2018/06/29

起立テスト(sit-to-stand test)の最良の方法

Best Protocol for the Sit-to-Stand Test in Subjects With COPD

Respiratory Care May 2018,Vol. 63, Issue 7.1 Jul 2018

http://rc.rcjournal.com/content/early/2018/05/22/respcare.05100.short

<背景>
起立テスト(STSテスト)の異なるプロトコルはCOPD患者の運動耐容能を評価出来る。
それぞれの起立テスト(5回繰り返し椅子立ち、30秒椅子立ち、1分間椅子立ち)は、COPD患者で相関していると考えた。
この研究の目的は、3つの椅子立ちテストのプロトコルを比較して、それぞれのテストの関連を検証し、運動耐容能や身体活動性を予測できるかを検証した。

<方法>
23人のCOPD患者が対象(11人男性、%FEV1.0 53%)。3つの起立テストを実施。
また、漸増シャトルウォーキングテスト、6分間歩行試験、4m歩行速度、大腿四頭筋の1RM、身体活動性、健康関連QOLも評価した。

<結果>
1分間椅子立ちテストが、6MWT (r = 0.40)、4m歩行速度 (r = 0.64),、身体活動性(0.40 ≤ r ≤ 0.52),と高い相関を示しており、5回椅子立ちテストと30秒椅子立ちテストは、4m歩行速度と相関していた (r = 0.54とr = 0.52)。
それぞれのテストでは、スピードが異なっていた(5回椅子立ち:0.53 ± 0.16 rep/s、30秒椅子立ち:0.48 ± 0.13 rep/s、1分間椅子立ち: 0.45 ± 0.11 rep/s)。
しかし、こられの結果は、良好な級内相関(r ≥ 0.68)を示しており、その他と相関していた。
1分間椅子立ちテストのプロトコルで、骨格筋の酸素飽和度、心拍数、血圧、息切れ、下肢疲労感は、明らかに変化していた。
更に、3つのプロトコルは、運動耐容能の低下もしくは運動耐容能の低下を同定することができていた。

<考察>
COPD患者において、1分間椅子立ちテストは、全体的に血流力学的な需要度が高く、臨床的なアウトカムと良い相関を示した。
5回椅子立ちテストと1分間椅子立ちテストのパフォーマンス速度が異なるにも関わらず、3つのプロトコルのうちよく関係していた。
加えて、3つのテストは、対象者の運動耐容能の低下を同定することが出来る。

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30秒よりも1分した方が、運動耐容能の評価として信頼できる。

2018/06/25

脳卒中後24時間以内のモビライゼーションは有効か(AVERT 2015)

Efficacy and safety of very early mobilisation within 24 h of stroke onset (AVERT): a randomised controlled trial

Lancet 2015; 386: 46–55

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(15)60690-0/fulltext

<背景>
脳卒中後の早期モビライゼーションは、脳卒中ユニットケアにおいて効果的であると考えられてきた。しかし、介入は根拠が弱く、強いエビデンスに支持されていない。
目的は、脳卒中後の通常ケアに超早期モビライゼーションを、頻回でより多く介入する効果を比較した。

<方法>
2グループによる、単盲検無作為化比較試験を、5つの国の56の脳卒中ユニットで実施した。
患者は、18歳以上で脳出血もしくは脳梗塞で、初発もしくは再発、身体的基準によって無作為化(通常ケアのみ or 通常ケア+超早期モビライゼーション)された。
治療にはtPAも含んでいる。データ管理者は、治療の振り分けが分からないようになっている。
プライマリーアウトカムは、脳卒中後3ヵ月の良好なアウトカム(modified Rankin Scale が0-2)であったか。
解析は、intention-to-treatを採用。

