2024/06/20

肺がん術後の肺機能と息切れなど自覚症状の経時的変化

Longitudinal changes in pulmonary function and patient-reported outcomes after lung cancer surgery

Respir Res (IF: 3.92; Q1). 2022 Aug 30;23(1):224.


【背景】
手術は、非小細胞肺がんの主な治療であるが、術後の肺機能低下は目立つため、注意が必要である。
この研究の目的は、肺がん術後の統合された患者報告型アウトカム(PROs)と肺機能の縦断的変化を調査すること。

【方法】
620人の患者のうち、
477例(76.9%)が葉切除
120例(19.4%)が楔切除、区域切除
23例(3.7%)は2葉切除、部分切除。

FVCとFEV1.0は、手術2週間で特に低下し、その後回復。
しかし、ベースラインまでは回復せず。
mMRC息切れスコアとCATスコアは、術後は悪化。
葉切除を行った患者の、ベースラインからのFVCとFEV1.0の変化と比べて、2葉切除/部分切除の患者の方が、低下は大きく、楔切除、区域切除の患者は、術後2週間、6カ月、1年後のFVCとFEV1.0の低下は小さかった。
2葉切除/部分切除では、mMRCスコアが、3つのグループの中で最も大きかったが、手術1年後には統計的な有意差を認めなかった。

【考察】
肺がん手術後、肺機能とPROsは低下しており、その後、息切れやエネルギー不足は改善した。
肺がん術後の肺機能と症状の縦断的変化の情報は、患者ケアアプローチに有効かもしれない。


肺がん術後、患者報告型アウトカムの経過

Long-term patient-reported outcomes after non-small cell lung cancer resection

J Thorac Cardiovasc Surg (IF: 5.21; Q2). 2022 Sep;164(3):615-626.e3.


【目的】
患者報告型アウトカム(PROs)は、肺切除術前後の臨床的評価ツールである。
本研究では、術後1年での疼痛、息切れ、機能的状態について評価した。

【方法】
単施設で2017-2020年に肺切除術を行った患者を包含。
PROsには、National Institutes of Health Patient Reported Outcome Measurement Information System (PROMIS)を使用。
データは、前向きに収集し、胸部外科学会のデータと統合した。
多変量線形混合効果モデルを使用し、術前と各術後評価時のPROMISスコアを比較した。

【結果】
肺切除術を行った334人がPROMISを完了した。
疼痛の干渉、身体機能、息切れの重症度スコアは、術後1カ月後悪化していた(p<.001)。
疼痛の干渉と身体機能スコアは、術後6カ月でベースラインに回復。
息切れスコアは、術後1年後も悪化したままであった。
開胸手術を行った患者は、低侵襲手術の患者と比べ、術後1カ月後の身体機能と疼痛干渉スコアが悪化していた。
しかし、術後6ヶ月後のPROsでは、違いは無くなっていた。

【考察】
PROsは、肺切除術前後で患者評価における重要な測定基準である。
患者は、最長で術後1年後も息切れを報告するかもしれない。
さらに、開胸術を行った患者は、最初は疼痛と身体機能の悪化を訴えるかもしれないが、6ヶ月後にはこれらの障害は改善しているだろう。

2024/06/11

オキシマイザーによる酸素投与は運動持続時間、SpO2を(わずかに)改善

A randomized cross-over trial on the direct effects of oxygen supplementation therapy using different devices on cycle endurance in hypoxemic patients with Interstitial Lung Disease

PLoS One (IF: 3.24; Q2). 2018 Dec 28;13(12):e0209069.


