2016/07/18

急性呼吸不全の生存患者における6分間歩行テストの妥当性と最小有効改善値(MID)の構築

Construct Validity and Minimal Important Diff erence of 6-Minute Walk Distance in Survivors of Acute Respiratory Failure

 CHEST  2015; 147(5):1 316 - 1326

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4420183/

 

背景:6分間歩行距離(6MWD)は運動耐容能テストとして広く使われているが、急性呼吸不全(acute respiratory failure:ARF)やARDSから生存した患者の妥当性のエビデンスは制限されているこの研究の目的は、妥当性と反応性を検討しARF/ARDS生存患者の6MWDの最小有効改善値(MID)を推定する。

 

方法:4つの国際的なARF/ARDS生存患者の研究データを(N=641)使用し妥当性の収束と判別妥当性の予測反応性を評価した。MIDはアンカーと分布ベースで検討した。分析は外的妥当性を検討するために退院後さまざまな時間で実施された。

 

結果:6MWDは良好な収束と妥当性の判別を示し身体的健康状態と中等度から強度の強い相関を認め精神的健康状態とは弱い相関を示した妥当性の知られているグループは6MWDの変化によって示され筋力肺機能で有意差が見られた患者は遠くへ歩く機能の改善を報告し反応性を支持するものであった。6MWDはまた、将来の死亡率入院健康関連QOLの多因子アウトカムを予測した。6MWDのMIDは、少ないが患者の認知できた効果と矛盾なく20-30mであった。結果は、6MWD%予測と似ており3%-5%のMIDである。

 

考察:ARF/ARDS生存患者において、6MWDは妥当で機能評価の反応あった。MIDは計画を促進させ、この対象の研究における将来のグループ比較研究を説明するだろう

 

 



2016/07/15

急性呼吸不全患者に非侵襲的機械換気(NIMV)は効果的か?

Can patients with moderate to severe acute respiratory failure from COPD be treated safely with noninvasive mechanical ventilation on the ward?

International Journal of COPD 2016:11 1151–1160

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4898082/

 

目的:非侵襲的機械換気(NIMV)をCOPDの重症急性呼吸不全患者にICU外での使用は推奨されていない。急性呼吸不全で重度のアシドーシスで救急病棟に入院し呼吸器病棟でフォローしている患者とNIMVの失敗との関連因子を検討すること。

 

方法:後方視的コホート研究2013年から2014年の間に胸部疾患や胸部手術を実施した者急性呼吸不全で救急病棟に入院したCOPD患者も含む。アシドーシスの程度で2グループに分けた;グループ1pH7.20-7.25グループ2pH7.26-7.30.

 

結果:グループ1は59人(平均年齢70歳)グループ2は171人(平均年齢67歳)多変量解析にて救急病棟にてNIMVを使用した後の動脈血ガスにおいて、P/F ratio<200pHの変化<0.30pH<7.31最大CRPがNIMVの失敗するリスク因子であった。


考察:NIMVは軽度呼吸不全だけでなく、重度のCOPD増悪でも効果的であったNIMV失敗を決定づける基準とチームの専門知識が治療成功を左右する

 

 

NIMVの設定

口鼻マスクを全患者使用。EPAPは5cmH2Oから開始して酸素化をみながら1-2cmH2Oずつあげていく。IPAPは20cmH2Oに上げて、一回換気量が6-8mL/kg得られて呼吸数が30回以下になるように2-3cmH2Oずつ上げる。

装着時間は1-4時間断続的に装着。

高二酸化炭素血症でpHが改善しなかったり、呼吸数が変わらなかったり上昇したりしたら失敗と判断。COPD患者では1-2時間後のP/Fratioが変わらないか最小限の増加であったら失敗と判断。

 

NIMV失敗のオッズ比

ERでのNIMV後のABGでpH<7.31・・・2.84倍(p<0.032)

最大CRP・・・1.02倍(p<0.016)

ERでのベースラインP/Fratio<200・・・3.09倍(p<0.012)

 

ICU退院後の長期予後

 

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マスクの選択やNIMVの設定なども影響ありそう。NPPVの研究は条件設定が統一しにくいような感じがする。

換気補助をしてもpHが正常化に近づかないと生存、回復は難しい。



2016/07/13

COPD急性増悪のリスクファクター

Risk factors for acute exacerbations of COPD in a primary care population: a retrospective observational cohort study

Müllerová H, et al. BMJ Open 2014;4

http://bmjopen.bmj.com/content/4/12/e006171.full?sid=3e0855f9-89a0-4516-aeb3-ed31e1f031db

 

