2018/08/24

6分間歩行にてSpO2<80%となった時に中止すべきか。

Should the 6-minute walk test be stopped if oxyhemoglobin saturation falls below 80%?

Arch Phys Med Rehabil. 2018 Aug 18.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30130517

<目的>
呼吸リハの評価として6MWTを行ったときにSpO2が80%を下回っている患者で、悪いイベントの発生を調査する

<方法>
後方視的研究。2005-2016年に呼吸リハで評価を行った全患者のデータが対象。
経験のある呼吸循環理学療法士によって標準化されたテストを行った。酸素飽和度はパルスオキシメーターでモニタリングを行った(最低値を採用して分析)
医療記録を振り返り、頻脈、徐脈、胸痛やその他中止を要する兆候や症状を、悪いイベントとした。

<結果>
672回の歩行試験が対象。(55%が男性、平均年齢69歳)平均距離は369m
主な診断名はCOPD(70%)、間質性肺疾患(14%)、気管支拡張症(8%)において、80%以下の低酸素が記録されていたが、悪いイベントは無かった。
低酸素が無い時のテスト中に、2つの悪いイベントが記録されていた。
1例目は、呼吸循環の根拠は無い胸痛
2つ目は、血糖値を懸念して中断
80%以下になる独立した予測因子は、安静時SPO2<95%(オッズ比3.82)、間質性肺疾患もしくは肺高血圧の診断(オッズ比5.24)

<結論>
この研究では、6MWT中に低酸素血症とな80%以下となることは、呼吸リハを受けたことがある大規模コホートにおいて、不利なイベントの発生と関連していなかった
この結果から、安定期患者において低酸素によってテストを中止することが不当であることが示唆された。



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時々80%以下まで低酸素血症になる患者がいるが、低酸素は運動中止基準にはならないのか。心理的にはヒヤヒヤするけど。

2018/08/18

握力は全身筋力の代わりとはならない

Handgrip Strength Cannot Be Assumed a Proxy for Overall Muscle Strength.

J Am Med Dir Assoc. 2018 Aug;19(8):703-709.

https://www.jamda.com/article/S1525-8610(18)30236-6/fulltext

<目的>
ダイナぺニア、筋力低下は、健康状態のネガティブなアウトカムを予測し、握力でよく表される。
握力が全身の筋力の代わりとなり得るか、年齢や健康状態に依存するかについては、議論が分かれる。
この研究では、握力と膝伸展筋力の関連を年齢や健康状態が異なる対象者で評価することを目的とした。

<対象者>
地域住民、外来患者、病院で行われ、5つのコホートに登録している患者。健常若年者、健常高齢者、高齢外来患者、股関節骨折後の高齢者が含まれる。

<評価>
握力と膝伸展筋力をそれぞれのコホートで測定。ピアソンの相関係数で握力と膝伸展筋力の関係を性別で分けて調べた。
握力と膝伸展筋力は性別特異的zスコアによって標準化された。
標準化された握力と膝伸展筋力の関係は、全体と個人で級内相関係数(ICC)とブランドアルトマンプロットで検証した。

<結果>
ピアソンの相関係数では、健常若年者(男性: 0.36 to 0.45, 女性: 0.45)、健常高齢者 (男性: 0.35 to 0.37, 女性: 0.44)では低い相関で、高齢外来患者(男女とも: 0.54)と高齢股関節骨折患者(男性: 0.44,女性: 0.57)では中等度の相関があった。
ICCは、全対象者で低いもしくは中等度の関連であった。

<考察>
握力と膝伸展筋力は、年齢と健康状態とは独立して低度から中等度の相関を示した。握力のみを、全身の筋力の代わりとするべきではない。


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全身筋力と関連があるなら、膝伸展筋力とも関連があるはずだ!という仮説から始まったのだろうか。
握力は全身筋力を反映すると言い出した人はどのデータを使っているのか気になる。

腹部外科手術前の理学療法介入で術後呼吸器合併症が減少。

Preoperative physiotherapy for the prevention of respiratory complications after upper abdominal surgery: pragmatic, double blinded, multicentre randomised controlled trial.

