2017/11/23

ネーザルハイフローを使いながらの運動の効果

Effects of heated and humidified high flow gases during high-intensity constant-load exercise on severe COPD patients with ventilatory limitation.

Respir Med. 2016 Sep;118:128-132.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27578482

<背景>
ハイフローネーザルカニューラ(HFNC)は、解剖学的死腔のウォッシュアウトを示し、より高い分時換気量をもたらす。さらに、最小限の室内空気を混合させることで、患者の分時換気量が高いレベルでも必要なFiO2を保証することができる。安定期COPD患者における、標準的なテストや運動持続時間に関するHFNCの効果は、明らかになっていない。

<方法>
無作為化クロスオーバー試験、HFNC有無で運動負荷(最大負荷の75%)を2種類実施。療法のテストで同じFiO2で実施。

<結果>
持続時間はHFNCありの方が有意に長かった。また、SpO2もHFNCの方が高かった(95% vs 89%)。更に、息切れと下肢疲労感は、HFNCの方が有意に軽減していた。

<考察>
HFNCは、換気障害のある重症COPD患者において、運動パフォーマンスを改善させるかもしれない。弧の効果は、SaO2の改善と関連していた。呼吸リハプログラムにおけるHFNCは、高強度の運動を長時間、症状が少なく行うことを提供できるかもしれない。

・12人の臨床的に安定したCOPD患者が対象
・1日目に運動負荷試験を実施し、最大運動負荷と必要なFiO2を決定(SpO2>88%)
・2日目と3日目に無作為にHFNC有無で定常負荷試験(最大運動負荷の75%)を実施

・評価項目は、運動持続時間、SpO2、HR、息切れと下肢疲労感のBorg scaleを毎分とテスト終了後に記録

・平均年齢70歳、%FEV1.0 35%、PaO2 73、PaCO2 41.7、定常負荷は44W
・HFNC:AIRVO2を使用、平均フロー58.7L/minとして、平均FiO2 0.44

運動持続時間
HFNCありの方が有意に運動時間が延長

息切れ(A)と下肢疲労(B)
〇はハイフロー無し●はハイフローあり
運動中(isotime)の自覚症状が半減している

SoO2
〇ハイフロー無しは運動中に低酸素により中止している
●ハイフローありでは90%以上を維持できている

<考察より>
・ハイフローを使用することで、低酸素や自覚症状が改善されたことにより、運動時間が延長したと考えられた。1回換気量や呼吸数の測定をしていないので、この改善のメカニズムは説明できない。
・しかし、これまで言われているように、解剖学的死腔のウォッシュアウトによる換気効率の改善が主なメカニズムであると思われる。

2017/11/21

IPF患者の認知機能

Cognitive function in idiopathic pulmonary fibrosis

Chronic Respiratory Disease 2015, Vol. 12(4) 365–372

http://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/1479972315603552

<目的>
重症の特発性肺線維症(IPF)患者が健常者と比べて、認知機能障害の根拠があるかどうかを検討すること。

<方法>
5つの神経生理学的テストを実施:Trail Making Test (TMT) A and B, Stroop Color Word Test (1, 2, 3), Hopkins Verbal Learning Test, Boston Naming Test, and Grooved Pegboard Test
さらに、SF-36とBeck抑うつインデックスも評価。

<結果>
12人が重症IPF(男性7名、平均年齢69.3歳)重症はDLCO<30%とした。
34人は軽症から中等症IPF(男性22名、平均年齢63.2歳)、DLCO>30%とした。
重症グループは、健常者、軽症グループと比べて、TMT Bの時間が長くかかった。これは、スピードと注意が求められる課題のパフォーマンスが悪いことを示唆した。
更に、重症グループでは、Stroop3テストの正解数が少なかった。これは、良くあり得る反応が制限されると、プロセスのスピードが低下することを示唆した。

<考察>
重症IPF患者は、軽症IPFや健常者と比べて認知機能が低下していた。この結果を説明し、介入をしていくためにさらなる研究が必要である。

・アメリカ、ミネソタ大学でのスタディ
・6MWTや肺機能なども評価。DLCOは%予測で分類。FVCよりも患者の層別化をしやすいため、%DLCOを採用

患者特性:肺機能
1feet=約0.3m
重症IPFの6MWDは約177m、軽症IPFでは約390m



・重症になれば、QOL低下や抑うつの傾向が強くなっていた

・低酸素血症が認知機能へ影響することは知られているが、酸素療法の程度によって異なるかは明らかになっていない。

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低酸素にさらされやすくなると、認知機能が低下する。その中でも、ワーキングメモリーなどが障害されやすいようだ。
COPD同様、疾患管理や服薬アドヒアランスなど注意が必要になる。