目的:プライマリーケアでの増悪の頻度に関連したリスク因子を評価すること。COPDの増悪の情報は、主に臨床コホートによって一般化されている情報を使用

デザイン:後方視コホート研究、イングランドとウェールズの医療データベースを使用

参加者:58589人のCOPD患者で40歳以上2009年1月から2012年9月の間にCOPDと診断んされており少なくともCOPDと診断された前後365日のフォローを行っている患者

アウトカム評価:中等度から重度の増悪エピソードのデータはコホートに参加している12ヶ月の薬剤履歴によって判断され、同時に背景や医学的情報も収集した。12ヶ月のフォロー中の増悪頻度(0回と1回0回と2回以上)と患者特性との関連を多変量ロジスティック回帰モデルで評価した。

結果:フォロー中患者の23%は頻回の中等度と重度のCOPD増悪を起こしていた(24%は1回53%は無し)フォロー中の増悪するオッズの上昇を独立して予測するものは頻回もしくは1回のエピソード、前年の増悪、息切れスコアの上昇気流制限の程度の悪化、女性でいくつかの併存症の既往(喘息抑うつ不安心不全がん)

考察:プライマリーケアでの増悪リスクの高いCOPD患者は現在もしくは過去の増悪COPD重症度が高いその他の疾患の存在があることが確認された

 

 



2016/07/11

気管支拡張症患者の治療アドヒアランスと健康関連アウトカム

Treatment adherence and health outcomes in patients with bronchiectasis

McCullough et al. BMC Pulmonary Medicine 2014, 14:107

http://bmcpulmmed.biomedcentral.com/articles/10.1186/1471-2466-14-107

 

 

背景:気管支拡張症患者において、抗生剤の吸入とその他呼吸器系薬剤気道クリアランスのアドヒアランスが健康アウトカム(増悪肺機能QOL)と関係しているかを確認すること。

方法:気管支拡張症患者で吸入抗生剤(inhaled antibiotics)を1年間している患者を集めた。参加者の治療アドヒアランスとされる基準は、薬剤(修正薬剤保持スコアが80%以上)気道クリアランス(修正服薬スケールでスコアの80%以上)増悪は新たな経口もしくは点滴で抗生剤を開始したときとした。肺機能とQOL-B(気管支拡張症特異的QOL.点数が高いほどQOLは良い)はベースラインと12ヶ月後で比較した治療アドヒアランスと増悪肺機能QOL-Bの関連について相関分析を行った。

結果:75人の患者が参加35人(53%)と39人(53%)31人(41%)の患者は抗生剤の吸入薬とその他呼吸器系薬剤気道クリアランスのアドヒアランス得られた。12人(16%)の患者は全ての治療アドヒアランスが得られた。吸入抗生剤のアドヒアランスが得られた患者は、アドヒアランスが得られなかった患者と比べて、2,3回の増悪しかなく吸入抗生剤のアドヒアランスは、2,3回の呼吸器増悪と独立して関連していた。気道クリアランスのアドヒアランスは、QOL-Bの治療負担と、呼吸器症状の低スコアと関連していたそのほかの呼吸器薬剤のアドヒアランスアウトカムには関連は無かった治療アドヒアランスは%FEV1.0と関連はなかった

考察:治療アドヒアランスは気管支拡張症において低く呼吸器増悪を含む重要な健康アウトカムに影響及ぼしていた。アドヒアランスは気管支拡張症の管理の一部として測定されるようななるべきで今後気管支拡張症特異的なアドヒアランス戦略を評価すべきである

 

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あまり見ない評価スケールを使ってたので難しいけど、ちゃんと服薬して排痰をしっかりしていればある程度の増悪は防げるということみたい。

それでも、全てのアドヒアランスを得られても2,3回は増悪してしまうのか。

いかに増悪を防ぐか難しい病気である。



2016/07/06

呼吸リハの早期介入は効果が無い

An early rehabilitation to enhance recovery during hospital admission for an exacerbation of chronic respiratory disease:randomized controlled trial

BMJ. 2014 Jul 8;349:g4315

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4086299/

 

ABSTRACT

目的:慢性呼吸器疾患の増悪で入院し早期リハ介入した患者が、12ヶ月以上再入院のリスクを軽減し、身体活動と健康状態を改善するか。

 

設定:イギリスの医大付属病院の急性心肺ユニットと地域総合病院の急性期ユニット。

 

参加者:389人の患者、年齢は45から93歳。病院に慢性呼吸器疾患の急性増悪として入院し、48時間以内に早期リハ介入をした患者196人。通常のケアを行った患者193人。

主な評価:最初のアウトカムは12ヶ月の再入院。次に、在院日数、死亡率、身体機能、健康状態。主な分析は効果の結果により行われ、2つ目として標準的な分析をした。

 

