2021/10/30

大腸がん術前の習慣的身体活動は、術後合併症を予測する。

Self-assessed preoperative level of habitual physical activity predicted postoperative complications after colorectal cancer surgery: A prospective observational cohort study

Eur J Surg Oncol (IF: 4.42; Q2). 2019 Nov;45(11):2045-2051.


【背景】
術後の回復に対する身体活動の影響について注目されている。
術後回復を評価する一つの重要な側面として、術後合併症がある。
目的は、大腸がんの手術を待機的に行った患者における、習慣的な術前身体活動レベルと術後合併症の関係について調べること。

【方法】
115人の患者が対象
身体活動は、the Saltin-Grimby physical activity level scale.を用いて評価。
術後30日以内の合併症を、Clavien-Dindoの合併症分類で層別化し、the Comprehensive Complications Index (CCI)を用いて評価した。
プライマリーアウトカムは、CCIの違い
セカンダリーアウトカムは、CCI≧20のリスク

【結果】
身体不活動の患者において、CCIは軽度身体活動よりも12ポイント高く (p = 0.002)、通常身体活動群よりも17ポイント高かった(p = 0.0004)。
不活動における相対的CCI≧20のリスクは、軽度身体活動群よりも65%高く、通常身体活動群よりも338%高かった。

【考察】
大腸がん術前の自己報告型身体活動レベルは、CCIで評価した術後合併症と関連していた。




2021/10/27

IPFの身体活動量の減少 肺生理学的変化と比例しない

Physical activity decline is disproportionate to decline in pulmonary physiology in IPF

Respirology (IF: 6.42; Q1). 2021 Aug 26. doi: 10.1111/resp.14137.


【背景】
IPF患者は日常身体活動レベルが低下している。しかし、疾患の進行でどの程度身体活動量が変化するかはあまり知られていない。
目的は、
1)12か月通じて身体活動の変化を追跡する
2)疾患重症度やQOLのマーカーとの関連を調べる
3)予測ツールとして身体活動評価が有用か

【方法】
54人のIPF患者が対象。
ベースライン、6ヶ月後、12か月後に7日間連続して身体活動計(SenseWear armband)を装着。
評価項目:HADS、SGRQ、Leicester Cough Questionnaire、FVC、DLCO、6MWDをそれぞれの測定時に実施。

【結果】
ベースラインの歩数3887歩、12か月後の歩数3326歩
歩数(平均-645歩、p=.02)と総エネルギー消費(平均-486Kj、p=.01)は12か月後に著明に減少。
12か月後の歩数の減少は、肺機能の減少よりも大きな割合。
身体活動の年次変化は、%FVCと6MWDの年次変化と中等度の相関(range r = 0.34-0.45)。
身体活動の変化は、長期生存率と関連しなかった。

【考察】
IPFにおいて、12か月の身体活動の減少は、肺生理学的な低下と比例しない有意なものであり、疾患進行度の評価ツールとして有効かもしれない。

2021/10/18

65歳以上高齢者におけるIPAQの信頼性・妥当性

Reliability and Validity of the International Physical Activity Questionnaire (IPAQ) in Elderly Adults: The Fujiwara-kyo Study

J Epidemiol 2011;21(6):459-465


【背景】
IPAQは身体活動を評価する自己記入式の質問表であり、12の国の18-65歳で使用されている。
本研究では、65歳以上の高齢者におけるIPAQの信頼性と妥当性について評価した。

【方法】
164人の男性と161人の女性が参加した日本人高齢者を対象にした前向きコホート"Fujiwara-kyo study”のデータを使用。
試験間誤差の信頼性を調べるために、IPAQを2週間開けて2回評価した。
妥当性の検討は、加速度計を使用して検討した。

【結果】
級内相関係数に基づいて、IPAQ合計の信頼性は
65-74歳で男性0.65、女性0.57
75-89歳で男性0.50、女性0.56
(級内相関係数0.7以上で信頼性あり)

