2021/02/28

肺炎入院後1週間の摂取エネルギー不足がアウトカムに影響

Impact of Energy intake at One Week after Hospitalization on Prognosis for Older Adults with Pneumonia

J Nutr Health Aging (IF: 2.791; Q1). 2020;24(1):119-124.


<背景>
目的は、高齢肺炎患者の入院1週間の平均摂取エネルギーを調査すること。

<方法>
後方視的コホート研究。日本栄養リハビリテーションデータベースに含まれた、急性期病院での高齢肺炎患者。
329人の肺炎患者(65歳以上)で、2015年から2018年に日本栄養リハデータベース(JRND)に登録した患者。
ロジスティック回帰分析を用いて、摂取エネルギーと死亡率、自宅退院、入院中の肺炎再発、を比較。
多変量モデルに、年齢、性別、入院中のMNA-SF、A-DROP、Charlson 併存症index、リハビリの有無を変数にして解析。

<結果>
315人の肺炎患者が対象(中央値85歳、男性63.8%)。
57.7%は入院後1週間の摂取エネルギーが不足(Lack of Energy Intake:LEI)していた。
LEIグループは、より高齢で、A-DROPが高く、入院時のMNA-SFで低栄養であった。
死亡率、肺炎再発率、中央値BMI、退院時MNA-SFで低栄養であることは、LEIで多かった。
ロジスティック回帰分析にて、LEIは死亡(OR 5.07)、自宅退院(OR0.33)、肺炎再発(OR3.26)の独立した予測因子であった。

<考察>
肺炎で入院した高齢患者の入院1週目の摂取エネルギー不足は、死亡、自宅退院困難、肺炎再発の独立した予測因子であった。
入院後早期より、適切なエネルギー摂取の重要性を示唆した。

2021/02/22

高齢者の入院関連機能障害

Individual Responsiveness to Physical Exercise Intervention in Acutely Hospitalized Older Adults

J Clin Med (IF: 3.303; Q4). 2020 Mar 14;9(3):797. 


<背景>
目的は、急性期病院に入院した高齢者に対して、運動の反応性の個人間誤差を検証する事。

<方法>
RCTの補助分析であり、268人の患者(平均年齢88歳)が、対照群125人、介入群143人に分けられた。介入群の患者は、監視下での運動(歩行、起立)を行い、反応群と非反応群、乏しい反応群(ADL(Katz index)の入院から退院までの改善度合いで分類)に群分け。
運動の反応性とベースライン(入院2週間前)、入院時、入院中、退院時、3か月フォロー後の各変数の関係を分析した。

<結果>
ADL機能障害と入院時の栄養状態不良が、反応の乏しい群と関連。
一方、入院時のADLが良好であること、入院期間が長いことと併存症が少ないことは反応に乏しかった。
乏しい反応群は、退院時とフォロー中のアウトカムが不良であった(身体的パフォーマンス不良、転倒が多い)。


<考察>
運動介入は、高齢者の入院中の身体機能低下を予防するが、入院時に身体機能や健康状態が良い患者や入院が長期化しているような患者では、反応が乏しい群になるリスクが高く、短中期的な後遺症の後遺症となるリスクが高い。


2021/02/19

COPD急性増悪中の呼吸リハ

Design of pulmonary rehabilitation programmes during acute exacerbations of COPD: a systematic review and network meta-analysis

Eur Respir Rev (IF: 6.22; Q1). 2020 Nov 18;29(158):200039.


システマティックレビューでは、COPD急性増悪(AECOPD)中の呼吸リハの実施のデザインの違いとどの介入が最も効果的であるかを検討することを目的としている。
PubMed, Scopus, Web of Science, EBSCO and Cochraneで、検索した。
通常ケアや異なる介入と比較しているランダム化比較試験を対象。

42文献が対象。
多くの研究で(57%)、入院患者を対象としており、24%が入院後24-48時間以内に介入開始していた。
最も用いられていた内容は、運動(71%)、教育や心理サポート(57%)、呼吸法(55%)であった。
運動と呼吸法の組み合わせの研究で、運動耐容能(加重平均の差(WMD)-41.06,95%CI -131.70-49.58)と健康関連QOL(WMD 16.07, 95% CI 10.29-21.84)が最も大きく改善
健康関連QOL、呼吸法の実施が息切れと入院日数に対して最も効果的であった。

