2022/05/21

COPD増悪中のハイフローネーザルカニューラと呼吸リハ 6MWDとQOL改善

Effect of high-flow nasal therapy during early pulmonary rehabilitation in patients with severe AECOPD: a randomized controlled study

Respir Res (IF: 3.92; Q1). 2020 Apr 15;21(1):84.


【背景】
COPDは気道感染と低身体活動が特徴である。呼吸リハ(PR)プログラムは、安定期の患者によく行われるが、急性増悪(AE)で入院した患者に特異的なトレーニングプログラムは少ない。
AECOPD患者は、トレーニング中に呼吸困難感の増強と全身炎症の上昇を感じる。ハイフローネーザルカニューラ(HFNC)は分時換気量、呼吸数、呼吸仕事量を減少させる。
しかし、運動中のHFNCが有効化は明らかでない。
この研究では、重症AECOPDで入院した患者の早期PRプログラムにおいて、運動中のHFNCの効果を調べた。

【方法】
急性増悪で入院したCOPD患者を対象。ランダムにHFNC中のPRとHFNC無しのPRに分けた。
評価項目は、肺機能、6MWT、血液の感染マーカー、動脈血ガス。
ベースラインと4週後、12週後に評価。
データ解析はSPSSを使用。

【結果】
12週のPRを完了した44人のAECOPD患者をリクルート。
HFNCとPRを行った患者は、運動耐容能(6MWD)が向上し、息切れ(mMRC)が減少、炎症レベル(CRP)が減少。
1年間追跡し、PRを行ったどちらのグループでも、入院日数の短縮が得られた。
HFNCを行ったグループでは、HFNCをしなかった方と比べて、最大吸気量(IC)の変化で示されるair trappingが減少し、健康関連QOL(CAT)の改善が得られた。

【考察】
早期PR中のHFNCは、重症AECOPD患者の運動耐容能を改善させ、全身炎症を減少させる。

2022/05/19

ハイフローネーザルカニューラ(HFNC)治療の成功予測因子(SpO2/FiO2 ratio=170.9)

Pulse oximetric saturation to fraction of inspired oxygen (SpO 2/FIO 2) ratio 24 hours after high-flow nasal cannula (HFNC) initiation is a good predictor of HFNC therapy in patients with acute exacerbation of interstitial lung disease

Ther Adv Respir Dis (IF: 4.03; Q2). Jan-Dec 2020;14:1753466620906327.


【背景】
ハイフローネーザルカニューラ(HFNC)による酸素療法は、呼吸不全患者の呼吸管理に有効である。しかし、間質性肺疾患の急性増悪(AE-ILD)患者においてHFNCが有効で忍容性があるかは明らかになっていない。
目的は、AE-ILD患者におけるHFNCの有効性と忍容性の評価をすることと、HFNCのアウトカムの早期予測因子を同定する事。

【方法】
HFNCを行ったAE-ILD患者を後方視的に収集。
全体の生存率、HFNCの成功率、有害事象、治療の一時中断、患者の希望による治療の中止、HFNCのアウトカムの予測因子を評価。

【結果】
66人の患者を評価。26人の患者(39.4%)が酸素化改善を示し、HFNCから離脱できた。
30日間後の生存率は48.5%。
患者希望による中断は無く、重度の有害事象も生じなかった。
HFNCを開始して、24時間後のSpO2と吸入酸素濃度の比(SpO2/FIO2 ratio) は、HFNCの成功を正確に予測する因子であった(AUC 0.802)
多変量ロジスティック回帰分析にて、HFNC開始24時間後のSpO2/FIO2 ratioが170.9が治療成功と関連していた(OR51.3、95%CI:6.13-430、p<.001)

【考察】
HFNCはAE-ILD患者に忍容性があり、呼吸管理に有効な手段であることを示唆した。
HFNC開始24時間後のSpO2/FiO2 ratioがHFNC治療成功を予測する良い予測因子であった。

2022/05/10

入院した高齢者の身体活動を妨げる要因-環境因子が大きい-

Barriers and enablers to physical activity behaviour in older adults during hospital stay: a qualitative study guided by the theoretical domains framework

BMC Geriatr (IF: 3.08; Q1). 2022 Apr 10;22(1):314.


