2021/03/07

周術期リハの終了基準

Discharge criteria from perioperative physical therapy

Chest (IF: 8.308; Q1). 2002 Feb;121(2):488-94. 


<目的>
周術期理学療法から退院すべき患者の評価指標としての、退院基準とスコアリングシステムの妥当性と信頼性について検討すること。

<方法>
術後理学療法退院スコアリングツール(the postoperative physiotherapy discharge scoring tool (POP-DST))は、患者が周術期リハを終了すべきかをスコアリングするツールである。
5項目(移動、呼吸音、拝痰、酸素化、呼吸数)で構成され、6点から15点でスコアリングする。
13点以上が退院基準。
POP-DSTの妥当性は、フォーカスグループと郵送アンケートで検討。
検者間信頼性は、2人のセラピストに術後の患者を評価させた。
妥当性は、POP-DSTスコアとセラピストの判断する退院基準との比較で検証。
加えて、PTを終了する患者は、7-10日フォローし、呼吸器症状の悪化が無いかを追跡した。
対象は、144人の周術期患者。

<結果>
検者間信頼性は、中等度の高さであった(級内相関係数0.76、r=0.77)。
このツールでの終了基準とセラピスト判断の終了基準に強い関連を認めた(kappa range 0.91-0.96)
POP-DSTで術後肺合併症が進行しない患者の予測能力は94%。

<考察>
POP-DSTは術後の患者におけるPTを終了するかの意思決定を促すツールであった。
強い妥当性、信頼性を示した。
より完全な妥当性を示せるよう検証すべきである。

2021/03/05

膝伸展筋力のカットオフ(26.2kgで6MWD≦350m)

Functionally Relevant Threshold of Quadriceps Muscle Strength in Patients with Chronic Obstructive Pulmonary Disease

Progress in Rehabilitation Medicine 2021; Vol. 6, 20210008


<背景>
大腿四頭筋力(the quadriceps muscle strength (QMS))の男性COPD患者における運動耐容能が低下している閾値を同定すること。

<方法>
大腿四頭筋等尺性収縮力(QMVC)と体重、身長の2乗、BMIで計算されたQMVCを113人のCOPD患者で算出。
運動耐容能は6MWTで評価。6MWD350m以下を耐久性低下と定義。
最も高い感度(0.9以上)となるQMVCのカットオフを同定。

<結果>
99人の男性患者(年齢74歳、%FEV1.0 56.9%)が対象。
年齢、息切れで補正した多変量ロジスティック回帰モデルにてQMVCとQMVCを身長の2乗で補正した値が最も6MWDと関係していた。
運動耐容能と比較して、QMVCとQMVC-H²のカットオフ値は、それぞれ26.2kgと9.6kg/m²であった。

<考察>
男性COPD患者のQMSのカットオフは、6MWD350m以下であることを予測し、呼吸リハプログラムにおいて、特異的な筋力トレーニングを行うべきである。

2021/03/01

大腿骨頚部骨折術前のアルブミン値が、術後肺炎の予測因子

 Preoperative Serum Albumin Level As A Predictor Of Postoperative Pneumonia After Femoral Neck Fracture Surgery In A Geriatric Population

Clin Interv Aging (IF: 3.023; Q1). 2019 Nov 13;14:2007-2016. 


<目的>
大腿骨頚部骨折は、高齢者に多い。術後肺炎は、致命傷であり、術後の合併症として最も多い。
しかし、低アルブミン血症の患者が術後肺炎の発症しやすさが懸念されているが、検討したものはない。
新たに発症した術後肺炎と低アルブミン血症の関係を検討し、低アルブミン血症が高齢者で大腿骨頚部骨折後の肺炎発症の独立したリスク因子となるかについて検討した。

<方法>
西安市赤十字会医院(中国)で2018年に大腿骨頚部骨折の手術を行った65歳以上の患者
術後30日間の記録を後方視的に検索
術後肺炎のあったグループとなかったグループに分け、臨床的特性を比較。
2項ロジスティック回帰分析にて、患者背景、術前並存症、検査結果、手術要因による術後肺炎のリスク因子を同定した。

