Eur Respir J 2015; 46: 1378–1389
http://erj.ersjournals.com/content/46/5/1378
<背景>
肺疾患による肺高血圧症(PH)は多いが、重症のPH(肺動脈圧≧35mmHg)においては、僅かな報告しかない。これらの患者の治療方法やPHをターゲットにした治療については知られていない。
<方法>
フェノタイプ特性とアウトカムを118人の重症PH患者と特発性肺高血圧症(IPAH)のある肺疾患患者74人を対象に、肺血管拡張薬を投与した。
<結果>
肺疾患患者は、IPAH患者よりも、高齢で低酸素血症が多く、ガス交換能が低下、NYHAのクラスが悪く、6MWDが短い。肺疾患を合併している患者の生存率は悪く、ILD患者コホートにおいてより顕著であった。
IPAHは対照的に、6MWDとNT-proBNPの改善が大きかったが、呼吸器疾患の重症PHに対するPHの治療は6MWDもしくは機能の改善をもたらさなかった。しかし、どちらも悪化はみられなかった。NT-proBNPは2200から1596pg/mLに減少した。
肺疾患タイプによる反応性は、ILDと肺気腫患者において悪かった。
<結論>
今後、重症PHの肺疾患患者において、血管拡張治療が疾患の進行を遅らせるかもしれないということについて、更なる検討が求められる。
・軽度から中等度のPHの罹患率の報告:COPDの30-70%、CPFEの47-90%
・重度のPH(肺動脈圧≧35mmHg)はまれ(5-13%)で肺機能の悪化と関連している
・長期間酸素療法は軽症から中等症のCOPD患者の平均肺動脈圧を減少させたという報告があるが、肺高血圧に対する治療は確立されていない
・イギリスで後方視で調査。肺疾患は、肺機能やCTから、肺気腫、間質性肺疾患(ILD)、CPFE、COPDに分類。
・PH患者は専門家から最低3ヵ月の治療を受ける。肺疾患合併患者は、気管支拡張薬の吸入、長期間酸素療法などを実施。
・IPAH群のPHの治療薬:カルシウム拮抗薬7%、PDE5阻害薬33%、ERA19%
・6MWDは334m vs 202mでIPAH群の方がベースラインでは長く歩けていた
患者の振り分け |
a)NT-proBNPとb)6MWDの変化量 |
・NT-proBNPとは…
心筋バイオマーカーの一つ。心不全の指標として用いられる血液生化学データ。心不全では早期から高値を示し、NYHAと高い相関を示す。400pg/ml以上で心不全を疑う。
引用:http://www.labo.city.hiroshima.med.or.jp/wp-content/uploads/2014/01/center201407-04.pdf
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薬剤だけの治療で純粋な特発性肺高血圧症の運動能力は改善していた。肺疾患が合併すると、改善しにくくなるという結果。そこで、運動を加えると、より効果的にならないだろうか?