2021/11/17

IPFの6分間歩行と歩数:距離を維持できても活動量は減少している。

Prognosis and longitudinal changes of physical activity in idiopathic pulmonary fibrosis

BMC Pulm Med (IF: 3.32; Q2). 2017 Jul 25;17(1):104.


【背景】
身体活動(PA)はIPFの疾患重症度と関連している。しかし、縦断的な評価や予測、変化についての研究は行われていない。

【方法】
46人のIPFコホートにてPA(歩数)を測定(平均年齢67歳、平均%FVC76.1%)
ベースラインで加速度計で測定し、3年間のフォローアップ期間で生存した患者に再度活動量を測定。
肺機能(FVC,DLCO)と6MWDを含めた生存予測と、PAの生存予測値を比較した。

【結果】
フォローアップ期間に20人が死亡(43%)
歩数とFVCが最も生存しない患者を予測した(AUC0.79,p<.01)
交絡(性別、年齢、治療)を調整し、歩数、%FVC、%DLCOが1SD増加すると、死亡リスクが半減した。(HR<.05,p<.01)
ベースラインと比較して、生存者において、歩数(-973)、FVC(130ml)、6MWD(9m)はそれぞれ減少していた。
その結果、相対的に歩数は48.3%、FVCは13.3%、6MWDは7.8%減少した。

【考察】
IPF患者のPAは身体機能と同様に死亡予測が可能となり、縦断的なPAの減少は比例して大きかった。
今回のデータより、身体機能評価によって、疾患の進行が過小評価されている可能性があることを示唆した。

2021/11/10

食道癌術前活動量 術後合併症と関連

Association between physical activity and postoperative complications after esophagectomy for cancer: a prospective observational study

Asian Pac J Cancer Prev (IF: 1.58; Q2). 2013;14(1):47-51.


【背景】
食道癌術後の合併症は、患者に多くの不快感を与え、入院日数を長引かせている。身体活動の減少は、身体機能と密接な関係があるため、術後合併症の独立したリスク因子の一つである。
この研究の目的は、食道癌手術を行う患者の身体活動が、術後合併症のリスクを減少させるかについて検討した。

【方法】
51人の患者。新たに食道癌と診断され、2009年から2011年の間に食道がん切除術を行った患者。
患者背景、病理診断、治療情報を記録し、身体機能を測定した。
過去7日間の身体活動質問表(IPAQ)で術前の身体活動を評価。
多変量ロジスティクス回帰分析、ステップワイズ法を用いて、術前身体活動が、術後合併症のリスクと関連しているかについて解析した。

【結果】
男性、3フィールドのリンパ節郭清、低レベルの身体活動、術前併存症が、術後合併症と独立して関連していた。

【考察】
低身体活動、術前併存症、3フィールドのリンパ節郭清が、食道癌切除術後の合併症のリスク因子であった。
今後の研究が必要であるが、高い身体活動を維持することで、術後合併症のリスクを軽減できるかもしれない。


・京都大学での研究
・2009-2011年に新たに食道癌と診断され、術前にneoadjuvant化学療法を行うか、手術のみを行うことを予定された患者が対象
・介助なしで歩けない患者は除外
・術後は、全患者ICUに入室
・評価項目:患者背景、臨床病理的情報、治療方法、
・手術方法は、1)胸腔鏡および 腹腔鏡下食道切除術、2)胸腔鏡および開腹食道切除術、3)開胸および腹腔鏡下食道切除術
・その他の手術情報として、リンパ節郭清の範囲(2フィールド以下or3フィールド)、失血量、手術時間、
・術前合併症として5つを記録:高尿酸血症、心疾患、糖尿病、高血圧、COPD
・身体機能評価:膝伸展筋力、6MWD、肺機能

・身体活動量評価:IPAQshort versionを使用。
週あたりのMETsを算出し、9METs未満と9METs以上に分類。
・術後14日以内の術後合併症を調査。

結果
・55人の患者がリクルートされ、51人が解析対象
・平均年齢65歳、男性44人。術後合併症ありは20人
・合併症の有無で分けると、術前6MWD、筋力は、合併症有無で有意差なし。身体活動で有意差あり(合併症ありのほうが、9METs以下が多い)
・術後合併症を予測する多変量解析:低身体活動は28.3倍、男性18.6倍、3フィールドのリンパ郭清9.6倍、術前合併症5.9倍

