2017/05/16

特発性間質性肺炎(IPF)の重症度分類(GAP index)

Idiopathic Pulmonary Fibrosis
Gender-Age-Physiology Index Stage for Predicting Future Lung Function Decline

CHEST 2016; 149(2):491-498

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4944785/

<背景>
特発性肺線維症(IPF)は多様な経過を進行する肺疾患である。The Gender-Age-Physiology (GAP) Indexとステージ分類システムは臨床データを使用してステージごとの死亡リスクを示す。臨床的なステージが将来の肺機能の低下予測するかは、知られていない。
GAP indexのステージが将来の肺機能の低下を予測するかと、ステージに分類されたのちの肺機能の変化が死亡を予測するかを評価した。

<方法>
IPF患者657人が対象。後方視的に収集。ベースラインのGAPステージを算出。
多変数COXハザードモデルで、GAPステージに分類した後の6ヵ月間で、10%以上肺機能が低下した場合の死亡を予測するかどうかを評価した。

<結果>
2年以上の経過で、GAP stageは、年間の肺機能の変化と関連していなかった。ステージ分類後、FVCもしくはDLCOが10%減少すると、死亡もしくは移植を独立して予測した。GApstage2で、肺機能が減少した患者は、GAP stage3の患者と同じような生存状況であった。1年間の生存率は、59.3% vs 56.9%。

<結論>
ベースラインのGAP stageは、死亡もしくは肺移植のを予測した。しかし、将来の肺機能の減少は予測できなかった。GAP stageに分類後、6か月で10%以上減少していることは、死亡もしくは肺移植を独立して予測していた。

・GAP indexとは:性別、年齢、生理学的検査(FVC、DLCO)で構成される変数。1,2,3年後の死亡率を予測する。stage 1-3に分類され、GAP stage3が最も悪い。

・GAP stage別の生存率
Stage3になると、2年後には半数以上が死亡している。
・FVCの変化率と生存率
ステージごとに綺麗に分かれるわけではなかった。
減少度合いは個人差ありという感じ?

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COPDのように重症度分類は無いのかと思い見つけた文献。DLCOが測定できる施設なら使えるが。。。

2017/05/13

3週間の入院呼吸リハの効果。

 Effect of a Three-Week Inpatient Rehabilitation Program on 544 Consecutive Patients with Very Severe COPD: A Retrospective Analysis

Respiration 2015;90:287–292

http://www.karger.com/Article/FullText/436979

<背景>
呼吸リハは、COPD患者の運動耐容能、症状、QOLを改善させる。しかし、最重症の患者のデータは不十分である。

<方法>
自宅での他職種による呼吸リハを実施。後方視的に、544人の最重症COPD患者(FEV1.0 0.97Lで自宅内でリハを実施した(23.44日)。
アウトカムは、6MWT、健康関連QOL(CAT)、mMRC、肺機能。

<結果>
6MWT、CAT、mMRC、FEV1.0は著明に改善。ベースラインの変数とプログラム中の改善度合いは、相関していた。改善を示していたのは、べ―スラインの特性が悪かった患者であった。
長期間酸素療法を行っている患者は、行っていない患者よりもCATの改善が大きかった。

<結論>
最重症COPD患者は、呼吸リハを実施することによって、臨床的に有意な改善を示した。


・リハプログラムは3週間毎日実施。期間は延長する可能性もあったため、22日以内で実施。
・非薬物療法は患者個々の状態に合わせて実施。

・運動療法:最大運動能力の60-80%、1日1,2回行い、時間は1時間半、期間は週5日
・吸気筋トレーニング:高強度、1回7分×2、週7日
・教育セッション:呼吸理学療法、呼吸困難のマネジメント(週5日)、気管ドレナージの方法(1日30分、週7日)、禁煙、酸素療法もしくはNPPVについて心理サポート、栄養カウンセリング

・評価項目:肺機能、6MWT、Borg scale、CAT、mMRC.

・対象の平均年齢57歳。BMI24.%FEV1.0 34%、6MWT 321m

・リハ後、6MWDは平均42.8m向上。CATは3.64点改善。



・ベースラインとリハ後のパラメーターを比較。それぞれp<0.001と有意に相関。と記されているが、相関係数は低いので、強い相関ではない。


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高負荷で運動できれば短期間でも効果が得られる。
しかし、ベースラインの評価結果から3週間先が予測できるかは、不明。
6MWDで400m近く歩けているとほぼ改善は難しい。(天井効果?)

2017/05/08

COPD増悪時の認知機能と身体機能の関係

Is there any association between cognitive status and functional capacity during exacerbation of chronic obstructive pulmonary disease?
Chronic Respiratory Disease 2015

http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1479972315589748?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org&rfr_dat=cr_pub%3Dpubmed&


<目的>
COPDの増悪中の認知機能のスクリーニングと、認知機能と身体機能(疾患重症度や臨床パラメーター)の関係があるかについて検討すること。

<方法>
年齢と性別がマッチした133人のCOPD増悪患者と34人のCOPD患者、34人の非COPD患者が対象。
評価項目は、MMSE、HADS、6MWD、BODE index。

<結果>
COPD増悪患者は、MMSEスコアが低かった。24点以下の患者割合は、増悪患者の24%、COPD患者の8.8%、非COPD患者の8.8%だった。
COPD増悪患者は、安定期COPD患者と非COPD患者よりも6MWDが短かった。年齢や教育レベルを補正して、COPD増悪患者の6MWDとMMSEに関連は無かった。