2017/11/16

慢性期の気道クリアランスの確保ーシステマティックレビュー

Benefits of interventions for respiratory secretion management in adult palliative care patients—a systematic review

 BMC Palliative Care (2016) 15:74

https://bmcpalliatcare.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12904-016-0147-y

<背景>
気道分泌物は緩和ケアの患者にネガティブな影響を及ぼす。残念ながら、ゴールドスタンダードは未だ確立されていない。目的は、予後不良の慢性疾患患者の気道分泌物のコントロールのための介入を確立し、緩和ケア患者のアウトカムへの影響を確認すること。

<方法>
2016年に8つのデータベースから論文を抽出。成人慢性疾患患者に対して、気道分泌物管理に関する介入をしたものを対象とした。

<結果>
6つのRCT、11の研究、10のクロスオーバー試験、1つの質的研究が該当。
介入は、MI-E、呼気筋力トレーニング、徒手的咳介助、気管切開、胸部理学療法、吸引、エアースタッキング、腹部筋電気刺激、ネブライザー、呼気陽圧マスク、パーカッションベンチレーション、高頻度胸壁オシレーション。
最も効果のあった介入は、徒手的咳介助とMI-Eが、排痰促進効果があり、パーカッションベンチレーションは痰のクリアランスを向上した。

<考察>
徒手的咳介助やMI-E、パーカッションベンチレーションのような治療法は、気道分泌物の
除去の目的に有効で、疾患特異的な緩和ケアに最も有効である。
治療効果をもっと高めるためにエビデンスを探求することが必要である。

採用基準
・慢性疾患を対象としたスタディである
・効果的な咳が出来ていないことや排痰困難に対しての介入を検討している
・成人対象
・RCTか質的研究

採用論文の対象疾患
多発性硬化症、脊髄損傷、神経筋疾患、COPD、嚢胞性肺線維症

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排痰を促すには、筋力や加湿も必要だろうが、それよりも咳にフォーカスして方法を考える必要がある

2017/11/14

COPDで胸部痛を訴える患者の割合と症状の関係

Prevalence of thoracic pain in patients with chronic obstructive pulmonary disease and relationship with patient characteristics: a cross-sectional observational study

BMC Pulmonary Medicine (2016) 16:47

https://bmcpulmmed.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12890-016-0210-8

<背景>
目的は、COPD患者で胸部痛を訴える患者の割合を調査し、1秒量や安静時肺過膨張、息切れ、運動耐容能、疾患特異的健康状態、不安、抑うつとの関係を検討すること。

<方法>
横断的研究。呼吸リハを行っている患者を採用。肺機能、プレチスモグラフィー、拡散能を評価。疼痛は、多面的な評価表を用いて行い、インタビューで行われた。加えて、mMRC、6MWT、CAT、HADSも評価。

<結果>
67人中55人が慢性痛を訴えた(82.1%)。53.7%は胸部痛を訴えた。より若く、CATが悪い患者は、胸部痛の存在と関係していた。胸部痛とFEV1、安静時肺過膨張、拡散能、mMRC、6MWD、不安、抑うつとは関係なかった。

<考察>
胸部痛はCOPD患者で多く存在しており、疾患特異的な健康状態と関係していた。しかし、肺機能、肺過膨張、息切れ、運動耐容能とは関係していなかった。


・オランダのCIROで呼吸リハを行っているCOPD患者67例を対象としてスタディ
・プレチスモグラフィーは、機能的残気量(FRC)、残気量(RV)、全肺気量(TLC)を測定
・疼痛は、the McGill Pain Questionnaireや the Brief Pain Inventoryの項目を含んだ、インタビューを構成
疼痛の場所を図に示してもらい、重症度や痛みの特徴、治療を聴取する。

・平均年齢64.9歳
・全体の82.1%に疼痛あり。胸部痛は53.7%で、そのうち胸部痛のみは75.0%。そのた共通していたのは、頚部、肩甲骨、腰部。

・胸部痛のある患者は若い(62歳vs68.2歳)、CATが高い(25.4点vs21.0点)、抑うつが高い(9.1点vs6.8点)。併存症は関係なし。
肺機能と疼痛の程度(NRS)は相関していない。

・疼痛とQOLの関係は、これまでも報告されており、疼痛が原因で自宅やベッドから動けないことが要因と考えられる
・若い患者で胸部痛が多かったのは、高齢になると、疼痛の感覚を感じにくくなったり、症状が生じるほど活動していない可能性が考えられた
・安静時肺過膨張は関係なかったので、COPDと胸部痛の機序は未だ不明である
・疼痛の治療は、痛み止めを39%が服用していた。呼吸リハで息切れが軽減し、身体機能が改善、同様に疼痛も軽減する可能性があるとClarkらは報告している

