2022/01/29

IPF患者の運動と呼吸練習が、息切れ、QOLを改善-SR and MA-

Aerobic and breathing exercises improve dyspnea, exercise capacity and quality of life in idiopathic pulmonary fibrosis patients: systematic review and meta-analysis

J Thorac Dis (IF: 2.9; Q3). 2020 Mar;12(3):1041-1055.


【背景】
IPFは息切れや運動耐容能低下と関連した進行性の疾患である。
このシステマティックレビューの目的は、IPF患者にたいして、運動耐容能向上、息切れ改善、HRQOL改善を目的に呼吸リハの運動介入のエビデンスを統合すること。

【方法】
 MEDLINE, Embase, CENTRAL, SPORTDiscus, PubMed and PEDroで2019年1月に検索。
検索は、
1)対象:IPFもしくはILD
2)介入:有酸素運動、レジスタンストレーニング、呼吸筋トレーニングのいずれかを行っている
3)アウトカム:運動耐容能、息切れ、HRQOL、
二人のレビュアーが独立してタイトル、アブストラクト、本文を検索。
研究の質をDowns and Black checklistを使用して評価し、メタアナリシスを行った

【結果】
1677文献が検出され、14文献が解析対象。362人がトレーニング実施、95人がコントロール群。
運動耐容能は6MWD、最大酸素摂取量、最大運動負荷、定常負荷による持続時間で評価。これらが、運動(有酸素運動、呼吸練習、吸気筋トレーニング)後に改善したかをコントロール群と比較。
息切れスコアは、有酸素運動と呼吸練習後に改善。
HRQOLも、有酸素運動単独もしくは呼吸練習と併用にて改善。
有酸素運動単独もしくは、吸気筋トレもしくは呼吸練習と併用すると、運動耐容能は向上。

【考察】
呼吸練習は、IPF患者の息切れとHRQOLの改善に向けた運動療法を補完する。

2022/01/27

動作時低酸素の有無で大脳の酸素化は異なるか?

Differences in cerebral oxygenation during exercise in patients with idiopathic pulmonary fibrosis with and without exertional hypoxemia: does exercise intensity matter?

Pulmonology (IF: 2.78; Q3). 2021 Jul 15;S2531-0437(21)00126-4.


【背景】
IPF患者は、運動不耐性を伴い、安静時と動作時の呼吸障害を呈する。安静時の低酸素血症が無くても、動作時に低酸素血症が著明にみられる患者が存在する。
エビデンスは、運動不耐性における脳の酸素化低下に関与していると示唆している。
目的は、
ⅰ)IPF患者において、動作時のみ低酸素血症の有無の違いによる運動中の脳の酸素化の違いを検討
ⅱ)脳の酸素化の障害が運動不耐性と同様にみらえるか
ⅲ)脳の酸素化指数と疾患重症度と6MWTの関係について検討

【方法】
安静時低酸素が無いIPF患者(n = 24; 62.1 ± 9.3 years)
運動負荷試験(CPET)を脳の酸素化モニター(NIRS)を装着して実施。
CPET中のSpO2を基に"動作時低酸素あり群(最低SpO2 89%以下かつ6%以上の低下)"と"動作時低酸素なし群(最低SpO2 90%以上かつ5%以下の低下)"に分けた。

【結果】
CPET中、"低酸素あり群"は、なし群と比べて、酸化ヘモグロビンが低く(-0.67 ± 1.48 vs. 0.69 ± 1.75 μmol/l; p < 0.05)、脱酸化ヘモグロビンが多かった (1.67 ± 1.13 vs. 0.17 ± 0.62 μmol/l; p < 0.001)。
2群間で、脳の酸素化の反応は異なるパターンを示した。
"低酸素あり群"の酸化ヘモグロビンは、低/中等度の運動強度でもベースラインを下回った(p<.05)。
一方、"低酸素なし群"の脳の酸素化低下は、高強度の運動で低下を認めた。
大脳のNiRS指数は、CPET時間、息切れ、拡散能、6MWTと相関していた(p<.05)

【考察】
漸増運動中のIPF患者で動作時低酸素があると、低強度運動中でも大脳の酸素化は著明に低下していた。
今回の結果は、IPFにおいて、より長期間のリハビリを実施し、初期段階でより低強度の運動が適用となることを支持する。

2022/01/18

IPFの酸素吸入:脳の低酸素血症を改善する。

Exertional Desaturation in Idiopathic Pulmonary Fibrosis: The Role of Oxygen Supplementation in Modifying Cerebral-Skeletal Muscle Oxygenation and Systemic Hemodynamics

Respiration (IF: 3.58; Q2). 2021;100(6):463-475.


