2020/02/29

退院後の能力低下と回復

Disability and Recovery After Hospitalization for Medical Illness Among Community‐Living Older Persons: A Prospective Cohort Study

J Am Geriatr Soc (IF: 4.113) 2020 Feb 21.

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jgs.16350#.Xlpno5hmtZs.twitter

<目的>
急性疾患にて入院後の活動について、1)入院後6ヵ月までの毎月能力低下が予防できているか、2)入院後1ヵ月の能力低下の発生、3)入院後2-6ヶ月で発生した能力低下からの回復時間を調査した。

<方法>
対象は、地域在住高齢者515名、平均年齢82.7歳
急性疾患での入院から回復して、退院後1か月以内。

能力低下は、毎月の基本動作(入浴、整容、歩行、移乗)、手段的ADL(買い物、家事、食事準備、服薬、金銭管理)、活動(1/4マイルの歩行、階段を昇る、10ポンドの物を持つ、運転)

<結果>
入院後1-6ヵ月での能力低下は、1/4マイルの歩行、自動車運転で共通していた。
能力低下は、服薬管理などの慢性疾患の自己管理、食事準備も含まれていた
43%は、新たに1/4マイルの歩行ができない、30%は服薬管理が新たに困難になっていた。
それぞれの平均回復時間は、1.9ヵ月と1.7ヵ月

<考察>
能力低下は、受診のために家を出ることや健康の自己管理で共通して生じていた。
退院後のケアは、過渡期を超えて脆弱な期間に患者をサポートすべきである。


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退院後半年は、移動能力や服薬管理が困難になりやすいため、サポート・監視が必要。

2020/02/28

バイオマーカーとCOPD臨床アウトカムの関係-systematic review and meta-analysis-

Biomarkers and clinical outcomes in COPD: a systematic review and meta-analysis

Thorax. 2019 May; 74(5): 439–446.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6484697/


<背景>
従来よりCOPDは、骨格筋低下、心血管疾患の問題など全身の問題が検証されている。
これらの結果と臨床アウトカム(死亡率、増悪、入院など)の関係について検証することは、重要なことである。

<目的>
6MWD、心拍数、フィブリノゲン、CRP、白血球数、IL-6、IL-8、TNF-α、大腿四頭筋力、鼻吸気圧(吸気筋力?)、SPPB、脈波伝播速度(pulse wave velocity)、頸動脈内膜中膜肥厚(carotid intima-media thickness)、脈波増大係数(augmentation index)と安定期COPDの臨床アウトカムの関係を調査した。

<方法>
疫学研究などのメタアナリシスなど61文献が対象。

<結果>
6MWDが短く、心拍数の上昇、フィブリノゲン、CRPの上昇と白血球数の増加が高い死亡率と関係。
6MWDが50m短くなるごとに、危険率(HR)は0.80上昇
心拍数が10bpm上昇するごとに、1.10
フィブリノゲンが2倍増えるごとに、3.13
CRPが2倍増えるごとに、1.17
白血球数が2倍増えるごとに、2.07

6MWDが短く、フィブリノゲンとCRPの増加は、増悪と関係。
6MWDが短い、心拍数とCRPとIL-6が高いことは、入院と関係。

いくつかの研究では、骨格筋の評価との関連も検証されている。

<考察>
6MWD、心拍数、CRP、フィブリノゲン、白血球は、安定期COPD患者の臨床アウトカムと関連していた。
骨格筋評価を用いたアウトカムとの関連の検討が今後、求められる。


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・SPPBを使った研究は、今回のシステマティックレビューの採用基準に当てはまらなかったが、いくつかの検証がされている。
・主に一般人を対象にした17の文献にて、SPPB<10点は、全死亡原因を予測した。
・高齢COPD患者においては、SPPBの構成要素の1つである、歩行速度が再入院を予測したと報告している。

2020/02/20

肺線維症急性増悪後のADL

The Activities of Daily Living after an Acute Exacerbation of Idiopathic Pulmonary Fibrosis

Intern Med. 2017 Nov 1;56(21):2837-2843.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28943534

<目的>
特発性肺線維症(IPF)の急性増悪(AE)は生命を脅かす状態である。ADLとQOLは、IPF増悪(AE-IPF)患者でしばしば制限される。しかしながら、AE-IPFとADLの関連に関しては、いまだに評価されていない。
AE-IPFのADLに対する影響について評価した。

