2018/05/13

COPDの運動耐容能に心肺機能はどれほど影響するか

Determinants of functional, peak and endurance exercise capacity in people with chronic obstructive pulmonary disease.

Respir Med. 2018 May;138:81-87.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29724398

<背景>
COPDの運動制限は、多様な要因がある。心肺機能の影響に関しては明らかになっていない。

<方法>
運動耐容能の異なる要素の可能性を検討するために、6MWD、最大酸素摂取量(peak VO2)、最大運動負荷、亜最大持続運動負荷テストの運動時間を行った。

<結果>
516人のCOPD患者(56%男性、平均年齢64歳、%FEV1.0 49%)。患者は、運動耐用能が低下していた。心肺機能の測定では、エコー検査を行い、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(N-terminal pro-brain natriuretic peptide:NT-proBNP)は、運動耐容能と著明に相関していた。
重回帰分析にて、年齢と性別を補正した結果、6MWDの72%が関係しており、TUGでは32%が優位に関連していた。
peak VO2は、1秒量の30%と関係していた。
大腿四頭筋力は、全ての運動テストにおいて、明らかに決定要因となっていた。

<考察>
心肺機能は、運動耐容能と関連していたが、優先的な要因ではなかった。運動耐容能変数の異なる構成要素の決定因子は多岐にわたるが、強い関係が示されたのは、大腿四頭筋力と機能的・持久的な運動パフォーマンスと、肺機能と最大運動耐容能であった。

・2012年から2014年までオランダで行われた、”COPD患者の健康状態への循環器疾患の影響”に関する研究のデータを使用。安定期COPD患者が対象。
・評価項目:喫煙歴、mMRC、併存症(charlson Comorbidity Index)、体組成、肺機能、呼吸筋力、安静時の心エコー、運動耐容能(6MWT、症候限界運動負荷試験、持久力試験(Sub-maximal constant work rate cycle test))、大腿四頭筋力、CAT、SGRQ、HADS

・心エコー検査にて、対象患者の53.4%に1つ以上の指摘があった。EF<50%が16.4%.

・多重線形回帰分析の結果


2018/05/07

脳卒中後、画一的な運動療法の効果は徐々に減少していく

Locomotor Training and Strength and Balance Exercises for Walking Recovery After Stroke: Response to Number of Training Sessions

Physical Therapy, Volume 97, Issue 11, 1 November 2017, Pages 1066–1074

https://academic.oup.com/ptj/article/97/11/1066/4082915?searchresult=1

<背景>
エビデンスに基づいたガイドラインが、脳卒中後の歩行能力の改善における、運動セッションの効果的な回数を含めて、リハビリテーションの実施内容として求められている。

<目的>
2つの介入方法(歩行トレーニングと筋力とバランス練習)で改善の反応のあるトレーニングの回数を検討した

<対象>
カリフォルニアとフロリダの6つのリハビリテーションサイトで自宅にいる患者347人
少なくとも3m(10feet)アシスト付きで歩けて、介入セッションの必要な回数を行えた患者

<介入方法>
36回介入(週3回を12週間)、1回90分。
歩行練習(免荷トレッドミル歩行とグラウンド歩行)もしくは筋力とバランス練習を実施

<評価>
10m歩行速度、6MWTをトレーニングの前と12回目、24回目、36回目の介入時に評価

<結果>
脳卒中後2-6か月後の参加者において、36回目の歩行速度と歩行耐久性の改善が得られた
。しかし、介入方法や重症度に関わらず25-36回のセッションにおいて、改善度合いは徐々に減少していた。

<結論>
地域で生活している2-6か月後の脳卒中患者は、36回の歩行練習もしくは筋力、バランス練習によって、歩行速度と歩行距離が改善することを示した。
しかし、24回目以降の改善はわずかとなる傾向であった。
個別の改善の軌跡を追跡することが、計画的な治療において必要である。

2018/05/06

週1回の中等度強度の歩行はBDNF濃度を上昇させる

A single session of moderate intensity walking increases brain-derived neurotrophic factor (BDNF) in the chronic post-stroke patients.

Top Stroke Rehabil. 2018 Jan;25(1):1-5.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29078742

<背景>
短期間の有酸素運動は血中の脳伝達由来因子(BDNF)を上昇させる。しかし、BDNFの濃度を上昇させる運動の種類や強度について決めることが必要である。

<目的>
軽度と中等度の有酸素運動の効果を、慢性期脳卒中患者を対象に、BDNFレベルを検討すること。

<方法>
対象患者は、認知機能(MMSE)、抑うつ評価(Hamilton Depression Scale)、疲労感(Fatigue Severity Scale)、運動耐容能(6MWT)を実施。血液サンプルは、それぞれのセッションの前後で採取。
運動は、ターゲットゾーン(軽度:最大HRの50-63%、中等度:最大HRの64-76%)の歩行を30分、週1回を2週間続けて実施した。

<結果>
中等度の有酸素運動を30分行うと慢性期脳卒中患者のBDNFレベルが向上し、軽度では見られなかった。

<結論>
脳卒中からの回復の要因として、運動が有効であるというメカニズムの可能性を示唆しており、将来の研究の基礎を提供し、臨床応用としての特異的な指標を明らかにした。

2018/05/03

COPDにおける認知機能障害:評価と介入

Cognitive impairment in COPD: should cognitive evaluation be part of respiratory assessment?