【背景】
動作時低酸素血症のあるIPF患者において、運動中の酸素療法の効果についてのデータは少ない。これら(酸素療法)が有効なメカニズムについては明らかになっていない。

【目的】
亜最大運動時の酸素吸入が、(医療空気と比べて)IPF患者の脳/骨格筋の酸素化や全身血行動態に影響するかを検討すること。

【方法】
ランダム化クロスオーバープラセボコントロール試験
対象は、安静時は低酸素がないが、最大運動負荷試験にて著しい低酸素が見られた患者(n = 13; 63.4 ± 9.6 years) 
65%負荷で、酸素もしくは空気吸入の2回定常負荷試験を実施。
脳/骨格筋の酸素化(NIRS:近赤外分光法*)と拍動ごとの血行動態 (フォトプレチスモグラフィ**)を観察。
*NIRS:近赤外線の光を利用して、脳や筋肉の血中のヘモグロビンの濃度の変化を測定し、血中の酸素化の状態や脳血流の変化を評価をするもの。
**フォトプレチスモグラフィ:末梢循環における血液の容積変化を検出する機器。

【結果】
空気吸入において、亜最大運動の開始数分から、脳の酸化ヘモグロビンが減少し、脱酸化ヘモグロビンが急激に上昇していた。
酸素吸入において、低酸素が改善され、息切れの軽減、運動時間の延長が得られた(p<.01)。
運動中の酸素吸入は、
ⅰ)脳の脱酸素化を軽減(脱酸素化ヘモグロビン:0.7 ± 1.9 vs. 2.5 ± 1.5 μmol/L,p = 0.009)し、脳のヘモグロビンの差を減少させた(2.1 ± 2.7 vs. -1.7 ± 2.0 μmol/L; p = 0.001)。
ⅱ)筋肉の酸素飽和度指標の減少を軽減
ⅲ)定常運動において、筋肉の脱酸素化ヘモグロビンがより低く(p = 0.05) 、下肢疲労が少なかった(p < 0.05)。

2つの運動において、運動時の心拍出量や血管抵抗に違いはなかった。

【考察】
動作時のみ低酸素血症のあるIPF患者において、亜最大運動中の脳の酸素化を増加/維持することはできなかった。
低酸素血症に対して酸素吸入を行うことは、脳の酸素化低下を予防し、筋の酸素化を向上させ、息切れの軽減することを示し、これは、運動中に酸素療法を行うことが脳の低酸素血症を防いでいることを示唆している。

2022/01/14

COPD増悪入院後3日以内のリハプログラム-SR and MA-

Pulmonary Rehabilitation Programmes Within Three Days of Hospitalization for Acute Exacerbation of Chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Systematic Review and Meta-Analysis

International  Journal  of  Chronic  Obstructive  Pulmonary  Disease  2021:16  3525–3538    


【目的】
COPD急性増悪入院後、早期呼吸リハが安全で有効かを評価すること。

【方法】
Embase, Web of Science, PubMed and Cochrane Libraryで2021年1月に検索。
COPD増悪患者への早期リハの効果を検討したRCTを対象に検索。
2人の研究者により、データ選択、バイアス、エビデンスのクオリティを評価。
バイアスリスクとエビデンスの質はthe Cochrane Collaboration’s toolを使用

【結果】
14文献(829人)が対象
6MWDは有意に改善
サブグループ解析にて、運動療法を行ったグループは、著明な改善を示した。
SGRQ合計スコアは低かった(QOL高い)
入院日数、大腿四頭筋力、5回起立では明らかな効果は見られなかった。
介入群で1件の重大なイベントが報告されていたが、早期呼吸リハとは関連無いものであった。

【考察】
入院3日以内の呼吸リハ開始は、運動耐容能とQOLを向上させる。
しかし、結果は、慎重に解釈されるべきであり、急性増悪入院時の早期呼吸リハについてはさらなる検討が必要である。

COPDの息切れのメカニズム

Dyspnea in COPD: New Mechanistic Insights and Management Implications

Adv Ther (IF: 3.85; Q3). 2020 Jan;37(1):41-60.


