2020/12/27

重症COPDの低強度高頻度レジスタンストレーニングの効果

 Effects of low-load/high-repetition resistance training on exercise capacity, health status and limb muscle adaptation in patients with severe COPD: a randomized controlled trial

Chest (IF: 8.308; Q1). 2020 Dec 11;S0012-3692(20)35357-5. 


<背景>
運動量は、レジスタンストレーニングにおいて生理学的適応の程度に最も重要である。
しかしながら、重症COPD患者において、慣習的な2肢低強度/高頻度レジスタンストレーニングでは、息切れによって制限され、結果として、最適でない運動量となっている。
1回の運動セッションにおいて、単肢の低強度高頻度レジスタンストレーニングは、2肢のトレーニングと比べ、換気負荷が少なく、ローカライズされた運動量の増加が得られる。

<リサーチクエスチョン>
重症COPD患者において、単肢の低強度高頻度レジスタンストレーニングが、2肢の運動と比べ、運動耐容能(6MWD)、健康状態、筋機能、四肢筋肉内反応により効果的であるか。

<方法>
33人の患者(66±7 years; FEV1 39±10% pred)が対象。
無作為に8週間の単肢or2肢のトレーニングを実施。
6MWD、健康状態、筋機能は、両グループで比較。
大腿四頭筋の生検で生理学的な反応を調べた。

<結果>
単肢運動は、2肢と比べ、6MWDの大きな改善は得られなかった(Δ14 [-12 to 39m].)
しかし、単肢グループの73%は、MCIDである30mを超えて改善していた。2肢グループでMCIDを超えていたのは25%であった(p=0.02)。
健康状態と筋機能は、両グループとも同じように改善。
トレーニング中、単肢グループは2肢グループと比べて、運動中の息切れが有意に軽減していた(-1.75, p=0.01)。
しかし、運動量の著明な増加は得られなかった(+23%, p=0.179)
大腿四頭筋のクエン酸合成酵素活性(+19%, p=0.03)、 ヒドロキシアシルコエンザイムAデヒドロゲナーゼ蛋白質レベル (+32%, p<0.01)、毛細血管繊維率 (+41%, p<0.01)が、全患者においてベースラインと比べて増加していた。

<考察>
単肢運動は、2肢運動と比べ、平均6MWDを著明に増加させなかった。
しかし、動作時息切れの減少と、臨床的に優位な6MWDの改善を多くの患者で得られた。
運動様式に関わらず、低強度高頻度レジスタンストレーニングは、運動耐容能、健康状態、筋持久力、いくつかの筋内生理学的適応の改善が得られ、COPDの四肢筋機能異常の負の関連を減少させた。

2020/12/25

在宅COPD患者へ作業療法単独介入の効果

 Effectiveness of Home-Based Occupational Therapy on COPM Performance and Satisfaction Scores in Patients with COPD

Can J Occup Ther (IF: 0.966; Q2). 2020 Dec 23;8417420971124. 


<背景>
作業療法(OT)は、COPD患者で重要な介入かもしれないが、研究では、矛盾した結果である。
目的は、COPD患者へ、在宅における作業療法単独での効果を検証すること。

<方法>
観察臨床研究。
主なアウトカムは、the Canadian Occupational Performance Measure (カナダ作業遂行モデル:COPM) パフォーマンスと満足度スコアを介入前後で比較。

<結果>
41人の患者が対象。COPMパフォーマンス(5.0 ± 1.1 versus 6.9 ± 0.9; P<0.001) と満足度(4.6 ± 1.3 versus 6.9 ± 1.0; P<0.001)は、介入前後で著明に改善
最も報告された作業パフォーマンスの問題が、生産性(47%)、活動(40%)、セルフケア(10%)、レジャー(3%)の項目で見られた。

<結論>
自宅での作業療法単独介入は、COPD患者の日常機能の改善に寄与していた。
OTは、これらの患者の管理の一部としてよりいっそう、考慮されるべきである。

COPM:
カナダ作業遂行測定。生活機能または生活スキルのうち、本人もしくは家族が、重要と位置付ける作業課題を選択し、その課題に対する遂行度と満足度を評価する尺度。
【出典:Minds ガイドラインhttps://minds.jcqhc.or.jp/n/cq/D0000804



2020/12/16

高齢入院患者の入院中の筋力、身体機能の変化

Changes in muscle strength and physical function in older patients during and after hospitalisation: a prospective repeated-measures cohort study

Age Ageing (IF: 4.902; Q1). 2020 Sep 9;afaa103. 