BMJ. 2018 Jan 24;360:j5916.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29367198

<目的>
術前の理学療法セッションが、上腹部術後の呼吸器合併症を減少させるかを検討すること

<方法>
多施設、ダブルブラインド、パラレルグループ、無作為比較試験
オーストラリアとニュージーランドの3つの3次公共病院にて学際的な術前評価を実施
参加者は、441人の18歳以上の者で、6週間以内に上腹部の開胸手術を行う患者を対象に、ブックレットを手渡す(コントロールグループ,219人)か、術前理学療法を実施する(介入群,222人)かに分けて、12か月フォローを行った。432人が研究を完了した。

<介入>
ブックレットを手渡すか、30分の理学療法(教育と呼吸練習)を実施するかに分けられた。
教育は、早期歩行と術後に意識が回復したらすぐに呼吸練習を自分で行うことを介入群に集中して行った。
術後、全ての患者は標準的な早期歩行を実施し、呼吸理学療法を追加して行うことは無かった。

<評価>
プライマリーアウトカムは、術後14日以内に日常的に使用しているメルボルングループスコア(術後肺合併症の診断ツール)を使用。
セカンダリーアウトカムは、院内肺炎、入院日数、ICU在室日数、医療費

<結果>
介入群において、14日以内の入院において、院内肺炎の発生率は、コントロールグループと比べて半減し、15%のリスク減少し、治療が必要な数は7人であった。
その他のセカンダリーアウトカムは違いは無かった。

<考察>
上腹部手術を行った一般的な患者において、術前に30分間の理学療法を実施すると、術後合併症と院内肺炎の発生を半減させた。
更なる研究で、死亡率や在院日数についての検討が必要である。

・対象:18歳以上の英語を話せる患者。一般的な麻酔で上腹部手術を実施。最低一晩入院し、へその上を5㎝以上の切開。術前評価を外来クリニックで実施している。
除外基準:すでに入院している。臓器移植をしている、腹部ヘルニア手術が必要、1分以上歩けない、術前6週の理学療法を受けることができない。

・コントロール群:術後合併症に関してのイラストがあるブックレットを用いて、早期歩行や呼吸練習の情報提供を行った。
呼吸練習は、10回深呼吸を2セット、3回咳をする。ブックレットに記載されていること以上の理学療法に関する情報は提供しない

・介入群:教育と呼吸練習を、標準的な理学療法評価とブックレットを渡した後すぐに理学療法士が介入した。
教育は、術後肺合併症について、排痰、早期歩行など。
理学療法士は、ブックレットにある呼吸法を詳細に説明し、指導した。

・理学療法士は、学生、新卒、15年以上の経験者など11人が評価。

2018/08/08

レジスタンストレーニングの抗炎症効果

Effect of resistance training on inflammatory markers of older adults: A meta-analysis.

Exp Gerontol. 2018 Jul 30;111:188-196.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30071283/

<背景>
低度の炎症はいくつかの有害な健康アウトカムと関連しており、加齢によるサルコペニアやダイナペニアを悪化させるかもしれない。これらの状態を軽減するための戦略は、レジスタンストレーニングである。
目的は、高齢者の炎症マーカーに通常のレジスタンストレーニングの影響があるかどうかをこれまでの研究から検討すること。
※サルコペニア=加齢による筋肉量減少。ダイナペニア=加齢による筋力減少。

<方法>
2017年7月にMEDLINEで検索。50歳以上の高齢者を対象としたレジスタンストレーニングのCRP、TNF-α、IL-6への影響を検討したRCTのみを抽出。

<結果>
メインのメタアナリシスでは、高齢者におけるレジスタンストレーニングがCRPを減少させることを示し、IL-6を減少させる傾向であり、TNF-αは変化しなかった。
サブグループ解析では、筋肉量がCRPとTNF-αの変化に影響している可能性を示した。
CRPとTNF-αを減少したRCTでは、運動の数が多く(8個以上)、頻回で(週3回)、12週以上の長期間行われていた。

<考察>
レジスタンストレーニングの抗炎症効果は、CRPでのみ著明に示され、IL-6でも同様に減少する傾向にあった。
追加研究では、炎症マーカーの減少は、筋肉量の増加とレジスタンストレーニングのプログラムを多く行うことに依存しているかもしれない。
これらは、レジスタンストレーニングの抗炎症効果の仲介である可能性があり、今後、高齢者のより特異的な状態やより多くの研究で、レジスタンストレーニングの抗炎症マーカーへの影響を検討するさらなるメタアナリシスが求められる。


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全文読めないが、週3回を3か月継続していくと抗炎症効果があるのかな。
運動の数か回数かわからないが、強度はあまり関係ないのか?当たり前に高強度なのか?