スペアマンの相関係数でIPAQ合計スコアと加速度計で評価した総身体活動(TPA-AC)の関係は、
65-74歳で男性0.42、女性0.49
75-89歳で男性0.53、女性0.49

IPAQスコアとTPA-ACの間の加重カッパ係数
65-74歳で男性0.49、女性0.39
75-89歳で男性0.46、女性0.47
(カッパ係数:同じ対象に対して、2つの評価の一致性を表す場合に使用。繰り返し測定の一致度を確認する。1に近いほど一致度が高い)

ネットの拾い画より


【考察】
IPAQの信頼性は、十分ではなかったが、妥当性は十分であった。
分類の再現性や一致性に関して、いくつか制限があったが、IPAQは、高齢者の身体活動を評価するために有用なツールである。

術前フレイルの有無と術後せん妄の関係

The Association of Preoperative Frailty and Postoperative Delirium: A Meta-analysis

Anesth Analg (IF: 5.11; Q1). 2021 Aug 1;133(2):314-323.


【背景】
フレイルと術後せん妄(postoperative delirium:POD)は、65歳以上の患者に共通している。しかし、術前フレイルとPODの関係について特徴づけることは難しく、フレイルの数の多さとPOD評価ツールで妥当性のあるものがいくつかしかないためである。
さらに、フレイルとノンフレイルを明確に分けるカットオフが明記されている評価ツールはいくつかしかない。
術前フレイルとPODの関係についてのメタアナリシスを行った。

【方法】
入院し、手術を行い、平均年齢65歳以上の患者において、術前フレイルとPODを比較した研究を探索。
採用基準は、1999年以降の英語論文。
術前フレイルとPODは、フレイルとせん妄の明確なカットオフのあるツールで評価していなければならない。
文献は独立した2名で精査。
バイアスリスクと交絡の存在をまとめた。

PODとフレイルが関連しているオッズ比を算出。

有意水準は、両側5%未満。

【結果】
9件の研究がメタアナリシスの対象となった。
Friedスコアもしくは修正版が5文献にて採用されていた。
フレイルの有病率は18.6%から56%。
せん妄は、7文献でConfusion Assessment Method (CAM) もしくは Confusion Assessment Method for the Intensive Care Unit (CAM-ICU) で評価。
Delirium Observation Scaleが1文献、Intensive Care Delirium Screening Checklistが1文献で採用されていた。
PODの発生率は7%から56%。
バイアスリスクは、1文献で低く、4文献で中等度、3文献で重度、1文献で致命的と指摘された。
フレイルとノンフレイルでのPODのオッズ比は、2.14倍で、95%CI1.43-3.19。

ファネルプロット解析では、出版バイアスの有無を明確に裏付けるものではなかった。

【考察】
今回のメタアナリシスにおいて、65歳以上の周術期患者における術前フレイルとPODに著明な関連があるエビデンスが示された。

2021/10/11

起立テストは、運動能力・感覚・心理状態に影響される

Sit-to-stand performance depends on sensation, speed, balance, and psychological status in addition to strength in older people

J Gerontol A Biol Sci Med Sci (IF: 6.05; Q1). 2002 Aug;57(8):M539-43.


【背景】
起立テスト(Sit-to-stand (STS) )は高齢者の下肢筋力としてよく利用されており、特に低下している。
テスト結果が、バランスや移動能力と関連している要因として影響していることを示唆する報告がある。
今回、高齢者における起立テストが下肢筋力を予測するかに加えて、知覚運動性(sensorimotor)、バランス、精神的要因と関係するかについても検討した。

【方法】
669人の地域在住高齢者が対象。
平均年齢78.9±4.1歳
筋力、視力、末梢感覚(peripheral sensation) 、反応時間、バランス、健康状態、起立テストを評価。
*起立テスト:腕を組んだ姿勢での5回起立時間。椅子の高さは0.43mで肘置きなし。

