2020/11/20

入院中の離床促進と退院後活動の関係

Comparison of posthospitalization function and community mobility in hospital mobility program and usual care patients a randomized clinical trial

JAMA Internal Medicine (2016) 176(7) 921-927


<背景>
低活動は、入院中に共通しており、ADLパフォーマンスの低下や地域活動の制限などと関連している。
目的は、入院中の活動プログラムmobility program (MP) が、入院後の身体機能と地域活動へ影響するかを検討すること。

<方法>
単施設での無作為化試験。MPと通常ケアで比較。
対象は、2011年1月から6月にthe Birmingham Veterans Affairs Medical Centerに入院した患者。
入院中と入院後1ヶ月に電話で追跡調査をした。
65歳以上で、認知機能に問題なく、入院2週間前まで歩けていた患者が対象。
活動プログラムは、1日2回の歩行と、活動を促進するための行動戦略を実施。
通常ケアでは、1日2回の訪問を行った。

ADL(Katz ADL scale)と地域活動(Life-Space Assessment (LSA))を用いて評価

<結果>
100人中8人が脱落。平均年齢73.9歳、男性97%。中央値入院日数3日。
ベースラインでの両グループに差はなかった。ADLとLSAは、同じような変化をたどった。しかし、入院1か月後、LSAスコアは、特にMPグループで著明に改善(52.5vs41.6 p=.02)。
MPグループにおいて、入院1か月後のLSAスコアは、入院時の測定した結果と似ていた。
通常ケアグループにおいて、LSAスコアは10ポイント減少していた。

<考察>
単純なMP介入では、ADL機能に影響していなかった。しかし、MP介入は、患者の入院前の地域活動を維持することができ、一方通常ケアでは著明に低下していた。
地域活動が低いことは、死亡やナーシングホーム入所、機能低下のリスクを増加させることと関連しており、通常ケアにて得られた結果のように、臨床的に重要であることを示唆した。


・入院中の活動プログラム
介助での座位、起立、重心移動、ステップ、歩行を耐えられるところまで実施。
必要であれば、歩行者(rollong walker)や歩行ベルト(安全帯?)を提供。
1日2回、1回15-20分、週7日

・行動介入
介助歩行に加えて、ベッドから離れて過ごす時間を増やすよう、MPグループの患者を励ました。
目標は、提供した歩行以外での活動を促すこと。
離床活動を促す目的で、日誌をつけてもらい、離床や歩行の時間を記録してもらった。
目標設定に加え、活動を制限しているものについてディスカッションをした。
インタビューにて患者の行いたい活動を聴取し、解決に向けた可能性を発展させる。



2020/11/19

1年間の6MWD、低酸素血症の変化で予後予測

One Year Change in 6-Minute Walk Test Outcomes is Associated with COPD Prognosis

COPD (IF: 2.5; Q1). 2020 Nov 8;1-10.


目的は、1年間の6MWDと低酸素の変化が、その後の死亡率、肺機能低下、増悪回数を予測するかを検証すること。
295人のCOPD患者。ベースラインと1年後に6MWTを測定。
COX回帰モデルにて死亡アウトカム、線形混合モデルで肺機能、負の2項回帰モデルにて増悪を解析。

両方の6MWTにて低酸素があった患者は、(低酸素がなかった患者と比べて)全死亡リスクが2.7倍、呼吸器関連死亡率が3.6倍であった。

2回目の6MWTでのみ低酸素があった患者の全死亡リスクは2.0倍

6MWDと死亡率との間には明らかな関連は見られなかった。

2回目の6MWTで低酸素が出現すると、その後の%FVCの低下率が増加(1年後に平均4.2%多く減少)

1年後に6MWDが30m以上減少していると、その後の%FEV1.0の減少や増悪と関連していた。

6MWTで低酸素が繰り返されると、全死亡原因や呼吸器関連死亡のリスクとなり、低酸素血症がみられると、将来のFVC低下を予測した。

2020/11/10

ICU退室後も認知機能障害は残存する可能性

 Long-term cognitive impairment after critical illness

N Engl J Med (IF: 74.699; Q1). 2013 Oct 3;369(14):1306-16.



<背景>
重症からの生存者は、しばしば認知機能障害が遷延し、能力制限となるが、いまだ、その特性については明らかになっていない。

<方法>
成人の呼吸不全もしくはショックでICUに入院した患者。
入院中のせん妄を評価し、退院後3か月後、12か月後の認知機能と注意機能をthe Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological StatusとTMT-partBを用いて評価した。
せん妄期間と鎮静、鎮痛の使用の関係をアウトカムに直線回帰分析を実施。

<結果>
821人の患者が入院。6%がベースラインで認知機能障害あり、74%が入院中にせん妄が発症した。
3か月後のglobal cognition scoresは、患者の40%が一般平均スコアの1.5SD、26%は2SDであった。
12か月後に評価すると、高齢者で34%、若者で24%が中等度の脳損傷スコアや軽度アルツハイマー型認知症と同程度のスコアであった。
せん妄の遷延は、3か月後、12か月後のglobal cognition scoresの悪化と独立して関連していた。
鎮静、鎮痛薬の使用は、3か月後と12か月後の認知機能障害とは関係していなかった。

<考察>
ICU入院患者は、認知機能障害が長期間残存する高いリスクがある。
病院でのせん妄の長期化は、global cognition scoresのスコア不良と関連していた。

2020/11/01

重症ILDでも呼吸リハの効果アリ

Does the severity of interstitial lung disease affect the gains from pulmonary rehabilitation?

Clin Respir J (IF: 1.514; Q3). 2018 Jun;12(6):2141-2150. 


