2022/03/31

ILD呼吸リハと生存率 6MWD改善で生存率向上

Survival after inpatient or outpatient pulmonary rehabilitation in patients with fibrotic interstitial lung disease: a multicentre retrospective cohort study

Thorax (IF: 9.14; Q1). 2021 Aug 30;thoraxjnl-2021-217361.


【背景】
間質性肺疾患(ILD)患者の呼吸リハの生存率への影響は知られていない。
大規模RCTを実施し、6MWDの改善が良好な生存率と関連しているかを検討した。

【方法】
後方視、多国間コホート研究。
5か国、12の施設で行われた入院もしくは外来で呼吸リハを行ったILD患者が対象。
多変量モデルで、6MWDの変化とセンターおよび他の交絡因子によるクラスター化を説明する死亡もしくは肺移植までの時間との関連を推定した。

【結果】
701人の患者(男性445人、女性256人)が対象
入院196人、外来505人
平均年齢:入院70±11歳、外来69±12歳
6MWDのベースライン/変化量:入院262m/55m、外来358m/34m
呼吸リハ中の6MWDの改善は、入院、外来とも死亡や肺移植の低い危険率(HR)と関連、(入院HRは10mごとに0.94、外来HR0.97)
予定された外来PRセッションの80%以上に参加した患者は、死亡リスクが33%減少していた。

【考察】
ILD患者で、呼吸リハ中の身体パフォーマンスが改善した患者は、より良い生存率を示した。
RCTにおけるこれら仮説生成所見の確認は、臨床診療を確実に変える必要があり、ILD患者の呼吸リハの利用可能性を改善するためにさらなるサポートが求められる。

2022/03/21

神経筋電気刺激で最適な刺激を加えるためのプロトコル

Development of the Protocol to Deliver Graded Stimulation Intensity on Lower Limbs Using Belt-shaped Electrode Skeletal Muscle Stimulation

Prog Rehabil Med . 2021 Jun 5;6:20210024. 


【目的】
現在ベルト型電極式骨格筋電気刺激(B-SES)を含む神経筋電気刺激(NMES)は発展しており、1回のセッションで下肢全体の筋収縮を行うことができる。
刺激の最適な量は、NMESにとって重要である。
臨床的な目的において、十分な筋収縮を得るために必要なB-SESの刺激強度を決める方法の確立を行った。

【方法】
B-SESデバイスであるAuto Tens Proを使用。
刺激は5秒の20Hzの刺激と、2秒安静。
24人の骨格筋疾患で入院している患者を2つの病院でリクルート。
患者はランダムに3種類の刺激強度(moderate,strong,very strong)に割り付けられた。
セラピストが目標の刺激レベルを行えるように、それぞれの目標強度に達するための、口頭指示プロトコルを構築した。
筋収縮の生理学的評価として、血清乳酸レベルを20分のB-SESセッションの前後に評価。

【結果】
目標の主観的筋収縮を達成するために必要な電流強度は、主観的収縮レベルに応じて徐々に増加した。
血清乳酸レベルは、moderateと比べてvery strongの方が有意に高かった。

【考察】
B-SES刺激は、骨格筋疾患患者の筋力増強に有効である可能性がある。
口頭指示のプロトコルはセラピストが患者ごとの最適な刺激強度を達成することを補助する。

・対象:60歳以上の骨格筋疾患で入院している患者。ベッド安静を強いられたことによる筋力低下のリスクがある患者。
・評価:膝伸展筋力、5回起立

・B-SESの設定
オートテンスプロの"廃用モード"を使用。20Hzを5秒+2秒安静で構成されている。
試験実施前に、患者が刺激になれるよう3回のテストセッションを設けた。

・30分ベッド安静後、20分のセッションを実施。

・プロトコル
1.患者により高い刺激を加えることで、筋力向上が得られる可能性があることを説明。
2.刺激開始後、患者が耐えられる限界であるかを患者に尋ねながら刺激を加える。
3.患者が刺激に20分耐えられないと申し出た強度をvery strongと定義。刺激は徐々に減らしていく。
4.strongグループに割り付けられた患者は、さらに刺激を弱める。刺激が強いが、20分は耐えられる強度を"strong"と定義
5.moderateグループは、さらに刺激を弱め、20分耐えるのが簡単と感じるレベルまで刺激を弱める。

・対象疾患:TKA、脊椎減圧、下肢骨折、脊椎骨折
入院もしくは手術から電気刺激開始までの日数:42.8日

刺激強度


NMES前後での乳酸の変化


2022/03/19

Predicting long-term mortality with two different criteria of exercise-induced desaturation in COPD

Respir Med (IF: 3.42; Q2). 2021 Jun;182:106393. 


