2018/10/31

喘息患者に有酸素運動は効果あるか。

Aerobic training decreases bronchial hyperresponsiveness and systemic inflammation in patients with moderate or severe asthma: a randomised controlled trial

Thorax 2015;70:732–739

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26063507

<背景>
喘息の有酸素運動による主な効果の特徴は、気管支過敏性や炎症などのようなものがあるが、あまり理解されていない。
今回、気道過敏性、血清炎症サイトカイン、臨床的コントロールと喘息特異的QOLにおける有酸素運動の効果を検討。

<方法>
58人の患者が無作為にコントロールグループ(CG)かトレーニンググループ(TG)に分けられた。
CGは教育プログラム+呼吸練習、TGは教育プログラム+呼吸練習+有酸素運動を3ヵ月実施。
気管支過敏性、血清サイトカイン、臨床的コントロール、QOL、誘発喀痰、呼気NO(FeNO)を介入の前後で測定した。

<結果>
12週後、43人の患者が研究を完遂。
TGは、気管支過敏性が改善。IL-6とMCP-1が減少。QOLと喘息の増悪が改善。
IL-5.8.10、喀痰細胞、FeNO、ACQ-7(Asthma Control Questionnaire 7)は変化なかった。
グループ間の違いは、コントロールされていない喘息患者のACQ-6で認められ、TGの喀痰中の好酸球とFeNOは気道炎症の悪化を示していた。

<考察>
有酸素運動は気管支過敏性と喀痰前炎症性サイトカインの減少とQOLの改善を中等度から重症の喘息患者において認められた。
これらの結果は、薬物治療の補助に有酸素運動を付加することが喘息の主な症状を改善することを示唆した。

2018/10/23

COPD増悪入院患者に対する4日間のリハの効果

Efficacy of a respiratory rehabilitation exercise training package in hospitalized elderly patients with acute exacerbation of COPD: a randomized control trial

Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2015; 10: 1703–1709.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4555970/

<背景>
COPD急性増悪は、COPD症状の急激な悪化の特徴がある。これまでの研究では、COPD患者への呼吸リハの効果が検討されてきた:しかし、高齢患者の急性増悪に特化したトレーニングプログラムは無く、入院中の不安定な期間の検討は無い。

<目的>
COPD急性増悪で入院した患者に対して、息切れ、咳、運動耐容能、痰の喀出などのパッケージングされた呼吸リハの効果を評価すること

<方法>
RCT。61人の高齢COPD急性増悪患者がリハ前後の評価を実施(介入グループ30人、コントロールグループ31人)
介入グループは1日2回の運動、1セッション10-30分を4日間実施。
臨床パラメーター(息切れ、咳、運動耐容能、痰の喀出)は、ベースラインと4日目の終了時に評価。

<結果>
全参加者が介入期間をクリア。介入グループは、息切れ、咳は減少し、運動耐容能と痰の喀出はコントロールグループと比べて改善した。
グループ間比較では、息切れ、咳、運動耐容能は介入グループで著明に改善した。

<考察>
この結果から、運動をパッケージした呼吸リハは、COPD急性増悪で入院した高齢患者の症状を軽減させ、ケアの効果を高めた。

・患者選択基準
1)中等度の増悪(薬物の増量や医療的ケアの追加が必要)
2)65歳以上
3)意識レベルがクリア
4)心疾患、気胸、肺水腫による息切れが無い
5)気管支拡張剤の吸入もしくは抗菌薬治療を実施しているが、咳止めは治療していない

・除外基準
1)収縮期血圧≦90mmHg
2)SpO2≦90%
3)心理学的上体が不安定、喀血、気胸、肺水腫、呼吸器の使用

・コイントスで無作為にグループ分けした。
・介入グループは、4日間の運動療法を通常のケアと教育(バイタル測定、症状のモニタリング、栄養評価、禁煙教育、酸素療法)に追加して実施。
・コントロールグループは、通常ケアと教育のみを提供。

・初期評価をベースラインとして採用。最終セッションの後1時間以内に最終評価を実施。

・介入内容は6つの項目から構成。
1)疾患の気づき:専門医が患者と家族にCOPD増悪について胸写を用いて説明。同時に呼吸器の解剖についても説明
2)排痰:体位ドレナージのカードを患者と家族に渡して、できる限り痰の除去できるように病院のベッドで行うようにした。
3)口すぼめ呼吸練習:吸気と呼気の比率を1:2で実施。1セッション10分を少なくとも1日2回実施。
4)上肢運動と深呼吸:タオルを使って上肢挙上と同時に吸気を行い、呼気時に上肢を下ろす。胸郭の拡張に加えて、この運動は、呼吸筋力向上や簡単な排痰に関与。
5)歩行練習:廊下を行ったり来たり歩行。最低1回10分、1日2回。呼吸リズムと同調して行った。
6)呼吸リハプログラムコーディネーターの担当:患者の栄養管理や健康教育を担当(疾患教育、禁煙、薬物療法、排痰テクニックなど)