【背景】
急性期病院に入院した高齢者は入院中に活動する時間が少なく、これは健康アウトカムにネガティブに関連している。
入院した高齢者に対して、これらの障壁と身体活動の向上することについて理解することは、身体活動を高めることを目的とした介入を評価および実施することが、変更可能な要因の可能性を調べる第一歩である。
非論理的なアプローチを使うよりも、理論的な枠組みを見つけることが行動変容を成功させるために必要である。
この研究の目的は、the Theoretical Domains Framework (TDF)を使って、高齢入院患者の身体活動行動を妨げるものと促進するものを調べること。

【方法】
オランダで行われた質的研究。
70歳以上の急性疾患にて入院した高齢者が対象。
医療者(看護師、専門医、理学療法士)がサンプリングを実施。
半構造化面接は録音、転写され、質的項目検討に直接解析された。
入院中の身体活動の障壁と促進因子はTDFのコードを用いて同定した。

【結果】
12人の患者と16人の医療者によって面接が行われた後に意思飽和度が決定された。
障壁と促進の主な項目は、それぞれのカテゴリーによってTDFの14項目中11項目に該当した
"環境とリソース"は参加者が最も多く回答した項目であり、病院環境が患者の不活動に影響していることを明らかにした。

【考察】
識別された多くの障壁を促進因子は、入院中の高齢者の身体活動に影響を与えることの複雑さを明らかにした。
入院した高齢者において身体活動の障壁と促進因子は、まず理論的に体系化された行動変化介入が入院中の身体活動を改善させるかもしれない。
これは、臨床医や研究者が将来の介入の対象となる可能性のある変更可能な要素を選択するのに役立つ。

TDFでコード化した身体活動の障壁と促進因子


TDFで環境因子に該当する項目の障壁と促進因子


2022/05/08

直腸がん周術期の術後合併症リスク-ウェアラブルデバイスで検証-

Wearable Technology in the Perioperative Period: Predicting Risk of Postoperative Complications in Patients Undergoing Elective Colorectal Surgery

Dis Colon Rectum (IF: 4.58; Q2). 2020 Apr;63(4):538-544.


【背景】
プロトコル化されたパスは、手術の結果に大きな改善をもたらした。追加の利益は、既存のリスクを変えるための集中的な努力を要する。
プレハビリテーションプログラムは、リスク減少のための道を提供する。

【目的】
ウェアラブルデバイステクノロジーを用いて、直腸がん術前の活動レベルを監視することで、術前活動が術後アウトカムに影響するかを評価すること。

【方法】
前向き非ランダム化試験。大規模大学医療センターにて実施。2018年1月から2019年2月に選択的直腸がん手術を行った患者。
患者は、ウェアラブルデバイスの使用法について説明され、術前30日間装着。
患者を術前歩数で、5000歩/日以上の活動グループと5000歩/日未満の比活動グループに分けた。
単変量解析で術後合併症の発生を比較。
多変量回帰モデルで術前活動が術後合併症に与える影響についてベースラインのリスクを調整して解析。

【結果】
99人が参加。40人(40.4%)が活動グループに分類。
活動グループの患者は、全体の合併症(11/40 (27.5%) vs 33/59 (55.9%); p = 0.005)、重度の合併症(2/40 (5%) vs 12/59 (20.3%); p = 0.032)が少なかった。
多変量解析にて、術前活動が多いことは、術後合併症が少ないことと関連していた(OR = 0.386; p = 0.0440) 。
合併症、重度の合併症のモデルの予測能力は、身体活動を追加することで向上した。

【考察】
直腸がんの手術を行う患者の術前身体活動レベルは向上させる余地がかなりある。そして、活動が少ないことは、術後合併症と関連していた。
これらのデータは、ウェアラブルデバイスを用いて術前運動プログラムを監視することで手術成績に影響するかどうかの介入研究が必要であることを示した。




2022/05/03

ILDのフレイル罹患率:死亡リスク上昇と関連(OR4.14)

Prevalence and prognostic impact of physical frailty in interstitial lung disease: A prospective cohort study

Respirology (IF: 6.42; Q1). 2021 Jul;26(7):683-689. 


