2024/07/29

集中治療後症候群(PICS)の多面的リハビリテーションのガイドライン(crit care,2023)

Guideline on multimodal rehabilitation for patients with post-intensive care syndrome

Crit Care (IF: 9.1; Q1). 2023 Jul 31;27(1):301.


【背景】
集中治療(ICU)生存者は、身体的、認知的、心理的健康状態などの様々な機能障害を経験し、これらは、集中治療後症候群(PICS)と表現される。
目的は、PICSのリハビリに対する学際的なガイドラインを発展させることである。

【方法】
15名の専門家による、10の科学的疑問のエビデンスに基づいた解決方法に対する体系的かつ学際的/専門的タスクフォース。
それぞれのPICOのために、最善のエビデンスを示した。
推奨度は、評価、発展の原則に基づき、"強く推奨"、"推奨"、"治療オプション"とした。

【結果】
12の推奨、4つの治療オプションが示され、PICS予防の一つのステートメントが示された。

【推奨】
早期離床、自発トレーニング、栄養/嚥下障害の管理を行うべき。
せん妄の予防では、行動介入に焦点を当てている。
ICU日記は不安とPTSDのような心理的健康における予防/治療となる。
早期リハビリテーションと同様に長期的なリハビリ専門病院への紹介が推奨される。
治療オプションには、身体的リハビリ介入の追加が含まれる。
ステートメント:PICS治療の前提条件は、身体的、認知的、心理的健康について、日常的かつ繰り返し評価し、PICSのリスク患者を発見する事。

【考察】
PICSは、多彩で複合的な症候群であり、個別的に学際的かつ専門的なアプローチが必要である。
PICSのリハビリテーションは、運動、認知、心理的健康障害の評価を含むべきである。

PICSの影響

PICSに対するリハビリのステートメント
<行うべき>
・患者の回復力と全身状態に応じて、ICU入室から数日以内の早期離床を開始すべき
・せん妄予防のために、多面的な感覚、認知的、感情的な刺激(離床、目的のある刺激、家族との面会)を行うべき
・ICU退院後の不安、抑うつ、PTSDのリスクを減少させるためにICU日記を行うべき
・ICU退室後、ICU日記は、医療者とともに行われるべき
<推奨すべき>
・標準的理学療法の補助として、吸気筋トレを行う
・気切では、嚥下障害を生じやすいため、経口摂取開始前に嚥下状態を評価する
・注意機能、認知機能改善のために、今後はコンピューターを用いた学習が行われる
・ストレス(疼痛、不安、睡眠、騒音)軽減のための介入、コミュニケーションと家族の介入

2024/07/23

中等症、重症COPD患者における運動強度による効果の違い

Benefits of different intensities of pulmonary rehabilitation for patients with moderate-to-severe COPD according to the GOLD stage: a prospective, multicenter, single-blinded, randomized, controlled trial

Int J Chron Obstruct Pulmon Dis (IF: 2.77; Q1). 2019 Oct 8:14:2291-2304.


【目的】
呼吸リハビリテーションはCOPD患者管理の要素である。
目的は、中等症から重症のCOPD患者に対する運動療法の最適な強度について調査すること。

【方法】
2014年から2018年に行った前向き多施設研究
対象者はランダムに、運動負荷試験の結果によって決められた最大酸素摂取量の割合によって、異なる運動強度での呼吸リハを行う3グル―プに分けた。
運動療法の20週間後、低、中、高強度の運動介入による効果を比較し、最も最適な運動処方を決定した。

【結果】
中等症COPD患者において、中、高強度のグループで測定したすべてのパラメーターの著明な改善を認めた。
低強度グループと比べて、急性増悪の頻度や20週間後のmMRCスコアに有差はなかった。
重症COPD患者において、高強度グループにてすべての変数に著明な改善を認めた。
中等症COPDよりも、リハ前後の変化は小さかった。
さらに、the Hamilton Anxiety Scale(不安スコア)とBMIは、低強度グループと比べ有意差を認めなかった。

【考察】
高強度運動療法は、中等症から重症のCOPD患者において、有効であった。
中等症COPD患者は、より強度のあるリハが必要である。呼吸リハ介入による改善度合いは、重症COPDよりも高かった。
重症COPD患者において、高強度の運動は、患者の忍容性があればより有効かもしれない。

〇運動強度のグループ分け
・運動負荷試験の結果で強度を決定
・高強度→VO2max>70%
・中強度→VO2max>50-70%
・低強度→VO2max<50%


〇リハ内容
・20週間の入院による監視下の介入(10回の他職種による教育介入も含む)
・運動の頻度:週5日
・時間:40分(ウォームアップ10分、クールダウン10分含む)
・運動種類:個別に処方されたインターバル持久力トレーニング。歩行や筋力トレーニングなど
・20分の上下肢のサイクリング運動を負荷試験の50%強度から開始
・負荷は、10Wずつ漸増し、心拍数やSpO2が安定したら耐えられた運動と判断
・中止基準:SpO2<85%、血圧>200/100mmHg、心拍数>最大運動負荷時の85%