息切れはCOPDに共通した症状である。動作時の息切れを避けるために、多くの患者は、体を動かさないライフスタイルになっており、骨格筋のデコンディショニング、社会的孤立、ネガティブな心理状態を招いている。
この"息切れスパイラル"はよく知られており、この悲惨な症状の緩和がCOPDガイドラインで強調されているのは驚きではない。

現実において、この重要な目標は達成することが難しく、症状管理を成功するために、息切れの根本的なメカニズムの理解とこれらをどのように治療していくのかについて、より明確な理解が必要である。

現在、活動に関する息切れの発生の理論は、一般的に古くから言われている需要・供給のインバランスである。
このように、COPDでは、呼吸を促す吸気神経刺激( inspiratory neural drive:IND)と同時に起こる呼吸器系の動的反応のバランスが崩れることが、呼吸困難の出現を根本的に形成していると考えられている。

残念なことに、進行したCOPDでは、この固定した病態によって、息切れを取り除くことができない。
しかし、症状緩和のエビデンスは、多く存在する。

肺胞換気(VA)や呼吸メカニクスに依存せずに、筋機能、多面的なアプローチによって測定可能な効果が得られ、IND減少に対して介入できる。

最後に、息切れの緩和と運動耐容能の改善は、複数の治療介入にまたがっており(気管支拡張剤、運動療法、動作時酸素吸入、吸気筋トレ、オピオイド)、呼吸システムの神経学的な解離を減少させる。

これらの介入は、単独もしくは組み合わせることによって、部分的に換気に対する過剰な吸気神経刺激のマッチングを復元することができる。

最近の論文をレビューし、複合的な介入が息切れの改善のために必要であり、構造化された多面的アプローチ、個別に必要なケアの選択が有効であることが明らかとなった。

2022/01/09

消化器がん術前身体活動:術後6MWD回復率を予測

Preoperative physical activity predicts postoperative functional recovery in gastrointestinal cancer patients

Disabil Rehabil (IF: 3.03; Q1). 2021 Jun 24;1-6.


【目的】
消化器がん患者の術前身体活動(PA)と術後の機能回復の関係について検討すること

【方法】
前向き研究
大腸、胃がん手術を行った101人の患者が対象
プライマリーアウトカム:6MWD減少率(術後6MWD-術前6MWD/術前6MWD*100(%))を機能回復の指標とした
6MWD減少率の中央値で2群に分けた。中央値以上(=減少していない群)と中央値以下(=減少群)
IPAQ-short versionで術前PAと安静時間を評価
多変量ロジスティクス回帰分析で、術後機能回復を予測する因子を同定した

【結果】
術前PA(OR3.812、95%CI 1.326-10.956)、術前6MWD(OR1.006、95%CI 1.002-1.011)、CRP(OR4.138、95%CI 1.383-12.377)、合併切除(OR3.425、95%CI 1.101-10.649)は、術後機能回復と関連していた

【考察】
術前PAは消化器がん手術を行った患者の術後回復を予測した。
術前PAと術後機能回復の関係については明らかになっていなかった。術前PAが術後機能回復を予測することを示した。
術前PAが低い患者は、術後経過を注意深く観察する必要がある。
術前PAが低い患者は、術後機能低下を予防するために術後リハビリテーションを強化する必要がある。

2022/01/03

肺がん患者の身体活動を高める要因:systematic review

Understanding factors influencing physical activity and exercise in lung cancer: a systematic review

Support Care Cancer (IF: 3.6; Q3). 2017 Mar;25(3):983-999.


【目的】
肺がん患者の身体活動(PA)をサポートすることは、エビデンスや臨床ガイドラインで支持されているにも関わらず、臨床的な実践まで至っていない。
このレビューの目的は、患者、介助者、医療者の視点から、肺がん患者が身体活動に参加するための障壁と実現要因(enablers)を検証すること。

【方法】
対象:MEDLINE、EMBASE、CINAHL、Scopus、Cochraneで文献検索。
肺がん患者のPAのための障壁や実現要因を評価した文献で、査読ありの英語論文

【結果】
26文献(横断研究9件、症例4件、質的研究11件)、患者1074人、介助者23人、医療者169人が対象。
・PAの障壁
患者要因;身体的耐久性、症状、併存症、元々座りがちな生活スタイル、心理的影響、目的適合性(目的がない?)
医療者要因;情報を伝える時間と知識
環境要因;サービスへのアクセス、リソース、治療介入のタイミング
・enabler
医療者や介助者からの行動変容への意見や励まし

【考察】
肺がん患者における、PAの障壁やenablerについてのレビューを行った。
症状、併存症、ライフスタイル、感情、環境要因が、患者側の要因であった。
これらの要因は、肺がん患者のPAを向上させるための試みにおいて、適切な介入や臨床サービスを提供する際に考慮すべきである。