2017/04/09

COPD急性増悪時にPEP療法を行うことは有効か?


The effect of positive expiratory pressure (PEP) therapy on symptoms, quality of life and incidence of re-exacerbation in patients with acute exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease: a multicentre, randomised controlled trial
 
Thorax 2014;69:137–143
 
 
<背景>
呼気陽圧(PEP)はCOPDの急性増悪(AE)中の喀痰クリアランスを高めるために用いられるテクニックである。急性増悪中のPEPの影響について、臨床的に重要なアウトカム明らかになっていない。この研究では増悪中のCOPD患者におけるPEP療法の効果として症状QOL将来の増悪について検討した。
 
<方法>
90の患者(58人男性%FEV1.0 40.8%)COPD急性増悪で、喀痰除去が必要な患者を無作為に通常ケア(運動療法含む)とPEP療法に分けた
息切れ、咳、喀痰スケール(BCSS)SGRQBODE indexを退院時8週間後6か月後に評価した。解析は、直線ミックスモデルで解析増悪と入院は日誌を使用して記録
 
<結果>
BCSS、SGRQ、は、グループ間に差は無かった。呼吸困難は、最初の8週間PEP療法のグループで早期に改善していた。しかし、これらの効果は、6カ月時点では得られなかった。増悪と入院は、両グループに差がなかった
 
<結論>
AECOPDにおいて、PEP療法が短期間もしくは長期間に重要な改善が得られなかったことを示した。このような対象の管理において、ルーチンで用いるような役割果たしていなかった
 
PEP療法とは:軽い負荷に抗して呼気を行う。商品名でいえば、アカペラやEz-PAPやスレショルドなどのこと。呼気時の気道内陽圧を高める道具。排痰器具として使うことが多い。
COPD急性増悪で入院し喀痰の喀出や貯留がある患者が対象
 
・通常ケアの内容:気管支拡張剤経口ステロイド抗菌薬酸素療法NIVなどガイドラインに沿って実施理学療法士は標準的な運動と、できるだけ早期に1日30分のウォーキングや下肢筋トレの目的を開始。排痰が必要な時には、理学療法士の基で気道クリアランス法を実施。
・PEP療法の内容:マスクを使用し上肢をテーブルの上においた状態で実施10-20cmH2Oの圧をかけて810回1回換気量の呼吸を行う。このうち、少ない吸気から一気にハフィングと中程度の吸気から一気にハフィングと2回強い咳を行う。それぞれ5回繰り返して約20分間行った。
マスクが合わなければマウスピースに変更して実施。退院まで実施し、自己排痰は行わないようにした。
 
・プライマリーアウトカムはBCSSスコア高いほうが症状が強く自覚している
・平均年齢67-69歳入院中の治療内容に有意差なし
BCSSスコアも有意差なし。最初の増悪までの期間や入院までの期間も有意差なし
BCSSスコア。低いほうが症状改善している。
両グループとも同じような傾向にある。
 
・運動耐容能(6MWD)はPEPグループのほうが早期に改善していたが、6か月後には有意差なし。
6分間歩行距離。8週間後PEP療法の方が長く歩けている。
半年後には同じ程度。
 
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個人的にはPEP療法は、長期間使用するようなものではないような印象。排痰困難時に活躍するもので、息切れなどにはそれほど影響無いんじゃないかと思っている。
患者によっては、排痰困難時の助けとなるので、使用するかは状態によって判断するものであって、ルーチン的に行う治療ではないということを示していると思う。

2017/04/06

短期間で再度増悪するCOPD急性増悪患者の特性


Prediction of short term re-exacerbation in patients with acute exacerbation of chronic obstructive pulmonary disease 

International Journal of COPD 2015:10 1265–1273


<背景>
COPD急性増悪(AECOPD)にて、90以内に再増悪にて入院した患者を予測するスコアリングシステムについて検討すること

<方法>
176人のAECOPDで入院している患者が対象患者背景増悪前の状態現在の急性増悪の治療の状態退院後90日での再増悪のデータを収集

<結果>
90日以内の再増悪率は48.9%これは肺機能の低下前年の急性増悪回数現在の急性増悪の状態(胸水呼吸筋補助の使用LABAの吸入ステロイドの吸入酸素療法非侵襲的機械換気)入院日数と関係していたがBMI修正MRCCATとは関連していなかった
関連していた変数と年齢10項目を再増悪スコアリングシステムの項目として採用
再増悪指数は、再増悪を識別する良い指標であった。(C検定で0.750)

