2016/04/29

COPD患者の日常生活における上肢の活動特性

Characteristics of daily arm activities in patients with COPD

Eur Respir J 2014; 43: 16311641

http://erj.ersjournals.com/content/43/6/1631.abstract

 

 上肢の活動は、セルフケアや生活の自立のために必要である。本研究の目的は、COPD患者は、健常群と比較してどの程度上肢のADLを行っているかと、ADLにおける比較的上の上肢(上腕)の筋活動の程度を示すことである

  part1;日常の上肢と下肢の活動は、自宅の環境で活動度計を使用して評価した(COPD: n521, healthy: n=24)

 part2;研究的な環境において、ADL活動中の上肢の筋活動の程度を僧帽筋、三角筋、上腕二頭筋の筋電図で評価した (COPD: n517, healthy: n=15)

歩行時間を補正したのち、上肢ADLの活動時間はCOPD患者と健常群は似ていた(p=0.52)が、活動強度はCOPD患者の方が低かった(p=0.041)研究的なセッティングにおいて、上肢ADL活動はCOPD患者において低い強度で行われており、いくつかの上肢ADLにおいて、僧帽筋の活動が健常群と比較して著しく高かった(p<0.05)

 COPD患者は歩行時間を補正して比較すると、健常群と同様に上肢ADLを実施していたが、低い強度で行われていた。さらに、患者が行う上肢ADLではより高い筋活動で行われていた。

 

a)僧帽筋 b)上腕二頭筋 c)三角筋 の挙上の高さと強度別の筋活動。●がCOPD、○が健常。

僧帽筋は活動強度に限らず、COPDの方が、筋活動が高い。

 

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上肢のADLは息切れが生じやすいという根拠になりそう。

健常群とほぼ同じ上肢活動をしていても、筋活動が高いので、酸素需要が大きく、息切れとして症状が現れるという流れか。

PTの職業柄なのか、下肢に目が行きがちだが、上肢トレーニングはエビデンスも高いので、もっと目を向けても良いと思う。これも身体活動に含まれるのなら尚更。



2016/04/22

コンサービングデバイスは運動時低酸素の是正に効果的か?

Are Oxygen-Conserving Devices Effective for Correcting Exercise Hypoxemia?

Respir Care 2013;58(10):1606–1613.

http://rc.rcjournal.com/content/58/10/1606.short

 

背景:進行した肺疾患における運動時低酸素の是正は重要でしばしば試みられているしかし、酸素保護デバイス(コンサービング)の市場における使用は効果のエビデンスが限定的である。本研究では2つのコンサービングデバイス(デマンド酸素供給システム(DOD)ペンダント型カニューラ(PRC))の効果をCOPDと間質性肺疾患(ILD)で評価した。

方法:横断的交差試験6分間歩行テストにて低酸素血症(SpO2<88%)が認められたCOPD患者28名とILD患者31名それぞれの患者はDODPRC標準的経鼻カニューラで連続酸素供給(CFNC)で無作為に3回歩行テストを実施し、SpO2が90%以上を回復する基準として平均をとった

結果:COPD患者における運動時低酸素はCFNCで79%DODで79%PRCで86%にILD患者ではCFNC77%DOD61%、PRC81%で認められたCFNCと比較したときにコンサービングは同様の効果を示しILD患者でDODを使用した場合低いパフォーマンスであった(P=0.01)。

考察:これらのコンサービングデバイスはほとんどのCOPDとILD患者で運動時低酸素が是正されたが、ILD患者でDODを使用した20%では是正されなかった。これらの結果は酸素のフローを個別に調整することが、運動時の低酸素血症の是正(特にILD患者でDODを使用している患者)には必要であることを協調している

<補足>

6分間歩行テスト中にDODシステムで最大流量を使用しても重症COPDとSpO290%以上を保てない患者は、20%いた。DODシステムで、ILD患者の40%で運動時低酸素が生じていた。運動中の酸素流量のタイトレーションは患者ごとに行うべきであり、使用する際に考慮すべきである。

 

 

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このDODってのは日本でいう同調式のデバイスのことだろうか。間質性肺炎患者で同調式を使用しても、呼吸数が多いので、うまく吸入できない患者が多かったように思う。

