2019/04/29

IPF患者におけるフレイルの罹患率

Frailty and geriatric conditions in older patients with idiopathic pulmonary fibrosis.

Respir Med. 2019 Mar;148:6-12.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30827476

<背景>
高齢者の機能的状態は健康アウトカムの重要な予測因子であるが、IPF患者において研究はされていない。
本研究の目的は、高齢IPF患者において、フレイルや加齢変化の状態を検討すること。

<方法>
ミシガン大学で実施された前向き研究。65歳以上のIPF患者が対象。
フレイルは the Fried frailty phenotypeを用いて評価。機能的状態、加齢変化、症状に関する質問を実施。筋肉量の評価は大胸筋の面積を使用。
患者は、異なるフレイルグループ間で比較された。

<結果>
50人の患者が対象。48%がフレイルであり、40%が2つ以上の加齢変化を認めた。
フレイルは、加齢、低肺機能、低6分間歩行距離、症状スコアの悪さ、併存症の数、加齢変化、機能制限と関連していた。
大胸筋の面積は関連に近い状態であった(p=0.08)
自己申告の疲労感スコア(OR=2.13)、拡散能(OR=0.54)はフレイルの独立した予測因子であった。

<考察>
フレイルと加齢変化は高齢IPF患者に多く認められた。フレイルの状態は客観的データ(拡散能)、主観的データ(疲労感)と関連していた。
今後、IPF特異的なアウトカムにフレイルが影響するかの縦断的検討が必要である。

2019/04/21

術前Peak Expiratory Flowは、術後合併症の独立した危険因子

Preoperative peak expiratory flow (PEF) for predicting postoperative pulmonary complications after lung cancer lobectomy: a prospective study with 725 cases.

J Thorac Dis (IF: 1.804) 2018 Jul;10(7):4293-4301.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30174876

<背景>
目的は、肺がんにより肺葉切除術を行った患者を対象に、ピークフロー(PEF)と術後肺合併症(PPCs)の関係について検討すること。

<方法>
対象は非小細胞肺がん(NSCLC)の診断で肺葉切除を行った725人の前向きデータで、術前PEFとPPCsの関係を患者特性と臨床データをもとに評価。

<結果>
725人中、144人が術後30日以内にPPCsがあった。
PPCsグループは、PEFが低かった(294.2±85.1 vs. 344.7±89.6 L/min; P<0.001)。
PEFは、PPCsを予測する独立した因子であった(OR, 0.984)。
ROC曲線にてカットオフはPEF≦300L/min(sensitivity: 69.4%, specificity: 79.0%)。
PEF≦300L/minでは、術後PPCsのオッズ比が8倍増加した。
PPCsの患者割合によると、PEF≦300L/minの患者はPEF>300L/minの患者よりもPPCsの割合がより多かった(45.0%vs8.7%)。
そのうち、肺炎(24.8%vs6.4%)無気肺(9.5%vs4.0%)48時間以上の人工呼吸管理(5.4%vs2.4%)が、PEF≦300L/minのグループで多かった。

<考察>
今回の結果より、低PEFと肺がん術後のPPCsの著明な関係について明らかになった。
低PEFがPPCsの独立した予測因子である可能性が示され、PEF≦300L/minは、肺がん手術待機している周術期患者のリスク管理として有効となりえる。


・中国、四川大学の中国西部病院にてNSCLCの診断で肺葉切除術を行った患者が対象
・全患者には共通した周術期のケア(早期離床、歩行、呼吸練習)を実施

・PPCsは、無気肺、肺炎、吸引が必要なほどの痰、症状の悪化、ARDS、48時間以上の人工呼吸管理、7日以上のエアリーク、再挿管、気腫、乳び胸、気管支胸腔瘻

・平均年齢62.6歳、FEV1.0 1.83L、FVC2.88L、併存症として、COPD、糖尿病、高血圧冠動脈疾患など
・肺がんのstageⅠが51.4%、stageⅡ以上が48.6%
・術式はVATSが68.7%、開胸が31.3%
・術前入院日数は5日ほど


PEFとPPCsの有無の割合


PPCsの有無によるPEFのカットオフ

2019/04/17

COPD増悪時の認知機能障害と経過

Cognitive function during exacerbations of Chronic Obstructive Pulmonary Disease

Intern Med J. 2019 Feb 18.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/30779280/?i=7&from=copd

<目的>
COPD増悪で入院した患者の入院時、入院中の認知機能障害の経過と罹患率を検討すること。

<方法>
2013年から2014年にCOPD増悪で入院した患者にMoCAとCAT、修正Borgスケールを入院後3回(入院後24時間以内、48-72時間、退院後6週間後)に聴取。