【背景】
身体的フレイルは高齢者の死亡率と入院率の上昇と関連している。
線維性間質性肺疾患(ILD)患者において、身体的フレイルの有病率と予後への影響を検討した。

【方法】
McMaster UniversityのILDプログラムに参加しているILD患者を2015年11月から2020年3月までフォロー。
ベースラインデータのfriedらのフレイル基準(modified Fried physical frailty criteria)を使用して、患者を分類:フレイル無し(スコア=0)、プレフレイル(スコア=1-2)、フレイル(スコア3-5)

身体フレイルと死亡率の関係を、年齢、性別、肺機能、 ILD Gender-Age-Physiology (ILD-GAP) scoreで補正して、生存期間解析(Time to event models)を用いて解析。

【結果】
463人の患者が対象(55%男性、平均年齢68歳);ノンフレイル82人(18%)、プレフレイル123人(56%)、フレイル123人(26%)。
ILDのうち、最も多かったのはIPF(n=183、40%)、結合組織関連ILD(n=79、17%)。
診断からイベント発生までの期間は、平均2.7±4.6年。
フォロー期間の中央値1.71年で56人が死亡。
フレイルとプレフレイルはベースラインでノンフレイルと比べ死亡リスクが高かった。(adjusted hazard ratio [aHR] 4.14, 95% CI 1.27-13.5 for pre-frail and aHR 4.41, 95% CI 1.29-15.1 for frail).

【考察】
身体的フレイルはILD患者で罹患されており、死亡リスクの情報と独立して関連していた。
身体的フレイルの評価は、ILD-GAPスコアのようなリスクスコアとして、予後予測に新たな情報を提供し、介入の新たなターゲットとなるかもしれない。

フレイルの診断()



2022/05/01

周術期肺がん患者の身体活動 -SR-

Physical activity in surgical lung cancer patients: a systematic review

Support Care Cancer (IF: 3.6; Q3). 2022 Apr 6.


【目的】
周術期運動療法は、肺がんの手術を行った患者の健康アウトカムを改善させる。しかし、運動介入前の通常の身体活動(physical Activity:PA)行動はあまり知られていない。
このレビューの目的は、1)身体活動ガイドラインからみた患者の割合、2)PAの量、3)手術後のPAの軌跡、4)手術前や後のPAとの関連について、エビデンスを集約すること。

【方法】
2021年7月にPubMedなどのデータベースを使用してシステマティックレビューを実施。
肺がんの手術前/後のPA測定をした観察もしくは介入研究が対象。
NIH Quality Assessment Toolsと標準化された形式を使用して抽出されたデータを使用して方法の質を評価。

【結果】
17件の研究が2009年から2021年の間に採択された(25文献、N=1737)。
14の研究がサンプルサイズが100以下。
13の研究が公正(fair)な質、4件の研究は良好(good)な質。
・肺がん術後(6か月から6年)のPAで、PAガイドライン(中等度から高度のPAを150分/週)を満たした患者は、23-28%のみ。
・歩数:術前の平均が3822-10603歩、術後1-3か月の歩数は、平均3934-8863歩。
・術前PAレベルと比べて、術後1日-3か月のPAは低い。
・周術期PAは運動耐容能、QOL、術後合併症の少なさと正の相関を認めた。

【考察】
PAは肺がん周術期患者では低いことが示唆され、術後3か月以内に回復しないかもしれない。
身体活動は、術後アウトカムの改善させる可能性がある。
しかし、現在のエビデンスは弱く、将来の大規模縦断研究が必要である。