・4日間の介入は息切れ、咳の症状を軽減し、運動耐容能を向上させた。

2018/10/18

増悪時のCATスコアの推移

Evolution of the COPD Assessment Test Score during Chronic Obstructive Pulmonary Disease Exacerbations: Determinants and Prognostic Value

Canadian Respiratory Journal
Volume 20, Issue 5, Pages e92-e97

https://www.hindawi.com/journals/crj/2013/398120/abs/


<背景>
増悪の十分な評価はCOPD患者管理の第一の目的である。

<目的>
CATスコアを用いて、COPD重症増悪中の患者の健康状態の回復の状況を明らかにし、予測値を評価すること

<方法>
45人の重症増悪で入院しているCOPD患者が対象。専門医によって現在推奨されている治療を実施。健康状態は、毎日CATを用いて評価。
CATスコア、肺機能、再入院を退院後1カ月と3ヵ月に評価した。

<結果>
GOLDのステージ分類は、増悪1日目のCATスコアの上昇の独立した決定要因であった。
入院5日目に、CATスコアは安定期と同じ程度になった。
BMI、GOLDのステージ分類、教育レベルは、健康状態回復のパターンと関連していた。
CATスコアの上昇とCAT回復のAUC(area under the curve)は、退院後3ヵ月の1秒量と逆相関を示した。
再入院した患者のCATスコアはより高く、回復がゆっくりであった

<考察>
CATはCOPD重症増悪からの回復を反映する。
初回増悪と回復パターンは、肺機能と再入院と関連していた。

2018/10/13

ILD患者の呼吸リハの短期効果と長期効果

Short and long-term effects of pulmonary rehabilitation in interstitial lung diseases: a randomised controlled trial

Respiratory Research2018.19:182

https://respiratory-research.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12931-018-0884-y

<背景>
間質性肺疾患(ILD)患者に対する長期呼吸リハプログラムがと呼吸リハの長期効果は
いくつか報告されている
ILD患者への呼吸リハ後6か月、1年後の効果(運動耐容能、QOL、大腿四頭筋力、身体活動量)を評価した。

<方法>
60人の患者(平均年齢64歳、62%男性、IPF患者23%)無作為に6カ月後の呼吸リハ群と通常ケア群に分けて検討

<結果>
運動耐容能、QOL、筋力はコントロール群と比較して呼吸リハ後に著明に向上していた。
(6MWD+72m、SGRQ-12点)
効果は1年後も維持されていた。
身体活動量は変化していなかった。

<考察>
呼吸リハは、ILD患者の運動耐容能、健康状態、筋力を向上させる。
効果は、1年後も維持されていた。介入は、身体活動量を変化させなかった。


・評価のタイミングは、開始時、3カ月後、6カ月後、12カ月後
・プライマリーアウトカムは6MWD。酸素量は最低限投与し、ベースラインと同じ酸素量で測定
・6カ月後の6MWDの違いをプライマリーエンドポイントとした

・身体活動量は、活動量計(SenseWear Armband )を使用し、7日間連続して測定
・平均歩数と中等度強度の身体活動時間を活動量のアウトカムとして採用
・1年後のアウトカムには活動量は含まなかった。理由は、欠損値が多かったため。

・3か月後の6MWDが38-43m向上していれば、最小限の効果があったと判定



2018/10/08

重症COPDに高強度運動を行うと、死亡率が増加した。

Increased mortality in patients with severe COPD associated with high-intensity exercise: a preliminary cohort study

Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2016; 11: 2329–2334.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5044988/

<背景>
運動の強度は、COPD患者のリハビリの効果を決める重要なものであると信じられている。我々は理学療法士主導で行い、息切れのマネジメント教育なども同時に行う高強度の運動が、自己管理の良い結果や、救急サービス利用減少や入院の減少をもたらすと仮定した。

<方法>
2013年に4つのリハビリコース(春夏秋冬)を計画した。それぞれ8週間で、8-10人の患者が参加。
この予備的な研究は、コントロールされたコホート研究としてデザインされた。
春と秋のコースは、隔週で高強度の運動セッション(推定VO2maxの95%の歩行をできるだけ長く)を実施。
その他2つのリハビリコースは、通常の歩行練習の強度(VO2maxの85%)で実施。
入院率は、18ヵ月間の患者のカルテを参照した。