<結論>
安定期COPDの統合した包括的評価パラメーター、増悪時の状態治療は、AECOPD患者の短期間のアウトカムを強く予測していることを示した

 

・中国の上海の病院で行われた研究。急性増悪の定義は、いつもよりも呼吸器症状(咳喘鳴、息切れ、痰量増加発熱)が悪化している。
・再増悪の頻度については、退院後90日に電話で聴取再増悪の定義は、呼吸器症状の悪化が少なくとも2日間続いている救急受診をして、抗菌薬やステロイド治療を行う。軽度の呼吸器症状は再増悪には含めなかった
・単変量解析で解析した結果、算出された再増悪因子を再増悪indexとした。
 
再増悪index (re-Exacerbation index)の点数
17点満点。点数が高いほど増悪リスクが高い。
ICS、LABAの吸入は1点減点になる。
 
・平均年齢71歳、再増悪グループは酸素療法使用が93%いる。平均在院日数は10日。
・再増悪indexは、90日以内の再入院と強く相関していた。915の患者のうち77%が再入院していた。6点未満は26%
90日内の再増悪と再増悪スコア
 
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高齢であり、重症度が高く、酸素療法が必要で、入院期間が長いなどが、再増悪のリスクが高くなっていた。
吸入薬の項目は減点の項目なので、正しく服用することで予防できる増悪もあるのかも。
同じアジア圏で、高齢の患者を対象にしているので、現在の日本の状況にも応用できるかもしれない。

2017/04/04

COPD急性増悪後に再度増悪するリスク因子は?

Early and Long-term Outcomes of Older Adults after Acute Care Encounters for Chronic Obstructive Pulmonary Disease Exacerbation

Ann Am Thorac Soc.2015 Dec;12(12):1805-12.

http://www.atsjournals.org/doi/10.1513/AnnalsATS.201504-250OC
<背景>
高齢患者は、COPD急性増悪ので入院したの死亡リスクや再入院のリスクが高い死亡リスクと救急受診の繰り返すリスクに関して急性増悪の高齢COPD患者においてはあまり知られていない。

<目的>
COPD急性増悪で入院や救急受診をした後の、死亡と繰り返す救急受診の割合を短期間と長期間で調査する。

<方法>
65歳以上でCOPD急性増悪での受診歴がある患者を対象に後方視的に調査。アウトカムは、全死亡原因全原因とCOPDによる救急受診の繰り返しを30日後1年後3年後に調査

<結果>
COPD急性増悪による、救急受診をした患者は、30日以内の死亡率は4.6%1年以内は24.4%3年以内は48.2%であった再度入院を繰り返したり救急受診したりするリスクは30日以内に4人に1人の割合で次の3年で10人中9人まで上昇。いくつかの併存症の状態とその他患者の要素(心不全、栄養失調、メディケアとメディケイドの二重適格者酸素療法をしている)は、救急受診を繰り返すリスクの増加と独立した関係があった

<結論>
繰り返す入院と救急受診と死亡は急性増悪治療をしている高齢の患者に共通して見られていた。この結果から、心不全や栄養失調などの併存症の管理の重要性を示唆しており、酸素療法をしている患者、メディケアとメディケイドの二重適格者である患者は、これらのアウトカムの修正が助けになるかもしれない。


・アメリカの医療情報サービスのデータを解析。
・平均年齢77歳酸素療法使用者が37.3%呼吸器以外の併存症としては、心不全が最も多く(44.4%)次いで糖尿病(35.3%)候咽頭反射障害(26.2%)と続く
・退院後に最初に救急受診する理由は、各年齢ともCOPD関連の受診が多い(20%前後)
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一回増悪することがその後の再増悪の危険因子だったり、前年の増悪回数がGOLDの重症度グレードに含まれていたりと、、増悪の頻度をいかに抑えることができるかが管理目標として重要。
この論文を解釈するには、アメリカの医療制度を理解しないと難しそうだ。
アメリカ人でも1カ月以内の再増悪って多いんだなという感想。

2017/04/03

COPD患者がフレイルか否かの予測因子としての身体活動性


Physical Activity as a Predictor of Absence of Frailty in Subjects With Stable COPD and COPD Exacerbation

Respir Care 2016;61(2):212–219.

