2020/05/31

IPF患者の短期間包括的呼吸リハの効果

Short-Term Effects of Comprehensive Pulmonary Rehabilitation and Its Maintenance in Patients With Idiopathic Pulmonary Fibrosis: A Randomized Controlled Trial

J Clin Med (IF: 5.688). 2020 May 21;9(5):E1567.


<背景>
特発性肺線維症(IPF)患者への呼吸リハ(PR)は推奨レベルは、弱く低い質のエビデンスである。
したがって、今回の目的は、短期間のPRの効果と3か月のフォローアップ後のメンテナンスについて検討すること。

<方法>
54人のIPF患者を無作為に3週間の包括的入院PRグループと通常ケアに分けた。
アウトカムのタイミングは、ベースライン(T1)、介入後(T2)、T2の3か月後(T3)
6MWDをプライマリーアウトカム、CRQをセカンダリーアウトカムとした。

<結果>
T1からT2の6MWDは変化改善していたが、T1とT3では有意な違いはなかった。
ベースラインのFVCが高い、不安症状が強いと短期間での6MWDが著明に改善する良い予測因子であった。
CRQ合計スコアの変化は、PR群において、T1とT2、T1とT3の間に、有意な改善を認めた。

<考察>
短期間の効果に加えて、入院PRは中期的なQOL改善効果も認めた。
病期の早期からPRを行うことが、もっとも効果的であると思われる。

・ドイツの3施設にて行われたRCT
・CTにてIPF(UIP pattern)と診断された患者が対象
・除外基準は、%FVC<50%(調査期間中に死亡するリスクが高いため)、急性冠動脈疾患、PRを行うのにが禁止されている、COPD合併
・患者特性:平均年齢65歳、%FVC74%、%DLCO30-40%程度、6MWD400m


・ランダムにPRに振り分けられた患者は、まず3週間の入院にて包括的PRを実施。
・PRプログラムは、必要であれば酸素療法やNPPVを使いながら実施。
・心理サポート、呼吸法、教育(疾患管理、身体活動、栄養、モチベーション)、運動療法
・運動内容
【持久力運動】
頻度:5-6日/週
強度:自転車で最大負荷の60-100%
時間:1セッション15-18分(インターバルもしくは持続)
【筋力トレーニング】
主要筋群(major muscle groups)を15-20RMを3セット

・運動強度や時間は、息切れ修正Borgで4以下を目標に増加させる

・対照群:必要であれば呼吸器専門医にコンタクトをとる。外来PRは期間中行わない。

●PR、○通常ケア
A:6MWD
B:CRQ合計スコア
C:HADS 不安スコア
D:HADS 抑うつスコア

・6MWD 
ベースラインvs介入後:(Δ = 61 m, 95% CI (18.5–102.4 m), p = 0.006)
ベースラインvs介入後3ヵ月: (Δ = 26 m, 95% CI (8.0 to 61.5 m), p = 0.16)

ベースラインで不安症状の強い患者群の78%が6MWDのMCIDをクリアしていた
(A Cochrane analysis found a mean 6MWD difference of +44 m in ILD and +36 m in IPF patients after PR)

・要因として、運動だけでなく包括的な介入が良かったこと、個別的な介入が出来ていたこと、外来PR(2回/週)より多くの運動セッションを行えていたことが考えられるとの事。

2020/05/17

胸部外科の周術期リハの効果

Effectiveness of perioperative pulmonary rehabilitation in thoracic surgery.

J Thorac Dis. 2017 Jun;9(6):1584-1591.


<背景>
手術可能な肺がん患者や慢性呼吸器疾患患者にとって、身体機能は重要である。
目的は、周術期呼吸リハ(PR)が、身体機能やQOLに有効であるかを検討した。

<方法>
208人のCOPD患者(平均年齢63歳、%FEV1.0 62%)が周術期PRに参加。
患者の72%に初発の肺がんを認めた。
術前リハのみ参加が68人。
術前後に参加したのが72人。
術後のみ参加が68人。
PRプログラムは、呼吸練習、個別トレーニング、禁煙。
肺機能、6MWTをリハ前後に測定。
QOL(CATとmMRC)も同様に測定。

<結果>
%FEV1.0と6MWTが著明に改善。
PRの効果として、FVC、握力、mMRC、CATでも著明な改善を認めた。
平均集中治療期間は、術前PRは3.8日、術後PRのみは3.6日

<考察>
手術前後にPRを行うことは、運動耐容能とQOLを改善させる。


・ハンガリーで2012年から2015年に、208人の周術期COPD患者を対象に実施
・個別トレーニングプログラム
午前に30分の呼吸練習、胸郭モビライゼーション、呼吸コントロール、吸入、排痰、心理状態の改善、禁煙、個別トレーニング