〇6MWTの結果(m、リハ前→リハ後)
中等症COPD
 低強度 292→303
 中強度 277→303
 高強度 271→326
重症COPD
 低強度 260→275
 中強度 260→283
 高強度 265→297

2024/07/19

胸郭モビライゼーションの肺機能への影響

Effect of chest wall mobilization on respiratory muscle function in patients with severe chronic obstructive pulmonary disease (COPD): A randomized controlled trial

Respir Med (IF: 3.42; Q2). 2023 Dec:220:107436.


【背景】
離床試験において、COPDの肺機能と胸郭拡張には正の相関があることが報告されている。COPD患者の胸郭拡張が低下すると、肋骨の可動性と呼吸筋の機能的長さが損なわれ、最終的には、呼吸器系の有効性と機能を危険にさらす。

【方法】
30人の成人男性(平均年齢74.97歳)で重症COPDと診断されているものをランダムに胸郭モビライゼーションを行うグループとコントロールグループに分けた。
両グループとも標準的な教育と歩行を週2回、6週間実施。
介入グループはストレッチや関節モビライゼーションを含む胸郭モビライゼーションを追加して実施。
肺機能、呼吸筋力、胸郭可動域、頚部と胸部の可動範囲をベースライン、プログラム後、3か月後に評価した。

【結果】
呼吸筋力、胸郭拡張域、胸郭屈曲以外の胸郭可動域が著明に改善。
下部胸郭可動域は、最大吸気圧と最大呼気圧の増加と強く関連していた。
多変量回帰分析において、胸郭可動域、特に伸展と両側回旋は、下部胸郭可動域と強く関連していた。

【考察】
COPD患者のリハビリテーションにおいて、胸郭モビライゼーションを追加することは、胸郭伸展と回旋を改善させ、下部胸郭可動域を改善させた。
胸郭拡張能の著明な改善と最適な筋の機能的な長さを保つことは、呼吸筋活動を許容し、結果として、重症COPD患者の呼吸筋力を改善させた。

2024/07/14

ICUからの回復 ~PICSの管理~

From the Intensive Care Unit to Recovery: Managing Post-intensive Care Syndrome in Critically Ill Patients

Cureus . 2024 May 31;16(5):e61443.


PICSはICU退院後の患者の身体的、認知的、精神的な状態の悪化と定義される。
この合併症はQOL低下、虚弱状態の遷延、抑うつ、不安、PTSDを経験した患者において生じている。
集中治療の進歩はICU生存率を向上させたが、PICSの割合も上昇し、これらの疾患の管理や予防に関する研究がより必要である。
そこで本研究の目的は、身体的なPICSの予防に関する研究のレビューと、PICSの根底にある生理学的過程とその発症に寄与する要素、病態の評価と診断の方法、現在の治療の選択肢と新たなアプローチの可能性、PICSを管理する上での制約とさらなる調査の必要性などである。

Google Scholar, PubMed, and Cochrane Library.を使用して文献を検索。

・主な考察
PICS管理は多面的な管理が必要である。
薬物治療は、鎮痛の使用
非薬物療法は早期離床と運動療法の管理
多角的なアプローチが有効。
患者のフォローアップとその重要性については、適切なフォローアップを強化し、良好な転帰を増加させるための戦略や方針も含めて触れられた。
最後に、家族の関与の重要性と、このテーマに関する研究の必要性が強調された。


2024/07/01

サルコペニア併存のがん患者における運動介入の効果 -network meta analysis-

Network meta-analysis of the intervention effects of different exercise measures on Sarcopenia in cancer patients

BMC Public Health (2024) 24:1281


【目的】
がん患者の身体パフォーマンスにおいて、4つの運動モデル(有酸素運動、レジスタンストレーニング、有酸素併用レジスタンストレーニング、ストレッチ)の効果について検討する事。

【方法】
がん患者の身体パフォーマンスへの運動介入の効果について検討したRCTを対象。

【結果】
対象となったRCTのサンプルサイズは503例。
ネットワークメタアナリシスにて、有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせた運動が脂肪量を減少させることが明らかになった。(SUCRA: 92.3%).
レジスタンス運動は、除脂肪量を改善させた。 (SUCRA: 95.7%).
さらに、レジスタンス運動はサルコペニア併存のがん患者の下肢機能を向上させた。(SUCRA: 83.0%).

【考察】
レジスタンス運動は、サルコペニア併存のがん患者にとってより有益かもしれない。
この臨床研究にて、運動介入は、患者個別に処方されるべきである。