<結果>
2006年から2014年の間に、2104人の患者が無作為化され、1054人が超早期モビライゼーション、1050人が通常ケアをうけた。
2083人の患者が3ヵ月後のフォローアップ評価に参加した。
超早期モビライゼーションとして発症後24時間以内に介入したのは、超早期介入群では965人(92%)の患者、通常ケアは623人(59%)であった。
超早期モビライゼーション群の何人かの患者は、通常ケア患者と比べて良好なアウトカムであった。(480人vs525人、odds比0.73)
死亡は、超早期群の88人(8%)、通常ケア群は72人(7%)
重篤なイベントは、超早期モビライゼーション群で201人(19%)、通常ケア群で208人(20%)で、超早期モビライゼーションによって不活動による合併症の減少は無かった。

<考察>
初回モビライゼーションを24時間以内にほとんどの患者が行っていた。より多くの量を超早期モビライゼーションで行うことは、3か月後の良好なアウトカムとなるオッズを減少させた。
脳卒中後の早期モビライゼーションは世界中の多くのガイドラインで推奨されているが、この結果は、現在のガイドラインによって行われている臨床に反映すべきである。
しかしながら、将来的に量と頻度の関係の分析が行われるべきで洗う。

・2015年現在、30のガイドラインをレビューしたところ、22のガイドラインで早期モビライゼーションは推奨されている。しかし、モビライゼーションのタイミングや処方に関して特異的なものは無い

・超早期モビライゼーションは3つの要素から構成される1)受傷後24時間以内に開始する、2)座位、立位、歩行などベッドから離れる活動に焦点を絞る、3)通常ケアと比べてベッドから離れるセッションを最低3回は行う。
・介入はプロトコルに沿って行われた。

・超早期モビライゼーション群は、理学療法士と看護スタッフが手助けを行い、起立や歩行の回復をターゲットにした課題特異的な介入を実施。
・プロトコルの適用は患者の初回離床の際に、立位にて血圧が30mmHg以上低下が無いことを確認して行った。
・介入期間は、脳卒中ユニットケアを退室するまで14日間続けた。

全患者背景

超早期 vs 通常ケアの介入頻度や時間
超早期の方が、有意に介入時間や頻度が多い

Rankin Scaleの比較。
3か月後に良好だった患者は、通常ケアの方が多かった

50mを独歩で歩けるまでの時間。
早期でも通常ケアでも変わりない。

サブグループ解析でも、ほとんどの項目で、通常ケアの方が優れた結果であることを示した

【超早期群は良好なアウトカムでなかったか?】
・超早期介入群は全体の良好な予後の背景に反して記録された:対象患者の影響
⇒患者の50%近くが良好なアウトカムであり、80歳以上が25%以上で、45%以上が中等度から重度の脳卒中であるにもかかわらず、死亡率が8%しかなかった。

・ 通常ケアグループは、先行研究よりも30時間早く介入している。通常ケアの7%の患者しか48時間以上ベッド臥床を続けていない。
・最近のシステマティックレビューとメタアナリシスにおいて、アウトカムと運動開始の時間を減少することは良好な関連があるとしている。
・介入にあたって、出血組織の生理学的状態によって介入時間を選択する機序が求められる。


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24時間以内のモビライゼーションはそこまで意味が無いよ、という報告。
早期離床が良いとは言うものの、適応や状態を評価して介入する必要があるという感じ。

2018/06/18

呼吸リハ中の急性増悪を予測する

Acute exacerbation of COPD during pulmonary rehabilitation: outcomes and risk prediction

Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018 May 29;13:1767-1774.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29881266

<目的>
呼吸リハ中の急性増悪を調査することと、呼吸リハ実施中の急性増悪の予測を多面的な項目から予測すること

<方法>
4週間の呼吸リハプログラムに参加した125人のCOPD患者。ベースラインとリハ終了時に1秒量、6MWT、最大運動負荷、mMRC、CATスコアを評価。
ベースラインでの急性増悪リスクは、BODE index(BMI、1秒量、息切れ、運動耐容能)、DOSE index(息切れ、喫煙、増悪)、SCOPEX index(COPD増悪の短期間リスク)で評価。

