2024/02/15

肺がん術前ホームエクササイズ指導は、術後QOL低下を防ぐ

Effect of Preoperative Home-Based Exercise Training on Quality of Life After Lung Cancer Surgery: A Multicenter Randomized Controlled Trial

Ann Surg Oncol (IF: 5.34; Q2). 2024 Feb;31(2):847-859.


【背景】
術前運動療法は、肺がん術後の離床的アウトカムを改善させるために推奨される。
しかし、術後QOL低下を予防するかについては知られていない。
本研究は、術前ホームエクササイズが術後QOLに及ぼす影響について検討した。

【方法】
待機的肺がん切除術を予定している患者をランダムにホームエクササイズとコントロールに分けた。
ホームエクササイズは、有酸素運動とレジスタンストレーニングを組み合わせて、毎週電話でフォローした。
プライマリーアウトカムは、術前と術後1ヶ月に、EROTC-QLQ-C30(the European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire C30 )で評価したQOL。
セカンダリーアウトカムは入院日数、身体パフォーマンス
主な解析は、要因反復測定分散分析(factorial repeated-measures analysis of variance)。
加えて、ベースラインと術後評価にて、臨床的な悪化を経験した患者の割合とした。

【結果】
41人の患者がintention to treat 解析の対象(68.1歳)
全体的なQoLに関して、有意なグループ×時間の相互作用が観察された(p=0.004)
術前後のグループ間において、全体的なQOLは統計的、臨床的な有意差を認めた。(術前後ともホームエクササイズを行った方がQOLが良好であった)
全体的なQOLの悪化を経験した患者の割合は、コントロールで71.4%、ホームエクササイズで30%(p=0.003)
ホームエクササイズにおいて、疼痛や食欲低下が少なく、身体的、感情的な機能と同様であった(p<0.05)。
コントロールと比べ、ホームエクササイズは術前の5回起立と術後運動耐容能が改善していた。
その他のセカンダリーアウトカムはグループ間で有意差を認めなかった。

【考察】
ホームエクササイズは、術後QOL低下を予防する効果がある。

2024/02/07

IPF急性増悪の予後と関連する因子

Prognostic factors associated with mortality in acute exacerbations of idiopathic pulmonary fibrosis: A systematic review and meta-analysis

Respiratory Medicine Volume 222, February 2024


【背景】
IPF急性増悪は、死亡リスクを増加させるが、どの因子が死亡率を増加させるのかは知られていない。
目的は、IPF急性増悪(AE-IPF)の死亡と関連する因子をレビューすること。

【方法】
AE-IPFと予後因子の関連を報告した論文を対象。
バイアスリスクをQUIPSで評価。

【結果】
35の論文が対象。
ベースラインでの長期酸素療法(aHR2.52)、IPF以外のILDと比べIPFと診断されていること(aHR2.19)がAE-IPFでの死亡リスクが高かった。
HRCT上の拡散パターンは、非拡散パターンと比べ、AE-IPFの高い死亡リスクと関連していた(aHR2.61)。
入院前にコルチコステロイドを使用していること(aHR2.19)、増悪時期の気管支肺胞洗浄(BAL)にて好中球の増加(aHR1.02)は、高い死亡リスクと関連していた。

【解釈】
この結果は、医療者の意思決定や患者の臨床経過を予測するための意味合いを持ち、研究者は、経過を改善するための介入をデザインしたり、ガイドライン作成者は資源の配分についての意思決定をサポートする。

2024/01/21

IPF診断時の1年後死亡を予測する歩数のカットオフ値:3473歩

Cutoff Points for Step Count to Predict 1-year All-Cause Mortality in Patients with Idiopathic Pulmonary Fibrosis

Respiration (IF: 3.58; Q2). 2021;100(12):1151-1157.


【背景】
身体活動はIPF患者において死亡と関連するが、最適な身体活動レベルについては明らかになっていない。

【目的】
全死亡原因の歩数のカットオフ値を示し、予後的重要性を調査すること。

【方法】
加速度計を使用してIPF診断時点の身体活動量(歩数)を計測
身体活動と死亡の関係と、死亡を予測する歩数のカットオフ値を解析した。

【結果】
87人の患者(73例男性)が採用
44人(50.1%)がフォロー期間中(中央値54カ月)に死亡。
年齢、性別、重症度、6MWDを補正して解析した結果、歩数は全死亡の独立した予測因子であった(HR0.82)。
1年間の死亡を予測する最適なカットオフ値は、3473歩(感度0.818、特異度0.724)。
死亡率は、歩数が3473歩を超えた患者は、超えなかった患者よりも低かった。

【考察】
歩数は、簡単に解釈できる評価であり、IPF患者の全死亡原因を予測する。
診断時、カットオフ値の3473歩を超えていれば、死亡率は半減した。
今回の結果は、この患者群の身体活動を評価する重要なものである。


2024/01/20

IPF患者の身体活動量のMCID (半年で570-1358歩減少)

Physical activity in idiopathic pulmonary fibrosis: Longitudinal change and minimal clinically important difference

Chron Respir Dis (IF: 2.44; Q4). 2023 Jan-Dec:20:14799731231221818.



【目的】
IPF患者における身体活動の縦断的な変化の参考値は明らかになっていない。
この研究の目的は、IPF患者の身体活動量のMCIDを推定すること。

【方法】
加速度計を用いて、身体活動量(1日の歩数)を測定し、ベースラインと6ヶ月後を比較した。
歩数のMCIDはanchorベースとdistributionベース法で算出した。
FVCと6MWDをアンカーとして採用した。
効果量(effect size)と標準誤差をdistributionベースにおけるMCIDの計算に使用した。

【結果】
105例が本研究に採用(平均年齢68.5歳)
歩数は、ベースラインから6ヶ月後までの間に、著明に低下していた。
anchorとdistributionベースで算出したMCIDは570-1358歩。

【考察】
IPF患者の歩数は、6ヶ月後に著明に低下していた。
MCIDは、570-1358歩と算出された。
今回の結果は、IPF患者の身体活動の変化の解釈を提示し、臨床的、研究的なアウトカムの一助となるであろう。

2024/01/10

肺がん6MWD低下のMID 22-42m

Minimal important difference of the 6-minute walk distance in lung cancer

Chron Respir Dis (IF: 2.44; Q4). 2015 May;12(2):146-54.


【背景】
6MWDは、肺がんの身体機能評価で最もよく用いられる評価の一つ。
しかし、MIDは発表されていない。
この探索研究の目的は、1)6MWDのMIDを推定すること、2)6MWDと社会背景や疾患関連因子の関係について検討すること。

【方法】
56人のstageⅠからⅣの肺がんで、治療開始前と10週後に6MWDを行えた患者。
運動介入は行っていない。
その他の評価として、EORTC-QLQ-C30で身体機能、身体活動、症状を評価。
MIDはアンカーベースとディストリビューションベースで算出。

【結果】
6MWDが低下(deterioration)した群は60m低下、低下しなかった群は16mの低下。
離床的に意味のある変化をROC曲線で推定すると42m(AUC0.66)もしくは9.5%の変化。
ディストリビューションで推定したMIDは、22-32m。
6MWDが高いことは、良好な身体機能、身体活動、少ない息切れと相関していた。

【考察】
6MWD悪化のMIDは22-42m、9.5%の変化と推定された。