<結果>
25人の患者が研究に同意した。最初の評価から4人が辞退した。
入院24時間以内のCATスコアの平均は26点。
認知機能障害は最初の評価で19人(76%)で、2回目の評価で16人(76%)に認められた。
全体を通して、増悪から72時間以内に認知機能障害があった患者は14人(66%)であった。
平均MoCAスコアは1回目(22.6点)、2回目(23.3点)、3回目(24.4点)の評価で改善を認めたが、統計的有意差は認められなかった。

<考察>
認知機能障害はCOPD増悪で多く認められた。この障害は、経過とともに改善するが、通常範囲内の僅かな改善のみであった。
この結果は、病院で情報提供した内容の記憶や服薬の順守などに影響するだろう。

2019/04/13

急性期の活動能力を評価する項目で優れているのはSPPB

Instruments to evaluate mobility capacity of older adults during hospitalization: A systematic review.

Arch Gerontol Geriatr. 2017 Sep;72:67-79.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28599140

活動自立度は高齢患者において、死亡率の予測や退院できるかの主な要因である。主な目的は、入院した高齢者の活動の評価指標との関連について検討すること。
システマティックレビューは2ステップで行った。ICFの活動の概念に基づいて行った。
ステップ1は、急性期ケアもしくは集中高齢者リハビリユニットに入院した高齢者における活動の評価指標の選別。評価の目的は、活動耐久性の構成、適応(様式、トレーニングの必要、入院期間、補助具の使用)を評価。
それぞれの評価ごとに、ステップ2は評価の詳細についての報告を選別、検討すること。

ステップ1の結果、6350文献(28文献で17の評価項目が報告)が対象。ステップ2は、70文献で評価の詳細が報告されていた。
今回の検討では、3つの評価(DEMMI、SPPB、Tinetti scale)が最も広範かつ強固な評価内容を表していた。
これらの評価のうち、SPPBとDEMMIがより強固に活動の評価構成であったが、SPPBは評価に最も時間を要していた(10-15分)

SPPBは、急性期や集中リハユニットにおいて、最も活動範囲の評価と評価の細かさ、正確性に優れていた。



2019/04/03

肺がん術後合併症の予測因子

Risk factors for short-term outcomes after thoracoscopic lobectomy for lung cancer.

Eur Respir J (IF: 12.242) 2016 Aug;48(2):495-503.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27174883

<背景>
いくつかの研究において、胸腔鏡下肺葉切除を行った患者における術前の身体機能の評価を含めた、術後のリスクファクターの検討はいくつかなされている。
目的は、胸腔鏡肺葉切除術を行った症例において、パフォーマンスステータスの低下や心肺合併症の予測因子を明らかにすること。

<方法>
2005年から2012年までの胸腔鏡下肺葉切除術を行ったstageⅠの非小細胞肺がん患者188例。
患者背景、臨床データ、身体機能を多変量ロジスティック回帰分析で要因を明らかにした。

<結果>
多変量解析の結果、%DLCO、大腿四頭筋力、病期ステージは術後のパフォーマンスステータスが低下する独立した予測因子であった。
COPD、6MWD、病期ステージは、心肺合併症の独立したリスクファクターであった。

<考察>
この結果から、病期ステージの進行を含め、拡散能の低下とCOPDの合併、低身体機能は術後短期間でのアウトカムの悪化と関連していた。
術前に大腿四頭筋力と6MWTを評価することは、簡便であり、手術を行う患者において有効な予測因子であるかもしれない。

2019/04/02

がん関連倦怠感に対する運動の効果 -meta analysis-

Effects of Aerobic Exercise on Cancer-Related Fatigue: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials

 Support Care Cancer, 24 (2), 969-983  Feb 2016

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26482381

<背景>
がん関連倦怠感(Cancer-related fatigue (CRF))はがん患者に共通して報告され、最も苦痛な症状である。
この状態に対して効果的な介入は明らかになっていない
目的は、標準的なケアと比べて、有酸素運動を行うことによるCRFへの効果を比較すること

<方法>
RCTsを検索。5人のレビューマネージャーによって解析を行った。

<結果>
26の研究、2830人の患者が対象。
維持療法を行ったがん患者において、有酸素運動グループは標準ケアにっ比べてCRFの程度が減少していた。
抗がん剤治療を行っていない患者において、有酸素運動グループで中等度のCRF改善を認めた。
1セッション20-30分、週3回のセッションはCRFはわずかに改善。
1セッション50分、週2回のセッションでCRFは著明に改善。
8週間の運動は中等度の効果があった。

<考察>
有酸素運動は、維持療法を完了したがん患者に対するCRF管理において効果的であった。