Respiration (IF: 3.58; Q2). 2021;100(6):463-475.
【背景】
動作時低酸素血症のあるIPF患者において、運動中の酸素療法の効果についてのデータは少ない。これら(酸素療法)が有効なメカニズムについては明らかになっていない。
【目的】
亜最大運動時の酸素吸入が、(医療空気と比べて)IPF患者の脳/骨格筋の酸素化や全身血行動態に影響するかを検討すること。
【方法】
ランダム化クロスオーバープラセボコントロール試験
対象は、安静時は低酸素がないが、最大運動負荷試験にて著しい低酸素が見られた患者(n = 13; 63.4 ± 9.6 years)
65%負荷で、酸素もしくは空気吸入の2回定常負荷試験を実施。
脳/骨格筋の酸素化(NIRS:近赤外分光法*)と拍動ごとの血行動態 (フォトプレチスモグラフィ**)を観察。
*NIRS:近赤外線の光を利用して、脳や筋肉の血中のヘモグロビンの濃度の変化を測定し、血中の酸素化の状態や脳血流の変化を評価をするもの。
**フォトプレチスモグラフィ:末梢循環における血液の容積変化を検出する機器。
【結果】
空気吸入において、亜最大運動の開始数分から、脳の酸化ヘモグロビンが減少し、脱酸化ヘモグロビンが急激に上昇していた。
酸素吸入において、低酸素が改善され、息切れの軽減、運動時間の延長が得られた(p<.01)。
運動中の酸素吸入は、
ⅰ)脳の脱酸素化を軽減(脱酸素化ヘモグロビン:0.7 ± 1.9 vs. 2.5 ± 1.5 μmol/L,p = 0.009)し、脳のヘモグロビンの差を減少させた(2.1 ± 2.7 vs. -1.7 ± 2.0 μmol/L; p = 0.001)。
ⅱ)筋肉の酸素飽和度指標の減少を軽減
ⅲ)定常運動において、筋肉の脱酸素化ヘモグロビンがより低く(p = 0.05) 、下肢疲労が少なかった(p < 0.05)。
2つの運動において、運動時の心拍出量や血管抵抗に違いはなかった。
【考察】
動作時のみ低酸素血症のあるIPF患者において、亜最大運動中の脳の酸素化を増加/維持することはできなかった。
低酸素血症に対して酸素吸入を行うことは、脳の酸素化低下を予防し、筋の酸素化を向上させ、息切れの軽減することを示し、これは、運動中に酸素療法を行うことが脳の低酸素血症を防いでいることを示唆している。