2024/09/27

トレッドミルとエルゴの運動における違い

Perceptual and Physiologic Responses During Treadmill and Cycle Exercise in Patients With COPD

CHEST 2009; 135:384-390

【背景】
エルゴメーターは、呼吸器疾患患者における伝統的な運動方法である。
これは知覚的な反応ではなく、トレッドミルよりも好みの運動であるために用いられている。
我々の仮説は、
1)息切れと酸素摂取量はエルゴよりもトレッドミルの方が高い
2)下肢疲労感とVO2には回帰直線的な関連がある。これはトレッドミルよりもエルゴの方が強い。

【方法】
20人のCOPD患者。エルゴとトレッドミルでの運動中の息切れと下肢疲労感の経時的な変化を記録した。

【結果】
エルゴの方が下肢疲労感と息切れをより早期に感じていた。
最大の息切れの程度はトレッドミルのほうが高かった。一方下肢疲労感はエルゴの方が高かった。
息切れの回帰直線、VO2と分時換気量はトレッドミルの方が高かった。
下肢疲労感とVO2の回帰直線はトレッドミルとエルゴで同等であった。
最大VO2は、トレッドミルの方が高かった。

【考察】
COPD患者において、トレッドミル歩行とエルゴで異なる自覚症状と身体的な反応を示していた。
息切れの程度は、同じVO2レベルにおいてはエルゴの方がより高く感じていたが、身体的刺激(VO2 と VE)としては、トレッドミルの方が高かった。
下肢疲労感はエルゴを行う際の主な症状である。

インターバルトレーニングと持続トレーニングの比較

Effect of interval compared to continuous exercise training on physiological responses in patients with chronic respiratory diseases: A systematic review and meta-analysis

Chron Respir Dis. 2021 Jan-Dec; 18


【背景】
現在のエビデンスは、インターバルトレーニング(IET)と持続トレーニング(CET)は、運動耐容能、心肺機能、症状の改善に有益であるとされている。
しかし、これらの様式は、COPD患者でのみ検証されている。
このメタアナリシスの目的は、慢性呼吸器疾患患者における、IETとCETの運動耐容能、心肺フィットネス、動作時症状への影響について検討する事。

【方法】
2020年9月に各文献サイトを検索。
適格基準は、IETとCETを比較していること、運動耐容能、心肺フィットネス、症状を評価しているもの。

【結果】
13件のRCT(530人の慢性呼吸器疾患患者)がPEDroスケールでfairもしくはgoodの判定をされているものを対象
11件の研究に446例のCOPDが含まれている。
1件は、24例ののう胞性肺線維症(CF)、1件は60例の肺移植待機患者。

IETはCETと比べて、最大運動負荷が改善し、動作時息切れが低かった。
しかし、これらの改善亜h、MCIDまでは到達していなかった。
最大酸素摂取量(peakCO2)、最大心拍数(peakHR)、分時換気量(peakVE)、乳酸値(LAT)、下肢不快感は、両グループに著明な違いは無かった。

【考察】
IETは、CETと比べて運動耐容能の改善と動作時息切れ感が少なく運動が可能であった。
しかし、臨床的有効な改善までは至らなかった。

2024/09/24

短期運動療法+電話でのリマインダーは再入院回数を減少させる

Effect of short-course exercise training on the frequency of exacerbations and physical activity in patients with COPD: A randomized controlled trial

Respirology (IF: 6.42; Q1) 2021 Jan;26(1):72-79.


【背景】
これまでの研究において、COPD急性増悪後の早期呼吸リハプログラムは、再入院を予防し、QOLを改善させることができる安全かつ有効な介入である。
本研究では、AECOPD後に行う定期的な運動療法とリマインダーの電話連絡を含む短期間運動療法が、COPD患者の再入院を減少させ、身体活動量を増加させるのかを検討すること。

【方法】
対象
i)介入群(IG):4-8週の監視下運動療法と2週間おきに自宅での運動療法の継続を支持する電話連絡を行う
ⅱ)通常介入群(UG):専門家による介入を行わない
再入院は、12カ月以内を評価。
身体活動は、活動量モニターを使用して、ベースライン、3カ月、12カ月に評価。

【結果】
136例が対象(IG 68例、UG 68例)
年齢:75歳、男性132例、%FEV1.0 47.0%
12か月間の再入院数 IG vs UG=1.06回vs1.72回
最初の再入院までの日数:146.8日 vs 122.4日
12カ月時点の身体活動量は、両群に違いは無かった。

【考察】
今回のプログラムは、AECOPDの再入院回数を減らし、再入院までの日数を延長させた。
身体活動量と運動耐容能は改善しなかった。


2024/09/22

COPD増悪後の呼吸リハの効果 -肺機能に関わらず改善あり-

The severity of acute exacerbations of COPD and the effectiveness of pulmonary rehabilitation

Respir Med (IF: 3.42; Q2). 2021 


【背景】
COPD急性増悪(AECOPD)から回復中の患者に対して、呼吸リハは有効である。
息切れの程度に関わらず、AECOPDに必要なケアの違いによって回復に違いがあるのかについて県とした。

【方法】
1057例のAECOPD患者(入院291例、在宅管理766例)が対象。後方視研究。
AECOPD後に呼吸リハを実施。
6MWDをプライマリーアウトカム、Barthel index 息切れ指標(Bid)によって層別化して検討。
mMRC scale、SPPB、CATについても検討。

【結果】
全体を通して、6MWDは278mから335mへ著明に改善。
自宅管理と比較して、Bidによって層別化すると入院グループの方が6MWDは著明に改善していた。
入院において、Bidレベルが4や5よりもレベル3の方が著明に改善していた。
入院の方が、6MWDのMCIDを達成していた割合が多かった(75.9% Vs 56.7%)
全体的に、Bidと独立してアウトカムの改善が得られた。
ベースラインの気道閉塞とプログラムの効果には関連が認められなかった。

【考察】
入院呼吸リハは、息切れの重症度と独立して著明な改善を認めた。
ベースラインの気道閉塞の重症度とプログラムの効果には相関を認めなかった。

2024/09/21

呼吸リハ後に身体活動が改善するCOPD患者のベースライン特性は?

