2018/05/03

COPDにおける認知機能障害:評価と介入

Cognitive impairment in COPD: should cognitive evaluation be part of respiratory assessment?

Breathe 2017 13: e1-e9;

http://breathe.ersjournals.com/content/13/1/e1

認知機能障害は、COPD患者にで多く存在しており、患者の状態や治療アウトカムに多くの多面的な影響をもたらす状態である。
これは複数の病態生理学の要因が重なり合っており、最も共通しているのは、呼吸が満足に行えないことによる酸素飽和度が低い事の結果である。
臨床的なアウトカムに認知機能障害の影響があるにもかかわらず、認知機能障害が同時に存在しているかのスクリーニングは、呼吸器の治療の成功を妨げているかもしれないが、いまだ無視されている。
呼吸器の治療計画を進めるときには、認知機能障害は特別に考慮すべきである。認知機能が障害されている患者は、より多くのサポートを必要としており、個別の認知機能に有益な呼吸ケアプランが必要である。
多面的なアプローチとしての呼吸リハは、認知機能障害のあるCOPD患者へ優先的に行うべきである。

・認知機能障害を表すいくつかの症状
”年齢的に考慮しても記憶の喪失が多い”
”同じことを何度も質問したり、同じストーリーを何度も繰り返す”
”家族や場所を認識できない”
”判断や行動を誤る”
”気分や行動の変化が意識できず、孤立したり、非道徳的である”
”対象までの距離を判断できない”
”タスクを完了できない、実行機能(計画、統合、推理)の損失”
・COPDにおける認知機能障害は増加しており、肺機能の低下がリスクファクターである。
・平均して、COPD患者の36%に認知機能障害があるとされている。

<認知機能の評価>
・広く用いられているのは、MMSE、the Addenbrooke’s Cognitive Examination (ACE)、the Montreal Cognitive Assessment (MoCA:日本版はMoCA-J)、 the Clock Drawing Test (CDT)、the Mini-Cog test 。
・ボーダーラインスコアの患者は軽度認知障害(mild cognitive impairment (MCI))として認知障害のファーストステージであることが明らかにされる

<肺機能と認知機能>
・低い肺機能は認知機能障害と関連していることが報告されている。
・特に、記憶と学習、注意、精神運動速度、空間認知機能、実行機能、言語スキルに影響がある。
・脳に十分な酸素が供給されないことにより、脆弱な中枢神経を損失するきっかけになりえるため、動脈の低酸素は認知機能障害に大きく関与する。
・さらに、PaCO2の上昇に気づかないことがある。PaCO2の上昇は、反応時間の低下、記憶の遅延、情報処理速度の低下、注意や集中力の欠如と関連している。

<認知機能障害のリスクファクター>
・全身炎症や酸化ストレス、身体活動の低下、末梢血管障害、高血圧と低血圧、脳血管の狭窄と関連した頭蓋内圧の上昇、併存症、喫煙、体質


<呼吸ケアの一部としての認知機能障害の治療>
・運動や教育の多面的な介入が推奨される。
・加えて、社会と繋がる機会やサポートを受けて他の患者とモチベーションを共有する機会を提供する。
・呼吸リハは、不安や抑うつを改善するが、認知機能障害にも有益が期待できる。
・3週間のリハプログラムで視覚的注意、言語記憶などが改善したと報告がある。
・さらに、酸素療法が認知機能の進行を遅らせる、もしくは改善するかもしれないとも報告されている。(長期間酸素療法を行っていないCOPD患者は、行っている患者と比べて、認知機能が悪かった)

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入院での介入だけで改善するのは難しい。
外来や患者会の紹介も介入の方法で、患者同士のコミュニティを作り、継続的なサポートができる体制が求められる。