<結果>
32回の増悪エピソードがあった。ベースラインでは、増悪した患者はより状態が悪かった(1秒量、6MWT、最大運動負荷が低く、mMRC、CATスコアが高い)。
呼吸リハ中の増悪を予測する各評価の感度、特異度は、
BODE(78.1%,73.6%)、DOSE(21.9%,87.1%)、SCOPEX(84.4%,51.6%)

<考察>
BODE indexとSCOPEX indexは、呼吸リハ中の増悪を予測する助けとなるかもしれない。


2018/06/09

短下肢装具は早期導入すべきか否か

Early or delayed provision of an ankle-foot orthosis in patients
With acute and subacute stroke: a randomized controlled trial

Clin Rehabil. 2017 Jun;31(6):798-808.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27390153

<目的>
1)短下肢装具を(亜)急性期脳卒中患者に提供する効果を検討すること
2)短下肢装具を提供する時期によって影響があるのかどうかを検討すること

<方法>
RCT。片麻痺脳卒中患者を対象に、最大6週間以内でAFOを使用している患者
対象は、無作為に早期導入(1週目)か遅れて導入(8週間後)に分けられた。
アウトカムは、10m歩行テスト、6MWT、TUG、段昇降テスト、Functional Ambulation categories、BBS、Rivermead Mobllity lndex、Bathel Index
評価のタイミングは1周目、3週目、9週目、11週目

<結果>
33人の対象が無作為に振り分けられた。AFOの効果は、導入後2週目で早期導入群ののすべてのアウトカムで、遅れて導入群のBBSとFunctional Ambulation categories、6MWT、TUGでポジティブな効果が得られた
早期導入と遅れて導入の効果を比較すると、早期導入は、BBSとBathel Indexの改善レベルが大きかったが、10m歩行速度、TUGでは明らかな差は認められなかった。

<考察>
これまでに装具を使用したことない患者で、(亜)急性期脳卒中患者に対してAFOを導入するポジティブな影響が得られた。


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早期から使用することでADLの改善が得られるかもしれない。短下肢装具で対応できる程度の麻痺の状態であれば。。
歩行速度よりもバランス機能の改善がADLに直結するということか。

2018/06/07

急性期脳卒中患者の身体活動性と退院時の身体機能

Use of Accelerometers to Examine Sedentary Time on an Acute Stroke Unit.

J Neurol Phys Ther. 2015 Jul;39(3):166-71.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26035120

<背景>
脳卒中リハビリテーションで入院している患者の身体活動性は低レベルであることは知られている。急性期脳卒中ユニットにおける安静時間を測定した研究はこれまでになく、安静時間が機能的アウトカムに影響するかどうかについては知られていない。
目的は、急性期脳卒中後の安静時間の特徴とそれらが退院時の機能的パフォーマンスに影響しているかについて検討すること。

<方法>
32人(18人男性、平均年齢56.5歳)で、入院後48時間以内の患者が対象。加速度計は、脳卒中で反応する足首に装着し、24時間の活動を記録。4日間もしくは退院まで装着。
身体機能テストとして、ADLのパフォーマンス、歩行耐久性、機能的活動性を評価するために、6MWT、TUGを評価した。

<結果>
平均安静時間は、93.9%、軽い運動時間は5.1%。
ベースラインのパフォーマンスで調整すると、1日の平均安静時間は、退院時の身体パフォーマンステストに関連していたが、6MWTとTUGは関係なかった。

<考察>
急性期脳卒中患者の安静時間は入院期間のほとんどを占めていた。
不活動によるネガティブな効果を最小限にするために、このデータは、入院中の身体活動性を向上させることをより重点的に行うべきであることを示唆している。