<結果>
720人の患者が対象。54人が術後肺炎発症。発症率は7.5%。
術後肺炎患者は、入院日数が長かった。
ロジスティック回帰分析にて術前血清アルブミンレベル(OR5.187)、COPD(OR3.819)、脳卒中の既往(OR3.107)、受傷から手術までの時間(OR1.076)が、術後肺炎発症の独立した予測因子であった。

<考察>
術前の血清アルブミンレベルが、術後肺炎の予測因子であり、COPD、脳卒中の既往、手術までの時間も考慮された。
大腿骨頚部骨折後の手術を行う患者において、術前の血清アルブミンレベルを周術期のモニタリング項目に加えるべきである。

2021/02/28

肺炎入院後1週間の摂取エネルギー不足がアウトカムに影響

Impact of Energy intake at One Week after Hospitalization on Prognosis for Older Adults with Pneumonia

J Nutr Health Aging (IF: 2.791; Q1). 2020;24(1):119-124.


<背景>
目的は、高齢肺炎患者の入院1週間の平均摂取エネルギーを調査すること。

<方法>
後方視的コホート研究。日本栄養リハビリテーションデータベースに含まれた、急性期病院での高齢肺炎患者。
329人の肺炎患者(65歳以上)で、2015年から2018年に日本栄養リハデータベース(JRND)に登録した患者。
ロジスティック回帰分析を用いて、摂取エネルギーと死亡率、自宅退院、入院中の肺炎再発、を比較。
多変量モデルに、年齢、性別、入院中のMNA-SF、A-DROP、Charlson 併存症index、リハビリの有無を変数にして解析。

<結果>
315人の肺炎患者が対象(中央値85歳、男性63.8%)。
57.7%は入院後1週間の摂取エネルギーが不足(Lack of Energy Intake:LEI)していた。
LEIグループは、より高齢で、A-DROPが高く、入院時のMNA-SFで低栄養であった。
死亡率、肺炎再発率、中央値BMI、退院時MNA-SFで低栄養であることは、LEIで多かった。
ロジスティック回帰分析にて、LEIは死亡(OR 5.07)、自宅退院(OR0.33)、肺炎再発(OR3.26)の独立した予測因子であった。

<考察>
肺炎で入院した高齢患者の入院1週目の摂取エネルギー不足は、死亡、自宅退院困難、肺炎再発の独立した予測因子であった。
入院後早期より、適切なエネルギー摂取の重要性を示唆した。

2021/02/22

高齢者の入院関連機能障害

Individual Responsiveness to Physical Exercise Intervention in Acutely Hospitalized Older Adults

J Clin Med (IF: 3.303; Q4). 2020 Mar 14;9(3):797. 


<背景>
目的は、急性期病院に入院した高齢者に対して、運動の反応性の個人間誤差を検証する事。

<方法>
RCTの補助分析であり、268人の患者(平均年齢88歳)が、対照群125人、介入群143人に分けられた。介入群の患者は、監視下での運動(歩行、起立)を行い、反応群と非反応群、乏しい反応群(ADL(Katz index)の入院から退院までの改善度合いで分類)に群分け。
運動の反応性とベースライン(入院2週間前)、入院時、入院中、退院時、3か月フォロー後の各変数の関係を分析した。

<結果>
ADL機能障害と入院時の栄養状態不良が、反応の乏しい群と関連。
一方、入院時のADLが良好であること、入院期間が長いことと併存症が少ないことは反応に乏しかった。
乏しい反応群は、退院時とフォロー中のアウトカムが不良であった(身体的パフォーマンス不良、転倒が多い)。


<考察>
運動介入は、高齢者の入院中の身体機能低下を予防するが、入院時に身体機能や健康状態が良い患者や入院が長期化しているような患者では、反応が乏しい群になるリスクが高く、短中期的な後遺症の後遺症となるリスクが高い。