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併存症が関係なく、COPDの特徴的な所見(肺過膨張)も関係なかったと。
これだけだと、息切れの症状や精神状態の影響ともとらえられるが、頚部や肩甲帯は呼吸補助筋の影響か。

2017/11/05

運動と非侵襲的換気(NIV)の併用:メタアナリシス

Physical Training and Noninvasive Ventilation in COPD Patients: A Meta-Analysis

Respiratory Care May 2014, 59 (5) 709-717

http://rc.rcjournal.com/content/59/5/709

<背景>
運動療法は、COPD患者の運動耐容能とQOLを改善させる。運動強度は、身体的な効果を得られるために決定的なものである。しかし、COPD患者において、息切れや下肢疲労感によって身体的な効果を得られる強度を保つことが困難である。非侵襲的換気(NIV)は運動耐容能や心肺機能のパフォーマンスを改善させるための戦略として用いられる。
このメタアナリシスの目的は、運動とNIVを行った効果を評価すること。二つ目の目的は、身体的な改善と運動強度の関係について検討すること。

<方法>
MEDLINE, Embase, CINAHLを使用して論文を検索。メタアナリシスとメタ解析を無作為効果モデルを使用して検討。

<結果>
8文献が安定期COPDを対象に運動を行っていた。NIVとプラセボには似たような効果が示された。しかし、対象者はアウトカムのほとんどで臨床的に有意な改善を経験していた。心拍数、運動負荷、酸素消費量はトレーニング後に特に改善。心拍数と運動負荷の改善は、運動強度と相関していた。

<結論>
採用できた論文は少なかったが、少ないサンプルサイズで有力な計算を遂行でき、このトピックでより深く検討していく価値があると考える。
より大きなサンプルサイズでの無作為化臨床試験を行い、運動の効果、リハの強度を明らかにしていく事がこの分野では必要である。

各文献の設定圧。
IPAP:7-15cmH2O、EPAP:2-6cmH2O。


"NIVを使用することが、COPDの運動耐容能を改善させるというエビデンスは、小規模な単施設でのスタディでエビデンスが示されており、有力ではない。現在のエビデンスでは、NIVが運動耐容能を改善させるという優位性を示すことはできなかった。より大きなサンプルサイズでの無作為化試験をすべきである"

2017/11/02

間質性肺疾患の呼吸リハの効果

Effectiveness of pulmonary rehabilitation in patients with interstitial lung disease of different etiology: a multicenter prospective study

 BMC Pulmonary Medicine (2017) 17:130

https://bmcpulmmed.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12890-017-0476-5


<背景>
最近の間質性肺疾患患者の呼吸リハのエビデンスが示されている。しかし、いまだに、疾患の重症度や病理による効果の影響については明らかになっていない。今回、前向き研究で1)ILD患者のリハの効果について検討すること、2)ベースラインの運動耐容能、疾患重症度、病理がアウトカムに影響するかを検討した。

<方法>
41人の患者(IPF63%)が参加。2施設にて標準的な呼吸リハを実施した。肺機能、漸増負荷試験、定常負荷試験、6MWT、mMRC、SGRQをリハ前後で評価した。相関係数はベースラインの評価と病態(IPFもしくは非IPD)の6分間歩行距離、HRQOL。

<結果>
40人がプログラムを完了。運動能力、症状、SGRQ、MRCは呼吸リハ後著明に改善。ベースラインで6MWDが短い患者は、6MWDの大きな改善とSGRQの症状の改善が見られた。

<結論>
ILDの異なる病態や重症度の患者でもリハを行うことは有効であることが示された。ベースラインの亜最大運動耐容能は、異なる病態において、機能的な効果と症状の効果の療法と逆相関していた。


・呼吸リハの内容:週6時間、運動療法(上下肢の持久力運動)と呼吸法2セッション、週4-5回を少なくとも30分、週3セッションのグループ教育。
・トレーニングは、24セッション継続し、週6日参加。それぞれのリハセッションは3時間行われた。

・運動療法は患者個々の能力に合わせてトレッドミルかエルゴを使用。抵抗運動は、軽い重りやバンドを使用。

・呼吸法は、横隔膜呼吸、ペーシング、エネルギー節約(動作コントロール)。
・酸素療法は通常のSpO2が保てるように使用。

・必要であれば、心理サポートも受けられる。

・教育セッションの内容は、薬物療法、酸素療法、栄養、パニックコントロール、リラクセーション

ベースラインの6MWDはリハ後の6MWDの変化量と逆相関している(f)

ベースラインの運動持続時間(e)と6MWD(f)はリハ後の運動持続時間の変化と逆相関


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対象が40人と少ないので、外れの値も含まれているような図であったが、ベースが悪いとリハのアウトカムの改善は見込めるかもしれない。
肺機能には依存していない。