考察
・先行研究で高齢、腫瘍部位、手術時間、3フィールドリンパ郭清、併存症が術後合併症のリスク因子であった→今回のリンパ郭清は独立したリスク因子であり、反回神経麻痺の発生率位が高いことが影響しているかもしれない。今回の合併症で最も多かった(25%)
・身体活動が合併症に影響していた原因として、高血圧や糖尿病など生活習慣に関連した疾患の影響があるのではないか。
身体活動レベルと全死亡原因は直線的に関連しており、これは生活習慣に関連した疾患のためである。

今回、吻合部のリークが16%で発生した。吻合部のリークは、胃の虚血の要因として重要である。
1件の先行研究で、高血圧と糖尿病の既往が、吻合部のリークの独立した予測因子であった。これは組織への微小な血流を減少させることが要因と考えられる。

身体活動レベルが高い患者においては、より良い循環が保たれるため、リークの発生が減少しているのかもしれない。
→術前1週間の身体活動を高めておくことが術後合併症の予防になるかもしれない。

研究限界
・小さいサンプルサイズ、単施設研究
・前向き観察研究である。身体活動の直接の効果については評価していない

2021/11/09

間質性肺疾患 CATスコアで3年以内の予後予測

The prognostic value of the COPD Assessment Test in fibrotic interstitial lung disease

Respir Investig (IF: 1.64; Q2). 2021 Sep 18;S2212-5345(21)00144-1.


【背景】
COPD assessment test(CAT)は、IPFや結合組織関連間質性肺疾患の健康状態の評価として研究されている。
予後予測については知られていない。
この研究では、CATスコアとIPFやその他ILDを含む線維性間質性肺疾患(FILD)の死亡率との関係について調査した。

【方法】
後方視的に501例のFILD患者をリクルート
評価項目は、肺機能、CATなど。
CATスコアと3年死亡率は、Coxハザード分析、カプランマイヤープロット、ログランクテストで傾向を見た。
欠落したデータを処理するために、インプテッド法を使用しました。

【結果】
患者の中央値年齢は68歳、320人が男性(63.9%)
CATが重症度別では、203人は影響度低い(10点未満)、195人は中等度(10-20点)、80人が高度(21-30点)、23人は非常に高度の影響度(31-40点)
3年間の研究期間中、118人が死亡。
年齢、性別、FVC、DLCO、IPF、CT画像で通常間質性肺炎パターン、を補正すると、CATスコアが3年間死亡率と強く関連していた(10点増えるごとに、HR1.458、95%CI:1.161-1.830、p<.001)。
加えて、影響度が高いもしくは非常に高い患者では、低い患者よりも死亡リスクが2倍、3倍であった。

【考察】
CATスコアはFILDの予測値である。



2021/11/06

TKAの理学療法管理 clinical practice guideline

Physical Therapist Management of Total Knee Arthroplasty

Physical Therapy, Volume 100, Issue 9, September 2020, Pages 1603–1631,


TKAに関するクリニカルプラクティスガイドラインをアメリカ理学療法士のボランティアによって作成された。
現在のシステマティックレビューと臨床情報に基づいて作成している。

【対象患者】
成人TKA初回TKA患者を対象にした管理を記載している。
再置換術や部分置換術、小児患者、リウマチ患者の管理については意図していない。さらに、手術を行わない患者に対しての管理についても含まれていない。

推奨レベルのサマリー
<強く推奨>
運動機能トレーニング(バランス、歩行、活動、対称性):PTはバランス、歩行、活動対称性を含むトレーニングを行うべき。

<中等度の推奨>
術前運動プログラム:筋力や柔軟性に関する運動を指導すべき
CPMデバイス:初回や合併症の無いTKAに使用すべきでない
寒冷療法:術後早期の疼痛管理のために寒冷療法の励行を指導すべき
神経筋電気刺激(NMES):大腿四頭筋力や歩行パフォーマンス、アウトカム、患者報告アウトカムの改善のために行うべき
抵抗運動:高強度の抵抗運動を術後早期の期間(術後7日以内)に計画、指導、実施すべき
予測因子(BMI、抑うつ、術前ROM、筋力、年齢、糖尿病、併存疾患、性別):
 BMI高値は術後合併症、アウトカム不良と関連
 抑うつは術後アウトカムの悪化と関連
 術前ROMは術後ROMと正の関連。しかし、身体機能やQOLへの影響は最小限。
 術前身体機能は術後身体機能と関連
 術前筋力は術後身体機能と関連
 年齢は患者報告アウトカム、パフォーマンス評価、機能障害に複合的に関連
 糖尿病は機能的アウトカムの悪化と関連しない
 併存症の多さは、患者報告アウトカムの悪化と関連
 性別は術後アウトカムにポジティブにもネガティブにも関連
術後理学療法:監視下理学療法を行うべき。患者の安全性、活動、環境、個人因子に考慮して行うべき。
術後理学療法のタイミング:術後24時間以内に開始し、退院前まで行うべき
退院計画:PTはケアチームに情報提供を行うべき。身体機能、補助具、サポートサービスの利用について。