いくつかの軽微なイベントがあったが、AECOPD中の呼吸リハは安全な介入である。
運動、呼吸法、教育、心理サポートが、AECOPD中の呼吸リハの核となる介入であった。

今後の研究で、介入を開始する最適なタイミング、介入期間、セッションの時間と頻度、運動処方の強度に関しての研究が求められる。

2021/02/18

ICU退室後のCOVID-19患者の呼吸リハの効果

Effectiveness of pulmonary rehabilitation in COVID-19 respiratory failure patients post-ICU

Respiratory Physiology & Neurobiology Volume 287, May 2021, 103639


<背景>
いくつかのCOVID-19患者は、呼吸不全が進行し、ICU入室が必要となる。
ICU後のCOVID-19患者に対しての呼吸リハが効果的であるかを調査した。

<方法>
21人のCOVID-19患者を呼吸リハ前後で評価。後方視的に、呼吸不全でICU入室後にリハを行った21人のCOVID-19以外の患者と比較した。

<結果>
COVID-19患者で、6MWDが非COVID-19患者よりも大きく改善した(+205m vs +93m)。
ICU後、より早く呼吸リハを開始した方が、より回復していた。

<考察>
COVID-19後の呼吸リハでは、機能的に大きく改善するが、身体的・精神的な障害は、呼吸リハ後も残存する。

一番下の外傷後ストレス(post-traumatic stress)がリハ後も残存している。


2021/02/09

入院中の高齢者の歩数、身体機能が退院後の歩数と関連

Factors Associated with Step Numbers in Acutely Hospitalized Older Adults: The Hospital-Activities of Daily Living Study

J Am Med Dir Assoc (IF: 4.367; Q1). 2021 Feb;22(2):425-432.


<目的>
入院した高齢患者が入院中と、退院後1週間に何歩歩いているかを調査すること。
また、退院後の歩数と関連している因子を同定し、退院後の機能低下と歩数の関係についても調査。

<方法>
前向き観察コホート研究。
70歳以上の高齢者。6つのオランダの病院(老人病棟)に内科、循環器で入院した48時間以内の患者。
歩数は、Fitbit Flex active trackerを入院中と退院後1週間装着(手首)。
社会背景、体質、身体、心理社会的要因は入院中に評価。
機能低下は、退院1か月後のKatz indexで判断。

<結果>
解析対象は、188人(平均79.1歳)。
退院1ヶ月後、174人中33人(19%)が機能低下を経験。
入院最後の日の歩数は、中央値1750歩。
退院1日目の歩数は、中央値1750歩まで増加し、退院7日後には中央値1997歩に増加
年齢、身体パフォーマンス、入院中の歩数が、退院後の歩数と関連していた。
退院後の歩数と退院1ヶ月後の機能低下に著明な関連を認めた。

<考察>
急性期病院に入院した高齢者において、退院1日目の歩数が倍になっており、入院中の能力が
十分に活用揮されていないことを示している。
身体パフォーマンスと入院中の身体活動量は、退院後の歩数増加に重要である。
退院1週間後の歩数は退院1ヶ月後の機能低下に有益な指標である。

・活動量:非利き手の手首に装着。充電時間以外は装着したまま。活動量測定のゴールドスタンダードと高い相関あり(r=0.98)
・機能低下の定義:Katz indexで評価。ベースライン(入院2週間前)と比べて、退院1ヶ月後に1つ以上のADL動作で介助が必要であること。
・身体パフォーマンス:SPPBで評価。

A:全患者(n=188)
B:機能低下していた患者(n=33)
C:機能低下していなかった患者(n=141)
p75:第3四分位
p25:第1四分位
day-7:退院7日前
day7:退院7日後



2021/02/04

動作時酸素流量のはどのように決定するかー6MWTは過大評価している可能性ー

 Portable Oxygen Therapy: Is the 6-Minute Walking Test Overestimating the Actual Oxygen Needs?

