2023/01/29

COPD患者 リハ後の筋機能とパフォーマンスの改善について

Muscle function and functional performance after pulmonary rehabilitation in patients with chronic obstructive pulmonary disease: a prospective observational study

Sci Rep (IF: 4.38; Q1). 2022 Sep 30;12(1):16386.


目的は、COPD患者が呼吸リハ実施後に機能的パフォーマンスの変化と、骨格筋の詳細な変化のついての関係を評価すること。
外来COPD患者を対象に、5週間の呼吸リハを実施。
機能的パフォーマンス評価:5回起立(5STS)、4m歩行速度(4mGS)、筋機能(大腿四頭筋の最大等尺性収縮、筋力、5STS中の求心性と遠心性収縮について)
評価は、呼吸リハ後と終了後3ヶ月後に実施。
20人の患者(71歳、%FEV1.0 52%)が対象。
4mGSと5STS中の求心性収縮の時間割合は7,7%減少した。
大腿四頭筋力、パワー、力のコントロールは、それぞれ10.4%、27.3%、15.2%改善。5STS中の相対的な遠心性収縮は、4mGS変化の31%を占めた(?)。

機能的パフォーマンス効果は、従来の呼吸リハ後に遅れて出現し、一方で、いくつかの骨格筋の詳細な項目は維持されていた。
特筆すべきことに、遠心性収縮は、機能パフォーマンス向上のための役割をになっているかもしれない。
したがって、今後の研究では、COPD患者のリハプログラムに、遠心性トレーニングを含めてデザインすべきか議論されるだろう。

2023/01/26

呼吸リハの費用対効果 JAMA OPEN 2022

Cost-effectiveness of Pulmonary Rehabilitation Among US Adults With Chronic Obstructive Pulmonary Disease

JAMA Netw Open (IF: 8.48; Q1). 2022 Jun 1;5(6):e2218189.


【背景】
COPD急性増悪後の呼吸リハビリテーション(PR)はCOPD患者の入院や死亡率を減少させ、健康関連QOLを改善させるが、PRの利用はいまだ少ない。この環境でのPRの費用対効果の推定を推定することで、普及率を改善させるための政策に役立てることができる。

【目的】
COPD入院後のPR参加による費用対効果を推定すること。

【方法】
社会的な解析を用いたアメリカでCOPD増悪入院後にPRを行った患者と行わなかった患者で費用対効果を比較。
マルコフマイクロシュミレーションモデル(A Markov microsimulation model)でアメリカヘルスケアシステムにおける費用対効果を推定。
lifetime horiozon、1年のサイクル期間、コストとアウトカム療法を年間3%の割引率で推定。
データは2001年10月から2021年4月までを採用し、2014年1月から2012年12月までをCOPD生存で医学的に有益な解析として行った。


【介入】
COPD患者で入院後にPRを行った患者と行わなかった患者を比較。

【アウトカム】
USドルでの保険費用、QALYs、費用対効果率の上昇傾向

【結果】
平均年齢76.9歳(60-92歳)、58.6%女性。
社会的視点からの基本ケースのマクロシュミレーションでは、PRを行った結果として、患者1人当たり5721ドルのコスト削減が可能であった。また、質調整余命(QALE)も改善した。
年齢、GOLD重症度stage、PR実施セッションによる単変量解析の結果でも、PRによる保険費用削減とQALE効果は変わらず示された。
確率的感度分析(probabilistic sensitivity analysis)では、1000人のサンプル全てでコスト削減とQALE向上が得られ、どの支払い意思額でも100%のシュミレーションで支配的な戦略であった。
総コストの一元的感度分析(1-way sensitivity analysis)において、36セッション終了時点で、1回のPRセッションは、1セッションあたり171ドルのコスト削減効果があり、1セッションあたり884ドルの費用対効果率の上昇があった。

2023/01/25

中等度運動において、がんの増殖細胞抑制効果

Compared with High-intensity Interval Exercise, Moderate Intensity Constant Load Exercise is more effective in curbing the Growth and Metastasis of Lung Cancer

J Cancer (IF: 4.21; Q2). 2022 Feb 28;13(5):1468-1479. doi: 10.7150/jca.66245.


