2022/06/27

CPFE(気腫合併肺線維症)の息切れのメカニズム

Uncovering the mechanisms of exertional dyspnoea in combined pulmonary fibrosis and emphysema

Eur Respir J (IF: 16.67; Q1). 2020 Jan 30;55(1):1901319.


【背景】
IPFと気腫化が合併した患者の動作時息切れは重度の低酸素血症によるものであるとの見方が優勢である。しかし、この予測を支持するエビデンスは少ない。

【方法】
低酸素血症の重症度をマッチさせた42人のCPFEと16人のIPF患者を対象に、運動による感覚・身体的な反応について前向きに調査。
気腫と肺線維症はCTで層別化。
吸気制限は持続負荷テストで評価:血ガスを採取。

【結果】
CPFE患者では、IPFと比べて線維化は少ないが運動耐容能は低かった(p=0.004 and 0.02)。
動作時息切れは24人のCPFE患者で重要な制限している症状であり、息切れの少ない患者と比べて、
低拡散能?(low transfer factor)
動脈血CO2分圧が低い
呼吸努力が高い(分時換気量(VE)/CO2排出量(VCO2)が高い)
特徴があった。
心エコーによる肺動脈圧には違いはなかった(p=.44)。

より息切れの強いグループにおいて、VE/VCO2が高いことによって、
1回換気量に占める死腔量(死腔/1回換気量)が大きい
重度の気腫化
牽引性気管支拡張症
がみられた。

VE/VCO2>50(OR 9.43, 95% CI 5.28-13.6; p=0.0001))、総気腫化面積>15% (2.25, 1.28-3.54; p=0.01) が、息切れが強いことを予測し、現在の理解に反して、CPFE患者で重度の運動耐容能低下と関連していた。
動作時低酸素血症は、CPFEの動作時息切れの主な原因ではなかった。

【考察】
気腫化面積により"無駄な"換気が増加することによる有効な換気が乏しいことと、肺過膨張が重要なメカニズムの役割をしており、治療上の注意に値する。

・CPFEの基準:肺容量の5%以上に気腫化があること。IPFグループは気腫化は無いか、あっても3%以下。
・運動耐容能は運動負荷試験で評価。
・ランプ負荷で最大負荷を算出し、最大負荷の75%の定常負荷で何分続けられるか。
・その時のSpO2の変化をdesaturationとして記録
・peakVO2が予測値の50%未満を重度の運動耐容能低下と定義

・動的肺容量はICで測定、息切れは修正ボルグで評価
・吸気終末用量=(TLC-IC)+VT/TCLが0.9以上を吸気制限が強いと定義

結果より
・どちらのグループも70%程度がUIPパターン、20%未満に心エコーでの肺高血圧の疑いがあった
・CPFEはスパイロメトリーでの肺機能は良好で安静時肺容量も良好であった。
・CPFEグループでは最大運動耐容能が低く、呼吸予備量が低く、VE/VCO2が高かった
・急なVE/VCO2スロープは動作時動作時息切れと関連

・安静時息切れとの関連
CPFEの方が息切れの自覚が強い
肺動脈圧を含めた心エコーの変数は関連なし。動的・静的肺容量、SpO2は有意差なし。
拡散能低下(A-aDO2)、PaCO2がより低い、安静時VD/VT(死腔換気率)が高い

・動作時息切れ
CPFEは息切れの自覚が強く、最大運動耐容能が低い。無酸素性代謝閾値(ATポイント)が低い、酸素パルス(心拍ごとの酸素摂取量)が低い、VE/VCO2が高い、呼気終末CO2分圧(PETCO2)が低い
定常負荷でのSpO2低下は同程度。運動持続時間はIPFに比べ短い

・動作時息切れと肺の構造との関連
・息切れが強いCPFEは、気腫化スコアが高い、気管支拡張像が多かった。気腫化が強いと息切れが強い傾向。ハニカム構造との関連は得られなかった。
・中等度から重度の気管支拡張像、気腫化範囲が15%以上は動作時息切れが強いグループに多かった。
・気腫化範囲15%以上とVE/VCO">50%は動作時息切れが強い傾向があり、CPFE群の重度運動耐容能低下と混在していた。

考察
・CPFEは息切れが強く、運動耐容能が低く、吸気制限が強く効果的な換気ができていない
・死腔換気率が高いがCO2は低い。動作時低酸素と吸気制限が非効率的な換気となっている要因。
・気腫化と気管支拡張像がVD/VTが高い構造的な要因。



2022/06/24

CPFEの肺機能の特徴(pure IPFとの比較)

Combined pulmonary fibrosis and emphysema: How does cohabitation affect respiratory functions?

