2016/06/12

COPDと間質性肺炎に対するネーザルハイフローの効果

 Effects of Nasal High Flow on Ventilation in Volunteers, COPD and Idiopathic Pulmonary Fibrosis Patients

Respiration 2013;85:319–325

 

背景

空気のハイフローは大きなネーザルカニューラにより供給され、慢性呼吸器不全患者の症状を改善させると言われている。小児科の患者において、ネーザルハイフロー(nHF)換気は、フェイスマスクの非侵襲的換気と比べて同等の効果が得られている。

目的

呼吸のパラメーターが変化するかを検討すること。

方法

呼吸サイクル中と平均圧の圧の幅をIPFとCOPDで測定した。一回換気量と分時換気量を得るためにポリソムノグラフィを使用した採血は8時間のnHFの前後で血ガス分析を行った

結果

nHFは持続呼吸と比較すると健常者とCOPDIPFにおいて圧の上昇する幅と平均大きかった。COPDにおいて、nHFは一回換気量を増大させたが、IPFでは、一回換気量は増えなかった興味深いことに健常者で一回換気量は減少していた呼吸数と分時換気量はすべてのグループで減少していたPaCO2はIPFとCOPD患者で減少していた

考察

nHFは閉塞性と拘束性の呼吸器疾患患者の呼吸パラメーターに著しく効果があった。圧の上昇幅と平均と呼吸数の減少は、吸気努力によってもたらされるがnHFは換気努力の増加を助け呼吸仕事量の減少をもたらすかもしれない。上気道死腔のCO2のウォッシュアウト効果に対してnHFは有益となるかもしれない



2016/06/08

GOLDのグレード評価は妥当か?

Comparisons of health status scores with MRC grades in COPD:implications for the GOLD2011 classification
ERJ2013;42:647-654
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23258783

ABSTRACT
2011年のGOLDにおいて、COPD患者の症状と将来の増悪リスクを評価するものとして、2つの評価のカットオフ(CAT>10点、mMRC≧2点)を用いての評価を推奨した。これらの2つのカットオフが同等であるかについて、CATとmMRC、SGRQ、Short-form Health Survey(SF-12)、Functional Assessment of Chronic Illness Therapy (FACIT) Fatigue scoreとの関係を後方的に検討した。
1817人のCOPDのデータがあり、mMRCと全ての健康状態スコアは強い関係が示された。mMRC grade1は、健康状態の低下と強く関係しており(SGRQ39.4±15.5、CAT15.7±7.0)、grade0では、わずかながらスコアの改善がみられた(SGRQ28.5±15.1、CAT11.7±6.8)。grade2以上に分類された57%の患者は症状スコアが低かった(groups AandC)。mMRCのカットオフ(>1)を使用すると、CATのようにGOLDの分類と似た結果であった。
mMRCは健康状態のスコアとの明確な関係を示した。mMRCが悪いと健康状態の悪化と関係していた。カットオフであるmMRC>1、CAT≧10は症状の低い患者と決定づける同等の値である。GOLDの枠組みは再考が必要かもしれない。

 


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リハには直接関係は無いかもしれないけど、増悪のリスクや治療の変更の参考になるかもしれない分類。CATとmMRCがこの点数でいいのかという論文。



肺癌開胸術後の在宅リハ(運動療法)の効果

Home-based exercise: promising rehabilitation for symptom relief, improved functional status and quality of life for post-surgical lung cancer patients.
J Thorac Dis. 2014 Jun;6(6):632-40
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24976984

背景
開胸術後の非小細胞肺癌患者(NSCLC)の症状の重症度による癌性疲労感(CRF)は、機能状態やQOL低下の発生頻度や他の症状の重症度を高めるかも知れない。このパイロット研究の目的は、術後NSCLC患者が退院した後の在宅でのリハビリテーション介入が、CRFや機能の状態、他の症状やQOLへの影響を調べること。

方法
7人の術後患者がthe Brief Fatigue Inventory (BFI)の測定、CRFの重症度、the M.D. Anderson Symptom Inventory、術前後の症状の重症度を6週間介入したうちの各週末に評価された。加えて、医学的アウトカム(QOL)はSF-36を使用。術前後と3週間後、6週間目に行った。

結果
参加者の平均年齢は65歳。平均6つの合併症あり。退院後4日以内に介入を開始した。参加者のCRF重症度スコアは軽度減少した。介入後の機能的状態とQOLは術前のレベル近くまで改善した。

考察
NSCLC術後の運動介入はCRFの改善、他の症状の重症度、機能的状態、QOLの予備的な改善を示した。今後、RCTでの検討が求められる。



COPD患者の認知機能に対する効果:有酸素運動+筋トレ vs 有酸素運動のみ

effects of combined training vs aerobic training on cognitive functions in COPD: a randomized controlled trial
International Journal of COPD 2016:11 711–718
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27110107

目的
本研究の目的は、高強度有酸素運動(AT)と高強度有酸素運動に抵抗運動を合わせた運動(CT)がCOPD患者の認知機能へ影響するかを調べることである。
方法
28人の男性COPD患者(平均68.35歳)が対象となり、ATとCTの2つに無作為化された。両グループは4週間身体のコンディショニングを行い、週に5回トレーニングを行った。CTグループは30分のセッションを2回行った(1回の有酸素運動と1回の筋力運動)。ATグループは、30分のトレッドミルでの有酸素運動を2回行った。身体機能と認知機能のテストは、トレーニング前後で行った。
結果
運動は認知機能(長期記憶、言語の流暢さ、注意能力、失行、推理力)が改善した。さらに、CTグループではATグループよりも長期記憶、失行、推理力が著しく改善していた。
考察
CTは、認知機能低下と併存疾患の予防戦略になりえるかもしれない。

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運動負荷を漸増的にしており、最大が90%HRmaxなので、対象が若くないと難しいかもしれない。運動の認知機能に対する効果はまだ一定したコンセンサスはなさそうだが、した方がいい事は多い。



身体活動量の臨床的有効最少改善値(MID)

            The Minimal Important Difference in Physical Activity in Patients with COPD
PLoS One. 2016 Apr 28;11(4)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27124297

背景
身体活動(PA)の変化は、最小重要変化量(MID)の枠組みが無いため、判断するのが難しい。COPD患者におけるPAのMIDを決定することと、最初のCOPD関連入院までの時間を評価することで、このMIDの臨床的妥当性を検討した。

方法
PAは、74人の患者でを対象にリハ前後の3か月に1週間測定した。加えて、級内相関係数を30人の患者で測定し、2週間連続してPAを測定した。1日の歩数をアウトカムとして採用した。ディストリビューション法とアンカー法でMIDを計算し採択した。増悪による最初の入院までの時間はMIDを超えた患者と越えなかった患者で比較した。

結果
MIDは、599歩(標準誤差)、1029歩(経験則の効果量)、1072歩(コーエンの効果量)、1131歩(標準偏差0.5倍)。アンカー法では、十分な数が集まらなかったため、MIDを推定出来なかった。最初の入院までの時間は、標準誤差のカットオフ値を使用すると、MIDを超えた患者と越えなかった患者で著しく異なっていた。

考察
呼吸リハ後のMIDは1日600から1100歩の間であった。この変化の臨床的な重要性は、600歩以上の改善があった患者で、入院のリスクが減少することである。

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対象の肺機能が記載されていないので、どの程度の重症度か分からないが、6MWDで400m以上歩けているので結構動ける患者が対象と思われる。
リハ後3か月でベースラインより600歩以上増えていたら、リハビリの効果があった(MID)と言えるという話。