<方法>
2010-2014年にAE-IPFの患者を採用。後方視的に6項目からなる修正Bathel Index(BI)を用いてAE-IPF前後のADL状況を評価。

<結果>
47のAE-IPF患者のうち、増悪後3ヵ月で生存していたのは28人。
22人の生存者で、増悪前のBIは満点。12人の患者の増悪4週後のBIスコアは、15点以上減少しており、生存者の半分以上は55点以下であった。
ロジスティック回帰分析で、増悪後28日の動作時(OR 24.20)と安静時(OR 21.00)の低酸素血症が、増悪4週後のBIスコアが15点以上減少していることと関連していた。

<考察>
AE-IPF生存者で、低酸素血症がある患者は、治療後にADLが低下していることが示された。

・ADL評価は、増悪前、増悪後1日、8日、15日、29日に評価。
・BIは、呼吸器疾患の状態は反映しにくいとされるが、簡便で、病院内ルーチン評価となっているため、採用。
・BIスコアが増悪前より10点減点:軽度、10-15点:中等度、15点以上減点:重度ADL制限と定義。

・急性増悪の定義:IPFと診断されている、過去30日に説明できない息切れの増強を自覚、HRCTで新たな両側性すりガラス影の出現、浸潤影の指摘、その他呼吸器感染症(気管支肺胞洗浄、誤嚥、喀痰など)の除外。
左心不全、肺塞栓症、そのた急性肺疾患は除外。

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BIスコアの経時変化
増悪前は、ADL動作自体は、ほぼ自立。

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ADL項目別変数

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増悪前後のBIスコアと経過。
元と活動量が高いと、軽症で済むことが多い様子。

2020/02/16

動作時低酸素血症と肺高血圧の関係

Relationship between exercise desaturation and pulmonary haemodynamics in COPD patients.

Eur Respir J (IF: 11.807) 2004 Oct;24(4):580-6.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15459136

COPD患者の肺高血圧(PH)は、血行動態の影響として伝統的に説明させている。
近年、その他の機序として、炎症による動脈のリモデリングが示唆されている。
この研究の目的は、運動時PHが、低酸素血症なく生じているか、運動時低酸素血症と同時に、肺動脈圧や肺血管抵抗性指数(pulmonary vascular resistance index:PVRI)が上昇しているかについて検討した。

17人のCOPD患者を対象に肺血行動態を評価。安静時低酸素血症は無しか軽微で、ADL動作や労作時の環境を運動中として評価。

ADL動作中に、65%の患者で運動時PHが生じた。運動中の肺動脈圧は、動脈血酸素分圧と負の相関を示したが、運動時PHは低酸素血症時に必ずは生じなかった。
一方、運動時PHは運動時低酸素血症のある患者全例には見られなかった。

安静時PVRIはADL動作中の動脈血酸素分圧と負の相関を示した。しかし、運動時低酸素血症が無くPVRIが上昇している患者が35%いた。

安静時に軽微な低酸素血症にとどまっている患者において、運動時肺高血圧はCOPD患者のADL動作時に生じている
運動中の肺動脈圧と動脈血酸素分圧は、負の相関を示していた。
低酸素血症と肺高血圧の関係については、示せなかった。
これは、肺高血圧の進行に伴い、その他の低酸素血症の機序があるかもしれない。


・肺動脈圧は、ADL動作中と最大運動時にスワン-ガンツカテーテルをもしいて、動脈圧を測定
・運動はトレッドミルを使用。1.2km/hから開始し、2分ごとに0.6km/hずつアップ。最高4.8km/hまでとした。さらに、負荷を上げるときは、傾斜を毎分1.5%ずつ上昇。
歩行中、エルゴスパイロメトリーを装着し、最大酸素摂取量やCO2排泄量を測定。

・橈骨動脈に動脈血採血用にカテーテルを留置。PaO2>10kPaを正常、8.1-10.0kPaを軽度低酸素と定義。
・血行動態は、右心房圧、平均右心房圧と平均右心房圧、肺毛細血管楔入圧を使用。

・運動誘発肺高血圧は、右心房圧>30mmHgと定義。

a)動脈血酸素分圧
b)肺動脈圧、肺毛細血管楔入圧
c)肺静脈抵抗指数
d)心係数(心拍出量を体表面積で除した値:酸素摂取量の指標)
Rsup:仰臥位
Rst:座位
ADL:ADL動作時
Max:25w以上の動作を行ったとき

2020/02/12

胸腔鏡下肺切除術後の理学療法が必要な患者の特性

Video-assisted thoracoscopic lobectomy: which patients require postoperative physiotherapy?

