2017/07/18

COPDの全身炎症とサルコペニアの関係

Sarcopenia correlates with systemic inflammation in COPD

International Journal of COPD 2017:12 669–675

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28255238


<背景>
筋力低下と慢性炎症はCOPD患者において、有力な特徴である。全身炎症は肺機能の低下の加速度と関連している。
この研究では、サルコペニアの有病率と安定期COPD患者におけるサルコペニアと全身炎症の関係について検討すること。

<方法>
横断研究。筋力と筋肉量は握力と生体インピーダンス法で測定。対象は安定期COPD患者80人、外来患者が対象。サルコペニアは、筋力低下(握力)と筋肉量の低下(skeletal muscle mass index [SMMI])によって判定。
全身炎症マーカーはIL-6と好感度TNFαを採用。

<結果>
サルコペニアは20人(25%)に見られた。サルコペニアの患者は、高齢で、低BMI、心血管疾患の有病率が高かった。加えて、サルコペニアでは無い患者と比べると、mMRCが高く、6MWDが短い。
握力は年齢、mMRC、CATスコアと相関していた。
握力とSMMIの両方が、IL-6とTNFαの程度と相関していた。
多変量解析にて、高齢、低BMI、心血管疾患の合併、高TNFαは、安定期COPD患者のサルコペニアと著明な決定要因であった。

<結論>
サルコペニアは安定期COPD患者において非常に高率に存在していた。しして、重症の息切れスコア、低運動耐容能と関連していた。全身炎症は、安定期COPDのサルコペニアを規定する重要なものとなり得る。

・韓国の大学病院でのスタディ
・サルコペニアの基準はヨーロッパの高齢サルコペニアワーキンググループの基準を採用:筋肉量の低下と握力の低下

・筋肉量は筋肉量を身長の二乗で割った値を採用。標準偏差の2倍以上低下していたら筋肉量の低下と判定

・握力測定の方法は、椅子座位で肩関節内外旋0度、肘90度屈曲位で測定。3回測定した平均値を採用
・男性で30㎏以下、女性で20g以下を握力低下の基準とした

・平均年齢68.4歳、%FEV1.0 61.2%、平均BMI23.3

握力(左)と骨格筋量index(右)と炎症マーカーの関係。

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筋肉量が減少すると、抗炎症作用が低下するんだろうか?
握力測定の仕方はちょっと疑問だが。。

2017/07/13

IPFでリハプログラムを行うと身体活動が向上

Physical Activity and Quality of Life Improvements of Patients With Idiopathic Pulmonary Fibrosis Completing a Pulmonary Rehabilitation Program
2014 Dec;59(12):1872-9

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25185149


<背景>
呼吸リハは、COPD患者に教化的であるが、特発性肺線維症(IPF)での効果は明らかではなく、特に身体活動レベルや健康関連QOLにおいては明らかでない。
目的は、呼吸リハが身体活動を向上させるか(IPAQで評価)、QOLと症状(SGRQ-IとBDIで評価)が改善するかを検討すること。

<方法>
対象はIPF患者21人を無作為に3か月の呼吸リハを行うグループとコントロールグループに分けた。呼吸リハは、週に2回、90分の運動を実施。コントロールグループは通常の身体活動を行うように伝えた。全患者は6MWTと労作後のBDIを評価。SGRQ-Iと5点の自己評価の健康度をベースライン、3か月後、とフォローアップ後3か月に実施。
IPAQは毎週評価した。

<結果>
リハビリグループはリハビリを実施した3か月間を通して身体活動が高いレベルにあった。
SGRQ-Iの症状のスコアはリハグループで-9点改善し、コントロールグループは悪化していた。
3か月のフォローアップ中リハグループの身体活動レベルは 14,428 ±8,884 METsで、コントロールグループは16,923±32,620 であり、リハグループの身体活動は実質的には逆転していた。
6MWT後のBDIは著明な変化は無かった。

