2022/02/24

足関節骨折後の監視下リハビリvsアドバイスのみ

Rehabilitation After Immobilization for Ankle Fracture: The EXACT Randomized Clinical Trial

JAMA (IF: 56.27; Q1). 2015 Oct 6;314(13):1376-85.


【背景】
足関節骨折による固定後のリハビリの効果については明らかになっていない。
目的は、監視下の運動プログラム+(リハビリの)アドバイスとアドバイスのみを比較して、骨折重症度、年齢、性別によって効果が変わるかの影響を検討すること。

【方法】
2010年から2014年に行われたランダム化比較試験のEXACT試験。
対象者:7つのオーストラリアの病院にて、固定解除された日にランダム化を行った。
571人の患者が適格基準を満たし、357人は不参加を希望、214人をランダムにリハビリ(106人)とアドバイスのみ(108人)に振り分け。
194人(91%)が1カ月フォロー、173人(81%)が3カ月、170人(79%)が6カ月フォローを完了。
副作用による離脱はなかった。

【介入】
監視下運動+アドバイスは、自己管理について、個別指導、処方、モニタリング、漸増(progressed)した。
どちらの介入も理学療法士が実施。

【アウトカム】
プライマリーアウトカム:活動制限;the Lower Extremity Functional Scale(80点満点、高いほど活動的)、QOL:Assessment of Quality of Life(0-1、1に近いほどQOL良好)
評価は、ベースライン、1か月後、3ヶ月後、6ヶ月後に実施。

【結果】
・ベースライン
活動制限:リハビリ群30.2、アドバイス群30.1
QOL:リハビリ群0.54、アドバイス群0.51
・1か月後
活動制限:リハビリ群54.4、アドバイス群54.8
QOL:リハビリ群0.75、アドバイス群0.78
・3ヶ月後
活動制限:リハビリ群64.3、アドバイス群64.3
QOL:リハビリ群0.85、アドバイス群0.85
・6ヶ月後
活動制限:リハビリ群69.9、アドバイス群69.9
QOL:リハビリ群0.89、アドバイス群0.89

治療効果は、骨折の重症度や年齢、性別による影響はなかった。

【考察】
孤発性の足関節骨折患者において、監視下運動プログラム+アドバイスは、アドバイスのみと比べて活動制限とQOLに追加効果を認めなかった。
今回の結果は、足関節骨折患者で固定解除後にルーチンで運動プログラムを行うことを支持しない。

-介入内容-
・アドバイス群
運動、活動再開についてのアドバイスを1回実施。テキストやイラストで説明。
運動は、非荷重での足関節運動
・リハビリ群
上記と同じアドバイスを実施。
運動は、個別に処方。外来リハで実施。自宅でも運動を継続するよう推奨。
運動内容:1)足関節の可動性と筋力ex、2)ステップ練習、3)荷重、バランス練習
歩行練習と通常の仕事やレジャーを再開するためのアドバイスを実施
介入回数は、1週目は2セッション、2-4週目は1セッション/週


2022/02/21

肺切除術後 2週間の呼吸筋トレにて酸素化改善効果。

Postoperative inspiratory muscle training in addition to breathing exercises and early mobilization improves oxygenation in high-risk patients after lung cancer surgery: a randomized controlled trial

Eur J Cardiothorac Surg (IF: 4.19; Q2). 2016 May;49(5):1483-91.


【目的】
2週間の吸気筋トレ(IMT)が肺切除術後ハイリスク患者において呼吸筋力を向上させるか。
2つ目に、術後肺合併症の発生に対しての影響について検討すること。

【方法】
単施設、平行グループ、検査者ブラインドの無作為化試験、Intention-to-treat解析。
介入群(IG,n=34):術後2週間のIMT、1日2回、2×30呼吸、最大吸気圧の30%強度。加えて標準的な理学療法。
コントロール群(CG,n=34):標準的な理学療法(呼吸練習、運動、咳嗽、早期離床)
評価:呼吸筋力(最大吸気/呼気圧、MIP/MEP)、身体機能(6MWT)、肺機能、SPO2
評価のタイミング:手術前日、術後3-5日後、2週後
術後肺合併症:術後2週間で評価