ここ数年、デバイスも変化してきて、患者の特性に合ったものを選ぶ選択肢が増えているが、導入する側が評価する習慣が必要。特に急性期病院で導入された場合は十分な指導がされていないまま退院してきた患者もいたので、必要であることが認知してもらえたら。重症例での導入は特に。



2016/04/14

COPD急性増悪と呼吸リハ後のCATの反応性

 

Tests of the Responsiveness of the COPD Assessment Test Following Acute Exacerbation and Pulmonary Rehabilitation

 CHEST 2012; 142(1):134–140

http://journal.publications.chestnet.org/article.aspx?articleid=1206616

背景:COPD assessment test(CAT)は8つの質問で構成されCOPDの安定期と増悪期にルーチンで臨床的に使用される信頼性と妥当性の示されたものである。

方法:Study1;増悪中の67人の患者におけるCATの反応性についてStudy2;64人の呼吸リハを行った患者のCATの反応性を評価すること。CATとそのほかの評価との相関関係について検討した

 

結果:Study1;平均14日で、CATは -1.4±5.3点(p=0.03)であった臨床的に反応したと判断された患者のCATスコアの変化は -2.6±4.4点であり、反応しなかった患者は-0.2±5.9点であった。Study2;平均改善点数は-2.2±5.3点(p=0.002)で、変換の効果量(effect size)は、-0.33自己記入方式のCRQにおける変化量は-0.02~0.346分間歩行距離(6MWD)の変化は41±55mベースラインのCATとCRQは相関していた。(r=-0.39 -0.63,p<0.01)CATとSGRQの変化量はわずかに強い相関があった(Study1:r<0.24)Study2の6MWDはr<0.11

 

考察:これらの研究でCATが増悪期と呼吸リハの反応における健康状態の変化を鋭敏に反映していた

 

<方法>

Study1 増悪の基準:専門医の診断2日以上の症状の増加による経口ステロイドの内服もしくは抗生剤の使用

反応性:6段階の自己評価(より悪い悪い変わらない良くなったより良くなった完全に良くなった) Responderは”良くなった"以上、non-responder"変わらない"以下。

呼吸リハ:ベースライン評価を行い、42±7日後に再評価

 

<考察>

CATの増悪からの回復に関するMCIDは推定されていないが、今回の結果では、1から3点の改善の割合が多かった

 

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CATって便利だなとつくづく思う。

この論文の後だったか、増悪からの回復に関してのMCIDはどこかで2点と見たような。。。

MCIDがあれば初期評価して、リハをして、最終評価…で終わらず、フィードバックの意義がとても高まるので学生の時に知りたかった。。。



2016/04/13

COPDの身体活動性に対する併存症の影響

Impact of comorbidities on physical activity in COPD
 Respirology (2015) 20, 413–418
背景と目的:合併症と身体不活動の両方は、COPD患者においてQOLの障害入院や死亡を引き起こすものである。我々の仮説は合併症はCOPD患者の日常身体活動(PA)のレベルを反映しているというものである。
方法:228人のCOPD患者(76%男性中央年齢64歳%FEV1 44%)合併症は既往歴問診所見と血液検査から評価した。PAレベル(PAL)は活動度計で計測PALと合併症の関係は、単変量と多変量回帰分析にて示した
結果:患者の79%は少なくとも1つ慢性の合併症があり、56%は2つの合併症35%は3つの合併症があった。単変量分析において、BMI喫煙歴(Pack -year)少なくとも1つの合併症が、PALと負の相関があり、FEV1とPALは非直線的な正の関係があった。少なくとも1つの合併症があることは、気流制限に関わりなくPALと独立して関係していた。
考察:このコホートにおいてCOPD患者の80%近くは少なくとも1つの慢性合併症があった。日常PALは合併症のタイプや気流制限の低下に関わりなく合併症の存在によって著しく制限されていることが示された

合併症の内訳
上から順に:高血圧、肥満、冠動脈疾患、脂質異常、肺性心、抑うつ、糖尿病

合併症が1こでもあると、身体活動レベルは低下している。

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呼吸器だけではなく、全身の管理をしないと良くならないよということか。
肥満が合併症として上位にあるのは海外ならではだなと。
60歳代が対象なので、整形疾患は10%程度しかいないし、合併症がこれだけで済んでるのかも。日本人の高齢者って結構病気もってるから、疾患のタイプや重症度で見ないと分かりにくくなりそう。


2016/04/09

誤嚥性肺炎のリスクファクターは?