Adv Med Sci (IF: 3.29; Q3). 2019 Sep;64(2):285-291.


【目的】
気腫合併肺線維症(CPFE)は線維化と気腫化を特徴とした新たに出現した症候群である。
気腫化の重症度が肺機能、運動耐容能、死亡率に及ぼす影響について検討した。

【方法】
IPF患者(n=110)を対象。
視覚的デジタル気腫化スコア、肺機能、肺動脈圧、6MWT、複合的生理学指数(composite physiologic index:CPI)、生存状況を記録。
気腫化のある患者とIPFのみの患者で比較。

【結果】
CPFEグループは、男性が多く、BMI、低PaO2、肺動脈圧高値、動作時低酸素が著明。
CPFEグループは、FVCが高く、1秒率、DLCO、DLCO/VAが低かった。
CPFEグループの肺容量はVC、FRC(機能的残気量)、RV(残気量)、RV/TLC、TLCが有意に高かった。
気腫化スコアと相関が得られた:FVC、FEV1/FVC、DLCO、RV/TLC、FRC、RV、TLC、RV/TLC。
死亡率はどちらのグループも同等。
CPFE患者の死亡の独立した予測因子は、CPI(p=.02)と肺動脈圧(p=.01)。

【考察】
気腫化の存在と重症度は、IPFの肺機能に影響する。
CPFEのある患者は、DLCOが低下しており、エアートラッピング(空気のとらえこみ現象)がより重度、筋力低下があり、動作時低酸素が著明、肺高血圧がみられた。
CPIと肺高血圧は、CPFE患者の独立した2つの死亡を予測する因子であった。

※CPI=91.0-(0.65×%DlCO)-(0.53×FVC%predicted)+(0.34×FEV1%predicted)
線維化の範囲を反映する指数(Am J Respir Crit Care Med . 2003 )


2022/06/12

ICU-AWに対して神経筋電気刺激は有効かもしれない

Effect of neuromuscular stimulation and individualized rehabilitation on muscle strength in Intensive Care Unit survivors: A randomized trial

J Crit Care (IF: 3.42; Q2). 2017 Aug;40:76-82.


【目的】
ICU生存後に筋力低下を経験した患者は、機能的な活動に制限を生じてる。
神経筋電気刺激(NMES)は重症患者の運動に置き換えられる。
目的は、ICU生存者の筋力に対する個別リハビリの効果を検討すること。

【方法】
ICU退院後フォローした128人(平均53歳)をNMESセッション+個別リハグループ、コントロールグループにランダムに分けた。
筋力は、MRCスケールと握力を退院時に評価。
セカンダリーアウトカムは、機能的活動と入院日数

【結果】
MRC、握力、機能的状態、入院日数は両グループで有意差なし(p>.05)
ΔMRC%はNMESグループでICU退室後1-2週はより高い傾向
2週間時点で、ICU-AW患者においては、NMESグループの方がより筋力は高かった(p=.05)

【考察】
ICU退室後のNMESと個別理学療法は、退院時の機能的状態や筋力を大きく改善させなかった。
しかし、ICU-AW患者において、NMESは有効かもしれない。
今後患者数を増やしてリハビリ戦略の効果の可能性について検証が必要。

2022/06/10

重症患者へのNMES 筋肉量減少は予防。筋力低下予防効果は?

Early neuromuscular electrical stimulation reduces the loss of muscle mass in critically ill patients - A within subject randomized controlled trial

J Crit Care (IF: 3.42; Q2). 2021 Apr;62:65-71. 


【目的】
神経筋電気刺激(NMES)が大腿四頭筋の筋厚、筋力、形態学的、分子マーカーへの効果をけんとうすること

【方法】
長期滞在が予測される成人重症患者に、片側大腿四頭筋へ連続7日間のNMESセッションを実施。
介入前後で大腿四頭筋の厚みを超音波で評価。
介入後、筋力は協力が得られた患者で評価し、筋生検を実施。
多変量回帰分析で筋厚の減少に影響した因子を同定。

【結果】
筋厚は刺激した下肢で低下が少なかった(-6%vs-12% p=.014,n=47))
筋力は同程度。
筋厚をより維持できていることに独立して関連していた因子は、オピオイド投与、最小筋収縮、刺激していない下肢でより筋厚が減少していることであった。
刺激された筋では、筋線維が大きく変化しており、MyHC-I遺伝子がより多かった。
NMESはその他の筋線維タンパク、MuRF-1、atrogin-1に影響していなかった。
筋線維の壊死と炎症の兆候は、どちらの筋でも同等であった。

【考察】
NMESは筋肉量の減少を軽減させた。しかし、筋力への影響は見られなかった。
筋肉量を維持は、オピオイド使用、NMES中に最小筋収縮がある、より筋肉量が減少している患者において、観察される可能性がある。

2022/06/09

ICUで早期リハに加えて、ベッド上エルゴと筋電気刺激を追加した効果

Effect of In-Bed Leg Cycling and Electrical Stimulation of the Quadriceps on Global Muscle Strength in Critically Ill Adults: A Randomized Clinical Trial

JAMA (IF: 56.27; Q1). 2018 Jul 24;320(4):368-378.