J Clin Med. 2020 Dec; 9(12): 4007.


<背景>
COPD患者で重度の低酸素血症を呈する患者に必要な適切な酸素流量は、長期酸素療法を成功させるための需要な要因である。
日常生活で患者が必要な酸素量決定を補助する標準的な手順は無い。
耐久テストが広く用いられているが、適切な酸素量を決めるためのプロトコルが必要である。
この研究の目的は、COPDと動作時低酸素血症のある患者に対して、6MWTで決定した酸素量が、ADLで必要な流量であるがを評価すること。

<方法>
2種類の歩行テストを行い、生理学的、主観的な変数を推定。
6MWTと20分間サーキット歩行(20MWC):より日常生活での活動を再現したコースを作成。

<結果>
多くの患者で、6MWTは家庭環境において必要な酸素量を正確に予測しないかもしれない。
したがって、これらの症例における携帯酸素の量は、患者の健康(高酸素状態)に悪影響であり、外出時間を減少させるため、適切とは言えないかもしれない。

・スペイン、カディスの大学病院でのスタディ。17人の患者が参加。
・対象は、動作時低酸素血症がある、携帯型酸素療法を行っている、最低3か月、携帯酸素を使用している。
・6MWTはフラットな30m直線コースを使用。
・20MWCは、日常生活での場面を想定したサーキットコースを作成:平地、傾斜、階段。通常の歩行速度で歩行するよう説明。
・テスト中は、患者が普段使用している酸素デバイスを使用。全患者は、あらかじめ決められた酸素量を使用。パルスモードで実施。

20分サーキット歩行のコース

・テスト中は、ECGモニター、SpO2モニターを装着して歩行。
・ベースラインのSpO2、テスト中毎分のSpO2、テスト終了時のSpO2を記録。また、95%以上の時間、90%、88%、85%、80%、75%、70%未満で経過した時間も記録。
・低酸素血症の定義は、SpO2≦4%の低下が10秒続いた場合。



2021/02/03

ICUでの筋委縮(筋力低下)は、退院時身体機能を予測

 Acute skeletal muscle wasting and dysfunction predict physical disability at hospital discharge in patients with critical illness

Crit Care (IF: 6.407; Q1). 2020 Nov 4;24(1):637. 


<背景>
重症疾患から生存した患者は、筋力低下が進行しており、身体機能障害を引きおこす。しかし、早期筋力刺激と退院時の身体機能に関して知られていない。
主な目的は、筋肉の大きさ、筋力の変化をICUで評価し、退院時の身体機能を予測できるかを検証した。

<方法>
単施設、前向き観察研究。敗血症、急性呼吸不全の診断でICUに入院した患者が対象。
大腿直筋(Rectus femoris (RF))と前脛骨筋(tibialis anterior (TA) )を超音波画像にてICU1日目に撮影。続けて、筋横断面積(muscle cross-sectional area (CSA))、筋厚(layer thickness (mT))、エコー輝度(echointensity (EI))を評価。
筋力は、MRC-sumスコアと筋出力(レッグプレス)でICU退室前に評価。
身体機能は、退院時の5回起立(5STS)時間を評価。

<結果>
41人の患者、年齢中央値61歳(IQR:55-68)。男性56%。
入院時SOFAスコアは8.1±4.8.
大腿直筋の横断面積は、1日目から7日目の間に、18.5%(中央値)減少。
大腿直筋のエコー輝度は、最初の7日間で10.5%増加。
退院時、25.7%の患者が、ICU-AWの診断を満たした。
ICU入室後最初の7日間でのRFエコー輝度の変化とICU前の筋出力が、退院時のICU-AWを強く予測した。(AUC=0.912)
ICU退室時の筋出力、年齢、ICU日数は、退院時5STSのパフォーマンスを予測する。

<考察>
ICUで評価した筋肉の変性、特にRFエコー輝度と筋出力において、ICU-AW診断と退院時の5STSで評価された身体機能を予測する。

※筋輝度の上昇が筋内の脂肪組織をはじめとする非収縮組織の増加を反映することがあきらかとなっている。(理学療法学2014)