肺がんの罹患率と死亡率は、様々ながんの中でも上位に位置し、人の健康を脅かす最も深刻ながんの一つである。腫瘍組織での血管新生とリンパ管新生は腫瘍の成長と転移に重要な役割を果たす。
加えて、上皮間葉転換(EMT)は、腫瘍細胞の転移と浸潤を促進し、MMP2、MMP9、TGF-β1のような多くの刺激によってトリガーされる。
現在、様々な研究において、中等度強度持続負荷運動(moderate intensity constant load exercise (MICE) と高強度インターバル運動(high-intensity interval exercise (HIIE))の両方が肺がんの治療や進行抑制に影響すると報告されている。
しかし、血管、リンパ管、EMTに関連した特異的な治療メカニズムはあまり知られていない。実際、肺がん組織で血管新生とリンパ管新生の増加がみられた。
しかし、高強度インターバルトレーニングと比べて、中等度強度持続運動において、血管とリンパ管と関係なく、肺の腫瘍細胞増殖を大幅に抑制する効果が得られた。
中等度運動負荷は、肺がん組織において、MMP9を減少させることができ、腫瘍転移をある程度制御する可能性がある。
加えて、高強度インターバルトレーニングは、MMP2の発現を低下させるが、EMTとTGF-β1を増加させる傾向がある。
今回の結果は、中等度負荷の運動が、高強度インターバルトレーニングよりも腫瘍の成長や転移についてより有効であることを示唆した。

epithelial mesenchymal transition(EMT):上皮間葉転換。がん転移のステップの一部。上皮細胞が間葉系形質を獲得する現象。間葉系形質を獲得したがん細胞は、転移や浸潤能が亢進する=転移を起こしやすい。
MMP:マトリックスメタロプロテアーゼ(別名コラゲナーゼ)。腫瘍血管新生を促進する。この血管ががんに到達して、栄養源を供給することによって腫瘍が大きくなっていく。

・対象:生後6週のマウス。
・中等度運動:80%VO2maxを45分、週5日
・高強度インターバルトレーニング:高強度インターバルスイミング。20秒強制的にスイムし10秒リカバータイムを設ける。これを10回繰り返す。週4回。

2023/01/20

5回起立の時間が歩行速度、握力と相関。歩行速度が遅い患者:5CST10秒以上

Chair stand test as a proxy for physical performance and muscle strength in sarcopenia diagnosis: the Korean frailty and aging cohort study

Aging Clin Exp Res (IF: 3.64; Q3). 2022 Oct;34(10):2449-2456.


【背景】
5回起立テスト(5CTS)はサルコペニア診断において、身体機能と筋力評価の代理指標として用いられる。
2019年のサルコペニアアジアワーキンググループのガイドラインは、歩行速度評価するために5CSTを推奨している一方で、ヨーロッパのワーキンググループガイドラインにて5CSTが筋力の代理指標として推奨されている。

【目的】
起立テストが握力、歩行速度と相関しているが、これらの関係に性別による差はないのかについて検討した。

【方法】
2017年の韓国フレイル・高齢者コホート研究(KFACS)に参加していた1416人(男性678人)のデータを使用。

【結果】
5CST時間は、歩行速度(r = - 0.470)、握力(r = - 0.309)と高い相関を示した。
加えて、5CST時間は歩行速度が遅いことを予測(area under the curve [AUC] 0.727)し、握力(AUC 0.641)よりも良好な結果であった。
歩行速度が遅い患者を予測する最適なカットオフは男性10秒 (sensitivity 62%, specificity 64%) 、女性で11秒(sensitivity 68%, specificity 67%)であった。
握力が弱いことを予測する5CST時間の最適なカットオフ値も、上記と同様であった(男性1秒、女性11秒)

【考察】
5CSTは歩行速度や握力と関連していたが、握力よりも歩行速度の方がより良い関連を示した。
歩行速度が遅いことや握力右㎏左㎏の低いことを推定する5CSTのカットオフは、女性よりも男性で低かった。
しかし、AWGS2019 やEWGSOPのガイドラインでは、5CSTの性別によるカットオフ値は示されておらず、次のガイドラインにおいて考慮が必要である。

2023/01/07

肺切除術:術後合併症リスクを6MWDでリスク層別化 chest2020

Prognostic Value of 6-Min Walk Test to Predict Postoperative Cardiopulmonary Complications in Patients With Non-small Cell Lung Cancer

Chest (IF: 9.41; Q1). 2020 Jun;157(6):1665-1673.