【背景】
ベッド上エルゴや筋電気刺激は、ICUの患者のリハビリにおいて効果的かもしれない。

【目的】
早期ベッド上エルゴ+大腿四頭筋への電気刺激を標準的な早期リハに追加して行うことで、ICU退室時の筋力が増強するかを検討すること。

【方法】
単施設、ランダム化比較試験。
フランスの1100床の病院にうち1つのICUに入室した重症患者が対象。
2014年から2016年までに参加し、6か月フォローアップした。

【介入方法】
標準的早期リハ+ベッド上エルゴ+筋電気刺激(n=159)と標準的早期リハのみの通常ケア(n=155)にランダムに分けた。

【アウトカム】
プライマリーアウトカム:ICU退室時の筋力(MRC SUMスケール,0-60点、MCID4点)
セカンダリーアウトカム:ICUでの呼吸器離脱日数、ICU mobility scale(0-10点、高いほど歩行能力がより良い)
6ヶ月後に機能的自立性(functional autonomy)と健康関連QOLを評価。

【結果】
314人がランダム化され、312人(平均年齢66歳、女性36%、78%は研究開始時に人工呼吸管理していた)が研究を完遂し、解析対象となった。
ICU退室時のMRCスケールは介入群の中央値48点、通常ケア群の中央値51点(p=.28)。
ICU mobility scale スコアは、どちらの群も6点。
28日時点での人工呼吸離脱日数は、介入群22日、通常ケア群21日(p=.24)
離床セッション中の重篤なイベントは介入群で7人(4.4%)、通常ケア群で9人(5.8%)で発生。
6か月後評価のアウトカムで、両群に有意差は無かった。

【考察】
ICU入室患者に対して、通常の早期リハプログラムに加えて、ベッド上エルゴと筋電気刺激を行うことは、ICU退室時の筋力を改善させなかった。



2022/06/04

神経筋電気刺激(NMES)とVO2 4-5Hzが有酸素運動に理想的?

Whole body oxygen uptake and evoked knee torque in response to low frequency electrical stimulation of the quadriceps muscles: V•O2 frequency response to NMES

J Neuroeng Rehabil (IF: 3.52; Q1). 2013 Jun 28;10(1):63.


【背景】
等尺性神経筋電気刺激(NMES)は、自発的に運動が行えない患者に有酸素運動を行えるようになり、全身の酸素摂取量が向上する結果、心肺の健康を得られるというエビデンスが示されている。
有効かつ持続的に酸素摂取量を誘発する最適な刺激強度については明らかになっていない。
目的は、大腿四頭筋への低頻度刺激範囲のNMESによる最大酸素摂取量の反応頻度や筋トルクの誘発について検討すること。

【方法】
10人の健常男性
大腿四頭筋へのNMESを実施
1‐12Hzの範囲での4分間の刺激を8回実施。途中の安静期間は4分確保
呼気ガスと膝伸展トルクは同時にモニター
重回帰分析を用いて、得られたモデルをエネルギーモデルに適合。
エネルギーモデルは、周波数、トルク時間積分、単位時間あたりの積算値で表すエネルギーモデルを作成し、データを適合させた。

【結果】
最大酸素摂取量は、12Hzで最大564ml/minの上昇が得られた
呼吸交換比(respiratory exchange ratio;酸素摂取量に対する二酸化炭素の排泄量の比率。CO2排泄量/酸素摂取量。呼吸商の間接的な指標)は、4-12Hzでほぼ1であった。
最大トルクが得られたのは12Hz、最大筋発揮のピークは6Hz
回帰モデルにて、観測されたエネルギー応答の変動の88%を占めた。

【考察】
長期間の筋収縮を回避するための要件を考慮し誘発トルクを最小限に抑えるためには、持続可能な有酸素運動の理想的な周波数は4-5Hzであることを示唆した。
この研究では、それを超えると有意な単収縮が発生する頻度が増えた。


6Hz以上で酸素摂取量の上昇は緩やか