2018/03/30

ICUで集中的にリハを行うことによる長期効果(QOL、生存率)

Intensive versus standard physical rehabilitation therapy in the critically ill (EPICC): a multicentre, parallel-group, randomised controlled trial

Thorax. 2018 Mar;73(3):213-221.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28780504

<背景>
ICUにおける早期リハビリテーションは短期間での臨床的アウトカムを向上させることは知られているが、長期間の効果は明らかにされておらず、最適なリハの強度については知られていない。

<方法>
無作為コントロール群検査者盲検試験。少なくとも48時間の非侵襲的or侵襲的換気補助を実施した患者が対象。
参加者はICU入室時入院の種類や自立度別に層別化された。介入グループは、1日90分の身体的リハビリテーションを目標に介入。コントロール群は1日30分を目標に介入。両グループとも月曜から金曜の介入。
プライマリーアウトカムは、6カ月後のSF-36の身体的スコア(PCS)

<結果>
34ヶ月間で308人の患者が対象。150人が介入群、158人がコントロール群。
介入群は平均161分、コントロール群は平均86分のリハを実施。
6カ月後、介入群の62人、コントロール群の54人が評価を実施できた。介入群は43人が死亡、11人ドロップアウト、34人が追跡不可。
6カ月後のプライマリーアウトカム(SF-36)は、違いは無かった。(37点vs37点)

<考察>
ICUでの身体的リハビリテーションは標準的なリハと比べて、6カ月後の身体的アウトカムの向上は得られなかった。


・参加者は18歳以上、48時間以上の人工呼吸管理が行われた患者。除外基準は、終末期患者、急性期の脳または脊髄損傷。モビライゼーションに耐えられないと判断された患者、急速に進行する神経疾患など
・リハは、鎮静の評価(RASS)で-1から+1の間で実施。介入群のリハは機能的運動と個別の運動療法を実施。時間は90分を目標に少なくとも2回のセッションに分けて介入。
・コントロール群は1日30分を目標に介入。

・運動の種類、時間を記録。時間には休憩や準備の時間は含まれない。

・評価はSF-36、ICU退室時の身体活動性 (Modified Rivermead Mobility Index)、ICUと入院の期間、6MWD、FIM、握力、3カ月後と6か月後の生存率、EQ-5D、上下肢の機能(the Oxford Scale)

介入の内容

上下肢の機能

生存率

2018/03/25

吸入ステロイド薬(ICS)の長期利用は骨折リスクを増大させるか。

Long-term Use of Inhaled Corticosteroids in COPD and the Risk of Fracture

Chest. 2018 Feb;153(2):321-328.

http://journal.chestnet.org/article/S0012-3692(17)31243-6/fulltext


<背景>
長期間の吸入ステロイド薬(ICS)はCOPD治療で広く使われているが、骨折のリスクの増加、特に閉経後の女性において、影響があるのかについて明らかになっていない。

<方法>
The Quebec health-care databasesを用いて、1990年から2005年のCOPD患者コホートのデータを使用し、2007年までに股関節もしくは上肢の骨折があったかを調査した。
a nested case-control analysisにおいて、それぞれの骨折のケースとマッチした20人のコントロール患者の年齢、性別、追跡期間を比較。
ICS使用患者の骨折の調整された危険率(Risk Ratio;RR)はロジスティック回帰分析を用いて算出された。

<結果>
240110人のコホート患者が対象となり、19396人が平均5.3年の間に骨折を経験していた。ICSの使用は骨折リスクの増大と関係していなかった (RR, 1.00; 95% CI, 0.97-1.03)。
骨折率は、ICS使用開始してから4年以上経過し、1日1000μg以上のフルチカゾンを使用していると増加した。
男女でリスクに違いは無かった。

<考察>
長期間、高容量のICS使用は股関節は上肢の骨折リスクの増加と中等度関連していた。
女性において、リスクが増大しているということは無かった。

・平均年齢74歳、女性が72%



・フルチカゾンが含まれるICS吸入薬:
フルタイド(フルチカゾン)
アドエア(フルチカゾン+サルメテロール)
フルティフォーム(フルチカゾン+ホルモテロール)
レルベア(フルチカゾンフランカルボン酸エステル+ビランテロール)