【背景】
ILD患者は、運動耐容能が低下が主な特徴であり、息切れや重度の低酸素血症が関連している。
酸素療法は運動中に行われることが多い。オキシマイザーは、リザーバー付きのカニューラであり、より高濃度の酸素を供給できる可能性がある。

目的は、定常負荷試験中のILD患者において、通常のカニューラオキシマイザーを比較し、酸素供給デバイスによる効果を検証すること。
時間ごとのSpO2と息切れ、心拍数を評価すること。

【方法】
長期酸素療法を行っているILD患者24例が対象
最大負荷の70%での定常負荷試験を4回実施(オキシマイザーで2回、カニューラで2回)

【結果】
21人の患者がすべての定常負荷試験を終了
運動持続時間は、オキシマイザーの方が有意に長かった(718秒vs680秒)
時間ごとのSpO2もオキシマイザーの方が有意に高かった(85.5%vs82.8%)
21人中15人がオキシマイザーの方がより長く運動できた。
息切れ、心拍数は、デバイスによる違いは無かった。

【考察】
オキシマイザーによる酸素供給は、カニューラと比べて運動持続時間、SpO2は有意に改善したが、わずかな改善であった。
オキシマイザー ペンダントタイプ
・安静時or動作時に2L/min以上の酸素投与を行っている。
・酸素投与量は、個別の酸素投与量を採用(2-6L/min)。平均すると4L/minだった。

・対象属性:%VC 55.4%、%DLCO 20.1%

抗がん剤治療中の運動は安全に行える。

Aerobic exercise during chemotherapy infusion for cancer treatment: a novel randomised crossover safety and feasibility trial

Support Care Cancer (IF: 3.6; Q3). 2020 Feb;28(2):625-632.


【目的】
運動は、がんと診断された患者にとって強力な補助療法であり、疲労感や健康関連QOLの改善と治療副作用の軽減が得られる。
近年、化学療法点滴中に運動を行うことについて予備的なエビデンスが示唆されており、灌流が強化され、薬物送達が改善され、低酸素微小環境が緩和される可能性がある。
目的は、化学療法点滴中の患者に対して、有酸素運動を行うことの安全性や実現可能性について検討すること。

【方法】
成人(18-60歳)で非吸着性がん治療薬を投与している患者を対象にしたランダム化クロスオーバー試験。
患者は、通常ケアと監視下での低強度サイクリングを20分行う群にランダムに分類された。

【結果】
65%の患者が参加に同意し、運動は有害事象なく安全に実施された。
運動と通常ケアにおいて、患者報告の困難さや快適さのレベルに著明な違いは無かったが、運動は倦怠感を有意に軽減させた。
どちらの介入も経験した症状に有意差は認めなかった。

【考察】
化学療法点滴中の運動は、安全で実現可能であった。
今後の研究で大規模なサンプルサイズでの検討や腫瘍灌流、経験した症状、身体活動向上のきっかけへの影響について検討が必要である。

COPDの座りがちな生活習慣に影響する要因 BMJ open 2024

Influencing factors of sedentary behaviour in people with chronic obstructive pulmonary disease: a systematic review

BMJ Open Respir Res (IF: 2.81; Q1)2024 May 24;11(1):e002261.


【背景】
COPD患者は、座りがちな生活スタイルになっていることが多い。
座りがちな行動が増えると、健康への悪影響や平均寿命の短縮と関連する。

この混合方法(mixed-methods)のシステマティックレビューの目的は、COPD患者の座りがちな行動に影響している要因をまとめること。

【方法】
2023年3月に臨床図書司書(clinician librarian)によるサポートを基にデータベースを検索。
2人の独立した査読者によって論文のスクリーニングを実施
量的および質的データの統合が実施された。

【結果】
1037件が同定され、29論文が採用された(26件の量的研究、3件の質的研究)
多くの研究が先進国(高所得国)で行われていた。
座りがちな行動を促進する共通した要因は、疾患重症度、息切れ、並存症、運動耐容能、酸素療法の使用、歩行補助具の使用、環境的要因であった。
質的研究での詳しい調査の結果、知識の欠如、自己認識やモチベーションが含まれた。
しかし、趣味や活動に参加する際に楽しむために、意識的に座り続けている人もいた。

【考察】
COPD患者で座りがちな行動を促進する要素は多岐にわたっていた。これらの要素を同定し理解することは、今後の介入デザインやガイドラインに採用すべきである。
個々のニーズに合わせた多面的なアプローチは、座りがちな行動を改善する可能性を示した。

2024/06/10

ILDの栄養障害と運動耐容能の関係

Exercise capacity and its relationship with body composition and nutrition status in patients with interstitial lung disease

Nutr Clin Pract (IF: 3.08; Q3). 2021 Aug;36(4):891-898.


