2019/04/21

術前Peak Expiratory Flowは、術後合併症の独立した危険因子

Preoperative peak expiratory flow (PEF) for predicting postoperative pulmonary complications after lung cancer lobectomy: a prospective study with 725 cases.

J Thorac Dis (IF: 1.804) 2018 Jul;10(7):4293-4301.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30174876

<背景>
目的は、肺がんにより肺葉切除術を行った患者を対象に、ピークフロー(PEF)と術後肺合併症(PPCs)の関係について検討すること。

<方法>
対象は非小細胞肺がん(NSCLC)の診断で肺葉切除を行った725人の前向きデータで、術前PEFとPPCsの関係を患者特性と臨床データをもとに評価。

<結果>
725人中、144人が術後30日以内にPPCsがあった。
PPCsグループは、PEFが低かった(294.2±85.1 vs. 344.7±89.6 L/min; P<0.001)。
PEFは、PPCsを予測する独立した因子であった(OR, 0.984)。
ROC曲線にてカットオフはPEF≦300L/min(sensitivity: 69.4%, specificity: 79.0%)。
PEF≦300L/minでは、術後PPCsのオッズ比が8倍増加した。
PPCsの患者割合によると、PEF≦300L/minの患者はPEF>300L/minの患者よりもPPCsの割合がより多かった(45.0%vs8.7%)。
そのうち、肺炎(24.8%vs6.4%)無気肺(9.5%vs4.0%)48時間以上の人工呼吸管理(5.4%vs2.4%)が、PEF≦300L/minのグループで多かった。

<考察>
今回の結果より、低PEFと肺がん術後のPPCsの著明な関係について明らかになった。
低PEFがPPCsの独立した予測因子である可能性が示され、PEF≦300L/minは、肺がん手術待機している周術期患者のリスク管理として有効となりえる。


・中国、四川大学の中国西部病院にてNSCLCの診断で肺葉切除術を行った患者が対象
・全患者には共通した周術期のケア(早期離床、歩行、呼吸練習)を実施

・PPCsは、無気肺、肺炎、吸引が必要なほどの痰、症状の悪化、ARDS、48時間以上の人工呼吸管理、7日以上のエアリーク、再挿管、気腫、乳び胸、気管支胸腔瘻

・平均年齢62.6歳、FEV1.0 1.83L、FVC2.88L、併存症として、COPD、糖尿病、高血圧冠動脈疾患など
・肺がんのstageⅠが51.4%、stageⅡ以上が48.6%
・術式はVATSが68.7%、開胸が31.3%
・術前入院日数は5日ほど


PEFとPPCsの有無の割合


PPCsの有無によるPEFのカットオフ