2018/08/18

腹部外科手術前の理学療法介入で術後呼吸器合併症が減少。

Preoperative physiotherapy for the prevention of respiratory complications after upper abdominal surgery: pragmatic, double blinded, multicentre randomised controlled trial.

BMJ. 2018 Jan 24;360:j5916.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29367198

<目的>
術前の理学療法セッションが、上腹部術後の呼吸器合併症を減少させるかを検討すること

<方法>
多施設、ダブルブラインド、パラレルグループ、無作為比較試験
オーストラリアとニュージーランドの3つの3次公共病院にて学際的な術前評価を実施
参加者は、441人の18歳以上の者で、6週間以内に上腹部の開胸手術を行う患者を対象に、ブックレットを手渡す(コントロールグループ,219人)か、術前理学療法を実施する(介入群,222人)かに分けて、12か月フォローを行った。432人が研究を完了した。

<介入>
ブックレットを手渡すか、30分の理学療法(教育と呼吸練習)を実施するかに分けられた。
教育は、早期歩行と術後に意識が回復したらすぐに呼吸練習を自分で行うことを介入群に集中して行った。
術後、全ての患者は標準的な早期歩行を実施し、呼吸理学療法を追加して行うことは無かった。

<評価>
プライマリーアウトカムは、術後14日以内に日常的に使用しているメルボルングループスコア(術後肺合併症の診断ツール)を使用。
セカンダリーアウトカムは、院内肺炎、入院日数、ICU在室日数、医療費

<結果>
介入群において、14日以内の入院において、院内肺炎の発生率は、コントロールグループと比べて半減し、15%のリスク減少し、治療が必要な数は7人であった。
その他のセカンダリーアウトカムは違いは無かった。

<考察>
上腹部手術を行った一般的な患者において、術前に30分間の理学療法を実施すると、術後合併症と院内肺炎の発生を半減させた。
更なる研究で、死亡率や在院日数についての検討が必要である。

・対象:18歳以上の英語を話せる患者。一般的な麻酔で上腹部手術を実施。最低一晩入院し、へその上を5㎝以上の切開。術前評価を外来クリニックで実施している。
除外基準:すでに入院している。臓器移植をしている、腹部ヘルニア手術が必要、1分以上歩けない、術前6週の理学療法を受けることができない。

・コントロール群:術後合併症に関してのイラストがあるブックレットを用いて、早期歩行や呼吸練習の情報提供を行った。
呼吸練習は、10回深呼吸を2セット、3回咳をする。ブックレットに記載されていること以上の理学療法に関する情報は提供しない

・介入群:教育と呼吸練習を、標準的な理学療法評価とブックレットを渡した後すぐに理学療法士が介入した。
教育は、術後肺合併症について、排痰、早期歩行など。
理学療法士は、ブックレットにある呼吸法を詳細に説明し、指導した。

・理学療法士は、学生、新卒、15年以上の経験者など11人が評価。