Breathe 2017 13: e1-e9;

http://breathe.ersjournals.com/content/13/1/e1

認知機能障害は、COPD患者にで多く存在しており、患者の状態や治療アウトカムに多くの多面的な影響をもたらす状態である。
これは複数の病態生理学の要因が重なり合っており、最も共通しているのは、呼吸が満足に行えないことによる酸素飽和度が低い事の結果である。
臨床的なアウトカムに認知機能障害の影響があるにもかかわらず、認知機能障害が同時に存在しているかのスクリーニングは、呼吸器の治療の成功を妨げているかもしれないが、いまだ無視されている。
呼吸器の治療計画を進めるときには、認知機能障害は特別に考慮すべきである。認知機能が障害されている患者は、より多くのサポートを必要としており、個別の認知機能に有益な呼吸ケアプランが必要である。
多面的なアプローチとしての呼吸リハは、認知機能障害のあるCOPD患者へ優先的に行うべきである。

・認知機能障害を表すいくつかの症状
”年齢的に考慮しても記憶の喪失が多い”
”同じことを何度も質問したり、同じストーリーを何度も繰り返す”
”家族や場所を認識できない”
”判断や行動を誤る”
”気分や行動の変化が意識できず、孤立したり、非道徳的である”
”対象までの距離を判断できない”
”タスクを完了できない、実行機能(計画、統合、推理)の損失”
・COPDにおける認知機能障害は増加しており、肺機能の低下がリスクファクターである。
・平均して、COPD患者の36%に認知機能障害があるとされている。

<認知機能の評価>
・広く用いられているのは、MMSE、the Addenbrooke’s Cognitive Examination (ACE)、the Montreal Cognitive Assessment (MoCA:日本版はMoCA-J)、 the Clock Drawing Test (CDT)、the Mini-Cog test 。
・ボーダーラインスコアの患者は軽度認知障害(mild cognitive impairment (MCI))として認知障害のファーストステージであることが明らかにされる

<肺機能と認知機能>
・低い肺機能は認知機能障害と関連していることが報告されている。
・特に、記憶と学習、注意、精神運動速度、空間認知機能、実行機能、言語スキルに影響がある。
・脳に十分な酸素が供給されないことにより、脆弱な中枢神経を損失するきっかけになりえるため、動脈の低酸素は認知機能障害に大きく関与する。
・さらに、PaCO2の上昇に気づかないことがある。PaCO2の上昇は、反応時間の低下、記憶の遅延、情報処理速度の低下、注意や集中力の欠如と関連している。

<認知機能障害のリスクファクター>
・全身炎症や酸化ストレス、身体活動の低下、末梢血管障害、高血圧と低血圧、脳血管の狭窄と関連した頭蓋内圧の上昇、併存症、喫煙、体質


<呼吸ケアの一部としての認知機能障害の治療>
・運動や教育の多面的な介入が推奨される。
・加えて、社会と繋がる機会やサポートを受けて他の患者とモチベーションを共有する機会を提供する。
・呼吸リハは、不安や抑うつを改善するが、認知機能障害にも有益が期待できる。
・3週間のリハプログラムで視覚的注意、言語記憶などが改善したと報告がある。
・さらに、酸素療法が認知機能の進行を遅らせる、もしくは改善するかもしれないとも報告されている。(長期間酸素療法を行っていないCOPD患者は、行っている患者と比べて、認知機能が悪かった)

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入院での介入だけで改善するのは難しい。
外来や患者会の紹介も介入の方法で、患者同士のコミュニティを作り、継続的なサポートができる体制が求められる。

2018/05/01

ICUで集中的にリハを行うと入院期間が減少する

Enhancing rehabilitation of mechanically ventilated patients in the intensive care unit: a quality improvement project.

J Crit Care. 2015 Feb;30(1):13-8.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25316527

<目的>
機械換気の期間延長は、身体的、心理社会的な影響と関連している。早期リハ戦略のエビデンスは高まっているにも関わらず、ヨーロッパにおける理解や実施はさまざまである。
目的は、ICU患者を交えて、機械換気を行っている患者の早期リハとリハプログラムの向上の影響を評価すること。

<方法>
ICU在室日数や入院日数が延長するリスクが高い患者に対して、集中的に早期リハを強化して実施した。ベースラインのデータは、少なくとも5日間侵襲的換気を行っている患者(n=290)と早期リハチームが発足した後に少なくとも5日間機械換気を行っている患者(n=292)を比較した。
メインアウトカムはICU退室時の活動レベル(the Manchester Mobility Score)、平均ICU在室日数とICU退室後の入院日数、呼吸器装着日数、入院中の死亡率。

<結果>
ICUリハチームの発足は、ICU退院時の活動度の著明な向上と関連し、ICU在室日数、呼吸器装着日数、入院日数、死亡率を減少させた。

<結論>
早期にリハを強化した戦略は、このヨーロッパのICUにおいて退院時の活動度を向上させ、ICU在室日数、入院日数、呼吸器装着日数を減少させた。

・イギリス、バーミンガムでのスタディ
・ICUに10:1の割合でPTを配置。平日8時から17時まで勤務しており、時間外でも可能な限り介入。週末は、限られた内容であるが、リハを提供。
・PTは入院後24時間以内に介入。PT不在時は看護師がモビライゼーションを実施。

介入プロトコル
上:介入の除外基準
下:端座位を制限する基準

活動レベルの評価