高齢者の誤嚥性肺炎のリスクファクター
PLoS One. 2015; 10(10): e0140060

背景
誤嚥性肺炎は市中肺炎や院内肺炎の多くを占めており、高齢者の死亡原因を導いている。しかしながら、高齢者の誤嚥性肺炎の発生に関するリスクファクターは十分に検討されていない。本研究の目的は、高齢者の誤嚥性肺炎のリスクファクターを決定することである。

方法と主な結果
日本の高齢者医療・介護センターの全国的な調査データを使用して検討した。本研究の対象は9930人の患者が含まれ(年齢中央値86歳女性76%)2グループに分けられた:過去3か月間で誤嚥性肺炎の既往がある患者と無い患者人口統計的臨床状態ADL、主な疾患のデータは誤嚥性肺炎の有無による2グループで比較した。259人(全体の2.6%)が誤嚥性肺炎のグループ
単変量解析で、高齢は誤嚥性肺炎のリスクファクターではなかった喀痰吸引日常的な酸素療法摂食サポートに依存、尿道カテーテルがリスクファクターであった。
多重ロジスティック回帰分析では、誤嚥性肺炎と関連していたものは、喀痰吸引、過去3か月の嚥下機能の悪化、脱水、認知症であった

考察
誤嚥性肺炎のリスクファクターは喀痰吸引と嚥下機能の悪化、脱水、認知症であった。これらの結果は、繰り返す誤嚥性肺炎の臨床的管理の向上に役立つかもしれない。

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n数が誤嚥性肺炎群が259人肺炎無し群が9671人と差が大きすぎて、統計的に大丈夫なのかとも思うけど、結果には納得
誤嚥予防のためには、吸引しなくても痰が出せるようにして、絶食にはせず、水分を取って、認知症予防。
患者背景にはちょっと疑問だが…


2016/04/06

脈拍は不整脈の進行に関連している

Heart rate is associated with progression of atrial fibrillation, independent of rhythm
Heart. 2015 Jun;101(11):894-9.


目的:心房細動(AF)は発作的慢性的により維持した形で進行していくが心拍数とAFの進行の予測が臨床的に明らかになっていない。
方法:AF治療の登録されたアウトカムを使用してHATCH(高血圧年齢TIACOPD心不全)のスコア、CHA2DS2VAScスコアとAFの進行についての危険予測を分析した
結果:6235人の患者が発作性もしくは慢性的なAFをベースラインで持っており1479人はフォローアップ中に進行したこれらの患者は進行しなかった患者よりも高齢で併存症が多かった。ベースラインにおいてAFが進行した患者は、リズムコントロール戦略に対して多く、心拍数が多かった。AF進行の強い予測因子はベースラインECGでのAFの存在と高齢脈拍低値(OR 0.84, 95% CI 0.79 to 0.89, p<0.0001, per 10 decrease 80) である。ベースラインECGでのリズムと脈拍は関係なかった。HATCHスコアとCHA2DS2VAScスコアはAFの進行と中等度の特徴的な検出力を示した。(C-indices 0.55 (95% CI 0.53 to 0.58) and 0.55 (95% CI 0.52 to 0.57)).
考察:1年半以内で、患者の4分の1の患者は発作的もしくは慢性的なAFに進行することが推測された。進行は、脈拍と年齢と強く関係していた

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HATCHスコア
 (hypertension +(age>75 years)+(TIA/stroke)×2+chronic obstructive pulmonary disease+(congestive heart failure)×2)
7点満点で判断するようで、AFの進行を予測する点数だそうな。AFを引き起こしやすい疾患や背景をまとめているようです。
5点以上の40%近くはAFの進行を認めている。