2017/05/30

間質性肺疾患におけるリハの短期効果と長期効果

Pulmonary rehabilitation improves long-term outcomes in interstitial lung disease: a prospective cohort study.

Respir Med. 2014 Jan;108(1):203-10.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24332409

<背景>
呼吸リハは、間質性肺疾患(ILD)のアウトカムを改善する。しかし、長期間の効果や有効な患者は明らかになっていない。

<方法>
3つの呼吸リハプログラムを行う施設におけるコホートの患者が対象。評価項目は、6MWT、4m歩行テスト、QOL、呼吸困難、抑うつ、身体活動性。
6か月のリハ前後で評価。
ベースラインからの変化を対応のあるt検定で検定。6MWDとQOLの変化の予測因子を多変量解析にて検討。

<結果>
44人の患者が参加(22人はIPF)、50人がリハを完了し、39人が6か月のフォローを完了した。6MWDはリハ後に57.6m増加。6か月時点でもベースラインよりも49.8m増加していた。ほとんどの患者がMCID以上の改善を示した(QOL、呼吸困難、抑うつ)。6か月時点でもQOl、身体活動性の改善が継続していた。
ベースラインでの6MWDが短いことのみが、6MWDの改善の独立したよ測因子であった。また、6MWDの変化量がQOLの独立した予測因子であった。

<結論>
呼吸リハは、ILD患者の短期間と長期間のアウトカムを改善した。効果のあったすべての患者において、6MWDがベースラインで短いILD患者が、リハの効果を特に得られていた。


・リハ介入期間は6-9週間、頻度は週2回の監視下での運動、運動内容はそれぞれの患者の身体機能レベルやILDの重症度、併存症などに応じて安全にできる範囲で個別に設定。
・運動処方は、6MWTや既往歴を考慮。歩行もしくはサイクリングを週3-5回、20分以上、息切れのBorg3-6の強度で実施。
・そのほか、患者教育(症状コントロール、酸素の利用、疾患自己管理戦略)も実施。

・身体機能の評価は、6MWT、筋機能として4m歩行テスト、身体活動性の質問表(Rapid Assessment of Physical Activity questionnaire(RAPA))、QOLはSGRQ、息切れはSOBQ、抑うつはGeriatric Depression Scale (GDS)、

・平均年齢69.4歳、酸素療法は35%の患者が使用、6MWDは366m、4m歩行速度は3.45秒、%FVCは69.2%

・結果、短期間(6週間)で身体機能やQOL、呼吸困難、抑うつなどは有意に改善。
長期間(6か月)では、6MWD,身体活動性、QOL、抑うつは有意に改善。
A:6MWD、B:4m歩行時間、C:身体活動性

A:SGRQ、B:SOBQ、C:抑うつ

6MWDの変化とベースラインの6MWDの関係。
・6MWDの変化を予測する多変量解析では、ベースラインの6MWDのみが抽出された(R=-0.51、p=0.01。

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ベースラインで動けない人ほど、リハの効果が大きいという結果。
伸びしろがあるといった感じか。

2017/05/28

肺高血圧症患者の運動療法の効果

Effect of aerobic exercise training on fatigue and physical activity in patients with
pulmonary arterial hypertension

Respir Med. 2013 May;107(5):778-84.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23478192

<目的>
肺高血圧症患者に対して、運動介入が疲労感の軽減や身体活動性の向上をもたらすかを検討すること。

<方法>
24人の肺高血圧症患者が参加。介入は、呼吸リハプログラムを実施しているクリニックで行った。
肺高血圧症患者は、患者教育のみか、教育と有酸素運動を行うかのどちらかに無作為に分けられ、10週間のプログラムを行った。
両グループとも週2回、10週以上にわたって、肺高血圧症の管理に関する20のレクチャーを受講。有酸素運動は、1回30-45分、70-80%HRの強度でのトレッドミル歩行を、週3回10週以上、24-30回実施。

<結果>
介入10週間後、教育と有酸素運動のグループは、身体活動性の向上と疲労感の軽減が報告された。教育のみのグループは、変化がなかった。

<考察>
肺高血圧症患者に対して、10週間の有酸素運動介入は、身体活動性の向上と疲労感の軽減をもたらす効果がある。


・患者選択基準:21-82歳で肺高血圧症と診断されている(安静時右心カテーテルで、肺同動脈圧≧25mmHg)。禁煙している。
・除外基準:週3回30分以上の運動を行っている、6MD>400mもしくは<50m、1秒率≦65%、虚血性心疾患の既往、EF<40%、肺毛細血管楔入圧≧18mmHg。

・運動時の脈拍の計算【カルボーネン法】:【0.7もしくは0.8×(最大HR-安静時HR)】+安静時HR

・疲労感の評価(The Fatigue Severity Scale)は身体的、精神的な9つの項目について、1-7aで問診。4以上を重症とした。 
・身体活動性の評価(The Human Activity Profile)は、様々な生活場面の94項目からなる質問票。高得点ほど活動性が高い。

・平均年齢55歳程度、NYHA classⅡが50%、classⅢが41.6%。
肺高血圧の原因疾患は、強皮症が50%、特発性肺高血圧症が25%

10週間の介入前後の変化量
FSS:疲労感、AASとMAS:身体活動性
EXE:運動と教育、EDU:教育のみ
運動と教育グループの介入前後のFSS
黒:ベースライン、白:10週後


2017/05/27

オランダ人COPDでCATスコアが悪化するカットオフを検討。

How to determine an impaired health status in COPD: Results from a population-based study

Neth J Med. 2017 May;75(4):151-157.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28522771