個別の運動:サイクリングorトレッドミルでの持続orインターバルトレーニングを10-30分、1日2-3回、最大強度の60-80%
リハ期間は3週間
息切れと下肢疲労感のBorg scaleがともに「7」を目標に負荷を漸増

Figure 2
PRE:術前のみ介入
PPO:術前後介入
POS:術後のみ介入

以下は、原著の表を参照・・・
・術前後に介入しても、術前の6MWDまで術後に回復はしていなかった。
・術後のみでも、6MWDは改善していた。

2020/05/16

化学療法中の大腸がん患者への運動介入効果

Effects of an Exercise Program in Colon Cancer Patients undergoing Chemotherapy.

Med Sci Sports Exerc. 2016 May;48(5):767-75.


<目的>
疲労感は、大腸がん患者に共通した問題であり、化学療法中は特に増加する。
化学療法中の運動は疲労感に対して効果的かもしれない。
大腸がん患者で補助治療を行っている患者に運動が短期的、長期的に有効であるかを検証した。

<方法>
多施設共同ランダム化試験。33人(男性21名)の化学療法中の大腸がん患者が対象となり、無作為に18週の監視下運動プログラム(17名)と通常ケア(16名)に分けられた。
プライマリーアウトカムは疲労感(the Multidimensional Fatigue Inventory、the Fatigue Quality Listで評価)。
セカンダリーアウトカムはQOL、身体活動、不安、抑うつ、体重、化学療法完遂率。
アウトカム評価は、ベースラインと介入終了時と36週に実施

<結果>
Intention-to-treat混合線形モデル解析にて、介入群の患者では、18週後の身体的疲労感と36週後の全体的疲労感が著明に少なかった。
また、通常ケアと比較して、より高い身体機能が報告された。

<考察>
がん治療中の身体活動研究で、化学療法中の大腸がん患者に対する18週の監視下運動プログラムは安全で効果的であった。
介入は、18週後の身体的疲労感と36週後の全体的疲労感を著明に軽減させた。
本研究の参加患者を考慮し、より大規模な研究が求められる。


・ドイツの7つの病院2010-2013年に実施
・対象患者:大腸がんと診断されて10年未満、stageM0(遠隔転移なし)、予定化学療法、25-75歳、ドイツ語が理解できる、Karnofskyパフォーマンスステータスが60以上、100m以上歩ける

・運動内容
頻度:週2回
内容:PT(理学療法士)による監視下運動。ウォーミングアップ(10分)、有酸素・筋力運動(40分)、クールダウン(10分)の1時間を1セッション。
1日30分は身体活動を行うように指導
強度:有酸素運動;インターバルを採用。2分3セットから7分2セットへ上昇し、呼吸閾値未満で実施
筋力運動;上肢、下肢、肩、体幹。1RMの65%で10回2セットから開始し、75%1RMを10回1セットと45%1RMで20回1セットまで徐々に増加。
筋力運動は週2回。
運動は、週に150分、そのうち筋力運動は週2日行うように指導。4週ごとに、有酸素運動と筋力を再評価。

・対照群
運動介入は行わず、通常通りの身体活動を行った

・患者特性
化学療法はCAPOXを8サイクルがほとんど。
放射線はほぼ行っていない
手術は、開腹と腹腔鏡下がほとんど

・運動機能
最大酸素摂取量は両群で変わらず。
男女で分けると、女性で最大酸素摂取量に有意差あり。

・化学療法完了率
有意差無いが、82%vs76%で、介入群の方が良好な傾向

2020/05/14

COPD増悪後の呼吸リハは死亡率を減少させる。

Association Between Initiation of Pulmonary Rehabilitation After Hospitalization for COPD and 1-Year Survival Among Medicare Beneficiaries

JAMA. 2020;323(18):1813-1823


<目的>
メタアナリシスで、COPD増悪後に呼吸リハを開始することは、生存率を改善させることが示唆されているが、対象患者数が少なく、不均質性が高かった。
現在のガイドラインでは、退院後に呼吸リハに参加することは推奨されている。

<目的>
退院後90日以内に呼吸リハを開始することと、1年間の生存率を比較した。

<方法>
後方視コホート研究。アメリカの4446の急性期病院にCOPDで入院した患者が対象。
プライマリーアウトカムは、1年間の全原因死亡率。退院から死亡までの時間と呼吸リハ開始の時間をCox回帰モデル解析。
死亡と不均質特性と呼吸リハ開始の傾向を調整した。
追加解析として、呼吸リハのタイミングと死亡の関係、セッション完了数と死亡の関係について実施。

