安定性を乱すために50秒間隔で10秒間連続を4set対象者は素早く腕を動かした。

・呼気終末CO2と換気量は最初の60−120秒で増加し、プラトーに達した。死腔換気を始めて素早く腕を動かしている間、筋電図が強直し、呼吸の周波数で変調が重なった。
しかし、過換気を開始し60秒後の上肢活動しているとき、呼気中の緊張性横隔膜筋電図と腕の動きに伴う位相性筋電図が減少または消失した。
同様の変化が呼気の腹横筋でも認められたが、脊柱起立筋では異なっていた。
腹腔内圧の平均変化と腕の動きに伴う位相変化は、60秒の過呼吸の後に減少した。

・本研究のデータは、中枢性呼吸駆動の増加は、運動ニューロンに到達する姿勢指令を減衰させる可能性がある。この減衰は主要な吸気筋と呼気筋に影響を及ぼし、運動ニューロン以前の部位で調整されている可能性が高い。

2025/03/22

術前の運動療法(呼吸リハ)と呼吸理学療法(呼吸練習)の比較。PRの方が術後成績良好。

Preoperative pulmonary rehabilitation versus chest physical therapy in patients undergoing lung cancer resection: a pilot randomized controlled trial

Arch Phys Med Rehabil. 2013 Jan;94(1):53-8.


【目的】
4週間の呼吸リハ(PR) vs 胸部理学療法(CPT)が術前運動耐容能や術後呼吸器疾患へ
影響するかを調査する事。

【方法】
RCT 単盲検。
肺切除術を行った患者(N=24)
無作為にPR(筋力、持久力トレーニング)とCPT(肺伸展のための呼吸練習)に振り分けた。
どちらのグループも教育セッションを受けた。
【メインアウトカムと評価】
4週間のPRもしくはCPT前後の機能的状態を評価(Phase1)。
呼吸器合併症を評価(Phase2)。

【結果】
12人ずつPRとCPTに振り分けられた。
CPTのうち3人は手術不能がんのため手術を行えなかった。
Phase1の期間にて、FVC、%FVC、6MWD、最大吸気圧、最大呼気圧が特に向上した。
Phase2の期間では、PRグループの方が術後呼吸器合併症が少なく、術後入院日数と胸腔ドレーン留置日数が短かった。

【考察】
今回の結果は、肺切除の術前4週間のPRは術後の身体機能を改善し、術後呼吸器合併症を減少させる。