<結論>
認知機能障害は、COPD増悪の重要な併存症である。機能的能力も、増悪患者で低かった。しかし、増悪中の認知機能障害と身体機能に関係は無かった。


・トルコの大学での研究。
・平均年齢69歳前後
・SpO2:90-93%
。MMSEの減点項目としては、書字と図形作図の項目が有意に増悪COPD患者で限定されていた。

・MMSE24点未満と以上を比較すると、24点未満は、高齢(74.4歳 vs 67.9歳)で、教育年数が短い(4.9年 vs 8.4年)


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認知機能と身体機能は関係が無かった。患者特性でSpO2が90%台前半ってのが気になる。年齢が約70歳と日本と比べたら若いのに、MMSEで差があるのはやはり疾患の影響か?
増悪での減点項目で差があったのが、書字の項目なので単純に増悪によってかける状態じゃ無かったんじゃ?

2017/05/07

歩行時間とCOPD重症度との関係

Self-reported daily walking time in COPD:
relationship with relevant clinical and functional
characteristics

International Journal of COPD 2017:12 1173–1181

https://www.dovepress.com/self-reported-daily-walking-time-in-copd-relationship-with-relevant-cl-peer-reviewed-article-COPD

<背景>
COPD患者の身体活動量は重要で、身体不活動はアウトカムの悪化と関連している。この研究では、歩行時間(自己報告)とCOPD重症度に関係する特性との関係について検討した。

<方法>
データは、4つの臨床研究を使用し、歩行時間は患者へのインタビューで得た。身体活動時間は、30分未満は不活動と判断。歩行時間は、疾患重症度の指標と比較、検討を行った。

<結果>
5969人の患者の平均歩行時間は、66分/日で、893人(15%)の患者は不活動だった。歩行時間と、mMRC、CAT、BMI、BODEx index、Charlson indexと関係していた (P<0.001)。日中歩行時間が短いと、GOLD stageBとDに分類されていた。
不活動の患者は、mMRCもしくはCharlson index>3点、%FEV1.0<30%、少なくとも1回のCOPD関連入院、GOLD stageBかD、BODEx index>4、CAT>30

<結論>
歩行時間が短いと、COPD重症度の指標の悪化と関係していた。

・1日の身体活動時間の分類:低 30分未満、中 30-60分、高 60分以上(どのようなインタビューをしたのかは不明)

・平均年齢67.5歳、BMI 27.8、%FEV1.0 50.7%、

歩行時間。30分と60分のところが特に多い。

各指標と歩行時間
p<0.001になっている指標はほとんどばらつきもなく、同じ傾向を示している。

歩行時間別の患者割合。
色が薄い方から、活動時間低、中、高


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インタビューで活動性を評価した研究。インタビューで答えた活動時間と実際の活動時間はどのくらい差があるorないのだろうか。
この結果から、やはり重症度(自覚症状)とは関係がありそうだ。
自覚症状の強い患者にどうやって活動時間を増やせるか。リハ職の出番。

2017/05/04

急性増悪を呼吸数で予見できるか。

Home monitoring of breathing rate in people with chronic obstructive pulmonary disease: observational study of feasibility, acceptability, and change after exacerbation

International Journal of COPD 2017:12 1221–1231

https://www.dovepress.com/home-monitoring-of-breathing-rate-in-people-with-chronic-obstructive-p-peer-reviewed-article-COPD

<背景>
電話健康プログラムは、COPD患者の急性増悪の早期発見や自己管理を促進するが、想定外の結果をもたらすこともあり、パラメーター(症状、パルスオキシメトリー、スパイロメトリー)の観察は増悪の予測としては弱いためである。

<目的>
急性増悪時に呼吸数が増加することが、予測因子かもしれない。呼吸数を在宅で測定する機械が使用可能となったが、正確性や受容性、変化を発見できるかについては知られていない。

<方法>
5つの呼吸数モニターを比較。21人の安定期COPDにて妥当性を検証。最良のデバイスを2つ選出し、23人の安定期COPD患者に対して、14日間自宅で装着した。

<結果>
2つのモニターは、正確性を示し、いくつかの患者では増悪時の特別な変化を示した。急性期の状況においての有効性については限定的である。
増悪からの回復中に何人かの患者は、安静時呼吸数が減少していたが、全ての患者ではなく、日内変動も考えられた。

<結論>
安静時呼吸数は、増悪を示していた。しかし、更なる検討が必要である。


・スコットランドの健康サービス研究で実施
・中等度から最重症のCOPD患者が対象。
・患者特性
%FEV1.0は40%程度。mMRCは1-3くらい。
6MWDは400m以上歩けていて、1日の活動量は4000歩/日

・第1:研究的な環境で呼吸数を測定。
上記のADLを想定した動作を行い呼吸数を測定
・第2相:自宅での呼吸数を測定し、正確性を評価
・第3相:増悪からの回復中の呼吸数の変化を評価。
増悪からの回復過程での呼吸数。
Aは呼吸数が減少したパターン。
Bは変わらなかったパターン。

・増悪前後での呼吸数の変化を比較
左は増悪しても呼吸数はあまり変化ない。
右は増悪してから呼吸数が増えた。