2026/08/28

人工呼吸患者に対するベッド上サイクリング+通常理学療法の費用対効果

Cost-Effectiveness of In-Bed Cycling and Routine Physiotherapy for Patients Receiving Mechanical Ventilation


JAMA Netw Open. 2025 Sep 2;8(9):e2529399. PMID: 40920382



【背景】
ICUの死亡率は減少しているが、多くの生存者は、身体的な機能障害を抱えて退院している。
ICUにて人工呼吸を行っている患者は、筋力低下(特に下肢)を生じ、1日あたり2%の筋肉量が低下する。
これらの問題に対して、リハビリテーションとしてベッド上でのサイクリングが行われることがある。
33件のRCTを対象にしたmeta-analysisでは、サイクリングは身体機能の改善や入院日数、ICU滞在日数の減少に有効かもしれないと報告されている。
ICUでのリハビリが臨床的に有効であるデータはあるが、経済的な評価についての報告は見当たらない。
目的は、サイクリングと通常の理学療法 vs 通常の理学療法のみの費用対効果を比較すること。

【方法】
サイクリングと通常の理学療法の効果を比較したCritical Care Cycling to Improve Lower Extremity Strength (CYCLE)のデータを使用

介入: サイクリング+通常理学療法は、人工呼吸器を初めて4日以内にサイクリングを開始。
サイクリングは、通常の理学療法に加えて30分実施。頻度は、平日全てで実施(週5日)。
サイクリングは、患者が2日連続でのその場での足踏み、ICU退室、在室日数28日のいずれかが達成するまで実施。

通常理学療法: 個別に実施。ROMや筋力維持、離床、歩行、排痰介助などを患者の状態に応じて実施。

費用の計算:2024年のカナダドル(CAドル)で計算(Ⅰカナダドル=0.73USドル)
介入の実施コストを見積もるため、試験データを用いて、各サイクリングセッションまたは通常の理学療法セッションの提供に関与した理学療法士の数を特定するとともに、各患者におけるサイクリング、理学療法セッション、およびベッド上での自転車設置・撤去時間(該当する場合)の合計所要時間を算出した。

人件費:カナダ オンタリオ州のPTの平均時給を1日の介入時間と掛け合わせて算出(時給57.03C Aドル、福利厚生費30%含む。=41.63USドル =1ドル150円とすると6244円)

入院費用:ICU入室日数と在院日数を基に算出。
日々の患者のコストは、カナダ オンタリオ州ハミルトンの3つ病院での63名の研究を基に1日あたりの原価コストを使用(ICU=3426CAドル、一般病棟=1120カナダドル)
この原価コストには医師の人件費が含まれていないため、追加して計算した。

退院後のデータ:医療機関の利用の有無、退院90日以内の生存率、生活環境について聴取

医療経済的評価quality-adjusted life-years (QALYs)を使用
EQ-5DはICU退室時、退院時、退院後外来にて取得。
QALYはタイムポイント(退院やフォロー時点)間の曲線下面積で算出した。


【結果】
360人が対象。
費用分析
機器の導入コスト:患者あたり136CSドル(機器は25000CAドルを5年で支払う。年36.8人の患者が使用)。
入院コスト:サイクリング+通常理学療法は66554CAドル、通常理学療法のみは61935CAドル。差額は4619CAドル。
90日のフォローコスト、合計コストも統計的な違いはなかった。

費用対効果:ブートストラップ再サンプリングの42%において、「サイクリング+通常理学療法」は「通常の理学療法単独」に支配された(費用が高く、QALYsは少なかった)。
費用対効果受容曲線(ず3)に示す通り、1QALY獲得あたり50,000カナダドルの支払い意思閾値において、「サイクリング+通常理学療法」が費用対効果的である確率(費用対効果に優れている確率)は0.19であった。

【考察】
サクリング+通常理学療法は、入院費用指標がわずかに増加していた。
2つのグループ間の90日間のコストとQALYsに明らかな違いは認めなかった。
限られた医療資源の文脈において財政配分を支える費用対効果分析の役割が高まっていることから、意思決定に役立てるために、QOLや経済に関する情報をRCT(ランダム化比較試験)と並行して収集することが重要である。集中治療領域において、同様の先行研究が1件あるが、高用量・早期の積極的離床と通常の離床ケアの間で、費用およびQALYに差がないことが示されている。