【結果】
平均年齢70±8歳、57.5%男性
開胸が48.5%(n=33)
どの評価タイミングでも、MIP、MEP、肺活量、運動機能に効果なし。
全体で肺炎が13%(n=9)に発生。グループ間に発生率の有意差なし。
術後3日目と4日目にIGにおいて、SpO2 の値が有意に向上。
術後2週後の両グループの比較において、術式(開胸vs胸腔鏡)と呼吸筋力に関連は見られなかった。

【考察】
術後2週間IMTを付加すると。標準的な理学療法のみと比べて、呼吸筋力の増強は認めなかったが、肺がん術後のハイリスク患者の酸素化を改善した。
呼吸筋力は、術後2週間で両グループとも回復した。

2022/02/17

ピークフローによる呼吸筋サルコペニアの定義

Definition of Respiratory Sarcopenia With Peak Expiratory Flow Rate

J Am Med Dir Assoc (IF: 4.67; Q2). 2019 Aug;20(8):1021-1025.


【目的】
呼吸筋力は加齢とともに減少し、呼吸筋機能異常は呼吸筋サルコペニアを呈しているかもしれない。
しかし、呼吸筋サルコペニアの定義に関するコンセンサスは得られていない。
目的は、ピークフロー(peak expiratory flow rate :PEFR)を基に呼吸筋サルコペニアの定義を構築すること。

【方法】
横断研究。681人の地域在住の高齢者が対象。
評価項目:体組成、スパイロメトリー、握力、歩行速度。並存症、介護保険認定(long-term insurance certification.)を聞き取りで収集。
サルコペニアの基準:骨格筋量、握力、歩行速度を日本人の基準で判定。
ROC曲線でサルコペニアと介護保険によってピークフローのカットオフを算出。気道閉塞は関係なしに性別ごとに算出。
ROC曲線によって、4分位の最低値、5分位の最低値、標準偏差でカットオフ値を算出
多変量解析にて、それぞれのカットオフ値とその他の変数から独立して呼吸筋サルコペニアに影響するものを算出。

【結果】
ROC解析でサルコペニアと介護保険の会計は、男女とも有意差があった。
多変量ロジスティック回帰モデルにて、PEFRが1SD低い値が最も制度が高かった。
呼吸筋サルコペニアのPEFRカットオフ:男性4.40L/min、女性3.21L/min

【考察】
PEFRを基にした呼吸筋サルコペニアの基準は従来のサルコペニアと介護保険と相関しており、有用である。
今回の研究では、呼吸筋サルコペニアはPEFRのみで定義された。
その他の指標も考慮すべる必要があるかもしれない。

2022/02/11

呼吸筋サルコペニア-概念、診断、治療-

Respiratory Sarcopenia and Sarcopenic Respiratory Disability: Concepts, Diagnosis, and Treatment

J Nutr Health Aging. 2021; 25(4): 507–515.


筋線維の萎縮と弱化は加齢による全身の骨格筋の低下と並行して呼吸筋にも生じ、呼吸筋サルコペニアとして知られている。
日本リハ栄養学会の呼吸筋サルコペニアグループはこの領域のナラティブレビューにて、概念と診断基準を作成した。

我々は、呼吸筋サルコペニアを"全身のサルコペニアと低呼吸筋力もしくは低肺機能によって示される呼吸筋量の低下"と定義した。

呼吸サルコペニアは加齢、活動低下、低栄養、疾患、カヘキシア、医原性などの様々な要因がある。

また、診断アルゴリズムを作成した。
"Presbypnea"=加齢による呼吸機能低下。加齢による呼吸の活動制限がわずか(mMRC1レベル)

また、呼吸筋の活動制限の定義を"呼吸サルコペニアの結果として生じる呼吸機能の低下"とした。

サルコペニア様の呼吸機能障害の診断は、呼吸筋サルコペニアが機能障害として生じている場合とした。

機能障害が無く、呼吸筋サルコペニアが生じている場合は、"at risk"と定義。
機能障害の程度は、mMRC≧2

リハ栄養(運動と栄養)は、呼吸筋サルコペニアやサルコペニア様呼吸機能障害の治療と予防に十分かもしれない。

2022/02/02

肺がん術前身体活動:術後合併症、活動強度と関連

Preoperative Physical Inactivity Affects the Postoperative Course of Surgical Patients with Lung Cancer

Phys Ther Res . 2021 Oct 13;24(3):256-263.