<結論>
3か月のリハプログラムは症状を著明に改善(SGRQ-I) し、身体活動レベルはプログラムに参加中のIPF患者は改善していた(SGRQ-I) 。

・リハプログラム:12週間、教育、運動療法を含んだものを実施。
教育セッションの内容は、呼吸法、栄養、運動、コーピングメカニズムなど10のセッション。
運動の内容は、有酸素運動を30分(トレッドミル20分とエルゴ10分・70-80%HRmax)、ストレッチ20分、筋力トレーニング25分。
・リハグループのプログラムは退院後も継続できるように提供。リハを行わなかった日は、理学療法士が週2回自宅で実施。

・年齢71歳、%FVC60%、%DLCO44%、6MWT361m

・3ヶ月以降のSGRQは3ヶ月時点と比べると7.2点悪化。(ちなみに、コントロールグループは同時期で13.4点の改善)


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要約すると、集中的に介入したら活動量が増加して、症状が軽減した。しかし、半年後まで効果を維持することはできていなかった。長期効果についてはまだ明らかにされていない。
解析人数が10人ずつなので、統計的にはなんとも。。。

2017/07/09

肺疾患に重度の肺高血圧症の合併:疾患特性と治療反応性について

Severe pulmonary hypertension in lung disease: phenotypes and response to treatment

 Eur Respir J 2015; 46: 1378–1389

http://erj.ersjournals.com/content/46/5/1378

<背景>
肺疾患による肺高血圧症(PH)は多いが、重症のPH(肺動脈圧≧35mmHg)においては、僅かな報告しかない。これらの患者の治療方法やPHをターゲットにした治療については知られていない。

<方法>
フェノタイプ特性とアウトカムを118人の重症PH患者と特発性肺高血圧症(IPAH)のある肺疾患患者74人を対象に、肺血管拡張薬を投与した。

<結果>
肺疾患患者は、IPAH患者よりも、高齢で低酸素血症が多く、ガス交換能が低下、NYHAのクラスが悪く、6MWDが短い。肺疾患を合併している患者の生存率は悪く、ILD患者コホートにおいてより顕著であった。
IPAHは対照的に、6MWDとNT-proBNPの改善が大きかったが、呼吸器疾患の重症PHに対するPHの治療は6MWDもしくは機能の改善をもたらさなかった。しかし、どちらも悪化はみられなかった。NT-proBNPは2200から1596pg/mLに減少した。
肺疾患タイプによる反応性は、ILDと肺気腫患者において悪かった。

<結論>
今後、重症PHの肺疾患患者において、血管拡張治療が疾患の進行を遅らせるかもしれないということについて、更なる検討が求められる。

・軽度から中等度のPHの罹患率の報告:COPDの30-70%、CPFEの47-90%
・重度のPH(肺動脈圧≧35mmHg)はまれ(5-13%)で肺機能の悪化と関連している
・長期間酸素療法は軽症から中等症のCOPD患者の平均肺動脈圧を減少させたという報告があるが、肺高血圧に対する治療は確立されていない

・イギリスで後方視で調査。肺疾患は、肺機能やCTから、肺気腫、間質性肺疾患(ILD)、CPFE、COPDに分類。
・PH患者は専門家から最低3ヵ月の治療を受ける。肺疾患合併患者は、気管支拡張薬の吸入、長期間酸素療法などを実施。

・IPAH群のPHの治療薬:カルシウム拮抗薬7%、PDE5阻害薬33%、ERA19%
・6MWDは334m vs 202mでIPAH群の方がベースラインでは長く歩けていた

患者の振り分け
・6MWDはIPAH群は3か月後に+41m、肺疾患群は+16m
a)NT-proBNPとb)6MWDの変化量

・NT-proBNPとは…
心筋バイオマーカーの一つ。心不全の指標として用いられる血液生化学データ。心不全では早期から高値を示し、NYHAと高い相関を示す。400pg/ml以上で心不全を疑う。
引用:http://www.labo.city.hiroshima.med.or.jp/wp-content/uploads/2014/01/center201407-04.pdf



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薬剤だけの治療で純粋な特発性肺高血圧症の運動能力は改善していた。肺疾患が合併すると、改善しにくくなるという結果。そこで、運動を加えると、より効果的にならないだろうか?

