Lancet 2015; 386: 46–55
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(15)60690-0/fulltext
<背景>
脳卒中後の早期モビライゼーションは、脳卒中ユニットケアにおいて効果的であると考えられてきた。しかし、介入は根拠が弱く、強いエビデンスに支持されていない。
目的は、脳卒中後の通常ケアに超早期モビライゼーションを、頻回でより多く介入する効果を比較した。
<方法>
2グループによる、単盲検無作為化比較試験を、5つの国の56の脳卒中ユニットで実施した。
患者は、18歳以上で脳出血もしくは脳梗塞で、初発もしくは再発、身体的基準によって無作為化(通常ケアのみ or 通常ケア+超早期モビライゼーション)された。
治療にはtPAも含んでいる。データ管理者は、治療の振り分けが分からないようになっている。
プライマリーアウトカムは、脳卒中後3ヵ月の良好なアウトカム(modified Rankin Scale が0-2)であったか。
解析は、intention-to-treatを採用。
<結果>
2006年から2014年の間に、2104人の患者が無作為化され、1054人が超早期モビライゼーション、1050人が通常ケアをうけた。
2083人の患者が3ヵ月後のフォローアップ評価に参加した。
超早期モビライゼーションとして発症後24時間以内に介入したのは、超早期介入群では965人(92%)の患者、通常ケアは623人(59%)であった。
超早期モビライゼーション群の何人かの患者は、通常ケア患者と比べて良好なアウトカムであった。(480人vs525人、odds比0.73)
死亡は、超早期群の88人(8%)、通常ケア群は72人(7%)
重篤なイベントは、超早期モビライゼーション群で201人(19%)、通常ケア群で208人(20%)で、超早期モビライゼーションによって不活動による合併症の減少は無かった。
<考察>
初回モビライゼーションを24時間以内にほとんどの患者が行っていた。より多くの量を超早期モビライゼーションで行うことは、3か月後の良好なアウトカムとなるオッズを減少させた。
脳卒中後の早期モビライゼーションは世界中の多くのガイドラインで推奨されているが、この結果は、現在のガイドラインによって行われている臨床に反映すべきである。
しかしながら、将来的に量と頻度の関係の分析が行われるべきで洗う。
・2015年現在、30のガイドラインをレビューしたところ、22のガイドラインで早期モビライゼーションは推奨されている。しかし、モビライゼーションのタイミングや処方に関して特異的なものは無い
・超早期モビライゼーションは3つの要素から構成される1)受傷後24時間以内に開始する、2)座位、立位、歩行などベッドから離れる活動に焦点を絞る、3)通常ケアと比べてベッドから離れるセッションを最低3回は行う。
・介入はプロトコルに沿って行われた。
・超早期モビライゼーション群は、理学療法士と看護スタッフが手助けを行い、起立や歩行の回復をターゲットにした課題特異的な介入を実施。
・プロトコルの適用は患者の初回離床の際に、立位にて血圧が30mmHg以上低下が無いことを確認して行った。
・介入期間は、脳卒中ユニットケアを退室するまで14日間続けた。
全患者背景 |
超早期 vs 通常ケアの介入頻度や時間 超早期の方が、有意に介入時間や頻度が多い |
Rankin Scaleの比較。 3か月後に良好だった患者は、通常ケアの方が多かった |
50mを独歩で歩けるまでの時間。 早期でも通常ケアでも変わりない。 |
サブグループ解析でも、ほとんどの項目で、通常ケアの方が優れた結果であることを示した |
【超早期群は良好なアウトカムでなかったか?】
・超早期介入群は全体の良好な予後の背景に反して記録された:対象患者の影響
⇒患者の50%近くが良好なアウトカムであり、80歳以上が25%以上で、45%以上が中等度から重度の脳卒中であるにもかかわらず、死亡率が8%しかなかった。
・ 通常ケアグループは、先行研究よりも30時間早く介入している。通常ケアの7%の患者しか48時間以上ベッド臥床を続けていない。
・最近のシステマティックレビューとメタアナリシスにおいて、アウトカムと運動開始の時間を減少することは良好な関連があるとしている。
・介入にあたって、出血組織の生理学的状態によって介入時間を選択する機序が求められる。
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24時間以内のモビライゼーションはそこまで意味が無いよ、という報告。
早期離床が良いとは言うものの、適応や状態を評価して介入する必要があるという感じ。