Baseline characteristics associated to improvement of patients with COPD in physical activity in daily life level after pulmonary rehabilitation

Respir Med (IF: 3.42; Q2). 2019 May:151:142-147.


【背景】
COPD患者の呼吸リハ(PR)後の日常身体活動レベル(PADL)の改善が目標であることは知られている。
PR後に身体活動のMIDに到達した患者としなかった患者のベースライン特性を比較することを目的とした。どのベースライン特性がより改善を予測するかを同定し、MID達成者のカットオフポイントを算出した。

【方法】
53例のCOPD患者
評価は、スパイロメトリー、息切れ、QOL、運動耐容能、死亡リスク、PADLレベル。
24セッションのPR終了後、PADLレベルを再評価した。

【結果】
MIDを達成したのは、低FEV1.0、運動耐容能、歩行時間、歩数、活動時間、エネルギー節約(EE)歩行、3METs以上のPADL時間、1.5METs以下の活動時間が長い患者であった。
MIDを達成した、不活動な患者と重度の身体不活動は、ハザード比でそれぞれ4.27、6.90。
PADL変化を予測した予測モデルの変数は、EE歩行、1.5METs以下の活動時間。
MIDを達成か否かの患者を識別するカットオフポイントは6525歩。

【考察】
肺機能が悪い、運動耐容能、PR前のPADLレベルが低いことは、PADLレベルの改善を予測した。
EE歩行と1.5METs以下の活動時間は、この変化をより予測した。
カットオフ値である6525歩はよりPADLレベルが高く改善する患者を同定することができた。




在宅酸素利用は身体不活動を予測

Impact of Home Oxygen Therapy on the Level of Physical Activities in Daily Life in Subjects With COPD

Respir Care (IF: 2.26; Q4). 2019 Nov;64(11):1392-1400.


【背景】
慢性低酸素血症のあるCOPD患者は、疾患の進行と身体活動の低下が制限因子である。
低酸素血症の是正は生理学的改善をもたらすが、酸素療法は社会的孤立と身体不活動と関連しているかもしれない。
しかし、いくつかの研究で、これらの患者における日常生活の身体活動レベル(PADL)を客観的に調査している。この研究の目的は、在宅酸素を使用しているCOPD患者と酸素療法を使用していないCOPD患者のPADLレベルを比較すること。
そして、在宅酸素療法がPADLレベルに関連するかを検討すること。

【方法】
29人の在宅酸素を使用しているグループと30人のコントロールグループで比較。
身体測定、スパイロメトリー、骨格筋力、ADL制限、息切れの程度、健康状態、PADLモニタリングを評価。

【結果】
在宅酸素を使用している方が、歩行時間が短く(p=.001)、活動レベル、3METs以上の活動時間、1.5METs未満の活動時間、歩数が少なかった。
身体不活動は、24例の在宅酸素患者(82.8%)、18例のコントロールグループに認められた(60%)。
酸素療法は、重度の身体不活動と関連していた。
酸素療法を使用してる時間は、PADLレベルを強く予測した。

【考察】
在宅酸素を使用しているCOPD患者は、PADLレベルが低下していた。
この結果は、酸素療法が重度の身体不活動とPADLレベルを予測するかもしれない。









2024/09/18

COPDの息切れのメカニズム

Dyspnea in COPD: New Mechanistic Insights and Management Implications

Adv Ther (2020) 37:41–60


息切れは、COPD患者において最も共通した症状である。動作時息切れを避けるために、多くの患者は、座りがちな生活スタイルに適応し、骨格筋のデコンディショニング、社会的孤立、ネガティブな心理的な影響をもたらしている。
この"息切れスパイラル"は、よく知られており、驚くことではないが、この不快な症状の軽減は、どのCOPDガイドラインにも述べられている重要な症状である。
現実には、この重要な目標はを達成することはしばしば難しく、症状管理を成功させるためには、この息切れのメカニズムを理解する必要があり、どのように治療戦略を立てれば、患者に有益であるかを理解することが必要である。
現在の活動関連の息切れに対する理論構造は、伝統的な需要ー供給のインバランス(不均等)がある。
このように、吸気神経ドライブ(IND)と呼吸と息切れの動的な反応の通常の同調を混乱させることが、COPDの息切れの基本構造であると信じられている。
悲しいことに、息切れ症状は、比較的固定した病態生理学的障害を有する重症COPD患者から取り除くことはできない。
しかし、症状を軽減するエビデンスは多く存在する。
INDを減少させる介入は、肺胞換気や呼吸力学、筋機能、感情的な側面などを妥協することなく、効果を得ることが出来る。
息切れ軽減のための共通した最終過程である、運動耐容能向上は、神経力学的な呼吸システムの不同調の軽減をもたらし、過度のINDによる換気アウトプットをマッチするための修復が行われる。
このレビューの目的は、最近の知見をレビューすることであり、息切れ改善効果のある複合的な介入と多面的アプローチの必要性、個別性を考慮した特異的なアプローチが必要性について述べる。