【背景】
間質性肺疾患(ILD)は、運動能力が低下していることは知られている。
目的は、栄養状態と体組成の状態が、ILD患者の運動耐容能と関連しているかを検討すること。
副次目的として、ILD患者の栄養状態の代用マーカーとなりえるもの(適切性)を評価すること。

【方法】
疾患重症度は%FVCで決定。
運動耐容能は、6分間歩行距離。
栄養状態は、
the subjective global assessment(SGA)
standardized phase angle (SPhA)
impedance ratio z-score (z-IR)
を使用
生体電気インピーダンス分析で、体組成パラメーターを推定した。

【結果】
79人中45人(57%)が、SGAで低栄養とされた。
FFM index z-score (z-FFMI)、SGAは、疾患重症度と独立して、運動耐容能を予測した。
年齢、低BMI、z-FFMI、body fat mass index z-scoreは、重度の栄養障害と関連していた。
SPhA、SGAグループで著明な違いは無かったが、z-IRが高いと、重度の栄養障害のオッズが上昇した。

【考察】
ILD患者において、栄養障害とFFMの減少は、ADLパフォーマンスに悪影響を及ぼす。

2024/06/09

ILDと栄養状態、QOL

Nutritional status and quality of life in interstitial lung disease: a prospective cohort study

BMC Pulm Med (IF: 3.32; Q2). 2021 Feb 5;21(1):51.


【背景】
栄養失調や体組成の異常は慢性呼吸器疾患にてよく議論される。
しかし、ILDの栄養状態についての情報は限られている。
目的は、3つの診断に分けたILDの栄養状態について調査し、栄養状態とQOLの関係について調査すること。

【方法】
オーストラリア、シドニーの三次紹介病院のILDクリニックで行われた研究。
体重、BMI、身体測定、握力、QOL(EQ-5D、K-BILD)を評価
栄養状態とQOLの関係について分析した

【結果】
90人の患者が対象
3グループに分類
1)IPF
2)膠原病関連ILD
3)その他ILD
年齢中央値66.5歳
患者の4%が低体重、50%が過体重、肥満
握力の中央値は予測の71%で、各QOL評価と関連あり
EQ-5D: (r = 0.376, p < 0.0001)
EQ-5D-VAS:(r = 0.367, p < 0.0001)
K-BILD:(r = 0.346, p = 0.001)
K-BILD合計スコアの分散の23%は、握力と%FVCによって説明された

【考察】
ILD患者の栄養失調は少ないが、過体重や肥満が多数を占めていた。握力はQOLと相関した。
今後、さらにQOLの予測として握力の役割についての検討が必要である。

2024/06/08

COPDにおける運動時の炎症反応

Inflammatory responses to acute exercise during pulmonary rehabilitation in patients with COPD

Eur J Appl Physiol (IF: 3.08; Q2). 2020 Oct;120(10):2301-2309.


【目的】
呼吸リハは、COPD管理の重要な治療である。急激な運動は、健常者において短期的に炎症を発生させる。
しかし、COPDにおける急激な運動の反応については明らかになっていない。
この研究では、呼吸リハ開始時(phase1)と終了時(phase2)におけるCOPD患者の運動における炎症反応を評価する事

【方法】
phase1とphase2において採血を行った。
プライマリーアウトカムはフィブリノーゲン濃度の変化
セカンダリーアウトカムはCRP、リンパ球数の総数と変化、好中球活性化マーカー(CD11b, CD62L CD66b)、好中球サブセット(成熟型、抑制型、未熟型、前駆型)

【結果】
phase1では、フィブリノーゲンやCRPの著明な変化は認めなかった
総リンパ球数、好中球数、未成熟好中球数は運動後に上昇
呼吸リハ開始時と比較すると(phase2)、呼吸リハ終了時は、フィブリノーゲンの著明な反応を認めた

【考察】
急激な運動は、炎症メディエーターの著明な集積を認めず、運動後、白血球サブセットの上昇を認めた。
運動時のフィブリノーゲンの上昇は、呼吸リハ後にも認めた。
今後、これらの急性炎症反応の臨床的な背景についての研究が求められる。