【背景】
COPDの死亡率予測として、運動誘発性低酸素(EID)に関する報告は少ない。
しかし、EIDの定義は、報告によって異なっている。
主な目的は、2つのEIDの基準によって、EIDと長期予後についての関係を検討する事。

【方法】
507人の韓国人COPD患者。
EIDは6MWTで評価。
EID基準A:6MWT後のSpO2<88%
EID基準B:6MWT後のSpO2 <90% or ベースラインから4%以上の低下

【結果】
EIDの有病率:基準Aを満たしたのは5.1%、基準Bは13.0%
161か月(13年!?)のフォロー後、用いた基準に関わらず、EIDがあるグループの方が、EID無しよりも死亡率が高かった。(A: 50 vs. 11.4%, B: 33.3 vs. 10.4%) 
EIDが無いCOPD患者の方が、EID有よりも、生存率が高かった(A: 143.5 vs. 92.9, B: 144.8 vs. 115.2 months)。
多変量cox回帰解析において、基準AのEIDによって、死亡リスクは2.4倍(HR2.375、95%CI 1.217-4.637)
基準BのEIDのCOPD患者において、死亡リスクは高まるが、統計的な有意差はなかった。

【考察】
EIDのあるCOPDにおいて、EIDの無い患者よりも死亡率が高かった。
EID基準Aの方が、COPD死亡率をより予測した。

2022/03/13

異なるILD病型の呼吸リハの効果

Pulmonary rehabilitation in patients with interstitial lung diseases: Correlates of success

Respir Med (IF: 3.42; Q2). Aug-Sep 2021;185:106473.


【背景】
ILD(間質性肺疾患)の呼吸リハの効果は報告されている。
大規模多施設研究において、呼吸リハの成功を予測する予測因子を同定すること

【方法】
過去10年間に呼吸リハを行った240人の患者(うちIPF110人、106人IPF以外、24人未確定ILD)が対象
6MWT、体重-歩行距離テスト(body weight–walking distance product tests)、息切れ、動脈血ガスを入院時と退院時に評価
ベースラインと比較した退院時の評価を比較

【結果】
リハ後、診断や重症度に関わらず、すべての評価で改善を認めた(p<.05)
ベースライン6MWDは、退院時の変化と逆相関していた(ベースラインの歩行距離が短いほど改善が大きい)
抗凝固療法を行っているIPF患者においては、リハ後の大きな効果がみられなかった
50人の患者を平均10.3か月退院後フォローしたところ、6MWDの改善効果は維持されていなかった(入院時312m、退院時369m、フォロー後310m、p<.0001)

【考察】
呼吸リハは、ILDの病型や重症度に関わらず、息切れ、運動耐容能、疲労感を改善させる
長期効果の検討が必要である




2022/03/04

消化器がん術前安静時間 術後合併症を予測(cut off 6h/h)

Preoperative Sedentary Time Predicts Postoperative Complications in Gastrointestinal Cancer

Asian Pac J Cancer Prev (IF: 1.58; Q2). 2020 Nov 1;21(11):3405-3411.


【背景】
消化器がんは一般的に罹患率が高い。術後合併症は、入院日数や長期アウトカムに影響する。
しかし、術前の安静時間が、身体活動とは無関係に、合併症に影響するかは明らかになっていない。
目的は、消火器がんの手術を行った患者において、身体活動とは無関係に術前安静時間と合併症の関係について検討する事。

【方法】
前向き研究。112人の直腸もしくは胃がんの手術を行った患者が対象。
患者特性、手術関連の変数を収集。
日本語版IPAQ(通常の7日間、short Ver.)で術前身体活動と安静時間を評価。
術後合併症((Clavien-Dindo(CD) grade2以上か1以下)によって2グループに分けた。
多変量解析にてCD2以上の合併症のリスク因子を同定。
ROC極性にてCD2以上の合併症を予測するカットオフポイントを算出。

【結果】
術後合併症は、38人の患者(33.9%)で発生。
安静時間(OR 1.29、95%CI:1.09-1.53)、BMI(OR 1.17、95%CI:1.01-1.36)が総身体活動と独立して、術後合併症と関連していた。
術後合併症を予測する安静時間のカットオフポイントは6時間/日(感度0.662、特異度0.658)

【考察】
術前の安静時間は、消化器がん手術を行った患者の術後合併症を予測する。