2022/01/27

動作時低酸素の有無で大脳の酸素化は異なるか?

Differences in cerebral oxygenation during exercise in patients with idiopathic pulmonary fibrosis with and without exertional hypoxemia: does exercise intensity matter?

Pulmonology (IF: 2.78; Q3). 2021 Jul 15;S2531-0437(21)00126-4.


【背景】
IPF患者は、運動不耐性を伴い、安静時と動作時の呼吸障害を呈する。安静時の低酸素血症が無くても、動作時に低酸素血症が著明にみられる患者が存在する。
エビデンスは、運動不耐性における脳の酸素化低下に関与していると示唆している。
目的は、
ⅰ)IPF患者において、動作時のみ低酸素血症の有無の違いによる運動中の脳の酸素化の違いを検討
ⅱ)脳の酸素化の障害が運動不耐性と同様にみらえるか
ⅲ)脳の酸素化指数と疾患重症度と6MWTの関係について検討

【方法】
安静時低酸素が無いIPF患者(n = 24; 62.1 ± 9.3 years)
運動負荷試験(CPET)を脳の酸素化モニター(NIRS)を装着して実施。
CPET中のSpO2を基に"動作時低酸素あり群(最低SpO2 89%以下かつ6%以上の低下)"と"動作時低酸素なし群(最低SpO2 90%以上かつ5%以下の低下)"に分けた。

【結果】
CPET中、"低酸素あり群"は、なし群と比べて、酸化ヘモグロビンが低く(-0.67 ± 1.48 vs. 0.69 ± 1.75 μmol/l; p < 0.05)、脱酸化ヘモグロビンが多かった (1.67 ± 1.13 vs. 0.17 ± 0.62 μmol/l; p < 0.001)。
2群間で、脳の酸素化の反応は異なるパターンを示した。
"低酸素あり群"の酸化ヘモグロビンは、低/中等度の運動強度でもベースラインを下回った(p<.05)。
一方、"低酸素なし群"の脳の酸素化低下は、高強度の運動で低下を認めた。
大脳のNiRS指数は、CPET時間、息切れ、拡散能、6MWTと相関していた(p<.05)

【考察】
漸増運動中のIPF患者で動作時低酸素があると、低強度運動中でも大脳の酸素化は著明に低下していた。
今回の結果は、IPFにおいて、より長期間のリハビリを実施し、初期段階でより低強度の運動が適用となることを支持する。