【背景】
NSCLCで中等度肺機能の低下している患者に、肺切除術を行うかについての意思決定を行うための6MWTのリスク層別化の値については解明されていない。

【目的】
中等度肺機能の低下しており、肺葉切除術を行ったNSCLC患者の術後心肺合併症を予測するための6MWTの役割について検討することを目的とした。

【方法】
前向きコホート研究(Coordinate Approach to Cancer Patient's Health for Lung Cancer (CATCH-LUNG))
葉切除を行った患者を術後肺機能の予測値で2グループ(低リスク・中高リスク)に分けて、それぞれのグループにおいて、さらに6MWTで短距離(400m未満)と長距離(400m以上)に分けた。
主なエンドポイントは、術後30日以内の心肺合併症の発生。
多変量ロジスティック回帰モデルにて4グループの術後合併症を比較した。

【結果】
調整されたオッズ比において、中リスク/短距離グループの術後心肺合併症は、低リスク/長距離グループと比べ、呼吸器合併症:10.26倍 (95% CI, 2.37-44.36)、循環器合併症5.65倍 (95% CI, 1.39-22.90)、心肺合併症7.84倍 (95% CI, 2.24-27.46)。
しかし、中リスク/長距離と低リスク長距離の間には、合併症発生リスクの違いはなかった。
中リスクグループの患者において、短距離グループに層別化された患者は、長距離と比べて術後心肺合併症のリスクが高い(adjusted OR, 4.95; 95% CI, 1.37-17.93).

【考察】
中リスク/短距離の患者が最も術後合併症のリスクが高かった。
しかし、NSCLCで中リスク/長距離の患者は、低リスク/長距離の患者と比べて、葉切除術を行うことが可能かもしれない。
今回の結果は、6MWTが、NSCLCで肺切除術を行うかどうか、最適な候補を見つけるために追加の情報を提供することを示唆した。


2023/01/05

肺がん術前の状態と健常者の身体機能の比較

Exercise capacity, muscle strength, dyspnea, physical activity, and quality of life in preoperative patients with lung cancer

Turk J Med Sci. 2021 Oct;51(5):2621-2630.



【背景】
肺がん手術待機患者の身体機能の程度(運動耐容能、筋力、身体活動、息切れ、QOL)についての検討を行い、健常者との比較を行った。

【方法】
肺がん患者n=26、健常者n=21
運動耐容能(6MWT)、呼吸筋力(MEP、MIP)、大腿四頭筋力(ハンドヘルドダイナモメーター)、身体活動(代謝測定装置)、息切れ(mMRC)、QOL(Cancer QOL Questionnaire C30)

【結果】
6MD、MIPとMEPの対標準値、身体活動(消費エネルギー、活動時間、平均METs、歩数)、QOLサブスコア(身体的、社会機能、全体的健康状態)は健常者と比べて低い(p<.05)。
息切れ、その他QOLサブスコア(症状、息切れ)は健常者と比べて有意に高い(p<.05)。
大腿四頭筋力は有意差なし。
16人(66.7%)が座りがちであった。

【考察】
運動耐容能、呼吸筋力、身体活動レベル、低QOLは著明に低下しており、明らかな息切れが術前肺がん患者には存在していた。
したがって、有酸素運動、呼吸器トレ、身体活動カウンセリングを含む、術前の早期予防リハビリプログラムを行うべきである。


2023/01/02

肺がん術前運動療法は術後合併症を減少させる thorax2022 SR and MA

Effects of exercise training in people with non-small cell lung cancer before lung resection: a systematic review and meta-analysis

Thorax (IF: 9.14; Q1). 2022 May;77(5):486-496.


【背景】
非小細胞肺がんの肺切除前の運動療法は、心肺運動能力の向上によって術後合併症(POD)が減少できると信じられている。
しかし、介入の強いエビデンスは欠如している。

【目的】
通常ケアと比べて、術前運動療法によるPODやそのほかのアウトカムへの影響を評価すること

【方法】
2人のauthorによって、ランダム化試験を評価。
メタアナリシスを実施し、リスク比(RR)と平均誤差によって運動療法の効果を検証。
MIDによって臨床的な有用性を推定した。

【結果】
14の研究、791人が対象。
通常ケアと比較して、全PODの発生(RR0.58、95% CI 0.45 to 0.75)と臨床的に関連のあるPOD(Clavien-Dindo score ≥2)の発生(RR 0.42, 95% CI 0.25 to 0.69)が、術前運動療法の実施によって減少していた。
運動療法の死亡率への影響については非常に不正確( RR 0.66, 95% CI 0.20 to 2.22)。
主なバイアスリスクとしては、参加者のブラインドの欠如、セレクションバイアス。
運動療法は、運動耐容能、肺機能、QOL、抑うつ症状を改善させるが、臨床的に有意な変化であるかは不明確。
エビデンスの質は、アウトカムごとに算出。

【考察】
術前運動療法は、術後合併症の減少につながっている。これらの推定値は正確であり、臨床診療のために推奨するのに十分な大きさであった。(=術前運動量を推奨するということか?)