<結果>
計31人の患者が参加(15人が高強度、16人が通常強度)
入院率は、両グループに差は無かった。
しかし、高強度運動を行ったグループでは、通常強度と比較して死亡率が目立っていた(5人vs0人)。
亡くなった5人中4人はCOPD増悪であった。カプランマイヤーで推定した生存率の符号順位検定の様(p=0.019)に、フィッシャーの正確確率検定で違いが明らかであった(p=0.046)。

<考察>
小規模の予備的なコホート研究の結果から、重症COPD患者の高強度運動は、重篤なリスクと関連している可能性について懸念を示した。


・高強度運動グループのメニュー
 推定VO2maxの95%でできる限り長く歩行練習、全身筋持久力・筋力トレーニング、自転車で心肺トレーニング、エルゴメーター、ステップマシン

・通常運動グループのメニュー
 推定VO2maxの85%の歩行と前述の運動内容

・8週間の呼吸リハプログラムを実施し、運動習慣と指示されたメンテナンスプログラムの継続を実施。内容は、個別の運動(DVD)もしくはリーフレットを渡した。

・対象患者:FEV1.0 0.88L、%FEV1.0 35.44%



ーーーーーーー
高強度が死亡リスクを増加した考察は触れられておらず、研究限界についての考察が多かった。
活動量がどの程度であったかは影響ありそうだが、短期集中でしても予後は改善しないという結果。VO2maxの85%の運動も十分高強度だと思うが。。
VO2maxの85%を目指しての運動が目標で良いのかな。

2018/10/05

フレイルリスクスコアを作成し、リスクを予測

Development and validation of a Hospital Frailty Risk Score focusing on older people in acute care settings using electronic hospital records: an observational study

Lancet 2018; 391: 1775–82

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(18)30668-8/fulltext?dgcid=etoc-edschoice_email_May

<背景>
高齢患者では病院を利用しているものが増加する。目的は、フレイルの特徴をもった高齢患者を推定することと、ヘルスケアアウトカムの悪化のリスクを持った患者を特定すること

<方法>
3段階アプローチで入院フレイルリスクスコアをICD-10疾患コードを用いて開発し妥当性を検討した。
まず、フレイルに関連する診断で入院した高齢患者(75歳以上)のグループでクラスター分析を実施。
次に、ICD-10コードを基にフレイルリスクスコアを算出し、グループの特性をみた。
3つ目に、別のコホートにおいて、どの程度スコアがアウトカムの進行を予測するかと、他のフレイルツールを用いて同じグループでのフレイルを同定できるかを検討した。

<結果>
コホートにおいて、(n=22139)高齢でフレイルと診断された患者は、予定外の病院利用が多かった。
国際的に妥当性のあるグループでは、フレイルリスクスコアが高い患者は、30日の死亡リスクのオッズが高く(1.71倍)、長期入院(6.03倍)、30日以内の再入院(1.48倍)
入院フレイルリスクスコアは、他の指標と同じような結果を示した
 the Rockwood Frailty Indexと中等度の関連を示した(r=0.41)

<考察>
入院フレイルリスクはスコアは、アウトカムの悪化するリスクのある患者を同定することができ、入院と医療費の低コスト化、フレイル患者をスクリーニングすることができる。



2018/10/01

COPD急性増悪時のリハはQOLを改善する

Effects of different physical therapy programs on perceived health status in acute exacerbation of chronic obstructive pulmonary disease patients: a randomized clinical trial.

Disabil Rehabil. 2018 Aug;40(17):2025-2031.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28478693

<目的>
COPD急性増悪中の患者に対して、異なる理学療法を行うことによる健康状態への影響を評価すること

<方法>
RCT。患者はコントロールグループ(標準的薬物療法)、呼吸練習+ROM訓練グループ、抵抗運動グループに無作為に振り分けた。
健康状態は、ベースラインと退院時のEQ-5Dで評価。患者背景は、ベースラインで評価

<結果>
90人の患者が無作為に振り分けられた。健康状態は、全てのグループで改善。
EQ-5Dのサブスケールの活動性、セルフケア、通常の活動とVisual Analogue Scale(VAS)は、コントロールグループと呼吸練習+ROM訓練グループの間で明らかな違いを示した。

疼痛の軽減は、コントロールグループと抵抗運動グループで明らかな違いを示した。

呼吸練習+ROM訓練グループと抵抗運動グループの間には、通常ケアとEQ-5Dの不安/抑うつの項目が、明らかな違いを示し、抵抗運動グループにおいて大きな改善を示した。

<考察>
COPD急性増悪時の標準的な治療に理学療法を加えると、標準治療のみよりも健康状態の大きな改善を示した。
COPD急性増悪で入院中の患者に、標準的治療に加えて理学療法を行うことで、健康状態が大きく改善を示した。
短期間の理学療法プログラムを標準ケアに加えることは、COPD患者の急性増悪の管理を助けになる。