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高容量吸入が必要なくらい重症で、活動量も低下していることで、転倒リスク(≒骨折)は高まりそう。
ICSが直接的に関与しているのか?罹患期間が長期間になり年齢的な骨折のリスクが増大しているのか?
同年代の健常者と比較したらどうなるだろうか。

2018/03/20

低強度の活動でも死亡リスク減少に効果あり



Associations of total and type-specific physical activity with mortality in chronic
obstructive pulmonary disease: a population-based cohort study

BMC Public Health (2018) 18:268

https://bmcpublichealth.biomedcentral.com/track/pdf/10.1186/s12889-018-5167-5?site=bmcpublichealth.biomedcentral.com

<背景>
通常の身体活動はすべてのCOPD患者に推奨されているが、どの程度の身体活動が生存率への効果があるのかについては明らかになっていない。目的は、COPD患者の総身体活動量と種類特異的な身体活動と死亡リスクの関係について検討すること。

<方法>
イングランドとスコットランドの40歳以上のCOPD患者が対象。自己申告の身体活動、中等度から高度の身体活動(MVPA)、歩行、室内活動、スポーツ/運動をベースラインで評価。COXハザードモデルで身体活動性と死亡リスクの関係について検討した。

<結果>
2398人のCOPDが解析に参加。平均8.5年追跡した。総身体活動とMVPAは全死亡リスクと循環器疾患による死亡リスクと関係しており呼吸器による死亡リスクは少なかった。
身体活動を行っていない患者と比べると、身体活動のガイドラインに沿って活動している患者は、全死亡リスク、呼吸器疾患による死亡リスクが著明に減少していた。
ガイドラインで推奨されている身体活動の半分程度の活動の患者もまた、全死亡リスク、循環器疾患による死亡リスクが減少。
死亡リスクと歩行、スポーツ/運動の身体活動は関連していたが、室内活動とは関連していなかった。

<考察>
身体活動性と全原因、循環器疾患による死亡リスクが一般的に推奨されている量より少なくても効果が守られていることが確認された。
COPD患者は身体活動や歩行、運動の低レベルの活動でも効果が得られるかもしれない。


・活動量の評価表:The Physical Activity and Sedentary Behaviour Assessment
Questionnaire (PASBAQ)。加速度計と比較して妥当性が示されている評価表。
・不活動:0METs-時間/週、低活動3.75METs以下、中等度3.75-7.5METs、高度7.5METs以上

・高強度の身体活動が行えていた患者は、若年、%1秒量が高い、併存疾患が少ない、教育年数が長い、飲酒習慣がない
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全原因死亡率と総身体活動の関係(n=2155)。活動量が多いほど死亡リスクが減少する。
3.75METs以上の活動で有意に死亡リスクが減少


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低強度の身体活動(3.75METs以下)でも活動していない患者と比べると死亡リスクは減少する。

2018/03/14

脳卒中急性期にPTOTSTで関わると、短期間での再入院が減少する

Association of Rehabilitation Intensity for Stroke and Risk of Hospital Readmission

Physical Therapy, Volume 95, Issue 12, 1 December 2015, Pages 1660–1667

https://academic.oup.com/ptj/article/95/12/1660/2888275

<目的>
脳卒中急性期ケアにおけるリハビリテーションサービスの強度と30日、90日以内の再入院リスクの関係について検討すること。

<デザイン>
アーカンソー州とフロリダ州におけるすべての急性期病院を対象にした後ろ向きコホート研究

<方法>
64065人の患者が対象。リハビリテーションの強度は、それぞれの病院でのPT、OT、STの介入を合計して、無し、低強度、低中強度、中高強度、高強度に分類。
Coxハザード回帰モデルで背景、疾患重症度、併存症、病院の誤差、州を調整して、危険率(Hazard Ratios)を算出。