【目的】
術前パフォーマンスステータス(PS)は胸部外科において重要な要因であるが、術前身体活動(PA)が術後経過に影響するかについては明らかになっていない。
本研究では、肺がん周術期の術前PAと術後合併症や臨床アウトカムとの関連について検討した。

【方法】
前向き観察研究
単施設における肺がん手術を行った患者が対象
身体活動測定:術前5日間と術後退院まで計測
歩数と中等度身体活動(3METs以上)時間を加速度計にて計測
検定は、
PAと術前肺機能、術前身体機能の相関
術後合併症とPAの関係
多変量解析を、術前PAを従属変数として実施

【結果】
42人の患者が対象
単変量解析では、術前PAと術前肺機能に関連はなかった。
術前PAと中等度強度の活動時間、入院中のPA、術前6MWDに正の相関を認めた(r > 0.5, p < 0.01).
術後合併症を認めた9人の患者は、術前PAが有意に低く、合併症の無い患者と比べて歩数が少なかった(p=.04)。
多変量回帰分析にて、術前PAは、中等度強度の活動時間、最大歩行速度、術後合併症と著明に関連していた。

【考察】
術前PAの測定は、肺がん術後患者の経過を予測するのに有用である。

・方法
2016年-2017年に日本の単施設(公立昭和病院)にて実施
適格基準:肺がん(非小細胞肺がん)の診断、18歳以上、予定肺切除
除外基準:運動に影響する併存症(神経疾患、循環器疾患等)、参加拒否
術後合併症:人工呼吸48時間以上、無気肺、細菌性肺炎、不整脈、せん妄、5日以上胸腔ドレーン挿入が必要なエアリーク。(Clavien-Dindo grade ≤ IVa)

・身体機能評価
大腿四頭筋力(等尺性筋力)、握力、6MWT、(10m)最大歩行速度、最大吸気圧(MIP)/最大呼気圧(MEP)、肺機能

・身体活動量評価
加速度計(スズケン、ライフコーダー)を使用。平均歩数、3METs以上の活動強度を測定。
入院前の平日5日間装着。入院中は入院最後の5-7日間装着。

・理学療法
術前1-2日に病院にて理学療法を実施。
術後は、早期離床を推奨し、深呼吸や咳嗽練習を実施。
ATS/ERSのガイドラインに基づいて、理学療法士は術翌日から離床開始。
術後1日目:可能であれば、1日30分の座位、30-50m歩行した
術後2日目以降:リハビリ以外でも可能な限りベッドから離れることを推奨した
監視下での理学療法:疼痛やバイタルをモニターしながら、20-40分/日、レジスタンストレーニングやエルゴを退院まで実施
加速度計に基づいた介入は行われなかった

・結果
平均年齢68.9±10.1歳、BMI22.7、術前歩数5093.5歩、入院中歩数2410.5歩、術前活動時間(>3METs)57.1分、PS0or1が90%、在院日数9.5日
術後合併症:高齢患者に多い。術後合併症があったグループは、術前6MWDが短く、入院中の歩数が少ない、術前歩数が少ない
術前PAに関連する要因:多変量回帰分析にて、術前歩数と術前活動レベルに正の相関、術前歩数と術前最大歩行速度に正の相関。

・考察
 肺がん術後患者の術後PAが低いと合併症が多かった→しかし、すべての患者が有害事象無く自宅退院した。周術期理学療法の効果ではないか。
 Marikeらは、入院中の身体活動量が退院時の身体機能に影響すると報告→今回の結果から、入院中だけでなく入院前でもPAを増加させることは、身体機能の改善と不活動に関連する術後合併症(無気肺やせん妄)の予防に寄与する可能性があることを示唆している。
 全患者が良好な肺機能であったため、術後合併症にはその他の要因が影響している可能性。
 呼吸筋力は合併症に関連していなかったが、術前PAとは中等度の相関あり→呼吸筋トレーニングが活動レベルを向上させるかは検討が必要
 身体活動向上のため、遠隔リハやスマートフォンを使用した介入が行われているが、低活動患者のフォローには困難と報告されている。日本では、入院中だけでなく、地域でも活動レベルを向上させるよう法カウ的な理学療法の提供が必要。

研究限界
単施設での研究であり、数が少ない
良好な肺機能患者のみ対象
術前活動は、すべての季節をカバーしていない