2018/08/07

敗血症ショック後の早期理学療法介入の効果

Impact of Very Early Physical Therapy During Septic Shock on Skeletal Muscle: A Randomized Controlled Trial

Critical Care Medicine: June 27, 2018

https://journals.lww.com/ccmjournal/pages/articleviewer.aspx?year=9000&issue=00000&article=96229&type=Abstract

<目的>
敗血症ショックによって異化状態が引き起こされることによって、同時に患者は身体不活動となり、急速に筋肉量が減少し機能障害となる。
目的は、敗血症ショック受傷後の早期理学療法が、異化サインと骨格筋量維持を制御するかどうかを検討すること。

<介入>
無作為に2グループに振り分け。コントロールグループは1日1回の徒手的モビライゼーションを実施。介入グループは1日2回徒手的モビライゼーションと30分の他動/自動サイクリングを30分実施。

<評価と主な結果>
骨格筋生検と電気生理学的検査を1日目と7日目に実施。
筋生検はタンパク合成過程の組織と分子構成、炎症マーカーと同じような劣化を調べた
対象は21人で、2回目の筋生検前に3人が死亡。
コントロールグループ10人、介入グループ8人で比較。
異化のマーカーは、ユビキチン-プロテアーゼを、筋劣化はF-boxと muscle ring finger-1 messenger RNAを指標とした。
介入グループでのみ、7日目に(異化と筋劣化のマーカーは)減少していたが、グループ間で差は無かった。
筋繊維の断面積は、運動によって維持されていた。
分子的調整では、敗血症ショックによるオートファジー(自食)は介入グループでより低下しており、過大活性が示唆された。
同化と炎症のマーカーは介入によって耐えられた患者においても、修正されなかった。

<考察>
敗血症ショックの1週目の早期理学療法介入は、安全であり筋繊維断面積を保持する。




2018/08/06

肺炎患者の運動療法 VS 呼吸練習

Inpatient rehabilitation improves functional capacity, peripheral muscle strength and quality of life in patients with community-acquired pneumonia: a randomised trial.

J Physiother. 2016 Apr;62(2):96-102.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26996093

<目的>
市中肺炎で入院した患者は、呼吸理学療法よりも、運動ベースのリハビリテーションプログラムを行った方が、機能的アウトカムや症状、QOL、在院日数が改善するか。

<対象>
49人の成人市中肺炎患者

<介入>
介入グループ(32名)はフィジカルトレーニングプログラム(ウォームアップ、ストレッチ、骨格筋力トレーニング、コントロールされた速度で歩行15分)を実施。
コントロールグループ(17人)は、呼吸理学療法(パーカッション、vibrocompression、呼吸練習、フリーウォーキング)を実施。
介入期間は連続8日間


<アウトカム>
プライマリーアウトカムは the Glittre ADLテスト
セカンダリーアウトカムはシャトルウォーキングテストの歩行距離、骨格筋力、QOL、息切れ、肺機能、CRP、在院日数
評価は介入前1日と介入後1日目に実施

<結果>
the Glittre ADLテスト、ISWTは、介入グループの方が著明に改善
QOL、息切れ、骨格筋力も介入グループの方が、改善した。
グループ間で差が無かったのは、肺機能、CRP、在院日数

<考察>
入院リハビリテーションプログラムを実施した後の機能的アウトカムの改善は、標準的な呼吸理学療法による改善よりも大きかった。
運動療法プログラムは、運動耐容能、骨格筋力、息切れ、QOLの明らかな効果を導く。

・コントロールグループの内容:標準的な呼吸理学療法を1日50分、8日間実施。
排痰;両側臥位でのパーカッションとバイブレーションを10分ずつ。分泌物の喀出や乾性咳嗽になるまで
呼吸練習;換気増大を目的に実施。腹式呼吸、吸気筋トレーニング
ウォーキング;自己のペースで10分

・介入グループの内容:1日50分を8日間
ウォームアップ;上下肢の運動を5分とストレッチ5分
骨格筋トレ;約25分。セラバンドを用いて、最大筋力の約70%の負荷で、8回を3セット。
それぞれのセットの終了時点で息切れと疲労感をBorgで聴取(4-6が目標)
歩行;10mの平地を15分。ISWTの70%負荷でのendurance shuttle walk testに合わせて実施。
SpO2<84%を下回ったら椅子に座って休憩。
運動強度は、症状(Borgで4-6)もしくは、HRmaxの70%。