2017/07/06

間質性肺線維症(IPF)の終末期ケアについて

End-of-life care of patients with idiopathic pulmonary fibrosis

. 2016; 15: 85.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5059981/

<背景>
IPFは進行性の弛緩で、平均生存年数は2-7年である。緩和ケアは、肺移植が治療オプションとならない患者にとって重要な役割をもつ。目的は、IPF患者の終末期ケアにおける治療の実践、意思確認、症状について検討すること。

<方法>
フィンランドの59人のIPF患者を対象。死亡前6ヶ月の記録を後方視的に分析。

<結果>
47人(93%)の患者が病院で死亡。大多数(93%)は最後の6ヶ月のうち平均30日(1-96日)を病院で過ごした。同様に、15%の患者は病院で最後の6ヶ月を過ごした。終末期の意思確認とDNRは19人(32%)と34人(57%)が作成しており、それらの意思確認のうち22人(42%)は死亡する3日以内に適応された。
最後の入院期間中、抗生剤投与は79%、非侵襲的換気が36%の患者に行われた。最後の1日には、レントゲン写真が19%、生化学検査が53%に行われた。
これらの検査と延命治療は第3次病院にてより多く行われていた。呼吸困難感(66%)、疼痛(31%)が共通した症状だった。
オピオイド(鎮痛薬)が死亡の1週間前の間に71%の患者で使用された。

<結論>
IPF患者で病院にて死亡した大多数の患者において、延命措置が行われ、症状緩和のためにオピオイドが使用された。しかし、終末期の意思決定は非常に多くの患者で行われていた。早期からの緩和ケアを、進行中の治療計画に加えて行うことがIPF患者の終末期ケアを向上させる。


・対象年齢77歳、診断から死亡まで平均3.7年
・併存疾患は心血管疾患が68%、高血圧が48%
・死亡した場所:第3次病院39%、ICU5%、市中病院36%、自宅14%

DNRと終末期の意思確認を行ったタイミングと延べ人数
・DNRを死亡する3日前に作成したのは8人。終末期の意思決定を死亡する24時間以内に作成したのが6人いた。
・14人の患者はDNRと終末期意思確認を両方作成
・20人の患者は、どちらも作成していなかった
・終末期ケアの専門家が介入した病院は見当たらず、1件のホスピスで1人の患者が利用していた。

・亡くなった週の治療内容:NIV29%、非経口輸液49%、抗生剤66%

・筆者の考察では、"NIVはIPF患者の対症療法として推奨されていないので、使用する場合には適応を吟味するべきである"

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緩和ケアって目の前の患者の症状に合わせて行うべきなので、正解は無いと思う。
がん以外の疾患でも緩和ケアが必要。
これも"終活"だと思う。

2017/07/04

間質性肺疾患患者で肺高血圧のある患者の運動能力

Impact of pulmonary hypertension on exercise performance in patients with interstitial lung disease undergoing evaluation for lung transplantation.

Respirology. 2014 Jul;19(5):675-82.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24797365

<背景>
肺高血圧(PH)は間質性肺疾患(ILD)に合併することが知られている。心肺運動負荷試験(CPET)は心疾患や呼吸器疾患患者の評価ツールや治療的介入の意味としても使われている。いくつかの研究で、CPETの反応とILDの平均肺動脈圧(mPAP)が関係していたと報告している。この研究の目的は、CPET、6MWT、肺機能検査、肺高血圧の関係について肺移植待機のILD患者で検討すること。

<方法>
対象は、肺移植の2年前までのCPETを行ったILD患者で、右心カテーテル、肺機能検査、6MWTをCPETの4ヵ月以内に行った患者。

<結果>
ILD患者72人(PHは36%)を分析。mPAPとCPETのパラメーターが著明に相関していた。しかし、mPAPは肺拡散能もしくは6MWDを予測するインパクトは無かった。CPETのパラメーターはPHの重症度(VE/VCO2)と呼気終末二酸化炭素分圧の違いから探索することができる。

<結論>
ILD患者において、PHが運動耐容能とパフォーマンスに著明な影響を及ぼすことが示された。

・PHがあるILDのほうが、最大運動負荷が小さかった。換気の非効率さ(VE/VCO2で判断)はPHのほうが大きかった。


VE:分時換気量
VCO2:二酸化炭素排出量
VE/VCO2:二酸化炭素換気当量
PetCO2:呼気終末二酸化炭素分圧


肺動脈圧が高くなると、呼気終末CO2は低くなる=換気が行えていない?