【結果】
単変量解析にて、起立時間は、多くの身体的・心理的要因と関連していた。
多変量回帰分析にて、視覚コントラスト感覚、下肢固有受容感覚(proprioception)、末梢触覚(tactile sensitivity)、ステップ反応の反射時間、ゴムマット上での動揺、体重、SF-12スコアの疼痛、不安、膝伸展、膝屈曲、足関節底屈筋力は、STS結果の独立した予測因子であった。
これらの評価のうち、大腿四頭筋力が、最も高いβ値を示し、STS結果の分散を説明する上で最も重要な変数であることが明らかになった。
しかし、残りの尺度は、STS時間の説明された分散の半分以上を占めていた。最終的な回帰モデルは、STS時間の分散の34.9%を説明した(multiple R =.59)。

【考察】
地域高齢者において、STSテストは、多数の身体的・精神的な要因に影響しており、下肢筋力の代用というよりも、特定のトランスファースキル(動作スキル?)を表している。

2021/10/09

人工呼吸中にスクイージングを行うことは、酸素化や換気に影響しない!?

Effects of Expiratory Rib-Cage Compression on Oxygenation, Ventilation, and Airway-Secretion Removal in Patients Receiving Mechanical Ventilation

Respiratory Care November 2005, 50 (11) 1430-1437;


【背景】
呼気胸郭圧迫は、胸部理学療法手技の1つであり、日本では”スクイージング”として知られている。

【目的】
人工呼吸管理を行っている患者に対して、胸郭圧迫が気道分泌物除去、酸素化、換気に影響するかを検討する事。

【方法】
ICUにて31人の挿管、人工呼吸管理を行っている患者を対象としたランダム化クロスオーバー試験。
スクイージングありなしで、気管吸引を行い、2回介入(スクイージング有りと無し)の間には最低3時間のインターバルをおいた。
胸郭圧迫は、気管吸引の5分前に実施。
動脈血ガスと呼吸メカニクス(換気量など)は、吸引5分前と吸引25分後に評価。
2回の介入は、同日に行った。

【結果】
動脈血酸素分圧、呼気酸素分圧、PaCO2、動的肺コンプライアンスは、2回の介入間に有意差を認めなかった。
さらに、気道分泌物除去に関しても差を認めなかった。

【考察】
今回の対象患者において、吸引前に胸郭圧迫を行うことは、吸引後の気道分泌物除去や酸素化、換気を著明に改善させることはなかった。


イリザロフ固定を行ったピロン骨折の下肢荷重やバランスの状態

Assessment of the distribution of load on the lower limbs and balance before and after ankle arthrodesis with the Ilizarov method

Sci Rep (IF: 4.38; Q1). 2018 Oct 24;8(1):15693.


イリザロフ法による足関節固定術は、進行した足関節の退行性変化に対する治療法として認められている。
下肢へのバランスや荷重分布が不正確であると、疼痛や機能障害を引き起こすかもしれない。
この研究の目的は、イリザロフ法による足関節固定術前後での下肢の荷重バランスの変化について評価する事。

2013-2016年にイリザロフで足関節固定術を行った21人の患者が対象。
バランスと下肢荷重の割合評価は、術前と追跡期間中に実施。

Zebris pedobarographic platform.(足底圧計測器?)で評価

術前:患側下肢への平均荷重は、体重の41.9%であった。一方、健側下肢へは58.1%であり、統計的な有意差を認めた。(p = 0,000031).
2年間のフォローアップにて、治療側への荷重は48.19%であり、健側は51.81%であった。



術前検査にて、重心の平均軌跡長は161.55㎝であった。
術後の重心の平均軌跡長は129.7㎝であった。

術前:重心の平均面積は18.85㎝2で、これは、術後に6.19cm2へ減少していた。

イリザロフ法による足首の関節固定は、下肢の荷重分布やバランスを改善することで、筋骨格系のスタティックを向上させました。

しかし、健常時の状態へ復元することはできなかった。足関節の退行性変化が進行すると、下肢全体のバイオメカニクスに支障をきたしていた。