・過去の報告では、入院中の脳卒中患者は1日の76%をベッド上もしくは座位で過ごし、立位もしくは歩行は1日の23%であった。
・更に、ベッドで過ごす時間が長いと、3か月後のmodified Rankin Scaleが悪いことと関連していた。

・リハは週7日実施。
・下肢の運動麻痺のパフォーマンスはThe Fugl-Meyer Assessment (FMA) を使用。
※FMA:34点満点。点数が高いほど機能障害が少ないことを意味する。

・患者の99%は1日のうち99%を低強度以下の活動しかしていない結果。

・一日の平均歩数は、1907歩。リハの時間は、PTが22.6分、OTが15.2分
・安静時間が長いと、パフォーマンステストの結果が悪かった。

・6MWTとTUGと関連が表れなかった原因として、2.3日の介入では、変化が反映されにくいことを挙げている。

2018/06/02

脳卒中患者のFIM点数のMCID(FIM合計22点の改善)

Determination of the Minimal Clinically Important Difference in the FIM Instrument in Patients With Stroke

Arch Phys Med Rehabil. 2006 Jan;87(1):32-9

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16401435

<目的>
脳卒中患者のFIMのMCIDを明らかにすること。

<方法>
退院後9ヶ月間前向きに調査。脳卒中患者113名が対象。メインアウトカムは入院時と退院時のFIMの点数(合計、motor、cognitive)。臨床的な変化に関しては、-7点から7点の15点のリッカートスケールを用いて、評価。3以上をMCIDのカットオフとした。
MCID(3点以上の改善)に関連したFIMの変化は、ROC曲線にて同定した。
ベイズ分析(Bayesian analysis)で、MCIDを推定した。

<結果>
MCIDに相当するFIMの点数変化は、合計で22点、motorは17点、cognitiveは3点
MCIDの正確さは、入院時のFIMをベースにカテゴライズした方が良好であった。
より大きなFIMスコアの変化は、入院時のFIMスコアが低い患者におけるMCIDと関連していた。

<考察>
臨床的に有効な改善であるかについてのアセスメントを補助する結果が得られた。

【先行研究】
・これまでに推定されていたMCIDは、the Fugl-Meyer Assessment、Motor Activity Logをアウトカムにして、ベースラインの10%改善すれば、臨床的に有意な改善であると判断されていた。
・modified Rankin Scaleが1レベル改善することをアウトカムにすると、moter FIMのMCIDは11点であった。→mRSは、小さな変化を反映しにくいため、この方法で推定することは重要な結果であった。

・113人の患者が対象。4人の専門家が担当(脳卒中リハに特化しており、3-14年の経験がある者)。
・それぞれの患者には退院後、より短い期間での臨床的な変化を評価した。(平均期間7.5日、69%が1週間以内)。機能的な改善の程度を15段階のリッカートスケールで評価。
・改善の程度は、運動機能と認知機能に分けて点数付けをしてもらう。
・FIMは入院時(48時間以内)と退院時の点数

・MCIDの推定は、リッカートスケールで3(いくらか改善した)以上と未満、5(だいぶ改善した)以上と未満に分けて、ROC曲線でFIM改善値のカットオフを算出。

・対象患者内訳
:113名、うち65人男性。平均年齢63.9歳。入院日数29.8日。
52人(46%)左片麻痺、38人(34%)右片麻痺、6人(5%)両側麻痺。11人は麻痺無し、6人は麻痺側が不明。
・対象患者全員が、退院時のFIMが改善していた。運動FIMは1人、認知FIMは4人が減少していたため、解析から除外。
・入院時FIMと退院時FIMに高い相関が認められた
・3点以上の改善が得られた場合のカットオフは、FIM22点の改善。(AUC0.85、感度76%、特異度77%)


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リッカートスケールで評価するときの評価基準や評価方法がよく分かりにくい。
”いくらか良くなった”と感じるためには、FIMで22点の改善が必要という結果。アンカーのアウトカムでMCIDが違うようなので、解釈の際に注意しないといけない。