<弱く推奨>
術後安静時の膝屈曲:術後早期の出血や腫脹軽減のため、術後7日間は、安静時膝屈曲位(30°-90°)での姿勢を指導
集団or個別介入:集団or個別介入を行うかもしれない

<ワーキンググループの見解、効果が明らかでない項目>
術前教育:入院中に行うこと、退院のために必要な内容、術後リハプログラム、安全な移乗方法、補助具の使用、転倒予防
身体活動:身体活動の適切な進行、安全、耐久性、身体的な反応について指導し、早期離床を行うべき。
術後の膝ROMex:他動、自動介助、自動運動での膝屈曲ROMexを励行すべき
予測因子(喫煙、患者支援):現喫煙者や支援が得られない患者は、機能的に最適ではない結果と関連するかもしれない。
アウトカム評価:患者報告アウトカムにはKOOS、身体機能評価にはTUGを使用。

胸部外科術後のバランス、歩行、身体機能の状態-健常コントロール群と比較-

Investigating balance, gait, and physical function in people who have undergone thoracic surgery for a diagnosis of lung cancer: A mixed-methods study

Chron Respir Dis (IF: 2.44; Q4). Jan-Dec 2021;18:14799731211052299.


【目的】
肺がんに関連した症状と胸部外科は、転倒リスクが高まる。
目的は、1)バランス、歩行、機能的状態を健常コントロール群と胸部外科術後患者で比較する事
2)バランス、歩行、機能的状態の認識を高める。

【方法】
対象は、50歳以上で過去3か月に肺がんの診断で肺切除を行った患者と、年齢マッチした健常コントロール群
動的・静的バランス、歩行加速度、膝伸展筋力、身体活動レベルを評価
評価方法は、
バランス→BESTest、Kistler force plate
歩行加速度→GAITRite system
膝伸展筋力→Biodex System 3
活動量→CHAMPS questionnaire
術後に2部構成のインタビューを実施した。

【結果】
術後患者(n=15)は、動的バランス、歩行、中等度/高度身体活動(MVPA)レベルが、コントロール群(n=15)と比べて悪かった。
筋力は、有意差なし。
BESTestと筋力もしくは術後の身体活動に関連はなかった。
3つのテーマが確認された
1)症状は日常活動に影響する
2)機能的状態によってバランス状態の認識が異なる
3)監視下でのリハビリテーションが必要

【考察】
バランス、歩行、MVPAは、胸部外科術後に障害されていたが、バランスはADLにおいて重要では無いと考えられていた。
しかし、監視下でのリハビリテーションに参加することが考慮された。

2021/11/02

がん術前の運動耐容能評価 術後アウトカムを予測

Preoperative Cardiopulmonary Exercise Test Associatedwith Postoperative Outcomes in Patients Undergoing CancerSurgery: A Systematic Review and Meta-Analyses

Ann Surg Oncol (IF: 5.34; Q2). 2021 Nov;28(12):7120-7146.


【背景】
術前の心肺運動負荷試験(CPET)が、がんの手術を行う患者の術後のアウトカムを予測するかについてのエビデンスは混在している。
このレビューの目的は、術前CPETの値と術後合併症、入院日数、QOLとの関係を調べること。

【方法】
MEDLINE, Embase, AMEDを用いて、2020年4月に検索。術前CPET値(最大酸素摂取量、AT、CO2換気量(VE/VCO2))と術後アウトカム(合併症、入院日数、QOL)との関係について検討した論文が対象。
バイアスリスクは、QUIPSツールを用いて評価。
ランダム効果モデルメタ解析は、可能であれば実施した。

【結果】
52件の文献、10030人の患者が対象
全体的に、多くの研究でバイアスのリスクが低かった。
術前peakVO2が高いと、術後合併症が少なく(mean difference [MD]: 2.28; 95% confidence interval [CI]: 1.26-3.29)、呼吸器合併症が少なかった(MD: 1.47; 95% CI: 0.49-2.45). 
術前ATとVE/VCO2も、いつかポジティブな傾向を示した。
今回の文献にはネガティブは結果は報告されていなかった。

【考察】
このシステマティックレビューとメタアナリシスは、術前CPET値が高いこと、特にpeakVO2が高いことは、より良好な術後アウトカムと関連していた。
がん患者に、術前に運動耐容能を評価することは、治療の意思決定を援助できる可能性がある。