J Cancer (IF: 4.21; Q2). 2022 Feb 28;13(5):1468-1479. doi: 10.7150/jca.66245.
肺がんの罹患率と死亡率は、様々ながんの中でも上位に位置し、人の健康を脅かす最も深刻ながんの一つである。腫瘍組織での血管新生とリンパ管新生は腫瘍の成長と転移に重要な役割を果たす。
加えて、上皮間葉転換(EMT)は、腫瘍細胞の転移と浸潤を促進し、MMP2、MMP9、TGF-β1のような多くの刺激によってトリガーされる。
現在、様々な研究において、中等度強度持続負荷運動(moderate intensity constant load exercise (MICE) と高強度インターバル運動(high-intensity interval exercise (HIIE))の両方が肺がんの治療や進行抑制に影響すると報告されている。
しかし、血管、リンパ管、EMTに関連した特異的な治療メカニズムはあまり知られていない。実際、肺がん組織で血管新生とリンパ管新生の増加がみられた。
しかし、高強度インターバルトレーニングと比べて、中等度強度持続運動において、血管とリンパ管と関係なく、肺の腫瘍細胞増殖を大幅に抑制する効果が得られた。
中等度運動負荷は、肺がん組織において、MMP9を減少させることができ、腫瘍転移をある程度制御する可能性がある。
加えて、高強度インターバルトレーニングは、MMP2の発現を低下させるが、EMTとTGF-β1を増加させる傾向がある。
今回の結果は、中等度負荷の運動が、高強度インターバルトレーニングよりも腫瘍の成長や転移についてより有効であることを示唆した。
epithelial mesenchymal transition(EMT):上皮間葉転換。がん転移のステップの一部。上皮細胞が間葉系形質を獲得する現象。間葉系形質を獲得したがん細胞は、転移や浸潤能が亢進する=転移を起こしやすい。
MMP:マトリックスメタロプロテアーゼ(別名コラゲナーゼ)。腫瘍血管新生を促進する。この血管ががんに到達して、栄養源を供給することによって腫瘍が大きくなっていく。
・対象:生後6週のマウス。
・中等度運動:80%VO2maxを45分、週5日
・高強度インターバルトレーニング:高強度インターバルスイミング。20秒強制的にスイムし10秒リカバータイムを設ける。これを10回繰り返す。週4回。