<目的>
急性期病院に入院中の高齢者において、膝伸展筋力と身体機能が変化するかを検証した。
また、膝伸展筋力の変化が、疾患重症度、フレイル、安静時間に影響するかを検証した。

<方法>
急性期病院に入院後24時間以内の75歳以上の高齢者を対象。
膝伸展筋力、握力、身体機能(de Morton Mobility Index, DEMMI)を入院時、7日目(もしくは退院時)、退院後4-6週後に測定。
最初の7日間、身体活動量と筋力を毎日続けて測定。
入院2週間前の身体機能(Barthel Index)を聞き取りした。

<結果>
70人中65人が少なくとも1回筋力評価を病院にて行った。
膝伸展筋力は、入院中に11%減少(p<0.001)していたが、入院後の変化はなかった(p=0.458)。
握力は、入院中に変化なく(P = 0.665)、退院後のフォローでも変化なかった (P = 0.508)。
Barthel Indexは、入院2週間前とフォロー後で悪化していた(P < 0.001)。
DEMMIは入院中に改善(P < 0.001)したが、入院後は変化なかった(P = 0.508)。
入院中に膝伸展筋力が大きく低下することは、安静時間、フレイルの増加、ベースラインの筋力、より低い炎症レベルと関連していた。

<考察>
今回の結果は、入院関連デコンディショニングのリスク因子の可能性に関するエビデンスを強化するものである。

・ケンブリッジ大学病院での単施設研究
・除外:がんの終末期医療を行っている、筋力検査を行えない、ICU入院、入院2週間前からベッドから椅子へ移乗していない。
・評価方法
膝伸展筋力:ハンドヘルドダイナモメーターを使用。
握力:座位、肘90度屈曲、前腕中間位で5秒間握った際の最大値
入院中の活動量測定:大腿と下腿に加速度計を装着。

・入院の原因疾患は、インフルエンザ肺炎、細菌感染、腎不全、外傷、慢性下気道感染など



入院中の安静時間が長いほど、筋力低下が大きい


2020/12/10

サルコペニア診断基準 アジアワーキンググループ2019

 Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment

J Am Med Dir Assoc (IF: 4.367; Q1). 2020 Mar;21(3):300-307.e2. 


サルコペニアアジアワーキンググループ(AWGS)2014でサルコペニアとは、”加齢に関連した筋肉減少に加え、筋力低下、身体パフォーマンス低下”と定義。それぞれの得意的なカットオフを提示した。
その結果、アジアでの研究が盛んに行われ、今回の改訂に至った。

AWGS2019では、これまでのサルコペニアの定義を支持するが、診断のアルゴリズム、プロトコル、いくつかの基準を改訂した。

筋力低下の基準:男性28kg未満、女性18㎏未満
身体パフォーマンスの基準:6m歩行速度<1.0km/h or SPPB≦9点 or 5回起立≧12秒
身長で補正した筋肉量:男性dual-energy X-ray absorptiometry(DEXA)<7.0kg/m²、女性<5.4kg/m²、インピーダンス;男性<7.0kg/m²、女性<5.7kg/m²

2019では、地域と病院でのアルゴリズムを分けた

出典:日本医事新報社
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=13446



2020/12/05

進行した肺がん患者への運動介入の効果

 The Impact of a Multidimensional Exercise Intervention on Physical and Functional Capacity, Anxiety, and Depression in Patients With Advanced-Stage Lung Cancer Undergoing Chemotherapy

Integr Cancer Ther (IF: 2.379; Q1). 2015 Jul;14(4):341-9. 


<背景>
進行した肺がん患者は、悲観的な様相をしており、慢性的な身体的、精神的症状を呈している。
運動腫瘍学について研究をしているにも関わらず、いくつかの運動研究では、化学療法を行っている進行した肺がん患者をターゲットにしている。
この研究の目的は、運動耐容能、筋力、健康関連QOL、不安、抑うつへの影響を主にした6週間の監視下での運動の効果について検証すること。

<方法>
最大酸素摂取量(VO2 peak)を漸増運動負荷試験で評価。
筋力は、1RM
HRQOLは、Functional Assessment of Cancer Therapy-Lung (FACT-L) scale
不安、抑うつは、HADSで評価

<結果>
114人の患者が対象。43人がドロップアウト。
新たな有害事象は報告されず。
グループトレーニングでの運動アドヒアランスは68%
VO2 peak(P < .001)と6MWD(P < .001)、筋力(P < .05)は向上
不安レベルは減少 (P = .0007) 
感情機能は改善(FACT-L)したが、HRQOLは統計的な有意差はなかった。

<考察>
進行した肺がん患者(NSCLC IIIb-IV, ED-SCLC:進展型小細胞肺がん)に対して、6週間の病院での監視下、構成されたグループでの運動プログラムを実施。
運動耐容能、不安レベル、筋力、感情機能が改善した。
しかし、HRQOL全体は改善しなかった。
無作為化試験を現在216人の患者に対して行っているところである。

・介入内容
週2回、10-12人のグループで実施。1セッション1.5時間
ウォームアップ、筋力ex、フィットネスex、ストレッチで構成
ウォームアップ:最大HRの60-90%でエルゴを10分
筋力ex:6種類のマシントレーニング。1RMの70-90%、3種類以上を5-8セット。1週毎に1RMを測定し、負荷をできるだけ漸増
持久力ex:インターバルトレーニング。患者の最大HRの85-90%を目標に10-15分。
ストレッチ:トレーニングセッション後に、5-10分のストレッチ
各トレーニングセッションに10-15分のリラクセーションを実施。

・介入において、3つの原理をもとに実施:a)がん治療中の介入を早期に開始、b)運動と身体活動、c)患者の自発的な活動