<背景>
運動耐容能低下は、間質性肺疾患の主な障害であり、患者の予後予測と関連している。
呼吸リハ(PR)は、最大運動耐容能、息切れ、QOLを改善させる。
目的は、ILD患者のPRの効果と、重症ILD患者でも同様の効果が得られるかを検証する事。

<方法>
安定期ILD患者が対象。
評価項目:肺機能、運動耐容能(6MWT)、QOL(SF-36、SGRQ)、精神心理評価(HADS)
リハ前とリハ後(8週後)に評価

<結果>
57人の患者がPRプログラムを完了。女性30人、男性27人。
リハ前後で、QOLと運動耐容能に著明な変化が得られた(p<.05)
患者を拡散能で2群に分け検証(グループ1:%DLCO<40%、グループ2:%DLCO≧40%)
2群間に、1秒量、PaO2を除いて有意差はなかった。
SF36の3項目(身体機能、精神機能、身体的役割)とPaO2を除いて、全評価項目で有意差はなかった。

<考察>
PRはILD患者のQOLと運動耐容能改善をもたらす。
加えて、PRは、疾患重症度に関係なく、重症ILD患者で特に効果が得られる。

・安定期ILD:過去4週間に呼吸器症状の悪化が無く、症状悪化による救急受診が無い
・除外:急性感染症、その他肺疾患(結核、COPD、喘息)の既往、骨関節疾患や循環器など運動が行えない患者。モチベーションの低い患者、コンプライアンスが悪い患者、移動の問題がある患者も除外。

・リハ:呼吸理学療法。1セッション2時間、週2回を8週間。
 内容:呼吸練習(口すぼめ、腹式)、胸郭ストレッチ、リラクセーション、筋トレ、有酸素運動、排痰、安楽なポジショニング
 強度:Borg scale4-6.トレッドミルは最大心拍数の60-90%。
 時間:15分トレッドミル+15分エルゴ
 SpO2<90%となる患者へは酸素投与しながら運動。

・結果 グループ1vsグループ2
リハ後の6MWD:386.1m vs 426m(p=.065)
SpO2の低下:5.8% vs 3.9%(p=0.246)

CHDF中の早期離床は安全で効果的

Safety, Feasibility, and Efficacy of Early Rehabilitation in Patients Requiring Continuous Renal Replacement: A Quality Improvement Study

Kidney Int Rep (IF: 3.374; Q1). 2019 Oct 11;5(1):39-47.


<背景>
重症患者への早期リハビリは、アウトカムの改善と関連している。最近の研究で、持続透析治療(continuous renal replacement therapy (CRRT))中の患者でも安全に活動(mobility)できることがしめされている。
この研究の目的は、CRRTを行っている患者への活動に焦点を置いて、早期リハビリが安全に行えるかを評価した。

<方法>
安全性は、CRRTカテーテル抜去や予期しない抜管、出血、血行動態の急変などを含む重大なイベントと、安静時SPO2が10%以上低下などの小さなイベントを記録。
リハビリの効果は、評価を行うのは制限されるため、臨床アウトカムとの関連で判断。

<結果>
67人の患者(平均54歳、44%女性、平均BMI29.2)がプロトコルに沿って早期リハビリを実施。
CRRTの中央値は6.0日、72%の患者は、人工呼吸もリハビリ介入の際に同時に行っていた。
152回のリハ介入のうち、112回はリハビリセッションを完了した(完了率74%)。
重大なイベントは生じなかった。
退院時に、多くの患者がより高い活動レベルに達していた(p=0.076)

<考察>
CRRTを行っている重症患者に対する早期リハビリの提供は、安全で実現可能であった。さらに、予備的な結果であるが、活動に焦点を置いた早期リハビリは、これらの患者の活動アウトカムの改善を示唆した。

・アメリカ、ケンタッキー州大学Albert B. Chandler HospitalのICUでの研究
早期リハビリプロトコル

・専門チーム(腎臓専門医、集中治療医、看護師、PT、OT)によって患者を評価
・phase1:段階的に患者の評価。1)リハ医が、血行動態、呼吸器設定、鎮静を評価。2)基準を満たせば、ベッドサイドにて看護師と状態についてディスカッション。3)ICUチームとリハセッションについて調整。
・phase2:早期リハプロトコルは、標準化され、離床、活動レベルを漸増
患者の血行動態が活動によって反応していることを確認しながら身体活動を進めた

安静度拡大のプロトコル
レベル1&2:ベッド上での他動、自動運動
レベル3:ベッド端座位での活動
レベル4:起立、移乗
レベル5:歩行

・ICU入室時eGFR:18.4、クレアチニン:2.73、終末期腎疾患:13人(19%)
・併存疾患:高血圧、肝障害、糖尿病、COPD
・ICU入室からCRRT導入までの日数:平均3日。
・人工呼吸管理:65人(95.6%)、呼吸器管理日数:10.2日
・ICU日数:13日、入院日数25日
・転帰:入院中に死亡37.3%、リハビリ転院22.4%、自宅退院13.4%

リハビリ評価
・リハ開始までの日数:5日、リハセッション完了:74%
・リハ中断理由:状態悪化45%、鎮静32.5%、興奮・拒否5%


・リハ完了数と関連していた項目:人工呼吸日数、入院日数、ICU日数、CRRT日数
・より高いレベルの活動が行えた患者は、生存率が高い傾向にあったが、統計的な有意差なし
・リハ開始までの日数が短いと、高い活動レベルが達成された(r =-0.292, P = 0.017)

・多変量解析にて、リハビリが行えないことは、入院中死亡率と独立して関連していた。併存疾患が多いことと肝障害があることは、入院中の死亡と強く関連していた(OR3.296)