<結果>
197376人の患者のうち、2721人(1.5%)が退院後90日以内に呼吸リハを開始。
退院後1年以内に38302人(19.4%)が死亡。これには、90日以内に呼吸リハを開始した患者の7.3%、90日以降もしくはリハを行わなかった患者の19.6%が含まれている。
退院後90日内に呼吸リハを開始することは、1年以上死亡リスクが低いことと関係していた。(HR;0.63、95%CI:0.57-0.69)
呼吸リハの開始は、30日から90日の範囲でも死亡率の低下と関連していた。(HR0.74、95%CI:0.67-0.82)。退院後61-90日で開始は、HR0.40:95%CI:0.30-0.54)。
参加セッションが3つ増えるごとに、死亡リスクの低下と関連していた。(HR:0.91、95%CI:0.85-0.98)

<考察>
COPDで入院した有料サービスのケアを受けている患者のうち、呼吸リハを退院後3ヵ月以内に開始することは、1年間の死亡リスクの低下と著明に関連していた。
これらは、COPD入院後に呼吸リハを行う現在のガイドラインで推奨されていることを支持するものであるが、残存交絡の可能性があるため今後の研究が必要である。


2020/05/13

肺がん術後リハの開始時期の検討

Early Initiated Postoperative Rehabilitation Reduces Fatigue in Patients With Operable Lung Cancer: A Randomized Trial

Lung Cancer (IF: 4.599). 2018 Dec;126:125-132.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30527176/

<背景>
肺がんの手術後に身体機能やQOLを改善するために、運動のタイミングや最適量については明らかになっていない。
今回、手術可能な肺がん患者に術後早期vs晩期に術後リハを開始することが、運動耐容能に影響するかを検証した。

<方法>
2群ランダム化比較試験を実施。
早期(術後14日)と晩期(術後14週)で比較。
プライマリーエンドポイントは、ベースラインと開始26週後の最大酸素摂取量(VO2 peak)の変化。疲労感は、EORTC QLQ C30 LC13で評価。

<結果>
2013年から2016年に、582人の手術可能なNSCLC患者をスクリーニング。
119人の患者が早期グループ、116人が晩期グループに無作為に振り分けられた。
両グループとも26週後に著明な違いは無かった。
ベースラインと14週に著明な違いがあった。
両グループの14週と26週の変化量に著明な違いがあった。
QOLの違いは認めなかったが、両グループ間に、ベースラインから14週までの疲労感に違いがあり、早期グループの疲労感の方が良好であった。

<考察>
肺がん手術後のリハビリの開始時期を早期と晩期で効果を比較した最初の無作為化試験である。
術後の開始時期で運動耐容能の違いは無かった。
しかし、疲労感を軽減するためには、早期から運動プログラムを開始することを推奨すべきである。


2020/05/03

急性呼吸不全からの身体機能回復の経過

Physical Function Trajectories in Survivors of Acute Respiratory Failure.

Ann Am Thorac Soc (IF: 4.026) 2019 Apr;16(4):471-477.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30571923

<背景>
重症状態からの生存率は増加している。しかし、機能的な回復については、完全に明らかにはなっていない。
目的は、退院後に身体機能の回復が似た経過をたどった急性呼吸不全患者のグループを同定することと、それぞれの身体機能の変遷ごとのグループの関連した特性を検討すること。


<方法>
ランダム化比較試験の二次解析。
急性呼吸不全後の身体機能の回復パターンが似ている患者のサブグループにおいて、グループごとの軌跡をたどった。
軌跡と関連した変数を同定するために、Chi squareテストと一方向分散分析を使用。
多変量ロジスティック回帰分析にて、軌跡のグループと関連した共同変数を同定した。

<結果>
合計260人の患者が急性呼吸不全における標準的なリハビリ評価を実施し、生存して退院した患者が解析に参加。
身体機能は、退院時、研究参加後2、4、6カ月後にSPPBで身体機能を4グループに分類。
SPPBスコアの潜在クラス分析にて、4つの経過グループに分類。
これらのグループは、身体機能の低下と回復が異なっていた。
多変量ロジスティック回帰分析で、過去の文献で重症からの回復を促進するとされている変数を使用して解析。
多変量ロジスティック回帰において、年齢、女性、ICU在室日数、静脈内への鎮静剤投与日数が、グループの経過に影響した共通した項目である。
最も、速く完全に身体機能のリカバリーされた患者は、若年女性、鎮静期間が短い、入院日数が少なかった。
この患者の経過では、高齢者、持続鎮静時間、在院日数が身体機能回復に影響していた。

<考察>
重症からの回復後の経過と明確に関連する要因を示した。
年齢、性別、鎮静期間、ICU入室日数が、身体機能の回復経過に影響していた。
さらにこれらのグループで研究を重ねることでより明らかになるであろう。


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