http://rc.rcjournal.com/content/61/2/212.short


<背景>
フレイルは、高齢患者のケアにおいてカギとなる問題である。COPD患者は57.8%がフレイルのような状態である。フレイルは身体活動性のレベルの低さと関係している
 目的は、増悪期COPD患者と安定期COPD患者において、フレイルかどうかについて、身体活動レベルのカットオフ値を異なるドメイン(家事レジャー時間スポーツ)にて算出し、予測の強度を分析すること


<方法>
参加者に社会背景と臨床的側面についてインタビュー。総身体活動性とそのドメインは、the modified Baecke questionnaireにて評価し、フレイルはFriedの修正バージョンにて評価した。

212の患者(安定期104人増悪期108人)健常者100人を対象

<結果>
フレイルの罹患率は、健常者に比べてCOPDで高かった身体活動レベルのフレイルとされるカットオフ値増悪期COPDで3.54(感度0.95特異度0.807)、安定期COPDで3.88(感度0.95特異度0.815)健常者で3.50(感度0.95特異度0.947)

<結論>
身体活動レベルは、安定期と増悪期のCOPD患者におけるフレイルの有無を予測できる

・フレイルの基準:Friedの修正された定義とは、5つの基準(握力低下、意図せぬ体重減少疲労度、椅子からの起立が制限低い身体活動レベル)のうち3つ以上を満たしているとフレイルと診断される
・身体活動レベルの評価the modified Baecke questionnaire:家事スポーツレジャータイムの3つからなる質問票0-47.56点で点数づける
9点未満:不活動9-16点:中等度不活動17点以上:活動的
・平均年齢71歳認知機能障害(MMSEで評価)の診断が増悪期COPDで91.3%、安定期COPDで64.3%存在する。健常者は16.1%
・フレイルの罹患の予測因子としての身体活動レベルについてのROC曲線:身体活動レベルは、予測因子となり得る
COPD患者の58%がフレイルのような状態にあったフレイルの最も強い予測因子は息切れの自覚症状であると言われているらしい
フレイルと身体活動性は身近な関係にあり、身体活動レベルがCOPD患者のフレイルの有無を予測するものかもしれない

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身体虚弱であるフレイルと活動性が関係するのは、納得いく内容。
MMSEで認知機能障害の基準がほとんどを占める対象に、質問で身体活動レベルを評価したということ?信頼できるのか?
高齢患者のフレイルの状態って、何をどのくらいすれば改善するのだろうか?

2017/04/02

IPFの身体活動性


Physical activity in patients with idiopathic pulmonary fibrosis
 
 
Respirology (2015) 20, 640–646
 
背景
身体活動性は、COPDにおいて重要なパラメーターであるが、間質性肺疾患において詳細は研究されていない。
目的は、間質性肺線維症(IPF)患者の身体活動性を評価すること。
 
方法
身体活動性は、31の安定期IPF患者に加速度計を1カ月装着してもらい評価
身体活動性の内容は、歩数、歩行距離、活動強度レベル1-6(MM)の時間身体活動によるエネルギー消費(PAEE)エネルギー消費量
臨床的なパラメーターとして、mMRCKL-6肺機能6MWT高解像度CT(HRCT)
これらのパラメーターと身体活動性を比較。
 
結果
24日間の身体活動のデータを収集。
MMが1未満だったのは1日で10時間以上で、MMが1以上だったのは1日1時間
mMRCKL-66MWDハニカム範囲と網状影は、身体活動性のいくつかの側面と関係していた
特に、KL-6の低い値は、高い身体活動性(歩数や歩行距離MM1から4の生活時間PAEE)と相関していた
 
結論
mMRC6MWDHRCTにおける線維化の範囲KL-6のは身体活動性と強く関連していた
 
・自治医大でIPFと診断された31人の患者が対象
・身体活動性の測定はライフコーダーを使用。活動レベル(the magnitude of movement :MM)はレベル1から9で表現され、2分毎の活動強度を反映している。METsと近い活動表現である。
MM1はゆっくりの歩行(1.3METs相当)MM9は早く走る(9.1METsに相当)
・活動性の測定は、1カ月間。冬や夏、雨の日や雪の日のデータは除外。110時間以上装着した日のみを解析し、1日ごとに解析した
・平均年齢68.3歳BMI24.2mMRC0-2KL-6 922%FVC 88.7%6MWT 436m
・解析日数は24.5日1日の平均歩数 6520歩1日の歩行距離 4488m
 
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IPFの日本人の活動性についての報告。この活動量が多いのか、少ないのか・・・
IPFじゃなくても、これだけの活動性があるって多い方じゃないか?