<結果>
最も低強度で行われていた患者に対して、より高い強度で介入していた患者は30日以内の再入院リスクが減少していた。
高強度グループは、最も再入院リスクが低かった(HR=0.86)
治療を受けていない患者は、低強度のリハ患者に対して、再入院リスクが高かった(HR=1.30)
90日以内の再入院についても影響は小さかったが、同様であった。
更に、より高強度のリハを行った患者は、より低強度のリハ患者と比べて、併存症が多く、重症であった。

<結論>
脳卒中急性期におけるリハビリ療法の強度は、再入院リスクの減少と関連していた。


・ここで言われている、リハの強度は、PT/OT/STの各療法の関わった量(時間?)の合計のこと。
・全対象者の2/3は入院中にリハを受けていた。
・リハを行わなかった患者は、若年、男性、白人、民間の保険に加入していた。また、併存症が少なく、慢性期の状態で、自宅退院が多かった。
・高強度で関わったグループは再入院率は高かった。

・患者背景や併存症、慢性疾患の数、疾患重症度などで調整して、解析すると、高強度で関わったグループが最も再入院リスクが低かった。


ーーーーーーーーー
PT/OT/STで関わるほど、再入院は防げるかもしれないが、疾患の背景や併存症の状態によるところが大きい。
脳卒中だけでなく併存症の管理も視野にいれておく必要がある。

2018/03/09

脳卒中の理学療法で理学療法士は何をしているのか

Are Contents of Physical Therapy in Nine Japanese Hospitals for Inpatients with Stroke Related to Inpatients’ and Physical Therapists’ Characteristics?

J Phys Ther Sci. 2013 May; 25(5): 641–647.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3804984/

<目的>
脳卒中リハビリテーションにおける理学療法が、提供している活動の内容について調査すること。

<対象>
216人の脳卒中患者と85人の理学療法士からデータ収集。

<方法>
9つのリハビリテーション施設において記録された入院脳卒中患者の機能的活動のために費やした時間を調査。
それらを独立した変数として扱った。
理学療法士の特性;経験年数、性別、影響をうけた治療コンセプト
対象患者の特性;年齢、性別、麻痺側、脳卒中後の日数、modified Rankin Scale,
FIMの歩行能力

<結果>
歩行準備、歩行練習、地域での活動性はmRSとFIM歩行能力と相関していた。
その他の機能的活動に費やした時間は患者の特性とは弱い相関であった。機能的活動に宇費やした時間と理学療法士の特性にはほとんど相関が無かった。

<結論>
機能的活動に費やした時間と理学療法士の特性の関係は、患者の特性よりも関係性が乏しかった。
脳卒中の理学療法は多くの要素が含まれている。

・脳卒中のリハビリテーションは未だブラックボックスであり、理学療法の項目が改善するものは僅かしか知られていない。
・群馬県と埼玉県の9つの施設に対して調査を依頼。
・脳卒中のリハビリの中で行っている項目を質問;機能的な準備運動、ベッド上の運動、歩行、補助具を使用した歩行、地域での活動、その他。
・1回のセッションで各介入方法に費やしている時間を計算。

・対象理学療法士の平均年齢27.1歳、平均経験年数3.6年
・影響を受けた治療コンセプトは、多い順に神経学的治療(NDT)、神経筋促通手技(PNF)、課題思考型アプローチ。
・患者の平均年齢71.2歳、受傷後平均173.9日経過。216人の患者が648回の理学療法セッションを実施。平均リハ時間は44分。
142人脳梗塞、64人脳出血、10人クモ膜下出血

・患者の年齢と歩行準備、歩行に費やした時間は相関があった。歩行準備活動、補助部歩行、地域活動の時間とmRS、FIM歩行能力は中等度の相関を示した。
・PT経験年数と準備運動、起立、その他活動に費やした時間は弱い相関を示した。

・NDTに影響を受けたセラピストは、歩行準備運動に費やす時間の割合が多かった。

・この研究では、セラピストは歩行、準備活動、座位、起立練習に多くの時間を割いていた。他の(海外の)研究と比べて、活動に割いた時間が短かった。
・これは、日本の脳卒中治療の特性であろうが、それらのアプローチが有効かについては明らかになっていない。


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特定の手技を行っても、機能的改善はたかが知れいている。
活動時間をもっと増やしてもいいんじゃないか?