<背景>
COPDは気流閉塞の悪化によって、失業したり、健康状態が著しく障害されることと関係している。現在の研究では、健康状態の障害を呈するCATのカットオフ値や、非COPD患者のCATスコアの95%信頼区間が、反映するかどうかについて検討した。
加えて、オランダ人COPDの健康状態への影響について、就労状況で階層化して測定した。

<方法>
患者背景、臨床的特徴、肺機能検査、CATをアムステルダムの加齢研究(LASA:大規模オランダ人コホート)で評価した。
CATスコアは平均、標準偏差、中央値範囲で示した。

<結果>
全体で810人のCOPDと非COPDが対象になった(平均年齢60.5歳)。両グループでCATに大きな差があった(6.7点 vs 9.5点)。健康状態が悪化しているCOPD患者の割合は、CAT10点以上をカットオフにすると50%が当てはまった。
非COPDのCATスコアの95%信頼区間は18点以上だった。
高いCATスコアは就労しているCOPD患者で多く見られた(9.3点vs6.0点)。

<結論>
COPD患者の健康状態が障害されていると判定するCATスコアのカットオフは18点以上。これは現在のGOLD分類に繋がることを示唆している。

・非COPD群n=742、COPD群n=68
・COPD群の%FEV1、67.6%
・2012年から2013年にかけて調査。ベースラインの評価として、社会背景、喫煙歴、職業、併存症、肺機能、CATを実施。



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恐らく、市民コホートにおいて、CATスコアの悪化の人数が高くなるカットオフ値を検討したと思われる。
治療したりイベントのカットオフというより、人数でのカットオフのようだ。
働いているほうが、CATスコアが高いのは、それだけ動いているから症状を自覚しやすいんじゃないかと予想。

2017/05/22

間質性肺線維症の呼吸パターンと呼吸困難の関係

Breathing pattern and breathlessness in idiopathic pulmonary fibrosis: An observational study

Respirology (2016) 21, 344–349

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26597757

<背景>
IPFは、肺機能の減少と息切れの増加を特徴とする疾患である。目的は、IPFにおける、肺機能、安静時1回換気パターン、息切れの程度の関係を比較すること。

<方法>
31人のIPF患者、17人の対象群。評価は、肺機能、2分間の安静時1回換気量を測定。
IPFコホートは、疾患重症度、FVC、一酸化炭素拡散能によって階層化した。

<結果>
コントロールグループと比較して、IPFコホートでは、一回換気量が高かった。分時換気量は重症IPfグループにて増加していた。吸気と呼気のタイミングに違いは無かった。
IPFコホートにおいて、Vt/FVCは15%程度高かった。
これらの変化は、息切れの自覚症状の増加と関係していた。

<結論>
これらのIPFにおいて呼吸機能の重症化による呼吸の深さの増加は、1回換気量の変化などの肺機能と呼吸困難の変化と関係していた。


・カーディフ(ウェールズ)の間質性肺疾患クリニックでの研究
・肺機能は座位にて測定。
・IPFの重症度はGAP indexで3グループに分類。
・呼吸困難の評価は、質問表の記入にて評価(The Denver interstitial lung disease breathlessness score)→2-20点で評価し、高得点ほど呼吸困難が強い。

・コントロールグループの平均年齢は66歳、IPFグループは73歳前後。

a)分時換気量、b)1回換気量、c)呼吸数
ステージ2から特に分時換気量は増加
呼吸数は増加しているが有意差なし。

FVCに占める1回換気量の割合。
ステージ2になると30%以上を占めるようになっている。

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IPが進行すれば、VC自体が低下してくる。その分1回換気量の占める割合は増えるわけで、それが呼吸困難にも反映されているという結果。
1回換気量は重症度でそれほど変わりないのは意外だった。

2017/05/18

間質性肺炎の身体活動性と運動時低酸素が予後と関係しているか。

Physical Activity and Exertional Desaturation Are Associated with Mortality in Idiopathic Pulmonary Fibrosis

J. Clin. Med. 2016, 5(8), 73

http://www.mdpi.com/2077-0383/5/8/73

<背景>
IPFは低酸素血症、身体不活動、予後不良の慢性肺疾患である。
目的は、身体活動性と動作時低酸素血症が死亡率へ与える影響について評価すること。

<方法>
ベースラインとして、34人のIPf患者(68歳)に身体活動性の質問票を実施(IPAQ)
6MWTの前後でのSpO2の変化(⊿SpO2)を評価。フォロー期間は40か月。ROC曲線で死亡率と関連するカットオフを算出し、COXハザード率を検討。

<結果>
IPF患者の死亡率が上昇する閾値はIPAQで≦417METs-min/wook、SpO2が10%以上低下。IPF患者において、身体活動性と動作時低酸素が死亡率と関係していた。この結果は、身体活動性と動作時低酸素を評価することが、IPFのリスク回避、予後予測、早期の適切な治療(呼吸リハ)、身体活動性の介入、酸素療法、肺移植の紹介などを早期に提供することが重要である。

<結論>
100-105分/週に相当する低強度の身体活動レベルが、死亡リスクの減少と生存率と関連していた。


・イスラエルの医療センターでの研究。
・過去の運動療法に関する研究から40カ月フォローし、予後を追跡できた患者34人を対象。

・身体活動性の評価:IPAQの自己記入で評価。対面面接で評価。
・9つの質問は、中等度の身体活動レベル(4METs相当)、高強度(8METs)、歩行(3.3METs)、座位時間を評価。
・一般的に推奨される活動レベルは、600METs-min/week(4METsの運動を150分/週)→1日に換算すると約20分の運動。


・死亡率を予測する身体活動性と⊿SpO2のカットオフは、417METs-min/weekと10%であった。
 
 

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IPでも身体活動性が予後に影響するのかも。
けどハザード比からすると、低酸素の方が明らかに強く影響しているように思う。生存曲線は同じ程度だが。