介入:早期リハ患者は6週間介入、入院後48時間以内に開始した。介入は有酸素運動、抵抗運動、神経筋電気刺激を実施。患者はまた、セルフマネジメントと教育パッケージを受けた。

 

結果:389人のうち、320(82%)COPDと診断された。233(60%)は追跡している年に少なくとも1回は再入院した。(62%は介入群、58%はコントロール群)グループ間での著しい差は見られなかった。1年間の死亡率の上昇は介入群で見られた。身体機能と健康状態の著しい回復は両群の退院後に見られ、1年間の両群の差は無かった。

 

考察:慢性呼吸器疾患の入院中の早期リハは1年間で、次の再入院の減少や身体機能の回復を高めることは無かった。12ヶ月での死亡率は介入群でより高かった。この結果は、これまでの標準化された理学療法や、運動リハは急性期の状態の間に開始するべきではないことを示唆している。

 

 

 

今回は結構大事な内容なので、中身もちょっと詳しく。

・通常ケア群の内容

PTから気道クリアランステクニックの伝達活動の評価とアドバイス、禁煙アドバイス。栄養状態の評価を行い必要があれば栄養サポートについてアドバイス。

非監視下の運動は、入院中または退院後すぐに提供したが、外来リハは全ての患者に3ヶ月提供した

・早期リハ群

入院後48時間以内に開始。通常ケアに加えてアドバイスされた随意的なトレーニング(筋力有酸素運動)と非随意トレーニング(神経筋電気刺激)を毎日実施退院後はホームエクササイズと電話でのフォローを実施

・有酸素運動

歩行速度を85%VO2maxで設定10mを20秒で歩けなかったら管理された速度で実施修正Borgで3から5の息切れ強度で速度は増加させていった。

・筋トレ

8回を3セット肘屈曲三頭筋屈曲膝伸展起立、段昇降。Borg<13で重さは増加

 

介入のプロトコル

起立が最初から出来たら次にISWTって結構ハードな気が。。

 

生存率

通常ケアのほうが生存している。

 

 

運動能力とQOL

退院1年後は全ての項目で早期介入のほうがよかった。

 

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機能を高めても生存率には結びつかないといったところか。

入院して48時間以内に起立と神経筋電気刺激と患者教育を始めても効果はない。

時期によって優先してやることを考えてしていく必要があるのかなと。



2016/07/03

呼吸リハを行ったCOPD患者の活動レベルの軌跡

Trajectories of endurance activity following pulmonary rehabilitation in COPD patients

Eur Respir J 2012; 39: 272–278

http://erj.ersjournals.com/content/39/2/272.long

 

身体活動のメンテナンスはCOPD患者にとって挑戦的なことである。この研究の目的は呼吸リハを完了した後の持続的活動のパターンを調査することと持続的活動を維持することができた患者の特性を得ることである。

 縦断研究で無作為化試験に組み込まれた。206人のCOPD患者が3か月の個別呼吸リハを実施週間の持続活動時間を4,6,8,12ヶ月で評価。軌道モデルは呼吸リハ後4-12ヶ月間の最も共通していた活動パターンとした。

3つの別個のパターンが確認され活動持続が困難だったものが2つあった:4ヶ月で高い活動(2.7時間/週)が報告され持続されたのが61人114人は低い活動(1.0時間週)のまま、31人は高い活動で始めた(3.0時間週)が減少した。低い活動のグループはより重症で呼吸機能障害が重度であった高い活動で減少したグループは重症度は高くなかったが運動の制限が大きかった。

呼吸リハは、長期的な行動変容を得るために、制限を最小化するような目標を介入に含むべきである。

 

評価項目

肺機能、mMRC scale6分間歩行テストSGRQGeriatric抑うつスケール、運動習慣(リハ開始3か月前にどのくらい運動していたか)自己効力感、運動制限( the barriers section of the Exercise Benefits/Barriers Scale)

 

活動レベルが減少したグループがベースラインで答えた運動の制限(barriers to exercise)の内容は、"運動は疲れる" "コストが高い" "家族による制限" "運動する場所が遠い"。

多変量解析で、3つのグループを比較すると有意差があったのは6分間歩行距離、運動習慣、運動の制限。

 

↑活動時間の軌跡

 

 

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重症度や増悪頻度など呼吸機能の低下による活動レベル低下はある程度は仕方ないと思うけど、この研究の結果から、環境因子による原因が分かった。

平均年齢66歳で平均%FEV1.0が44%の集団でこの結果なら、高齢になればもっと活動レベルが低くなるのは当然か。

運動の認識を改めて、家族のサポートが期待できれば維持できるかもしれない。退院前の患者・家族教育が出来ることかな。