Physiotherapy (IF: 2.534) 2019 Jan 11.

https://www.physiotherapyjournal.com/article/S0031-9406(19)30006-9/fulltext

<背景>
胸部術後の理学療法は、肺容量減少の抑制、分泌物クリアランスの予防、活動性の改善のために推奨されている。しかし、VATSで最小限の侵襲の患者に対して、理学療法を行うことが求められているとは言えない。
目的は、VATS肺葉切除を行い、リハを行った患者で、純粋な問題の発生頻度を調査。理学療法で効果のあった患者のベースラインの患者因子を評価。

<方法>
ガンなどにて肺葉切除を行った患者を前向きに収取し、研究。
標準的な肺合併症(PPCs)予防のために、看護師が術後1日目(POD1)に離床を実施。
理学療法評価は、POD1に全患者に実施。リハ介入の可能性や治療について指示した。
アウトカムは、肺合併症の発生、入院もしくは行動治療ユニットの在室日数。

<結果>
285人中、209人(73%)が、活動量減少予防のために理学療法を実施。23人(8%)は排排痰について、65人(23%)は、肺容量切除の特異的な治療を実施。76人(27%)は、入院期間が著明に短く、合併症なく改善していることを反映した。
COPD、BMI、術前活動量、年齢は、独立して理学療法介入と関係していた。

<考察>
VATS肺葉切除で多くの患者が理学療法介入が必要であることが示された。
筆者は、この手術を受ける患者すべてに理学療法評価をルーチンで実施することを推奨さうる。
COPD、BMI、術前身体活動、年齢は、もっとも術後理学療法の効果を享受すべき患者を早期に発見するために必要であるが、これらの因子は理学療法が必要であることを予測できない。

・患者は、手術当日に入院し、手術を受ける。術後は、集中治療室にて管理。疼痛コントロールは、硬膜外麻酔、脊柱もしくは全身オピオイド投与。
術後1日目の標準的ケアは、看護師によるベッド端座位から患者ができる限り、安全にできるところから早期モビライゼーションを実施。
また、術後1日目に、胸部外科専門の理学療法士は、無気肺、排痰、運動耐容能を評価。
理学療法士は、必要に応じて排痰などから開始。標準ケアよりも多く活動し、身体活動レベルを低下させないように介入。


2020/02/01

早期離床は死亡率、QOLに有効か?

Early versus delayed mobilization for in-hospital mortality and health-related quality of life among critically ill patients: a systematic review and meta-analysis

J Intensive Care. 2019 Dec 9;7:57.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31867111

<背景>
重症患者に対しての早期離床がが有効であるか、無作為化試験のシステマティックレビューとメタアナリシスで検討した。

<方法>
CENTRAL, MEDLINE、医中誌を使用して、ICU入室1週間以内の早期離床群と、通常ケアよりも早いが介入群よりも遅く介入開始した群で無作為化比較試験を行ったものを調査。
2人のレビュアーが独立してデータを抽出し質を評価。プライマリーアウトカムは入院中の死亡率、ICU入室日数、入院日数、健康関連QOL

<結果>
1085件がスクリーニングされ、11件(1322人)がメタアナリシスに参加。
入院中の死亡リスクに関する相対的リスク(relative risk)は、早期離床群と比較して通常ケアで1.12倍
ICU日数は-1.54倍、入院日数は-2.86倍
退院後6ヵ月での違いは、(SF-36、EQ-5Dで評価したQOL)身体機能で4.65倍、VASで0.29倍

<考察>
早期離床と通常離床に関して、入院中の死亡率や健康関連QOLに違いは認めなかった。
重症患者における入院中の死亡率や健康関連QOLに関しての早期離床の影響は、より大きく詳細な対象群での検討が必要である

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早期離床の方が若干有効な結果が多いか。。。

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退院後のQOLは有意差なし

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四肢筋力(MRC)は改善するが、身体機能や握力は変わりない
有害事象は特に大きな差なし